今治ラヂウム温泉

今治ラヂウム温泉
当施設の外観(北東側より撮影)
所在地 愛媛県今治市共栄町4丁目2-9
座標 北緯34度04分11.7秒 東経132度59分54.8秒 / 北緯34.069917度 東経132.998556度 / 34.069917; 132.998556座標: 北緯34度04分11.7秒 東経132度59分54.8秒 / 北緯34.069917度 東経132.998556度 / 34.069917; 132.998556
交通 JR予讃線今治駅」より徒歩約13分(#交通も参照)
開業 1919年大正8年)[1][2][注 1]
湯の特徴 ボイラーによる沸かし湯
特記事項 2014年平成26年)3月末より浴場を休業し、当施設は閉館中
外部リンク 公式フェイスブック
建物の特徴
建築年 1919年(大正8年)建築[1][2]
1967年昭和42年)建物3階部分増築
1988年(昭和63年)近代型銭湯に改築
建築構造・様式 <オリジナル建築>
鉄筋コンクリート造2階建て(塔屋および煙突あり)[3][4][5]
<増築部分>
増築された3階部分は鉄筋コンクリート造と屋根裏鉄骨トラス構造による混構造[4]
文化財の指定等 国の登録有形文化財
2016年登録)
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今治ラヂウム温泉(いまばりラヂウムおんせん)は、愛媛県今治市にある公衆浴場施設。施設の本館(オリジナル建築)が国の登録有形文化財に登録されている[3]

2014年平成26年)3月末より浴場は休業、現在は閉館となっている。

歴史[編集]

町のシンボル、娯楽場として開業

瀬戸内海大島出身の実業家・村上寛造(むらかみ かんぞう)[注 2]が設立。

村上は1919年大正8年)「共楽館」の名称で、常設映画館と「ラヂウム温泉」を設立創業[1][2][注 1]して、1923年(大正12年)頃までには一帯に「京町歓楽街[注 3]を形成[4][5][6][7]。京町一帯(現在の共栄町3丁目、4丁目)の土地開発と店舗住宅の建設を進め、1924年(大正13年)「京町住宅株式会社」を設立。さらに1933年昭和8年)常設映画館「第二共楽館」を開設。

1920年(大正9年)の今治市地方都市誕生[注 4]に併せて、町の中心に歓楽街をつくるため、娯楽の場として地域のシンボルかつ象徴的なランドマークが誕生する。

戦中の役割の変化

この辺りで頑丈な鉄筋コンクリート造の建物は当時珍しく、太平洋戦争期の1942年(昭和17年)頃には越智郡郷土防衛隊の本部が設置される[4][5][8][注 5]1945年(昭和20年)の今治空襲では市内の8割が焼失したが、奇跡的に戦火を免れ[4][5][6][8][9][注 6]、空襲直後は病院銀行などが集まる地域インフラの拠点(2階大ホール部分)となる[6][8]

戦後の増改築と休業、文化財登録へ

1951年(昭和26年)「株式会社ラヂウム温泉」を設立。1967年(昭和42年)に建物の3階部分を増築し、「ホテル青雲閣」を開業[5]。さらに1988年(昭和63年)、サウナ風呂やスチームバスなど13種類の様々な風呂を取り入れた近代型銭湯に改築する[11][12]

2014年(平成26年)3月末、浴場を休業[4][9][11][13]。約2年半後の2016年(平成28年)11月29日に国の登録有形文化財に登録され[3]、以降も建物はそのままの姿で残されている。

建物・内装の特徴[編集]

階段入口壁面のマーブル技法
浴場から2階ホールに続いてた階段の一部

1919年大正8年)建造、鉄筋コンクリート造の本体中央に多角形を重ねたを持ち、背面には2つの白いドームを配し、中央にレンガ煙突が立つ。建築当初は映画館ダンスホールなどを備えた娯楽場であった[14]。当初の建物(オリジナル建築)は三角屋根の3階部分がなく、鉄筋コンクリート造の2階建て(建物上部には下記の塔屋があり)であった[3]。背後の八角形ドームは男女浴室(計2つ)となっており、建物上部には五角形六角形平面を重ねた塔屋があるなど独特な形状の意匠が随所に見られる[8][11][15]。建物内部は、や幅木などのモルタル壁面に「マーブル技法」という大理石様の左官仕上げが施されており[注 7]、2階ホールにある階段入口[注 8]や脱衣場の壁面などで確認できる[4][5][7]

