国際宇宙ステーション長期滞在一覧
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国際宇宙ステーション長期滞在一覧(こくさいうちゅうステーションちょうきたいざいいちらん)では、国際宇宙ステーション(ISS)に恒久的に滞在する宇宙飛行士チームの一覧を示す。全ての恒久的滞在チームには「第○次長期滞在」という名前が付けられており、○には順番の数字が入る。なお、英語ではExpedition、略してExpとも呼ばれ、チームの番号を付けてExp.n(nは番号)と記載する。
2009年現在、長期滞在チームは半年ごとに交代している。これは、緊急帰還用にISSに準えてあるソユーズ宇宙船の軌道上寿命が約200日間であり、ソユーズ宇宙船を交換する際に長期滞在チームも交代するためである。ただし、スペースシャトルで交代する長期滞在者はソユーズ交換の際にも引き続き滞在するため、前後の長期滞在チームにまたがって所属することがある。シャトルで訪れてそのまま帰還するクルーや宇宙観光で滞在する人は、長期滞在には含まれない。
ISSは宇宙開発の歴史上、最も多くの人が訪れた宇宙ステーションである。2008年6月5日までに、163人の異なる人が訪れている。ミールには、延べ137人が訪れた。
ISSでの活動における将来の国際協力については、2022年のロシアによるウクライナ侵攻およびロシアに対する制裁の影響で疑問が持たれている[1]。
長期滞在の状況
[編集]コロンビア号事故以前
[編集]2000年10月31日、長期滞在の準備が整ったISSに最初のソユーズ宇宙船がドッキングし、第1次長期滞在チームが活動を開始した。ソユーズは緊急帰還用にも使用されるため、ISS長期滞在はソユーズの定員と同じ3名である。第1次長期滞在チームは5箇月間滞在して、スペースシャトルSTS-102で第2次長期滞在チームと交代した。以後2002年まで、長期滞在クルーの交代はスペースシャトルで行われた。
ソユーズ宇宙船は、軌道上寿命である6箇月ごとに交換される。この際には、新しいソユーズが打ち上げられてISSにドッキングし、これに乗ってきたクルーが、ISSにドッキングしている古いソユーズに乗り換えて地球に帰還する。これらのクルーは長期滞在に含まれず、タクシークルーと呼ばれる。また、3人のタクシークルーのうち1人分の搭乗権をロシアが販売したため、これを利用して2001年には初の観光目的のISS訪問が実現した。
コロンビア号事故後
[編集]2003年に発生したスペースシャトルコロンビア号の事故により、スペースシャトルの運航は一時中止された。このため、第6次長期滞在チームは係留中のソユーズTMA-1で地球へ帰還することになった。2003年4月26日に打ち上げられたソユーズTMA-2に搭乗した第7次長期滞在チームは2名のみで、入れ替わりに第6次長期滞在チームが帰還すると、長期滞在者は2名になった。これは物資の補給をプログレス補給船のみに頼らざるを得なくなり、ISSを維持するため最低限必要の人数に減らすためであった。以後しばらくは、長期滞在者2名とタクシークルー1名を乗せたソユーズが打ち上げられ、2名が交代する体制が続き、タクシークルーの商業飛行は中断した。
シャトル運行再開後
[編集]2006年7月4日、運行再開後2便目となるスペースシャトルSTS-121が3人目の長期滞在者を輸送し、ISSは3人滞在体制に復帰した。以後は、ソユーズで到着した2名は乗ってきたソユーズで帰還し、新しいソユーズに乗ってきた2名はソユーズの寿命と同じ6ヶ月間滞在する体制が続いた。3人目のクルーはスペースシャトルで交代するため、他の2名が交代する際もISSに引き続き滞在した。このため、ソユーズで交代する2名の期間を長期滞在のチームの区切りとしており、長期滞在チームが入れ替わるときに滞在している3人目のクルーは、前後の長期滞在チームに所属する。また第16次長期滞在では、期間中にスペースシャトルによる交代が3回も行われたため、全部で6名ものクルーがチームに所属している。
ソユーズを交換する際に搭乗する長期滞在クルーは2名なので、タクシークルー1名を搭乗させることができる。これを利用した宇宙旅行が復活したほか、韓国やマレーシアによる宇宙ステーション短期滞在も実現した。
6名滞在体制へ
[編集]2008年から2009年にかけて、ISSの長期滞在者を6名に増加するための機材が輸送された。2009年5月に3名の長期滞在者を搭乗させたソユーズTMA-15が到着したことにより、ISSは完成形である6名滞在体制を開始した。ソユーズへのタクシークルー搭乗はTMA-16が最後となり、以後は長期滞在者3名の交代のみが行われている。タクシークルー枠を利用した商業宇宙飛行は終了した。スペースシャトルによる長期滞在者の交代もSTS-129を最後に終了した。
なお、3名体制のときは新しいソユーズの到着後に古いソユーズを分離するため、交代中は6人滞在していた。6名体制では、ドッキング中のソユーズのうち古い方の1機を分離してから新しいソユーズがドッキングするため、交代時にも9名が滞在することはなく、一時的に3名体制になる。これはソユーズが使用できるドッキングポートが3箇所(2010年1月からはMRM-2が使えるようになるため、4箇所に増える)しかなく、うち1箇所はATVやプログレス宇宙船が使用するためである。
