ロンドン市長

ウィキペディアから無料の百科事典

ロンドン
市長
Mayor of London
ロゴマーク
現職者
サディク・カーン(第3代)
Sadiq Khan

就任日 2016年5月9日
庁舎シティ・ホール
任命グレーター・ロンドン選挙人
任期4年
根拠法令グレーター・ロンドン・オーソリティー法
初代就任ケン・リヴィングストン
創設2000年5月4日
職務代行者法定副市長
ジョアン・マッカートニー
俸給£143,911
ウェブサイト公式ウェブサイト

ロンドン市長(ロンドンしちょう、: Mayor of London)は、イギリス首都ロンドン市長

ロンドン議会の25名の議員とともに公選により選出され、グレーター・ロンドングレーター・ロンドン・オーソリティーを統括する役職である。

なお、シティ・オブ・ロンドンの長であるロンドン市長(Lord Mayor of London)との混同を避けるために、London Mayorとも称されることがある。

2000年5月4日に創設され、初代市長には労働党ケン・リヴィングストンが就任。現職は、2016年の市長選で当選し、同年5月9日に就任したサディク・カーンである。

背景[編集]

グレーター・ロンドンのための、選挙で選出された統治機構であるグレーター・ロンドン・カウンシル1985年地方自治法英語版を受けて、1986年に廃止された。1998年、ロンドン市民は住民投票で、グレーター・ロンドンのための新しい統治機構を創設することを決めた。1999年グレーター・ロンドン・オーソリティー法英語版により、2000年に改革の一環として、直接選挙で選出されるロンドン市長が創設された。

役割[編集]

ロンドン市長は大ロンドンにおける行政を大ロンドン庁 (Greater London Authority) を通して統括し、予算をロンドン市議会 (London Assembly) に提案する。市長が担当するのは大ロンドンにおける警察消防救急、文化振興、開発などである。

選挙[編集]

市長官邸と行政府が置かれているシティ・ホール

市長は補足投票制度により選出され[1]、任期は固定の4年間で、投開票は5月に行われる。イギリスにおける最も候補者が多い選挙になると予想されたため、10,000ポンドの委託金が設定され、第一選択票の得票率が5%以上出なければ返却されないことになった。

2000年[編集]

2000年5月に実施された第1回市長選挙は波乱含みの選挙戦となった。労働党候補に選ばれなければ市長選に出馬しないと明言していたケン・リヴィングストンはフランク・ドブソンに党候補選挙で敗れたため、前言を撤回し無所属で出馬した。彼はまた、当選したとしても1期しか務めるつもりは無いと述べていたが、2004年の選挙にも出馬し、当選している。

保守党は人気作家のジェフリー・アーチャーを公認候補としていたが、アーチャーが偽証罪で告発されたためスティーヴン・ノリスを代役として指名した。しかしノリスはタブロイド紙から不倫問題を攻撃されていた。自由民主党の候補はスーザン・クラマーであった。

2000年ロンドン市長選挙開票結果[2]
候補者氏名 政党 第一選択票 % 第二選択票 % 最終結果 %
ケン・リヴィングストン 無所属 667,877 39.0 178,809 12.6 776,427 57.9
スティーヴン・ノリス 保守党 464,434 27.1 188,041 13.2 564,137 42.1
フランク・ドブソン 労働党 223,884 13.1 228,095 16.0 N/A
スーザン・クラマー 自由民主党 203,452 11.9 404,815 28.5 N/A
ラム・ギドーマル CPA 42,060 2.4 56,489 4.0 N/A
ダレン・ジョンソン 緑の党 38,121 2.2 192,764 13.6 N/A
マイケル・ニューランド BNP 33,569 2.0 45,337 3.2 N/A
ダミアン・ホックニー UKIP 16,324 1.0 43,672 3.1 N/A
ジェフリー・ベン=ネイサン PRO-MaSS 9,956 0.6 23,021 1.6 N/A
アシュウィン・タンナ 無所属 9,015 0.5 41,766 2.9 N/A
ジェフリー・クレメンツ 自然法党 5,470 0.3 18,185 1.3 N/A

2004年[編集]

