サザエさん (1956年の映画)

サザエさん
監督 青柳信雄
脚本 笠原良三
原作 長谷川町子
製作 杉原貞雄
出演者 江利チエミ
音楽 原六朗
撮影 遠藤精一
配給 東宝
公開 日本の旗 1956年12月12日
上映時間 86分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
次作 続・サザエさん
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サザエさん』は、1956年12月12日に公開された日本映画(実写版)。製作、配給は東宝モノクロスタンダード。86分。

東宝版「サザエさんシリーズ」の第1作。以後、1961年公開の『福の神 サザエさん一家』まで全10作が製作・公開されることとなる。監督は全て青柳信雄。本作では、サザエとマスオの出会いを中心に展開している。 

概要[編集]

元タカラジェンヌの東屋トン子版実写映画2部作以来6年ぶりの実写映画化。

主人公のサザエよりも東屋の所属する劇団の団長である宮城千賀子の方が売り出された前回の実写化と異なり、当時、知名度の高かった江利チエミ、松島トモ子が抜擢された豪華作品。また、本作では若手時代の仲代達矢の演技も見ることができる[1]。江利の絶大な人気により計10本制作される人気シリーズとなり、その後、同じ主演でドラマ、舞台まで制作され、サザエさんの国民的人気を高めるきっかけとなった作品。江利の溌剌とした役柄はアニメ化にも引き継がれ、後に50年以上サザエさん役を務めることとなる加藤みどりが抜擢された理由ともなった。

サザエを中心に一家の日常を描く。サザエとマスオの出会いも重要な核である。長谷川町子原作のネタが各所にふんだんに取り入れられ基本はコメディであるが、主演が人気歌手の江利チエミであったことから『サザエはジャズが大好き』との設定がなされ、劇中でたびたび歌う場面があり、音楽映画のような側面も垣間見える。また、劇中で幾度かダークダックスが登場する、彼らが歌唱する曲の中には実際に江利が歌唱した歌が含まれている。

サザエ以外のキャラクターに関しては、マスオはアニメのトレードマークのメガネをかけておらず、ダンディで、頼もしい紳士として描かれている。それゆえ恋愛ものの要素は強い。カツオは原作のような坊主ではなく、ノリスケもアニメで共通となっている小太りではなく、マスオ同様男前になっている。また、ノリスケはサザエの親友のミチコと恋愛結婚し、原作ではサザエの方が先に結婚しているので順序が逆である。原作で名前が出ていないので波平、フネの名は登場しないものの、波平のキャラクターは原作を見事に再現したものとなっている。フネは頼り甲斐のある母親として波平以上の存在感を持って映画全般を通して登場場面は多い。

ストーリー[編集]

東京のある町に、磯野という一家が住んでいた。家族は父母の元に長男・カツオ、次女・ワカメ、そしてうっかり者の長女・サザエだ。今日も今日とて、おてんばなサザエとそれを揶揄うカツオが喧嘩し、成人しても子供のような娘に呆れる母は、女らしくあれとサザエを嗜める。サザエのカツオへの仕返しに思わぬことに遭遇してしまい心臓が飛び出る思いをする父。そしておませなワカメがドタバタ劇を繰り広げる。

ある日磯野家に、新聞社勤めの親戚ノリスケ(サザエのいとこ)が下宿を申し込んだ。家族協議の末、大食に相当する下宿代で下宿を許す。ある日、磯野家に客がやってくる。サザエの父の元上司という老人だ。聾であるという彼のために、普段から大声を出すサザエを嗜めていた母共々大声で話しかけるが、なんと耳が遠いというのは彼の奥さんの方であった。意気消沈する二人に父は彼がお見合いを薦めに来たことを告げる。それを聞いてサザエは憤慨するが見合いを薦められていたのはノリスケの方であった。やがて、サザエは勝手に応募した「女性クラブ」という雑誌社に採用され、勇んで出勤するが、間違えて山高商事に出勤、たまたまその会社にいたフグ田マスオによって、「女性クラブ」へ案内され、サザエはマスオに心を惹かれる。さてサザエの初仕事は、小説家・神田大六宅への原稿取り、いざ神田宅へ上がり込んで見れば、その神田氏とは、今朝方にサザエが親友ミチコの勤めるデパートで怒らせた客だった。慌てて逃げ出したサザエは「女性クラブ」をクビになってしまう。1日でクビになった失態を恥じて、バスに飛び込んで死のうかと考えたとまで言うサザエに同情したマスオの薦めで、大木探偵事務所に転職、さっそく頼まれた依頼は娘の見合い相手の素行調査。なんと調査対象はノリスケ。婆に扮し尾行する過程でノリスケとミチコの恋を知る。結婚を渋る二人もサザエの援助で無事に結ばれた。そして素行調査でノリスケの婦人関係を突き止めたサザエは大手柄を挙げ、特別賞与が出たので友人となっていたマスオと祝杯をあげるのだった。

お使いの途中、近所で行われた結婚式に乱入する程のワカメ。当然、親戚の結婚に興味津々。毎日新婚夫婦のアパートに押しかけるのでノリスケはノイローゼ気味。同じくノリスケの新婚に触発されたサザエはある日、マスオに好きな女性のタイプを聞く。お淑やかな女性を挙げられ、自身と異なる異性像に意気消沈し、マスオと初めて訪れた店でやけ食い。失恋したと決めつけて塞ぎ込み、寝込んでしまう。 もうすぐクリスマス。サザエを励ますミチコの名案で、サザエはマスオへ磯野家でのクリスマス会の招待状を送る。そしてクリスマス当日、かねてからマスオのタイプである"おしとやかな女"らしく振る舞うサザエ。だがなかなかマスオは来ない。来ない即ち、マスオに振られたと見なすサザエは不安げ、だがようやく、「会社の都合」という理由でマスオはやってきた。そして彼のプレゼントはサザエ貝のブローチだった。陽気さを取り戻したサザエとマスオ。そんな喜んで踊る二人を中心に、磯野家のクリスマスは続いていくのだった…。

スタッフ[編集]

キャスト[編集]

同時上映[編集]

その他[編集]

  • 本作では江利チエミの持ち歌が度々歌われており、テ・キエロ・ディヒステはクライマックスで使われている。
  • 本シリーズは映像ソフト化された事はなく、また衛星放送でも放送される事は無かった。だが、サザエさん誕生70周年を記念して、2016年4月にCS「日本映画専門チャンネル」にて本作が初めて放送された(本作を含む全10作が、2017年1月にかけて毎月1作品ずつ順に放送された)。現在は配信サイトでも取り扱いがある。

脚注[編集]

  1. ^ その他、名俳優が集う作品となったが、2020年代現在、主要登場人物を演じた俳優で存命しているのは、ワカメ役の松島とノリスケ役の仲代のみである。
  2. ^ a b 当時、原作版『サザエさん』では「磯野波平」と「磯野フネ」の名前は決められていなかったため、映画のプレスシートでも「父親」・「母親」と記載されていた。なお、家の表札は「磯野松太郎」となっていた。また、本作のポスターでのみ父の名が「磯野アワビ」と記されている。「磯野フネ」の名前の初出は3作目の『サザエさんの青春』、「磯野波平」の初出は9作目の『サザエさんとエプロンおばさん』で、正式に役名が「波平」・「フネ」と記述されるのは、7作目の『サザエさんの脱線奥様』から。

外部リンク[編集]