ジャンピン・ジャック・フラッシュ

ローリング・ストーンズ > ローリング・ストーンズの作品 > ジャンピン・ジャック・フラッシュ
ジャンピン・ジャック・フラッシュ
ローリング・ストーンズシングル
B面 チャイルド・オブ・ザ・ムーン
リリース
規格 7インチ・シングル
録音 1968年3月 (1968-03)
ジャンル ロック
時間
レーベル イギリスの旗 デッカ
アメリカ合衆国の旗 ロンドン
作詞・作曲 ジャガー/リチャーズ
プロデュース ジミー・ミラー
チャート最高順位
ローリング・ストーンズ シングル 年表
シーズ・ア・レインボー
(1967年)
ジャンピン・ジャック・フラッシュ
(1968年)
ストリート・ファイティング・マン
(1968年)
テンプレートを表示

ジャンピン・ジャック・フラッシュ」(Jumpin' Jack Flash) は、1968年に発表されたローリング・ストーンズの楽曲。作詞・作曲はミック・ジャガーおよびキース・リチャーズ。「サティスファクション」と並び、グループの代表曲の一つとされる。

概要[編集]

ビトウィーン・ザ・バトンズ』および『サタニック・マジェスティーズ』に見られたサイケデリック路線から一転、ストレートかつハードなロック・ナンバーで、イギリスでは「黒くぬれ!」(1966年)以来の1位(2週連続)[1]、アメリカでも3位に付ける大ヒットとなった[2]。この曲と同時期に作られたアルバム『ベガーズ・バンケット』により、ストーンズのブルージーな方向性が再確認された。また、本作はストーンズの黄金期とされる60年代後半から70年代前半までの作品を手がけたジミー・ミラーによるプロデュース作品の第一弾でもある。

元々は『ベガーズ・バンケット』の先行シングルとして1968年5月(アメリカでは6月)にシングルリリースされたが、アルバムのジャケットデザインをめぐる問題でアルバムの発売が大幅に遅れたため、同アルバムへの収録は見送られた(詳細は『ベガーズ・バンケット』の項目を参照)。シングルではモノラル・ミックスで収録されたが、このモノラル・バージョンではイントロ部でテープスピード不良によるピッチの揺れが確認できる。ステレオ・バージョンの初出は1969年リリースのベストアルバム『スルー・ザ・パスト・ダークリー』となる。

下記の通り、アレサ・フランクリンをはじめ、世界各国のアーティストからカバーされており、近年ではヒップホップ・ミュージシャンが取り上げるなど、ジャンルを超えて聴かれる機会が多くなっている。またウーピー・ゴールドバーグ主演の映画『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』(1986年公開)の主題歌として起用されたほか、日本でもフジテレビ系列のドラマ『PRICELESS〜あるわけねぇだろ、んなもん!〜』(2012年)の主題歌に起用されるなど、様々なメディア上で使用され、広く聴かれている。シングルのB面に収録された「チャイルド・オブ・ザ・ムーン」も、当時の日本のファンの間では「B面にしておくのがもったいないほどの傑作」と評価された[3]

経緯[編集]

録音は1968年3月15日から31日にかけて、一連の『ベガーズ・バンケット』セッションの中で、ロンドンオリンピック・スタジオにて行われた[4]。この曲のギターの音は一聴するとエレキギターのように聴こえるが、実際にはアコースティックギターの音である。キース・リチャーズはギブソン・ハミングバードをDまたはEのオープンチューニングに変え、フィリップス製のカセットレコーダーに録音し、これに過負荷をかけた状態で再生し、モニタースピーカーから出てきた音を使用したという。歪んだエレキギターのようなサウンドは、この様にして得られたわけである。リチャーズは「この曲と"ストリート・ファイティング・マン"では、一切エレキギターを使ってない」と語っている[5]