6名滞在が開始された後は、ソユーズの交換で3名が入れ替わるときを長期滞在チームの境目とする。従って、各長期滞在チームは前のチームの半分を入れ替え、半分を引き継いだメンバーである。2008年11月に、2010年のISS完成までの長期滞在チームが発表されている。
長期滞在一覧
[編集]- 時刻は協定世界時(UTC)
- 太字はリーダー
終了した長期滞在
[編集]2000年 - 2004年
[編集]2005年 - 2009年
[編集]2010年 - 2014年
[編集]2015年 - 2019年
[編集]2020年 - 2024年
[編集]現在行われている長期滞在
[編集]長期滞在チーム | メンバー | パッチ | 出発日 | 往路便 | 帰還日 | 復路便 | 日数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
第71次長期滞在 | ![]() | ![]() ![]() ![]() ![]() | 第70次長期滞在から継続予定 | 2024年8月 (計画) | スペースX Crew-8 | 180日(計画) 413日 (進行中) | |
![]() ![]() | 2024年9月24日 (計画) | ソユーズ MS-25 | 584日 (進行中) | ||||
![]() | 180日 (計画) | ||||||
![]() ![]() ![]() ![]() | 2024年8月 (計画) | スペースX Crew-9 | 第72次長期滞在に継続予定 | 180日 (計画) | |||
![]() ![]() ![]() | 2024年9月 (計画) | ソユーズ MS-26 | 180日 (計画) |
将来計画されている長期滞在
[編集]長期滞在チーム | メンバー | パッチ | 出発日 | 往路便 | 帰還日 | 復路便 | 日数 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
第72次長期滞在 | ![]() | ![]() ![]() ![]() ![]() | 第71次長期滞在から継続予定 | 2025年2月 (計画) | スペースX Crew-9 | ||
![]() ![]() ![]() | 2025年3月 (計画) | ソユーズ MS-26 | |||||
![]() ![]() ![]() ![]() | 2025年前半 (計画) | ボーイング スターライナー-1 | 第73次長期滞在に継続予定 | ||||
![]() ![]() ![]() | 2025年前半 (計画) | ソユーズ MS-27 |
備考
[編集]ソユーズ宇宙船は陸上にパラシュートで着地するため、乗員を着地の衝撃から保護するための特殊な座席を使用しており、座面のクッションは各乗員の体から石膏で型を取って製作される。このため、スペースシャトルでISSへ向かう長期滞在者は、自分専用のソユーズの座面を携行していた。
ISSに到着した長期滞在者は、入れ替わりに帰還する予定の滞在者の座面をソユーズから取り外し、自分の座席を取り付ける。この時点で、新たな滞在者が「ISS長期滞在チームの一員」となり、それまでの滞在者は「スペースシャトルの乗員」になるのである。
なお、タクシークルーも同じことを行う。タクシークルーはISSに係留されている古いソユーズで帰還するため、自分の座面を古いソユーズに移す。交代しない長期滞在者の座面は、乗ってきたソユーズで帰還するため、そのままにされる。
注釈
[編集]- ^ ケリーとコルニエンコは約1年間ISSに滞在した。この期間は第43次から第46次までの期間を合わせたものである。
- ^ この期間はソユーズTMA-18Mの始まりから終わりまでである。
- ^ ウィットソンはさらに3ヶ月間ISSに滞在した。この期間は第50次から第52次までの期間である。
- ^ 他の3人の乗組員とともに飛行するメーガン・マッカーサーは、このミッションで夫のボブ・ベンケンがDemo-2ミッションで使用したのと同じスペースXクルードラゴン「エンデバー」の座席を使用している [33]。
- ^ a b スペースX Crew-2のヨーロッパ部分はアルファと呼ばれ、トマ・ペスケが率いた。
- ^ 現時点のISS船長
- ^ a b スペースX Crew-4のヨーロッパ担当部分はミネルヴァと呼ばれ、サマンサ・クリストフォレッティが指揮している。
脚注
[編集]- ^ Witze, Alexandra (11 March 2022). “Russia's invasion of Ukraine is redrawing the geopolitics of space” (英語). Nature. doi:10.1038/d41586-022-00727-x. PMID 35277688 2022年3月13日閲覧。.