設計など建築に関する当時の資料が乏しいこともあり、建築家などの詳細は現状では明らかになっていない。一部ではオランダ近代建築の父・ベルラーヘの建築手法との類似性が指摘されている[5][7][注 9]

1967年(昭和42年)には三角屋根の建物3階部分を増築[注 10]。さらに1988年(昭和63年)には前述のとおり近代型銭湯として改築された[11][12]。この時に浴場玄関付近の構造(外壁の位置含む)が昔ながらの番台からフロント式に変更となった[7]

当施設の設立時期については閉館後に発見された様々な資料により明らかになっているものの、建築家に関する情報や建物の構造など一部未解明の部分が残されているため、今後も新たな資料の発見と知見、それらを基にした研究の進展が待たれている[5][16]

当施設の外観
塔屋と煙突

※イベント開催時(2017年8月)

併設施設[編集]

2階大ホール
2階:大ホール

2階部分(大ホール)は当初、演劇演芸ダンスホールなど娯楽の場として利用されていたが、戦中は郷土防衛隊の本部、空襲直後は病院や銀行などが集まる地域インフラの拠点となる。平成に入るとクラシックバレエ教室として使用されていた(同教室は浴場の休業後も2016年夏まで継続)[4][6]

3階:ホテル青雲閣

1967年(昭和42年)に増築された3階部分には宿泊施設として「ホテル青雲閣」を開設、現在は浴場と同じく休業中である[9][13]

最新情報[編集]

建物公開の見学イベント等を期間限定で開催。最新情報やイベントの告知などは公式フェイスブックおよび公式サイトを参照のこと。

所在地[編集]

愛媛県今治市共栄町4丁目2番9号

交通[編集]

鉄道
自動車

ギャラリー[編集]