ビル・ワイマンは、自著「ストーン・アローン」(1990年)の中で、この曲の元となったリフは自分が作ったと告白している。ワイマンによれば、ジャガーやリチャーズがスタジオ入りする前に、一人でエレクトリックピアノを弾いていた時にこの曲のリフを偶然見つけ、後から到着したブライアン・ジョーンズチャーリー・ワッツと共に、曲を練り上げていったという。3人で演奏している時にジャガーとリチャーズが到着したが、この時ジャガーは「イカしてるじゃねえか、それ、絶対に忘れるなよ」と言ったという[6]。それから数週間後に本格的なレコーディングに入り、ジャガーが歌詞を書き、メロディはメンバー全員で完成させた。このような経緯があるにもかかわらず、この曲の作者クレジットは"ジャガー/リチャーズ"となっており、ワイマンはこのことに強い不満を表明している[7]。これに対し、ジャガー、リチャーズは揃ってワイマンの主張を否定しており、クレジットは2016年現在まで改められていない(ただし、ワイマンは「キースもこれは俺の作曲だとインタビューで認めた」としている[7])。尚、この曲のベースはリチャーズが兼任しており、ワイマンはオルガンを担当している[5]

この曲の歌詞についてジャガーは「辛い時期を経験してそこから抜け出すっていう歌だよ。アシッド関係と縁を切るってことのメタファーってわけ」と語っており[8]、その通りにこの曲でストーンズはファンに対し、復活を印象付けることが出来た。だがこのシングルの売上は、首位を獲得したにもかかわらず、イギリスでは25万枚にも達しなかった[9]。また、ジョーンズは「ジャンピン…」ではなく「チャイルド…」の方をA面にすることを望んでいたという[10]

リチャーズは「この曲や"ブラウン・シュガー"や"スタート・ミー・アップ"なんかはいつだって演ってて楽しい」とこの曲への想い入れを語っており、さらに「ステージでこの曲を演ってるのに"オラ、お前ら行くぞ!"って感じないとしたら、よっぽどふぬけた野郎だ」とも言っている[11]

ミュージック・ビデオ[編集]

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、「チャイルド・オブ・ザ・ムーン」共に、プロモーション映像が製作された。演出はマイケル・リンゼイ=ホッグが務め、「メイクアップ・バージョン」と「ノー・メイクアップ・バージョン」の2種類作られた[12][13]。これが縁でリンゼイ=ホッグは、この年の末に行われたストーンズ主催のロック・イベント「ロックンロール・サーカス」の映像監督に抜擢されることとなる。この映像の製作には2453ポンドがつぎ込まれた[14]

参加ミュージシャン[編集]

※#Aは「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」、#Bは「チャイルド・オブ・ザ・ムーン」

ローリング・ストーンズ[15]
ゲストミュージシャン[15]

コンサートパフォーマンス[編集]

「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」は、これまでのストーンズのツアー全てで演奏され続けている。初めてのライブ演奏は、1968年5月12日、ウェンブリー・エンパイア・プール(現・ウェンブリー・アリーナ)にて行われた、ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌主催のコンサートであった[16]。演奏順は大体が1曲目か最後、もしくはアンコールに披露される場合が多い。ストーンズの公式ライブアルバムには、『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト』(1970年)、『ラヴ・ユー・ライヴ』(1977年)、『フラッシュポイント (アルバム)』(1991年)、『シャイン・ア・ライト』(2008年)に、それぞれ収録されている。また、多くのコンピレーションアルバムにも収録されている。『ロックンロール・サーカス』の映像作品およびサウンドトラック盤(1996年)にも収録されている。

尚、コンサートで演奏される場合、この曲のイントロ部分(メインリフに入る前のコードストロークのパート)は、なぜかいつも省略されており、この部分を演奏したライブ音源は残されていない。公式ライブ音源で最も古い「ロックンロール・サーカス」でも、やはりこのイントロ部は省略されている。

カバー・バージョン[編集]

アレサ・フランクリンによるカバー[編集]