- ^ NASA (2015年). “International Space Station Partners Adjust Spacecraft Schedule”. 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ “Expedition 43 Crew Departs Space Station, Lands Safely in Kazakhstan”. 2015年6月11日閲覧。
- ^ “Soyuz lands safely in Kazakhstan”. Spaceflight Now. Spaceflight Now Inc.. 2015年11月3日閲覧。
- ^ “Launch, Docking Returns Space Station Crew to Full Strength”. 2015年7月23日閲覧。
- ^ Gebhardt,Chris (2016年3月1日). “Year In Space mission ends with Soyuz TMA-18M return”. nasaspaceflight.com. 2016年3月6日閲覧。
- ^ “UK astronaut Tim Peake returns to Earth”. BBC News. 2016年6月18日閲覧。
- ^ “Expedition 48 Lands With Most Experienced NASA Astronaut”. NASA (2016年9月6日). 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ “Roscosmos. Soyuz TMA-20M crew return”. ROSCOSMOS (2016年9月7日). 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ “Crew Launches for Two-Day Ride to Station”. NASA (2016年7月9日). 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ “NASA Astronaut Kate Rubins, Crewmates Safely Return From the Space Station”. NASA (2016年10月30日). 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ “Soyuz MS-02 spacecraft docks with Expedition 49/50 crew”. nasaspaceflight (2016年10月19日). 2019年3月閲覧。 エラー: 閲覧日は年・月・日のすべてを記入してください。
- ^ 1:13 PM ET (2017年8月6日). “'American Space Ninja' Back On Earth After Record-Breaking Flight”. NPR. 2017年9月3日閲覧。
- ^ “Astronaut biography: Peggy Whitson”. spacefacts.com. 2017年9月5日閲覧。
- ^ “Soyuz MS-05 returns crew back to Earth” (2017年12月14日). 2017年12月14日閲覧。
- ^ {{cite web|url=https://www.nasaspaceflight.com/2018/03/roscosmos-soyuz-ms-08-mission-first-crew-launch-2018/%7Ctitle=Soyuz MS-08 mission, first crew launch of 2018, docks with ISS|date=March 21, 2018|first=Chris |last=Gebhardt| publisher=nasaspaceflight.com}}
- ^ “Soyuz MS-08”. spacefacts.de. 2018年10月6日閲覧。
- ^ “Soyuz MS-16 returns Space Station trio to Earth”. NASASpaceflight.com (2020年10月21日). 2020年10月22日閲覧。
- ^ “Station Welcomes First SpaceX Crew Dragon with Astronauts”. NASA (2020年5月31日). 2020年6月1日閲覧。
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- ^ “Crew Dragon SpX-DM2”. Spacefacts. 2020年5月31日閲覧。
- ^ “Good splashdown of Dragon confirmed! Welcome back to Earth, @Astro_Behnken and @Astro_Doug !”. Twitter. 2020年8月2日閲覧。
- ^ Weitering, Hanneke (2020年5月29日). “How SpaceX's Crew Dragon Demo-2 mission will work in 13 steps”. space.com. Space.com. 2020年5月31日閲覧。
- ^ Chang, Kenneth (2020年8月1日). “SpaceX Crew Dragon Departs, Carrying NASA Astronauts Toward Home”. 2022年1月12日閲覧。
- ^ Harwood, William (2020年6月24日). “Astronauts gear up for Friday spacewalk amid planning for August Crew Dragon return”. Spaceflight Now. 2020年6月30日閲覧。
- ^ “Live coverage: Soyuz crew begins flight to International Space Station”. Spaceflight Now (2020年10月14日). 2020年10月14日閲覧。
- ^ “Источник: НАСА хочет купить еще одно место в российском "Союзе" [Source: NASA wants to buy another Soyuz seat]” (ロシア語). RIA Novosti. (2019年10月22日) 2019年10月23日閲覧。
- ^ “Increment 63”. JAXA (2020年4月10日). 2020年4月10日閲覧。
- ^ Northon, Karen (2020年10月21日). “NASA Astronaut Chris Cassidy, Crewmates Land Safely Back on Earth”. nasa.gov. NASA. 2020年10月23日閲覧。
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- ^ “SOYUZ MS-17 CREW RETURNS TO EARTH AFTER 6 MONTHS ABOARD ISS”. Spaceflight Insider (2021年4月17日). 2021年4月17日閲覧。
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