モプティ州

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モプティ州
‎La région de Mopti
位置

マリ共和国におけるモプティ州(塗りつぶし部)。
管理
: マリ共和国の旗 マリ
州都: モプティ
知事: アバス・デンベレ英語版
: 8
コミューン: 50
人口統計
人口(2022年)
 • 人口密度:
935,579人
 • 35.2人/km²
地理
面積: 26,550 km²
等時帯: WATUTC+0
ISO 3166-2: ML-5
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モプティ州(モプティしゅう、フランス語: Région de Mopti)は、マリ共和国の州。人口は約94万人(2022年国勢調査)、面積は2万6550 km2である[1]。州都はモプティ[2]

歴史[編集]

モプティ州の人口推移
人口±%
1976年1,104,708—    
1987年1,261,383+14.2%
1998年1,405,370+11.4%
2009年2,037,330+45.0%
2022年935,579−54.1%
Source: [2][1]

モプティ州のある地域は1820年マシーナ帝国の支配下に入り、その後トゥクロール帝国の版図に加えられた。19世紀末にはフランス領となった。1960年6月7日、モプティ州が創設された[3]2023年2月22日、州東部のドゥエンツァ圏ドゥエンツァ州として、バンディアガラ圏コロ圏バンカス圏バンディアガラ州として分離し、面積が縮小した[4]

この地域は2012年以来マリ北部紛争に巻き込まれ、「マシナ解放戦線英語版」を含むさまざまな集団が活動する[5]。2016年から2017年にかけてドゴン族の民兵組織「ダ・ナ・アンバサゴウ英語版」(フランス語: Da Na Ambassagou)がドゴン高原地域を占拠した。

地理[編集]

2023年以前の2096899 モプティ州の境界 - オープンストリートマップ

マリ中央部に位置し、北をトンブクトゥ州、東をドゥエンツァ州バンディアガラ州、南をサン州、西をセグー州と接する。 ニジェール川が州の中央部を貫流しており、最大の支流であるバニ川フランス語版Bani)が州都モプティでニジェール川と合流する。セグーとクリコロの地域とともに州中央部は広大な内陸デルタ地帯となっている[6][7]。気候的には、モプティ州は全域がサヘルに属する。

2023年以前はブルキナファソと国境を接し、バンディアガラの断崖やバンカスの平原(Bankass、マリ最高峰である標高1153mオンボリ山英語版を擁していたが、それぞれドゥエンツァ州とバンディアガラ州に移管された。

2023年以前はモプティ地域には7ヵ所に密林があり、総面積は8646 ha[8]。また自然保護区としてはニジェール川沿いのグルマ・マリフランス語版ドゥエンツァ・ゾウ特別保護区フランス語版、加えてラムサール条約登録湿地としてワラド・デボとセリ平原の2ヵ所があった[8]

主要都市はモプティに加えてセヴァレフランス語版ジェンネユーワルー英語版

住民[編集]

住民はフラニ人(主に遊牧)、ドゴン人(主に農家[9]ボゾ人英語版(主に漁師)が多い[10]。他の民族はバンバラ人ソンガイ人トゥアレグムーア人が暮らす。州東部にはバンディアガラの断崖があり、ドゴン人が多く住む。

人口の推移は1998年以来203万7330人に達した2009年まで38%増加し、全国の年間平均増加率は3.0%に相当する。ドゥエンツァ圏の人口増加が最も著しく(+59%)、ともに40%増のモプティ圏バンディアガラ圏が続く[注 1]。2023年にドゥエンツァ圏とバンディアガラ圏が分離したことで、人口は100万人を下回る94万人まで減少した[1]

文化[編集]

民族が調和して暮らす文化のるつぼであり、公用語のフランス語とアラビア語に加えて使われる言語にボソ語英語版ドゴン語フラニ語タマシェク語ムーア語ソンガイ語英語版バンガラ語英語版がある。

ジェンネ市街は、ユネスコ世界遺産の一覧に登録された。

交通機関[編集]

モプティ・セヴァレ空港(モプティ)

モプティには空港がある。交通の大動脈ニジェール川に開いた川港は物流のハブであり[11]、増水期には西のクリコロセグー、東のトンブクトゥガオまで船が就航する。

産業[編集]

この地域は灌漑農業が盛んで、ニジェール川の漁業や内陸デルタの稲作[12]も行われている。

観光地としては、世界遺産であるジェンネ泥のモスクなどがあり、世界中から観光客が訪れる。

行政区画[編集]

2023年以前のモプティ州の圏(英語)。上段左と右:ユーワルー圏ドゥエンツァ圏。中段左から:テネンクー圏モプティ圏バンディアガラ圏コロ圏。下段左と右:ジェンネ圏バンカス圏

2023年2月以降、モプティ州は8つの圏(Circle)に分かれている[4]。圏の下は34郡[4]、50コミューン、785村・フラクスィオン・カルティエの順に細分化されている[13]

