松日橋

松日橋まつびばし


上流右岸側から見る松日橋(2023年6月撮影)

地図
基本情報
日本の旗 日本
所在地 岩手県気仙郡住田町あざ高瀬
交差物件 気仙川
用途 歩道橋
管理者 松日橋受益者組合
竣工 1698年以前
座標 北緯39度10分52.9秒 東経141度33分2.8秒 / 北緯39.181361度 東経141.550778度 / 39.181361; 141.550778座標: 北緯39度10分52.9秒 東経141度33分2.8秒 / 北緯39.181361度 東経141.550778度 / 39.181361; 141.550778
構造諸元
形式 桁橋
材料 スギ、クルミ、クリ
全長 約40 m
約50 cm
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
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松日橋(まつびばし)は、岩手県気仙郡住田町下有住しもありすあざ高瀬にある、気仙川に架かる約40メートルの木製のである。洪水時には橋全体が分解して流されるようになっており、ワイヤーロープで繋いでおいた部材を回収して復旧される流れ橋である。

概要[編集]

松日橋を右岸側から撮影
橋脚の構造。
叉股ざまざに横木を組み合わせる。

橋名の「松日」は、橋のたもとの集落の名称から採られている[1]。かつては左岸側の松日集落から右岸側(現在の中山地区)にある田畑に渡るために用いられた。1698年元禄11年)作製の絵図に描かれた両岸の土地利用の様子から、当時すでに橋が存在したと考えられている[注 1]。現在は橋の右岸側(国道340号側)に下有住しもありす地区支援委員会が設置した説明板が設置されている[2]

松日橋は流れ橋構造の木橋であり、洪水の時には流れに抵抗せず橋全体が分解し、部材が損傷を受けずに流される作りとなっている。特に7基ある橋脚は特徴的で、地元で叉股(ざまざ)と呼ばれる、二股に分かれたクルミやクリの太い枝の二股側を微妙に角度をつけて河床に差し込んで向かい合わせたものを一対とし、そこに横木をかけて1基の橋脚としており、それに交差して橋板[注 2]の重みを乗せて設置することで水圧によって安定し、通常の川の流れでは流出しない状態を生みだしている。また、橋脚や橋板といった部材それぞれは強い固定を施されていないが、ワイヤーロープや針金で川岸の樹木に繋がれており、流された際にも部材の回収が可能になっている[4][2]

地元住民が管理する住田町の木製橋は減少しており[注 3]、流されたあとの復旧作業には一般人の参加も歓迎している[注 4]。作業終了後には交流会を催すなど伝統継承への取り組みも見られる[10][3]

2018年(平成30年)10月、台風24号の影響で橋が流された際には、橋の部材をワイヤーでくくりつけていた川岸のクルミの木までなぎ倒される被害を受けたが、クラウドファンディングで橋の復旧費を募り[11]、目標金額30万円を達成して復旧された[12][3]

2019年(令和元年)にWOWOWの「連続ドラマW」枠で放送された有村架純坂口健太郎主演作品『そして、生きる』の最終話のロケ地となった[13]。ドラマ版を再編集して公開された映画『劇場版 そして、生きる』にも登場している。

2024年(令和6年)3月末の大雨で約2年半ぶりに流され[注 5]、翌月13日に架けなおし作業がおこわれて復旧した[5][6]。これまで橋は1年間に少なくとも1・2回は流出しており[注 6]、松日橋受益者組合の金野純一組合長は「ここまで長い間流されなかったのは記憶にない」と述べた[5]

諸元[編集]

  • 形式 – 桁橋
  • 橋長 – 約40メートル
  • 幅 – 約50センチメートル
  • 用途 – 歩道橋
  • 使用材料 – スギ(橋桁)、クルミクリ(橋脚)