2004年に第2回市長選挙が行われ、労働党候補のケン・リヴィングストンが前回に引き続きスティーヴン・ノリスを破って再選された。

2004年ロンドン市長選挙開票結果[3]
候補者氏名 政党 第一選択票 % 第二選択票 % 最終結果 %
ケン・リヴィングストン 労働党 685,541 35.7 250,517 13.0 828,380 55.4
スティーヴン・ノリス 保守党 542,423 28.2 222,559 11.6 667,178 44.6
サイモン・ヒューズ 自由民主党 284,645 14.8 465,704 24.3 N/A
フランク・マロニー UKIP 115,665 6.0 193,157 10.0 N/A
リンジー・ジャーマン リスペクト 61,731 3.2 63,294 3.3 N/A
ジュリアン・レパート BNP 58,405 3.0 70,736 3.7 N/A
ダレン・ジョンソン 緑の党 57,331 2.9 208,686 10.9 N/A
ラム・ジドゥーマル CPA 41,696 2.2 56,721 2.9 N/A
ローナ・レイド IWCA 9,542 0.5 39,678 2.1 N/A
タミー・ナガリンガム 無所属 6,692 0.4 20,391 1.1 N/A

第1選択でどの候補者も50%の得票を得られなかった場合に、上位2名の得票に2人以外を第1に選択した票の第2選択による得票を足して最終的な集計とする。なおパーセンテージは公式に使用されるものではなく、参考のため算出。

2008年[編集]

2008年5月1日に実施された第3回選挙で、記者出身の保守党候補で下院議員のボリス・ジョンソンが現職のケン・リヴィングストン市長を破り当選した。

2008年ロンドン市長選挙開票結果[4]
候補者氏名 政党 第一選択票 % 第二選択票 % 最終結果 %
ボリス・ジョンソン 保守党 1,043,761 42.48 (+14.3%) 257,792 10.49 1,168,738 53.2
ケン・リヴィングストン 労働党 893,877 36.38 (+0.7%) 303,198 12.34 1,028,966 46.8
ブライアン・パディック 自由民主党 236,685 9.63 (–5.2%) 641,412 26.11 N/A
シアン・ベリー 緑の党 77,374 3.15 (+0.3%) 331,727 13.50 N/A
リチャード・バーンブルック BNP 69,710 2.84 (–0.2%) 128,609 5.23 N/A
アラン・クレイグ CPA 39,249 1.6 (–0.6%) 80,140 3.26 N/A
ジェラルド・バトン UKIP 22,422 0.91 (–5.1%) 113,651 4.63 N/A
リンジー・ジャーマン リスペクト 16,796 0.68 35,057 1.43 N/A
マット・オコナー (辞退) EDP 10,695 0.44 73,538 2.99 N/A
ウィンストン・マッケンジー 無所属 5,389 0.22 38,954 1.59 N/A

2012年[編集]

2012年5月3日に実施された第4回選挙で、保守党候補の現職ボリス・ジョンソンが前市長のケン・リヴィングストンを破って再選され、2期目の任期に就いた。リヴィングストンは、この選挙をもって政界から引退することを表明した。

2012年ロンドン市長選挙開票結果[5]
候補者氏名 政党 第一選択票 % 第二選択票 % 最終結果 %
ボリス・ジョンソン 保守党 971,931 44.0 82,880 6.1 1,054,811 51.5
ケン・リヴィングストン 労働党 889,918 40.3 102,355 7.5 992,273 48.5
ジェニー・ジョーンズ 緑の党 98,913 4.5 363,193 26.7 N/A
ブライアン・パディック 自由民主党 91,774 4.2 363,692 26.8 N/A
シボーン・ベニータ 無所属 83,914 3.8 212,412 15.6 N/A
ローレンス・ウェッブ UKIP 43,274 2.0 161,252 11.9 N/A
カルロス・コーティグリア BNP 28,751 1.3 73,353 5.4 N/A

2016年[編集]

第5回ロンドン市長選挙の投票は2016年5月5日に行われた[6]。開票結果は、2016年5月7日0時30分に発表された。

現職のボリス・ジョンソン市長は、2015年の英国議会総選挙でアクスブリッジ及びサウス・ルイスリップ選挙区から立候補して当選したため、3期目となる今回の市長選には出馬しなかった。次期ロンドン市長にはサディク・カーンが当選した。

