交響曲第73番 (ハイドン)

交響曲第73番 ニ長調 Hob. I:73 は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン1780年から1781年にかけて作曲した交響曲。『』(: La Chasse)の愛称で知られる。

概要[編集]

1780年に終楽章が、1781年に残りの3楽章が作曲された。楽譜の初版は翌年の1782年に、ウィーンの出版社クリストフ・トリチェッラによって出版された。

また、終楽章は自作のオペラ報われた誠』(Hob. XXVIII:10、1781年2月25日にエステルハーザで初演)の序曲からの転用である[1]

愛称の由来[編集]

』の愛称は、終楽章に作曲者自身がフランス語で "La Chasse" と記入したことにちなんでいる。

楽器編成[編集]

フルート1、オーボエ2、ファゴットホルン2、弦五部

終楽章にのみトランペット2本とティンパニを加えた版も存在するが、これは上記の通り、終楽章がオペラの序曲からの転用だった名残である。

曲の構成[編集]

全4楽章、演奏時間は約24分。

  • 第2楽章 アンダンテ
    ト長調、4分の2拍子、ロンド形式
    
\version "2.18.2"
\relative c'' {
  \key g \major
  \time 2/4
  \tempo "Andante "
  \tempo 4 = 56
  g8-.\p [g-. a-. a-.]
  b-. b16. (c32) a4
  c8-. c16. (d32) b8-. b-.
  b16 (a) a (g) fis8 (a)\break
  g-. [g-. a-. a-.]
  b-. \tuplet 3/2 {b16 d g} \grace b,8 (a4)
  a8-. a-. b-. b16 (d)
  d (c) c (b) b4
}
    弦楽器による素朴な旋律に始まるが、この旋律はハイドン自作の歌曲『こたえる愛』(Gegenliebe, Hob. XXVIa:16)[2]からの引用である[1]。途中に短調のエピソードがロンド風に挿入される。
  • 第4楽章 狩:プレスト
    ニ長調、8分の6拍子、ソナタ形式。
    
\version "2.18.2"
\relative c'' {
  \key d \major
  \time 6/8
  \tempo "La Chasse "
  \tempo 4 = 210
  \partial 8 <d, d'>8 ^\markup {\bold Presto} \f
  <d d'>4 <d d'>8 <d d'>4 <d d'>8 
  fis'4. d4 fis8
  a b a g fis e 
  d4. a4 <d, d'>8
  <d d'>4 <d d'>8 <d d'>4 <d d'>8 
  fis'4. d4 fis8
  a b a g fis e 
  d4 r8 <d, d' d'>4.\fz
  b''8 g d b g b'
  a4 r8 <d,, d' d'>4.\fz
  b''8 g d b g b'
  a4 r8 <d,, d' d'>4.\fz
  e'8 b' a g fis e d4 r8 <d, d' d'>4.\fz
  b''8 g d b g b'
  a4 r8 <d,, d' d'>4.\fz
  b''8 g d b g b'
  a4 r8 <d,, d' d'>4.\fz
  e'8 b' a g fis e d8 r8
}
    上記の通り、この楽章は自作のオペラ『報われた誠』序曲からの転用であり、民謡調の賑やかな音楽となっているが、この旋律は古くからあるもので、1780年パリで出版された『狩人提要』(Manuel du Chasseur[1]にも "l´ancienne Vue" という名前で掲載されている。
    「狩の主題」は29小節目からホルンとオーボエで出現する。展開部ではティンパニは最後の部分を除いて休み、旋律らしい旋律が聞こえない。最後に「狩の主題」が再び で吹き鳴らされた後、意外にも静かに消え入るように終わるが、ハイドンの交響曲ではあまり例がなく、第45番『告別』の有名なコーダと並んで珍しい例となっている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 大宮真琴『新版 ハイドン』音楽之友社〈大作曲家 人と作品〉、181頁。ISBN 4276220025 
  2. ^ ゴットフリート・アウグスト・ビュルガー英語版1774年の詩による。ウィキソースのロゴ ドイツ語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:Gegenliebe (Bürger)

外部リンク[編集]