  1. モプティ圏(Mopti)
  2. ジェンネ圏(Djenné)
  3. テネンクー圏(Ténenkou)
  4. ユーワルー圏(Youwarou)
  5. コンナ圏(Konna)
  6. コリヤンゼ圏(Korientzé)
  7. ソファラ圏(Sofara)
  8. トゴレ=クンベ圏(Toguéré-Coumbé)

2023年以前は以下の8圏に分かれていた。

  1. バンディアガラ圏 --- バンディアガラ
  2. バンカス圏 --- バンカス英語版
  3. ジェンネ圏 --- ジェンネ
  4. ドゥエンツァ圏 --- ドゥエンツァオンボリ英語版
  5. コロ圏 --- コロ英語版
  6. モプティ圏 --- モプティセーヴァレー英語版コンナ英語版
  7. テネンクー圏 --- テネンクー英語版
  8. ユーワルー圏 --- ユーワルー英語版

分散型協定[編集]

州政府はフランス本土のイル=エ=ヴィレーヌ県議会と1984以来、行政に関する提携関係を維持してきた。サントル=ヴァル・ド・ロワール地域圏(フランス)とは2005に分散型提携協定を取り交わし、その一環の協力事業として「ロワール川-ニジェール川プロジェクト」を立ち上げた。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

[編集]

  1. ^ 一般人口および住宅、2009年国勢調査の暫定結果。

出典[編集]

  1. ^ a b c Mali: Regions & Cities”. Citypopulation (2024年3月1日). 2024年6月12日閲覧。
  2. ^ a b Regions of Mali”. Statoids (2016年1月25日). 2024年6月12日閲覧。
  3. ^ RÉGIONS ET CERCLES DU MALI: 60 ANS DE DÉCOUPAGE”. Bamada.net (2018年11月15日). 2024年4月24日閲覧。
  4. ^ a b c Mali. Document sur le nouveau découpage administratif février 2023”. Malinews tv (2023年2月22日). 2024年6月5日閲覧。
  5. ^ Les violences récentes dans le centre du Mali : le Hayré serait-il en passe de redevenir un « no man’s land » ? [マリ中部での最近の暴力:ヘイレは再び「無人地帯」になりつつあるのか?]” (フランス語). CTD. 2023年6月24日閲覧。
  6. ^ Thiam, Adam (2017-03). “Centre du Mali : enjeux et dangers d'une crise négligée [マリ中心部: 放置された危機の課題と危険”] (pdf). Rapport du Centre pour le dialogue humanitaire. https://sahelresearch.africa.ufl.edu/files/Centre20HD20-20Etude20sur20le20Centre20du20Mali20-20mars202017.pdf. 掲載誌の仮題は『人道対話センター報告』。
  7. ^ Thiam, Adam; Centre pour le dialogue Humanutaire (2017年3月). “Centre du Mali: enjeux et Dangers d’une crise négligée”. www.afrique-gouvernance.net. 2023年6月24日閲覧。
  8. ^ a b Forêts classés de Youwarou, Bia, Enghuem, Fara-fara, Diondo, Ouméri, Sébi. République du Mali, Ministère de l’Environnement, Direction nationale de la conservation de la nature, Rapport annuel d’activités 2007, Bamako, janvier 2008, annexe 1 [森林の格付け。ユーワルー圏、ビア、エングエム、ファラファラ、ディオンド、オメリ、セビ。『2007年年次活動報告書』付録1、バマコ:マリ共和国環境省国立自然保護局、2008年1月。]
  9. ^ Folch、大澤 2012, p. 283, 「ドゴン族」
  10. ^ Masters of the land [現地の達人]” (英語). The Broker. 2020年11月20日閲覧。
  11. ^ 家島 2017, p. 353, 「写真7 ニジェール川中流の河港モプティに集められたサハラ岩塩
  12. ^ 山崎 2006, pp. 205–247
  13. ^ BRÈVESORGANISATION ADMINISTRATIVE DU TERRITOIRE MALIEN : 19 RÉGIONS, UN DISTRICT, 156 CERCLES, 807 COMMUNES…”. Maliactu.net (2022年7月1日). 2024年6月11日閲覧。

参考文献[編集]

主な執筆者順。

  • 家島彦一イブン・バットゥータと境域への旅 : 『大旅行記』をめぐる新研究』名古屋大学出版会、2017年。 
  • Folch, Ramon 編、大澤雅彦 総監訳『サバンナ』朝倉書店〈世界自然環境大百科 3〉、2012年。全国書誌番号:22063651 原題『Savannahs』〈ENCYCLOPEDIA OF THE BIOSPHERE Humans in the World's Ecosystems 〉
  • 山崎亮一(著)、酪農学園大学、酪農学園大学短期大学部(編)「ニジェール河内陸デルタにおける農家経済の自給的性格とその変容--マリ国モプティ県の水稲作村を対象とした事例分析」『酪農学園大学紀要. 人文・社会科学編』第30巻(2) (通号 53)、酪農学園大学江別、2006年4月、205-247頁、ISSN 0388-0028