2016年ロンドン市長選挙開票結果[7]
候補者氏名 政党 第一選択票 % 第二選択票 % 最終結果 %
サディク・カーン 労働党 1,148,716 44.2 161,427 8.9 1,310,143 56.8
ザック・ゴールドスミス 保守党 909,755 35.0 84,859 4.7 994,614 43.2
シアン・ベリー 緑の党 150,673 5.8 468,318 25.7 N/A
キャロライン・ピジョン 自由民主党 120,005 4.6 335,931 18.5 N/A
ピーター・ウィットル UKIP 94,373 3.6 223,253 12.3 N/A
ソフィー・ウォーカー 女性平等党 53,055 2.0 198,720 10.9 N/A
ジョージ・ギャロウェイ リスペクト 37,007 1.4 117,080 6.4 N/A
ポール・ゴールディング ブリテン・ファースト 31,372 1.2 73,883 4.1 N/A
リー・ハリス CISTA 20,537 0.8 67,495 3.7 N/A
デヴィッド・ファーネス BNP 13,325 0.5 36,168 2.0 N/A
プリンス・ジリンスキ 無所属 13,202 0.5 24,646 1.4 N/A
アンキット・ラヴ One Love 4,941 0.2 28,920 1.6 N/A

2021年[編集]

第6回ロンドン市長選挙の投票は2020年5月7日に行われる予定であったが、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い1年間延期された[8]

歴代市長[編集]


(政党)
氏名 写真 任期 当選年 政党 前職など
ケン・リヴィングストン 2000年5月4日 2008年5月4日 2000 無所属 技術者(チェスター・ビーティガン研究所)

グレーター・ロンドン・カウンシルのリーダー
英国議会議員(ブレント・イースト選挙区選出)

2004 労働党
ボリス・ジョンソン 2008年5月4日 2016年5月9日 2008
2012
保守党 新卒研修員: Express & Star、タイムズ

記者: タイムズデイリー・テレグラフ
コラムニスト: The Spectator、GQ
編集者: The Spectator
英国議会議員(ヘンリー=オン=テムズ選挙区選出)

サディク・カーン 2016年5月9日[9] 現職 2016 労働党 元人権派弁護士

英国議会議員(トゥーティング選挙区選出)
元運輸担当閣外大臣
元影の司法大臣

政策[編集]

これまでにロンドン市長によってとられた政策としては、渋滞緩和を目的としたコンジェスチョン・チャージの導入、同性愛者の恋人におけるパートナー認定などがある。

脚注[編集]

  1. ^ (財)自治体国際化協会ロンドン事務所マンスリートピック(2012年5月)” (PDF). 2015年8月5日閲覧。
  2. ^ 2000 election results for the Mayor of London and the London Assembly”. London Elects (2000年5月5日). 2013年2月17日閲覧。
  3. ^ 2004 election results for the Mayor of London and the London Assembly”. London Elects (2004年6月10日). 2013年2月17日閲覧。
  4. ^ 2008 election results for the Mayor of London and the London Assembly”. London Elects (2008年5月2日). 2013年2月17日閲覧。
  5. ^ London Elects - Declared Results”. Greater London Authority (2012年5月4日). 2013年2月17日閲覧。
  6. ^ About London Elects”. londonelects.org.uk. 2016年4月6日閲覧。
  7. ^ Official election result declaration” (PDF). London Elects. 2016年5月12日閲覧。
  8. ^ “Local elections and London mayoral race postponed for a year”. ガーディアン. (2020年3月13日). https://www.theguardian.com/world/2020/mar/13/local-london-mayoral-elections-postponed-year-coronavirus-uk 2020年9月8日閲覧。 
  9. ^ “Sadiq Khan Vows To Be 'Mayor For All Londoners'”. Sky News. (2016年5月7日). http://news.sky.com/story/1691893/sadiq-khan-vows-to-be-mayor-for-all-londoners 2016年5月9日閲覧. "But because of the processes involved, he won't be technically in office until just after midnight on Monday." 

外部リンク[編集]