少女少年0話

少女少年0話」(しょうじょしょうねんゼロわ)は、やぶうち優による日本女装漫画作品。1990年に漫画同人誌『MemoryMaker Vol.2』に掲載された。 商業誌では2006年に小学館から発行された『やぶうち優ファンBOOK やぶうち優の♀♂(おんなのこ おとこのこ)なお話』に収録された。「~0話」のタイトルはこの時に便宜的に付けられたもので、初出時には付いていない。

1997年度の小学館の学年別学習雑誌『小学六年生』に連載された『少女少年』(以下、『少女少年I』と記述)の原型となった作品で、設定の大筋は『少女少年I』に酷似している。

概要[編集]

本作は当初、小学館の少女漫画雑誌『ちゃお』で中学2年生でプロデビューしたやぶうちが大学受験時代(1987年 - 1988年頃)に、「(大学に)合格してお仕事再開したあかつきに……『ちゃお』で連載させてもらおう」と構想していたものだった。しかし、やぶうちが受験に失敗して1年間の浪人生活を余儀なくされた上に、その間に『ちゃお』編集部が男の子の主人公を認めなくなるという方針転換も重なり、以後9年間、やぶうちが構想していた『少女少年』は「お蔵入り」になったという[1]

作品設定は『少女少年I』と非常によく似ている。ただし、小学館の学習雑誌・『小学六年生』に連載された『少女少年I』では主人公やヒロインたちの学年設定が小学6年生となっているのに対し、本作の主人公やヒロインは、やぶうちがプロの漫画家としてデビューしたのと同じ中学2年生に設定されている。

その他、『少女少年I』での紗夜香の役どころに相当する亀山は、プロの芸能人ではなくアマチュアバンドのメンバーで、「村崎役」の曲(まがり)の姪という設定。

また、晶に相当する大山千里は「女装が趣味」と公言し、中学校の文化祭では本名で「ミス一中」に選出されて大勢の生徒の前で女装姿でその歌声を披露している。ただし、小川ちさとの芸名でアイドルデビュー後もクラスメート・鶴村がその正体に気づかないなど、作品設定に無理があり、この「女装が趣味」の設定は『少女少年I』では採用されていない。

登場人物[編集]

大山千里(小川ちさと)
一中2年B組。14歳。女装が趣味で、(自称)スポーツ万能。成績は「中の下」。『少女少年I』の水城晶(白川みずき)の原型となった。
中学校の文化祭でロングヘアかつらを付けた姿で女装して「ミス一中」に選出され、その歌声を披露していたところを、芸能プロの曲(まがり)に見い出され、女の子アイドル・小川ちさととしてデビュー。トントン拍子で「超売れてる人気アイドル」となる。
曲(後述)によればルックス・歌唱力は半端ではなく、声はボーイソプラノのような透明感と天使の様なイメージを持つという。
鶴村
一中2年B組。大山千里のクラスメートの女子。『少女少年I』の赤沢智恵子の原型キャラクター。アイドルは嫌いなのに、なぜか小川ちさとは好きだという。小川ちさとの正体には気づいていない模様。
清水みるく
アイドル少女。『少女少年I』の青野るりの原型キャラクター。「小川ちさと」の正体を知るが、性格が内気なので秘密は守っている。大山千里に好意を持っているらしい。本作ヒロインの中で唯一フルネームが明らかになっている。
亀山
一中2年B組。大山千里のクラスメートの女子。『少女少年I』の黒木紗夜香の原型キャラクター。芸能プロの曲(後述)の姪で、自分のやっているバンドを見てもらうために曲を文化祭に呼んだ。大山千里=小川ちさとをマークしている。
曲(まがり)
サングラスをかけた芸能プロ。『少女少年』シリーズの村崎ツトムの原型キャラクター。姪の亀山に呼ばれて一中の文化祭に顔を出し、そこで女装姿の大山千里をスカウトする。自分は男だと正体を明かした千里に強引に、女装をしてアイドルになるように言い、訳が分からないうちにデビューさせた。作者によると「大人の男性を描くのが苦手なやぶうちが、一生懸命考えた大人の記号の集大成」(スーツ・ネクタイ・サングラス・いつもくたびれ乱れているため判りにくい七三分けの髪型など)[2]

脚注[編集]

  1. ^ てんとう虫コミックススペシャル『少女少年』188~189ページの「『少女少年』について」を参照。
  2. ^ ちゃおコミックススペシャル『やぶうち優ファンBOOK やぶうち優の♀♂(おんなのこ おとこのこ)なお話』96ページを参照。

参考文献[編集]

  • やぶうち優『やぶうち優ファンBOOK やぶうち優の♀♂(おんなのこ おとこのこ)なお話』 小学館 ちゃおコミックススペシャル ISBN 4-09-130397-8
  • やぶうち優『少女少年』 小学館 てんとう虫コミックススペシャル ISBN 4-09-149381-5

関連項目[編集]

外部リンク[編集]