ジャンピン・ジャック・フラッシュ
アレサ・フランクリンシングル
初出アルバム『ジャンピン・ジャック・フラッシュ
B面 インテグリティ
リリース
規格 7インチ・シングル
12インチ・シングル
ジャンル ソウル
レーベル アリスタ・レコード
作詞・作曲 ミック・ジャガーキース・リチャーズ
プロデュース キース・リチャーズ
チャート最高順位
  • 14位(スウェーデン[17]
  • 19位(スイス[18]
  • 21位(アメリカ[19]
  • 43位(ニュージーランド[20]
  • 48位(オランダ[21]
  • 58位(イギリス[22]
テンプレートを表示

解説[編集]

映画『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』のサウンドトラックでは、ローリング・ストーンズのオリジナル・バージョンに加えてアレサ・フランクリンによる「ジャンピン・ジャック・フラッシュ」のカヴァーも使用された[23]。このカヴァーでは、キースがプロデュースを担当し[23]ロン・ウッドもレコーディングに参加した[24]B面に「インテグリティ」を収録した7インチ・シングルに加えて、この曲の5種類のミックスを収録した12インチ・シングルもリリースされた[25]

映画『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』のサウンドトラック・アルバムに加えて、フランクリンのスタジオ・アルバム『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』(1986年/原題:Aretha)にも収録されている。

その他のアーティストによるカバー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ ROLLING STONES | full Official Chart History | Official Charts Company:
  2. ^ The Rolling Stones - Chart history | Billboard:
  3. ^ シングル・コレクション (ザ・ロンドン・イヤーズ)2002年リマスターCD日本版の越谷政義による解説より
  4. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年ISBN 978-4401616541)p163
  5. ^ a b Jumpin' Jack Flash:” (英語). 2016年8月23日閲覧。
  6. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年ISBN 4-7897-0781-4)p286
  7. ^ a b 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)p287
  8. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」(株式会社ロッキング・オン2003年)p52
  9. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)p310
  10. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)p293
  11. ^ SIGHT VOL.14 特集「ロックの正義!!ストーンズ全100ページ」(株式会社ロッキング・オン、2003年)p27
  12. ^ ABKCOVEVO (2022年8月4日). “The Rolling Stones - Jumpin' Jack Flash (Official Music Video) (With Makeup)”. YouTube. 2022年8月9日閲覧。
  13. ^ ABKCOVEVO (2022年8月4日). “The Rolling Stones - Jumpin' Jack Flash (Official Music Video) (No Makeup)”. YouTube. 2022年8月9日閲覧。
  14. ^ 『ストーン・アローン/下』(ビル・ワイマン/レイ・コールマン著、野間けい子訳、ソニー・マガジンズ刊、1992年、ISBN 4-7897-0781-4)p289
  15. ^ a b The Complete Works of the Rolling Stones - Database” (英語). 2017年6月27日閲覧。
  16. ^ 『ローリングストーンズ/グッド・タイムズ・バッド・タイムズ』 (テリー・ロウリングス/アンドリュー・ネイル/キース・バッドマン著、筌尾正訳、シンコーミュージック刊、2000年、ISBN 978-4401616541)p167
  17. ^ swedishcharts.com - Aretha Franklin - Jumpin' Jack Flash
  18. ^ Aretha Franklin - Jumpin' Jack Flash - hitparade.ch
  19. ^ Aretha - Aretha Franklin | AllMusic
  20. ^ charts.org.nz - Aretha Franklin - Jumpin' Jack Flash
  21. ^ dutchcharts.nl - Aretha Franklin - Jumpin' Jack Flash
  22. ^ ARETHA FRANKLIN | Artist | Official Charts - 2015年2月22日閲覧
  23. ^ a b Jumpin' Jack Flash (1986) - Soundtracks - IMDb.com
  24. ^ 『ローリング・ストーンズ大百科』(越谷政義・著/CBSソニー出版/1986年/ISBN 4-7897-0261-8)p.72
  25. ^ Aretha Franklin - Jumpin' Jack Flash (Vinyl) at Discogs
  26. ^ Alex Chilton - 1970 (CD) at Discogs
先代
ゲイリー・パケット&ザ・ユニオン・ギャップ
「ヤング・ガール」
全英シングルチャート 1位
1968年6月19日 - 6月26日(2週)
次代
イコールズ
「ベイビー・カム・バック」