TOI-700

TOI-700[1]
TOI-700の惑星の軌道とハビタブルゾーンの位置を示した画像 (提供: NASA's Goddard Space Flight Center)
TOI-700の惑星の軌道とハビタブルゾーンの位置を示した画像
(提供: NASA's Goddard Space Flight Center
仮符号・別名 TOI 700[2]
星座 かじき座[2]
見かけの等級 (mv) 13.08[3]
分類 赤色矮星[1]
位置
元期:J2000.0[3]
赤経 (RA, α)  06h 28m 23.2287828000s[3]
赤緯 (Dec, δ) −65° 34′ 45.521569925″[3]
赤方偏移 -0.000019[3]
視線速度 (Rv) -5.756 km/s[3]
固有運動 (μ) 赤経: -102.750 ミリ秒/[3]
赤緯: 161.805 ミリ秒/年[3]
年周視差 (π) 32.0980 ± 0.0211ミリ秒[3]
(誤差0.1%)
距離 101.61 ± 0.07 光年[注 1]
(31.15 ± 0.02 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) 10.6[注 2]
TOI-700の位置
軌道要素と性質
惑星の数 4
物理的性質
半径 0.420 ± 0.031 R[1]
質量 0.416 ± 0.010 M[1]
平均密度 8.0 ± 1.8 g/cm3[1]
表面重力 4.81 ± 0.06 (log g)[1]
自転周期 54.0 ± 0.8 [1]
スペクトル分類 M1V - M3V[1]
光度 0.0233 ± 0.0011 L[1]
表面温度 3,480 ± 135 K[1]
色指数 (B-V) 1.44[3]
色指数 (V-R) 0.42[3]
金属量[Fe/H] -0.07 ± 0.11[1]
年齢 >15億年[1]
他のカタログでの名称
Gaia DR2 5284517766615492736[3]
TESS 150428135[1]
UCAC4 123-010026[3]
2MASS J06282325-6534456[3]
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TOI-700かじき座の方向に約100光年離れた位置にある恒星である[1][2]TOI 700と表記されることもある[2][4]。周囲を4つの太陽系外惑星公転していることが知られている。

特徴[編集]

大きさの比較
太陽 TOI-700
太陽 Exoplanet

TOI-700は太陽の約4割の質量半径を持つ典型的な赤色矮星であり、スペクトル分類はM1V型からM3V型の間とされている[1]光度は太陽の2.3%しかない[1]

形成されてから少なくとも15億年が経過していると見られている[1]。11ヶ月間に及ぶ観測では、TOI-700の表面でフレアなどの活発な恒星活動は確認されていない[1][4]

当初、TOI-700は実際よりも遥かに高温の恒星であると考えられていたが、後にその観測データが誤りであることが判明している[5]

TOI-700という名称の「TOI」は、太陽系外惑星探索衛星であるTESSの観測により惑星が存在する可能性が示された天体がリストアップされるカタログ(TESS Objects of Interest)を意味し、ドップラー分光法直接観測法といった他の観測方法による追加観測が実施される対象となる[6]。TOI-700は他にも「TIC 150428135」や「2MASS J06282325-6534456」とも呼ばれ[1][3]、またガイア計画の観測対象でもあったことから「Gaia DR2 5284517766615492736」という名称も与えられている[3]

惑星系[編集]

TOI-700 dの想像図
TOI-700 eの想像図
TOI-700の動画

2020年1月、TOI-700の周囲を3つの太陽系外惑星が公転していることが太陽系外惑星探索衛星TESSによるトランジット法(食検出法)での観測データから判明したと発表された[1][2]。これらの惑星はいずれも潮汐固定を受けて自転と公転の同期が発生していると考えられている[4]。このうち、最も外側を公転している惑星TOI-700 d(TOI 700 d)は地球の約1.2倍の大きさを持つ岩石惑星とされ、液体の形態で存在できる領域であるハビタブルゾーン内を公転しているとされている[1][2]。TESSがハビタブルゾーン内を公転している地球規模の惑星を発見したのはこれが初めてである[1][2][注 3]