交通アクセス[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 現地説明板「松日橋」(下有住しもありす地区支援委員会)によれば、元禄絵図(1698年)に橋そものは描かれていないが、左岸の松日側に集落と街道、右岸の中山側に水田が描かれており、集落と水田を往来する橋が存在したことを推定できるという。(現地説明版は、福岡大学木橋資料館ウェブサイトにも写真がある[1]。)
  2. ^ 橋板(橋桁)は杉材で、1枚あたり長さ約11メートル、幅30-45センチメートル、厚さ約12センチメートル、耐用年数は7年から10年という[3]。これを4枚連ねて両岸をつなぐ。
  3. ^ 過去には下有住地区だけで7本の木橋があったという[5][6]
  4. ^ 2016年(平成28年)9月下旬の松日橋の復旧作業に参加したブログ記事がある[7]。叉股(ざまざ)と橋板で橋のバランスをとる様子が活写されており、橋の構造を理解できる。同年8月に流された直後の松日橋の様子も写真で記録しており、橋の部材がワイヤーで岸に繋がれている様子を確認できる[8]。また、川から見上げた珍しいアングルの松日橋も写真で紹介しており、橋板が橋脚の横木の上に乗せられている様子を確認できる[9]
  5. ^ 流出は2024年3月29日[14]。直前の橋の流出は2021年(令和3年)11月[15]
  6. ^ 2021年(令和3年)には1年間に6回流されたという[15]

出典[編集]

  1. ^ a b 松日橋”. 木橋資料館. 福岡大学工学部社会デザイン学科. 2023年5月5日閲覧。
  2. ^ a b 牧村あきこ (2021年9月18日). “ザマザが支える伝統の流れ橋「松日橋」 岩手県住田町の橋【2】”. 牧村あきこの「探検ウォークしてみない?」 廃線とダムと湿地とわたし. 2023年5月5日閲覧。
  3. ^ a b c 松日橋受益者組合 金野純一 (2018年10月1日). “伝統の架け橋を守りたい!〜住田町「松日橋」架け替えプロジェクト〜”. いしわり : 岩手をもっとおもしろく!岩手発のクラウドファンディング. 特定非営利活動法人 wiz. 2023年5月5日閲覧。
  4. ^ 渡辺 浩, 竹下孝一郎, 森竹 巧「災害時に応急的に利用する小規模木製仮橋の検討」『構造工学論文集 A』、公益社団法人土木学会、2016年、1321-1322頁、doi:10.11532/structcivil.62A.1316 
  5. ^ a b c 3年ぶりの復旧作業 下有住の松日橋 住民らが力合わせる」『Web東海新報』東海新報社、2024年4月14日、6面。2024年4月18日閲覧。
  6. ^ a b IBC岩手放送 (2024年4月16日). “「設計図はないから、この掛け声だけが設計図なんです」 大雨で壊れても組み立て直してまた使える「流れ橋」 岩手・住田町で住民による架け替え作業”. TBS NEWS DIG. 2024年4月18日閲覧。
  7. ^ iRyota25 (2016年10月5日). “【気仙川・松日橋】橋をかける。何度でもかける by iRyota25”. potaru(ぽたる). 2023年6月11日閲覧。
  8. ^ iRyota25 (2016年10月5日). “【気仙川・松日橋】流れ橋が流される by iRyota25”. potaru(ぽたる). 2023年6月11日閲覧。 ※2016年8月17日、18日撮影にされた松日橋の様子
  9. ^ iRyota25 (2016年10月5日). “【気仙川・松日橋】盛夏の川の風景 by iRyota25”. potaru(ぽたる). 2023年6月11日閲覧。
  10. ^ 「松日橋」に関心を、29日午前9時から復旧作業」『Web東海新報』、2018年4月26日。2018年10月14日閲覧。
  11. ^ 木製の橋板 新調へ、松日橋受益者組合がクラウドファンディングに挑戦/住田」『Web東海新報』、2018年10月4日。2023年5月5日閲覧。
  12. ^ 8年ぶりに橋板新調、下有住・松日橋復旧作業/住田(別写真あり)」『Web東海新報』、2018年11月4日、7面。2023年5月5日閲覧。
  13. ^ WOWOW「プラージュ」 [@drama_wowow] (2019年9月18日). "そして、生きる。最終話のロケ地となった、岩手県気仙郡住田町。". Instagramより2023年5月5日閲覧
  14. ^ 松日橋管理組合(気仙川に架かる手づくりの橋) [@matsubibashi] (2024年3月30日). "一昨日からの雨で昨日流されてしまった松日橋". X(旧Twitter)より2024年4月18日閲覧
  15. ^ a b 松日橋管理組合(気仙川に架かる手づくりの橋) [@matsubibashi] (2021年11月13日). "今週はじめの大雨で流されました。今年6回目になります。". X(旧Twitter)より2024年4月18日閲覧

参考文献[編集]

外部リンク[編集]