ナガスクジラ属

ナガスクジラ属
ナガスクジラ
ナガスクジラ Balaenoptera physalus
地質時代
中新世後期 - 完新世現代
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : 鯨類 Cetacea
小目 : ヒゲクジラ小目 Mysticeti
: ナガスクジラ科 Balaenopteridae
: ナガスクジラ属 Balaenoptera
学名
Balaenoptera
Lacépède1804[1]
模式種
Balaenoptera gibbar Lacépède, 1804
(= Balaena physalus Linnaeus, 1758)[1]
和名
ナガスクジラ属[2]
本文参照

ナガスクジラ属(ナガスクジラぞく、Balaenoptera)は、ヒゲクジラ類ナガスクジラ科の一つ。模式種はナガスクジラ[1]

分布[編集]

極地や一部の付属海などを除くほぼ世界中の海に生息する。

生息年代[編集]

化石記録では中新世中期のものにナガスクジラ属に属す可能性のあるものが知られているが、中新世後期以降のものが確実な記録とされる[3]。また、分子記録からは、中新世前期にコククジラザトウクジラを含めた四つの大グループの分岐がおきている(後述)[4]

系統[編集]

従来ツノシマクジラはニタリクジラと混同されていたが、2003年に新種として記載された。また、カツオクジラもニタリクジラと別種とされた[5]。2021年にはニタリクジラとされていたメキシコ湾個体群がライスクジラBalaenoptera riceiとして記載された[6][7]

以下の現生種の分類・英名は、ニタリクジラ・カツオクジラを除いてCommittee on Taxonomy (2023) に従う[8]。ニタリクジラ・カツオクジラについては田島・山田 (2021) に従って別種とした[9]。和名は、ライスクジラを除いて川田ら (2018) に従う[2]

絶滅種

  • Balaenoptera cortesii
  • Balaenoptera taiwanica

画像[編集]

分岐[編集]

ナガスクジラ属は遺伝子解析の結果から、側系統群である事が知られている。ナガスクジラ属はその内部にザトウクジラ属を内包し、またコククジラ科も含まれる可能性がある。ナガスクジラ類はコククジラ、ザトウクジラを含めて四つの系統に分岐しているが、それぞれの系統の分岐の順序は結論が出ていない。これは、調査に使用したSINE配列のうち3つが矛盾しているためである。これは、祖先多系[10]が存在し、その状態が解消される前に四つの系統がほぼ同時期に、急激に分化した事を示している。[11][12]分子時計や化石記録などから推定して、これらの分化は約1,900万年前、中新世前期バーディガリアンに起きたと推定される[4]

各系統を以下に示す[11][5]

ナガスクジラ上科

絶滅群

ナガスクジラ科+コククジラ

コククジラ

ナガスクジラ

ザトウクジラ

ミンククジラ

クロミンククジラ

シロナガスクジラ

ツノシマクジラ

カツオクジラ

ニタリクジラ

イワシクジラ

矛盾する3つのSINE配列が支持する系統[13]

  • BRY28 - ナガスクジラ系とシロナガスクジラ系が近縁
  • Sei23 - シロナガスクジラ系とミンククジラ系が近縁
  • IWA31 - シロナガスクジラ系とコククジラが近縁

脚注[編集]

  1. ^ a b c James G. Mead and Robert L. Brownell, Jr., “Order Cetacea,” In: Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 1, Johns Hopkins University Press, 2005, Pages 723-743.
  2. ^ a b 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  3. ^ 『鯨類学』 43頁
  4. ^ a b 『ありえない!? 生物進化論』 81 - 82頁
  5. ^ a b 中央水研ニュース
  6. ^ Patricia E. Rosel, Lynsey A. Wilcox, Tadasu K. Yamada & Keith D. Mullin, “A new species of baleen whale (Balaenoptera) from the Gulf of Mexico, with a review of its geographic distribution,” Marine Mammal Science, Volume 37, Issue 2, Society for Marine Mammalogy, 2021, Pages 577-610.
  7. ^ a b エリック・ホイト「ライスクジラ」『ビジュアル クジラ&イルカ大図鑑』片神貴子 訳、田島木綿子 日本語版監修、日経ナショナル ジオグラフィック、2024年、233頁。
  8. ^ Committee on Taxonomy. 2023. List of marine mammal species and subspecies. Society for Marine Mammalogy, www.marinemammalscience.org, consulted on 22 January 2024.
  9. ^ 田島木綿子・山田格 総監修「海棲哺乳類 種名表」『海棲哺乳類大全:彼らの体と生き方に迫る』緑書房、2021年、341-343頁。
  10. ^ 祖先に異なるSINE配列を持った複数のグループが存在した事。通常はこの状態は長続きせず、いずれ一つの配列パターンに落ち着く。
  11. ^ a b 雑記 - 進化・分類学 ヒゲクジラの系統も SINE 法で〆(2006.08.01)
  12. ^ 『ありえない!? 生物進化論』 76 - 81頁
  13. ^ 『ありえない!? 生物進化論』 81頁

参考文献[編集]

  • 村山司『鯨類学』東海大学出版会〈東海大学自然科学叢書〉、2008年、43頁。ISBN 978-4-486-01733-2 
  • 北村雄一『ありえない!? 生物進化論』ソフトバンククリエイティブ〈サイエンス・アイ新書〉、2008年、76 - 82頁。ISBN 978-4-7973-4592-6