アモルフェア

アモルフェア
Amorphea
生息年代: 前期エクタシアン - 完新世, 1400–0 Ma
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
階級なし : (和名なし) Scotokaryotes
階級なし : (和名なし) Podiata
階級なし : アモルフェア Amorphea
学名
Amorphea
Adl et al., 2012[1]
シノニム
下位分類群

アモルフェア (Amorphea) は、真核生物に属する生物の一群である。

概要[編集]

オピストコンタアメーボゾア、およびそれらに近縁な原生生物が含まれている。オピストコンタのさらに下位には、後生動物真菌が含まれている。

名称[編集]

細胞壁のような固い構造に覆われない限り、細胞が特定の形(ギリシア語: μορφή, morphḗ)を取らないことが多いことから名付けられた[1]

定義[編集]

この分類群は、ヒトアカパンカビキイロタマホコリカビの3種を全て含む最小のクレードと定義されている。ただし上述のクレードに以下のいずれかの種が含まれる場合には、アモルフェアという名前を使わないこととされている: シロイヌナズナアーケプラスチダ)、Tetrahymena thermophilaアルベオラータ)、Thalassiosira pseudonanaストラメノパイル)、Bigelowiella natansリザリア)、Euglena gracilisエクスカバータ)、Emiliania huxleyiハプト植物[1]

アモルフェアという名前と以上の定義は、PhyloCodeでも有効なものとして登録されている。

分類[編集]

以下のような系統が含まれている。

アモルフェア

アメーボゾア

オバゾア

ブレビアテア綱

アプソモナス目

オピストコンタ

CRuMs

ディアフォレティケスほか

歴史[編集]

アメーボゾアとオピストコンタの近縁性は分子系統解析により2000年までに繰り返し示されている[2][3]。その一方、真核生物に対する外群の情報を十分得ることが難しいため、真核生物全体の共通祖先の位置は明確になっていなかった[3][注釈 1]キャバリエ=スミスは2002年に、鞭毛中心小体の進化と合わせて考察することで、この2群が真核生物の起源と関係しているという説を提唱した。すなわち、一般的に中心小体は2つ対になっていて2本の鞭毛が生じるのに対し、アメーボゾアやオピストコンタでは鞭毛が1本だけのものが多く、とくにアメーボゾアでは中心小体自体が単独で存在するものがある。そこで中心小体が対にならず鞭毛が1本の生物をユニコント(unikont)と呼び、真核生物はユニコントの祖先から2本鞭毛を生じるバイコント(bikont)へと進化したものであり、オピストコンタや特にアメーボゾアはその過程を反映した生物だと主張した[5]。この説自体はそれほど広く受け入れられたわけではないのだが、真核生物全体を祖先的にユニコントとされた2群と祖先的にバイコントとされた残りの群に2分することは広く行われ、学名風にユニコンタ(Unikonta)と呼ぶ者も現れた[6][注釈 2]。ユニコントが祖先的という仮説はまもなく否定されてしまった[7]ため、それと混同することを避けるために、2012年にあらためて正式に命名されたのがアモルフェアである[1]

注釈[編集]

  1. ^ これは2020年時点でも未解決の問題である[4]
  2. ^ Unikonta学名として正式に提唱されたことのない裸名である。Unikontaの命名者をキャバリエ=スミスとすることもあるが、彼は一貫して英語の一般名詞unikontを用いている。

出典[編集]

  1. ^ a b c d Adl, S. M. et al. (2012). “The Revised Classification of Eukaryotes”. J. Eukaryot. Microbiol. 59 (5): 429-514. doi:10.1111/j.1550-7408.2012.00644.x. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1550-7408.2012.00644.x/pdf. 
  2. ^ Baldauf & Doolittle (1997). “Origin and evolution of the slime molds (Mycetozoa)”. PNAS 94 (22): 12007-12012. doi:10.1073/pnas.94.22.12007. 
  3. ^ a b Baldauf et al. (2000). “A kingdom-level phylogeny of eukaryotes based on combined protein data”. Science 290 (5493): 972-977. doi:10.1126/science.290.5493.972. 
  4. ^ Burki et al. (2020). “The new tree of eukaryotes”. Trends. Ecol. Evol. 35 (1): 43-55. doi:10.1016/j.tree.2019.08.008. 
  5. ^ Cavalier-Smith, T. (2002). “The phagotrophic origin of eukaryotes and phylogenetic classification of Protozoa”. Int. J. Syst. Evol. Microbiol. 52 (2): 297–354. doi:10.1099/00207713-52-2-297. 
  6. ^ Okamoto & Inouye (2005). “The katablepharids are a distant sister group of the Cryptophyta: a proposal for Katablepharidophyta divisio nova/Kathablepharida phylum novum based on SSU rDNA and beta-tubulin phylogeny”. Protist 156 (2): 163-179. doi:10.1016/j.protis.2004.12.003. 
  7. ^ Roger & Simpson (2009). “Evolution: Revisiting the Root of the Eukaryote Tree”. Curr. Biol. 19 (4): R165–R167. doi:10.1016/j.cub.2008.12.032. 

関連項目[編集]