ヒッポトオス

ヒッポトオス古希: Ἱππόθοος, Hippothoos)は、ギリシア神話の人物である。主に、

が知られている。以下に説明する。

アイギュプトスの子[編集]

このヒッポトオスは、エジプトの王アイギュプトスの50人の息子の1人である。母親はアラビア出身の女。イストロス、カルコードーン、アゲーノール、カイトス、ディオコリュステース、アルケース、アルクメーノール、エウケーノールヒッポリュトスと兄弟。ダナオスの娘の1人ゴルゲーと結婚したが、他の兄弟たちと同様、結婚相手に殺された[1]

アロペーの子[編集]

このヒッポトオスは、エレウシースのケルキュオーンの娘アロペーとポセイドーンの息子ヒッポトオーンの別名[2][3]

アレオスの子[編集]

このヒッポトオスは、ヒュギーヌスによるとアウトリュコスの娘ネアイラの息子[4][5]アポロドーロスによると、母ネアイラはペレウスの娘で、アルカディアー地方の都市テゲアーを支配したアレオス王の妻[6])で、リュクールゴス[6]ケーペウスアウゲーと兄弟[5][6]。ヒッポトオスとケーペウスはヘーラクレースとアウゲーの子テーレポスに殺されたため[5]、ネアイラは自殺したという[4]

ヒッポコオーンの子[編集]

このヒッポトオスは、スパルタの王ヒッポコオーンの息子で、ドリュクレウス、スカイオス、エナロポロス、エウテイケース、プーコロス、リュカイトス、テブロス、エウリュトス、ヒッポコリュステース、アルキヌース、アルコーンと兄弟。ヒッポコオーンとその息子たちはテュンダレオースイーカリオスを追放して王となったが、後にヘーラクレースとの戦争で討たれた[7]

レートスの子[編集]

このヒッポトオスは、テッサリアー地方の都市ラーリッサのペラスゴイ人の王テウタモスの子レートスの子で[8]ピュライオスと兄弟[8][9]アポロドーロスではラーリッサ王ペラスゴスの子[10]トロイア戦争の際に、ピュライオスとともにトロイアーを救援して戦った[8][9]。アポロドーロスはラーリッサの武将についてヒッポトオスの名前だけ挙げ[10]プリュギアのダレースはヒッポトオスとクペサスの名前を挙げている[11]

ホメーロス叙事詩イーリアス』によると、ヒッポトオスはヘクトールパトロクロスの遺体から奪ったアキレウスの武具を身に着けて、パトロクロスの遺体をも奪おうとした際に、ともに戦った武将の1人であった[12]。ヒッポトオスはパトロクロスの遺体の両足首を縄で縛って、曳いて行こうとした。しかし乱戦の中から大アイアースが躍り出て、槍でヒッポトオスの兜を突くと、兜は割れてバラバラに散らばり、脳髄をまき散らした[13]パイノプスの子ポルキュスはヒッポトオスを庇おうとしたが、やはり大アイアースに討たれた。アルゴス勢は両者の遺体を運び去り、武具を剥ぎ取った[14]

クレータのディクテュスは、パトロクロス埋葬後の戦闘で、ピュライオス、ヒュタルコスの子アシオスとともに討たれたと述べている[15]。プリュギアのダレースもパトロクロス埋葬後の戦闘で、エウペーモス、ピュライオス、アステロパイオスとともに、アキレウスによって討たれたと述べている[16]

プリアモスの子[編集]

このヒッポトオスは、トロイアーの王プリアモスの子の1人である[17]。アポロドーロスによると庶子[18]。トロイア戦争でメーストールトローイロスヘクトールが戦死したため、他の8人の兄弟ヘレノスパリスアガトーンパムモーンアンティポノスポリーテースデーイポボスディーオスとともにプリアモスから叱責された[19]

ケルキュオーンの子[編集]

このヒッポトオスは、アルカディアー地方の王ステュムパーロスの子アガメーデースの子ケルキュオーンの子で、アイピュトスの父。当時のアルカディアー地方を支配したアガペーノール王がトロイア戦争から帰国しなかったため、王権を継承し、王都をテゲアーからトラペズースに移した[20]

脚注[編集]

  1. ^ アポロドーロス、2巻1・5。
  2. ^ ヒュギーヌス、187話。
  3. ^ ヒュギーヌス、252話。
  4. ^ a b ヒュギーヌス、243話。
  5. ^ a b c ヒュギーヌス、244話。
  6. ^ a b c アポロドーロス、3巻9・1。
  7. ^ アポロドーロス、3巻10・5。
  8. ^ a b c 『イーリアス』2巻840行-843行。
  9. ^ a b クレータのディクテュス、2巻35。
  10. ^ a b アポロドーロス、摘要(E)3・35。
  11. ^ プリュギアのダレース、18。
  12. ^ 『イーリアス』17巻217行。
  13. ^ 『イーリアス』17巻288行-303行。
  14. ^ 『イーリアス』17巻312行-318行。
  15. ^ クレータのディクテュス、3巻14。
  16. ^ プリュギアのダレース、21。
  17. ^ 『イーリアス』24巻251行。
  18. ^ アポロドーロス、3巻12・5。
  19. ^ 『イーリアス』24巻247行-264行。
  20. ^ パウサニアース、8巻5・4。

参考文献[編集]