現在は閉館のため、見学会などの建物公開時を除き非公開としている。

浴場玄関〜フロント、脱衣場
浴室

※イベント開催時(2017年8月)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b もともと1927年(昭和2年)の設立と考えられており(市の課税台帳記載年)、文化庁にも登録有形文化財に係る申請をする際に同年の設立で届出を出しているが[3]、その後に発見された複数の資料により設立年が1919年(大正8年)まで遡ることが明らかとなった[1][2]。なお、常設映画館と当施設の2棟はもともと同じ土地内にあり「共楽館」の一部であったが、1926年(大正15年)の道路改築で両施設の間に道路が通り土地が分筆されたことから、1927年(昭和2年)に当施設の名称を「ラヂウム温泉」と命名したことが分かっている[1][2]
  2. ^ 村上水軍・能島村上家の流れを汲む。材木商を営み財を成した[4][5][6]
  3. ^ 原が広がるこの地を1904年明治37年)頃より開発した村上が父親(京造)の名前の一字を取り「京町」と名付け、歓楽街を形成した[4][5]。正式な町名としても使用されていたが、1968年(昭和43年)の町名大改正で現在の共栄町となった。
  4. ^ 同年、今治町日吉村合併して今治市が誕生(市制施行)した。
  5. ^ 建物内の階段踊り場には、現在でも当時使われていた無線機類が残る[4][5][6][7]
  6. ^ その理由について、上空から宗教施設に見えたため爆撃対象から外れた[9][10]など諸説ある。
  7. ^ ただし、現在はペンキで塗りつぶされてしまっている箇所もある。
  8. ^ 2階ホールから上層階のホテルなどに向かう階段。
  9. ^ 浴室の八角形ドームの周囲に角のような突起や玄関上部のに見られるエリマキトカゲのようなギザギザ、さらに建物内部では柱との接続部の傾斜(ハンチ)、柱の角を削り取った面取りを途中で止める手法などに類似性が見られる。なお、創業者一族の村上家には、当施設の建物をオランダ人が造ったとする伝承も残っている[5]
  10. ^ この3階部分は上記のオリジナル建築の上にそのまま被せて増築したと考えられており、庇に見られるギザギザ形状の大部分など現在は隠れてしまっている増築以前に確認できた構造物[5]についても、内部的にはそのまま残されている可能性がある。一方、本館2階の大ホール(旧ダンスホール)部分にはかつて「喫茶ブルースカイ」を営業していた建物(増築棟)の階段から現在上がることができるが、増築以前にあった本館1階の浴場施設から2階ホールに続く階段は現状なくなっており、喫茶店の裏から当時の階段の一部とみられる構造物は発見されているものの本館1階部分にはその痕跡が残されていないため、本来の階段の設置場所や構造がどうなっていたかなど詳細は明らかになっていない[7]
  11. ^ せり出している丸みを帯びた構造物の内部に、かつて浴場から2階ホールに続いてたと思われる階段(前述)の一部が収まっている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 今治ラヂウム温泉、創業家調査「大正8年築」特定愛媛新聞ONLINE 2017年11月24日〈E4限定記事〉/ 愛媛新聞 2017年11月24日付掲載)
  2. ^ a b c d e "国登録有形文化財「今治ラヂウム温泉本館」大正8年創業建築年の公式発表について"(株式会社ラヂウム温泉 2017年11月26日)
  3. ^ a b c d e 今治ラヂウム温泉本館(文化遺産オンライン:データベース/文化庁)
  4. ^ a b c d e f g h i j k 「東予の誇れる産業遺産」ガイドブック, pp. 41–42.
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m “MY TOWN”うぉっちんぐ:歩キ目デス&足ラテス Vol.79「今治ラヂウム温泉の不思議〈今治市〉」 (PDF) (岡崎直司, 公益財団法人えひめ地域政策研究センター 「舞たうん」第132号〈2017年4月〉)
  6. ^ a b c d e f [月曜訪問]今治ラヂウム温泉本館(愛媛新聞ONLINE 2017年9月4日〈E4限定記事〉/週刊愛媛経済レポート 2017年9月11日号掲載)
  7. ^ a b c d e f 弾丸今治 もくじ > ラヂウム温泉の中へ入る! その1/その2(まちかど逍遥 2017年8月16日)
  8. ^ a b c d 文化審答申 水口酒造店舗兼主屋と今治ラヂウム温泉本館、2件を登録有形文化財に /愛媛毎日新聞 2016年8月24日地方版)
  9. ^ a b c d e 今治ラヂウム温泉(愛媛県今治市) - 唯一戦災を免れた奇跡のレトロモダン戦前建築(新日本DEEP案内 2013年9月2日)
  10. ^ 戦前建築「今治ラヂウム温泉」が国の有形文化財に登録(ゲストハウス「シクロの家」ブログ 2016年7月21日)
  11. ^ a b c d 戦前から残る愛媛・今治の温泉建物 国の有形文化財に 浴室天井は八角形ドーム産経WEST 2016年7月16日)
  12. ^ a b 今治ラヂウム温泉(人生の午後三時 2017年5月27日)
  13. ^ a b 今治ラヂウム温泉(休業中・愛媛県今治市)(銭湯・奥の細道 2014年1月6日)
  14. ^ https://ehime-unique-venue.jp/vne_detail/21?fbclid=IwAR0GYkcGQFcKNJ-G04IR2J8H5vGGPfztU1eHLiW30-7Ju7eKPjsq7QmXXRQ”. Unique Venues in EHIME 愛媛県観光スポーツ文化部文化局 文化振興課. 2023年6月23日閲覧。
  15. ^ 水口酒造文化財に 今治ラヂウム温泉も 文化審答申(愛媛新聞ONLINE 2016年7月16日)
  16. ^ 戦禍を生き延びたカオス建築・今治ラヂウム温泉【愛媛県今治市】(Tadaoh! Design 2017年2月20日)

参考資料・文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]