真夜中の戦士

真夜中の戦士』(まよなかのせんし)は、永井豪による日本漫画作品。

概要[編集]

元々は『週刊少年ジャンプ』(集英社)1974年17号に愛読者賞作品として掲載された短編であったが、後に大幅に加筆の上『週刊少年マガジン』(講談社)1981年39号から1982年45号にて連載された。

短編は筒井康隆から高く評価され、筒井によるアンソロジー『'74日本SFベスト集成』にも収録されている。

短編のあらすじ[編集]

火鳥ジュンが目覚めると、そこは戦場だった。

孤島の端のトーチカにはジュンを含めて11人の戦士がいて、トーチカの外には9台の小型戦闘用ロボットがいた。11人といってもまともな姿のものはジュンを含め男女2人ずつ。他は頭部が獅子、馬、竜であったり、頭に巨大な角を持っていたり、巨大なミサイルを背負っていたり。また、ジュン以外は自分の名前の記憶すらなかった。周囲の状況や、獅子の頭部を持つ1人の戦士が手の中に「FIGHT」と書かれた紙を持っていたことと、拳銃にミサイルなど装備に極端な差があるものの武器を持っていたことから、ここが戦場で、自分たちがこれから孤島の反対側にあるもう1つのトーチカと戦わされることは分かったが、戦いの理由も目的も分からないままであった。互いに不安を抱きながら、ジュンは自分と同じ衣装と剣を持つ少女と惹かれ合っていった。

何一つ疑問は解決しないまま、否応なしに戦闘が始まった。

紙を持っていたことから獅子の頭部を持つ戦士がリーダーとなり、戦闘指示を行う。指示の中には瞬間移動して攻撃するなど、指示された本人が隠していた能力もあったが、獅子の頭部を持つ戦士すらも「頭の中に浮かんだ」と理由は判らないままだった。戦っている相手も、自分たちと同様の武器、布陣であり、戦いは熾烈を極めた。

そんな中、ジュンと少女は「自分たちは産まれたばかりのロボットで、記憶など最初から無かったのではないか?」という疑問を抱く。事実、戦場で倒された敵味方の戦士の死体からは機械の部品が見えていた。パニックを起こす少女をジュンは抱きしめ、戦争が終わったら一緒に暮らすことを提案する。しかし、不意をつかれた少女は致命傷を負い、身体の中からは歯車やネジが飛び出し、黒いオイルが流れ出るのだった。視力を失った少女はジュンに自分の血は何色かとたずね、ジュンが真っ赤な熱い血だと答える。少女は安堵の表情で息を引き取った。

ジュンは敵の本陣めがけて吶喊。ついには相手の獅子の頭をした指揮官を倒した。その指揮官はジュンに自分たちの戦いが何だったのか問いかけた。相手も、この戦いの目的と意味を知らなかったのだ。

敵も味方も全滅し、戦場に1人残ったジュンの前に突如として地下室への入り口が開いた。

地下には巨大な研究施設があり、そこにはジュンと同じ顔をした人間がいた。人間のジュンは戦争の目的を語る。自分は科学者であり、アンドロイドによる将棋、戦争ドラマを楽しみたかったのだ。よりドラマチックにするために、感情移入するために自分と同じ外見のアンドロイドを作り、恋愛感情すらプログラミングした。戦争のスリル、サスペンス、虚しさ、そして戦場での恋と喪失。素晴らしい出来であった、と。

ジュンは剣を振りかざし、人間のジュンを斬った。人間のジュンは「戦争の素晴らしさ」を体験させてやったのにと、この仕打ちが理解できなかった。アンドロイドのジュンは「将棋のにされた者の気持ちがわかるか」と絶叫する。

第1部第2章のあらすじ[編集]

アンドロイド管理局に回収されたジュンは調査を受け、身体能力は高いものの通常のアンドロイド、人間に危害を加えることのできるよう特別に細工されたアンドロイドではないことが判明する。アンドロイド管理局局長マリオ・バラードはジュンを解体処分するという意見を退け、ジュンをアンドロイド同士が殺し合いをするデオノン・コロシアムに送り込んだ。

時は29世紀。人間同士の戦いは無くなっていたが、その代わりに人間はアンドロイドを狩りの対象としたり、アンドロイド同士に殺し合いをさせその模様を見ることが娯楽となっていた。マリオ・バラードはジュンを利用し、アンドロイドに反乱を起こさせ、それを機に世界からアンドロイドを一掃することを目論んでいた。

マリオの思惑通り、ジュンとコロシアムのアンドロイド剣士たちは人間に反抗することを決め、荒野に隠れ住んでいた逃亡アンドロイドたちもジュンに呼応し仲間のアンドロイドの遺体から作ったミサイル「ファイアーバード」(アンドロイド・火鳥ジュンの名に因む)をデオノン・コロシアムのあるドーム都市に撃ち込んだ。

かくして、アンドロイドと人間との間の戦争が始まる。

以下、未完。

書籍情報[編集]

関連[編集]

  • 不条理日記』 - 吾妻ひでおの漫画作品。多くのSF作品のパロディを含むが、「転生篇」において本作がネタにされている。ただし、こちらは将棋の駒ではなく、麻雀