残る2つの惑星のうち、最も内側を公転しているTOI-700 b(TOI 700 b)は地球とほぼ同じ大きさを持つ岩石惑星、その1つ外側を公転しているTOI-700 c(TOI 700 c)は地球と海王星の中間の規模を持つガス惑星である可能性が高い[1][2][5]。この2つの惑星は最も外側の惑星dよりも急速に形成されたされたことにより、多くのガスを大気として纏っている可能性があるが、一番外側の惑星dはゆっくりと形成されたため、それほど大量のガスを大気として纏わなかったと考えられている。また、真ん中にある惑星cだけ他の2つより規模が大きいことから、この惑星系で長期的な惑星移動が発生した可能性が示されている[1]

これらの惑星の発見はハワイホノルルで行われたアメリカ天文学会第235回会合で発表された[2][4]

また、2021年11月には新たに約27.8日の公転周期を持つ、大きさが地球の約0.95倍の惑星候補「TOI-700.04」が存在する可能性が示されている[7]。この惑星候補は、2023年1月9日に確認され、TOI-700 e(TOI 700 e)と指定された。惑星eはcとdの間を公転しており、楽観的なハビタブルゾーン内に位置している地球型惑星とされる。これにより、TOI-700の周囲にはハビタブルゾーン内に存在する惑星が2個存在することが判明した[8]

TOI-700の惑星[8]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 軌道傾斜角 半径
b 1.07+0.80
−0.43
[1] M
0.0677+0.0011
−0.0011
9.977219+0.000041
−0.000038
0.075+0.093
−0.054
89.60+0.27
−0.29
°
0.914+0.053
−0.049
 R
c 7.48+5.89
−3.30
[1] M
0.0929+0.0015
−0.0015
16.051137+0.000020
−0.00020
0.068+0.070
−0.049
88.903+0.071
−0.087
°
2.60+0.14
−0.13
 R
e 0.845+0.67
−0.34
(予測) M
0.1340+0.0022
−0.0022
27.80978+0.00046
−0.00040
0.059+0.057
−0.042
89.60+0.21
−0.16
°
0.953+0.089
−0.075
 R
d 1.72+1.29
−0.63
[1] M
0.1633+0.0027
−0.0027
37.42396+0.00039
−0.00035
0.042+0.045
−0.030
89.80+0.12
−0.10
°
1.073+0.059
−0.054
 R

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 日本国内では「初めて発見された生命が存在できると見られる地球規模の惑星」と報道したメディアもあったが[5]、実際にはこのような太陽系外惑星は過去にも何度か発見されているので、この表現は厳密には誤りである。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa Gilbert, Emily A.; Barclay, Thomas; Schlieder, Joshua E.; et al. "The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. I: Validation of the TOI-700 System". arXiv:2001.00952v1 [astro-ph.EP]。
  2. ^ a b c d e f g h i NASA Planet Hunter Finds its 1st Earth-size Habitable-zone World”. NASA. 2020年1月7日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p Results for UCAC3 49-21611”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2019年1月7日閲覧。
  4. ^ a b c d Mike Wall (2020年1月7日). “NASA's TESS Planet Hunter Finds Its 1st Earth-Size World in 'Habitable Zone'”. Space.com. 2020年1月7日閲覧。
  5. ^ a b c 地球から100光年に生命存在しうる惑星、NASAの探査衛星で初の発見”. CNN (2020年1月7日). 2020年1月8日閲覧。
  6. ^ TFOP Overview”. TESS. MIT. 2020年1月7日閲覧。
  7. ^ TESS Project Candidates”. NASA. 2021年11月20日閲覧。
  8. ^ a b A Second Earth-Sized Planet in the Habitable Zone of the M Dwarf, TOI-700”. arXiv. 2023年1月11日閲覧。

外部リンク[編集]

  • Rodriguez, Joseph E.; Vanderburg, Andrew; Zieba, Sebastian; et al. "The First Habitable Zone Earth-Sized Planet From TESS II: Spitzer Confirms TOI-700 d". arXiv:2001.00954v1 [astro-ph.EP]。
  • Suissa, Gabrielle; Wolf, Eric T.; Kopparapu, Ravi kumar; et al. "The First Habitable Zone Earth-sized Planet from TESS. III: Climate States and Characterization Prospects for TOI-700 d". arXiv:2001.00955v1 [astro-ph.EP]。