SL人吉

SL人吉
快速「SL人吉」（2024年1月）
概要
国	日本
種類	快速列車
現況	廃止
地域	熊本県
運行開始	2009年4月25日
運行終了	2024年3月24日[注釈 1]
運営者	九州旅客鉄道（JR九州）
路線
起点	熊本駅
終点	鳥栖駅
営業距離	89.8 km (55.8 mi)
運行間隔	1往復
使用路線	鹿児島本線
車内サービス
クラス	普通車
座席	全車指定席
食事	ビュッフェ - 2号車
展望	1号車・3号車
技術
車両	50系客車 8620形蒸気機関車 （熊本車両センター）
軌間	1,067 mm
電化	交流20,000 V・60 Hz（熊本 - 鳥栖間）[注釈 2]
備考
2021年5月1日より
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SL人吉（SLひとよし）は、かつて九州旅客鉄道（JR九州）が熊本駅 - 人吉駅間を鹿児島本線・肥薩線経由(2009 - 2020)、熊本駅 - 鳥栖駅間^{[注釈 3]}を鹿児島本線経由(2021 - 2024)で運行していた、蒸気機関車 (SL) 牽引による臨時快速列車である。

沿革[編集]

矢岳駅前の人吉市SL展示館で静態保存されていた58654（8620形）は、1988年（昭和63年）に動態復元され、同年8月28日に熊本 - 宮地間運行の快速「SLあそBOY」として営業運転を開始した。合わせて、人吉市に保存されていた縁から、同10月9日からは年間数日程度、熊本 - 人吉間の「SL人吉号」として運行された。SL・客車は「SLあそBOY」と共用する形で同じ編成が使用された。

2005年（平成17年）3月の試運転中に、58654が車両故障を起こし修復不能と判断されたことから、この年の当初の運行予定日のうち、SLでの運行日は大幅に絞られたうえで、本来の運行日でSLが使えなくなった日は、DE10形ディーゼル機関車が「SLあそBOY」用客車を牽引する「ディーゼル人吉号」として運行された^{[注釈 4]}。8月21日をもって58654による「SL人吉号」は運行終了となった^{[注釈 5]}。

その後、58654は小倉工場で修復され、肥薩線が開業100周年を迎える2009年（平成21年）4月25日からは、熊本 - 人吉間で58654とリニューアルした客車による列車が運行開始された。愛称名は旧来の愛称名から「号」を省いた「SL人吉」とされた^{[注釈 6]}。

機関車の老朽化、部品調達や技術者の確保が難しくなっていることを理由に、2024年（令和6年）3月24日^{[注釈 1]}で運行を終了し、58654号機の登場から101年の歴史に幕を閉じた^[2][3]。

年表[編集]

• 1988年（昭和63年） 10月9日 - 「SL人吉号」運行開始。
• 2005年（平成17年）8月21日 - 「SL人吉号」運行終了。
  • 9月25日 - 「ディーゼル人吉号」運行終了。
• 2009年（平成21年）4月25日 - 58654を修復、客車をリニューアルの上、「SL人吉」として運行開始。
  • 6月22・29日 - 座席指定券の発売を熊本県内のみとした「熊本県民号」として運行。
• 2010年（平成22年）9月4日 - NHK BShiの企画番組『BSデジタル号がゆく!〜ブルートレイン 九州一周の旅〜』にて、臨時列車「BSデジタル号」が運行。このうち、熊本 - 人吉間を「SLデジタル号」とし、58654が同列車を牽引した（客車は14系寝台車3両）。
• 2012年（平成24年）12月22日 - 2013年（平成25年）1月6日 - 「SL人吉」と同一ダイヤでDE10形が「SL人吉」用の客車を牽引する「快速人吉」を運行^[4]。
• 2016年（平成28年）4月15日 - 熊本地震の影響により運休となる^[5]。
  • 4月29日 - 運行を再開^[5]。
• 2020年（令和2年）4月24日 - 6月14日 - 新型コロナウイルス感染症対策として、JR九州管内の特急列車・観光列車全便運休の方針により、期間中の「SL人吉」を全便運休^[6]。
  • 7月4日 - 令和2年7月豪雨により肥薩線八代 - 吉松間が不通となったため、当面の間運休となる^{[7][注釈 7]}。
  • 11月1日 - アニメ映画『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』とコラボレーションした臨時列車「SL鬼滅の刃」をSL人吉編成を用いて鹿児島本線・熊本 - 博多間で運行開始^[8]。 運行日は同日のほか同月3・15・21・23日^[9]、12月19・21・23・25・27日^[10]。
• 2021年（令和3年）5月1日 - 熊本 - 鳥栖間にて、1日1往復の運行開始^{[11][注釈 8]}。
• 2022年（令和4年）3月26日 - ゲーム『桃太郎電鉄 〜昭和 平成 令和も定番!〜』とコラボレーションした臨時列車「SL桃鉄号」をSL人吉編成を用いて鹿児島本線・熊本 - 鳥栖間で運行開始。運行日は同日のほか同月27・4月2・3・9日^[12]。
  • 10月24日 - 機関車の老朽化、部品調達や技術者の確保が難しくなっていることから、2024年（令和6年）3月ごろまでの運行終了を発表^[2]。
  • 11月18日 - 58654が製造から100年を迎えたことを記念して、鹿児島本線・熊本 - 八代間にて臨時列車「SL58654百歳号」をSL人吉編成を用いて1往復運転^[2][13]。
• 2023年（令和5年）2月24日 - 2024年（令和6年）3月23日での運行終了を発表^[3]。しかし人吉市民など「SL人吉」に縁のある人の間では、運行維持を求める声が根強い。人吉市役所・商工会議所・温泉旅館女将の会は共同で、58654の人吉駅石造り機関庫での保存・展示を要望している。
• 2024年（令和6年）
  • 3月23日 - 熊本 - 博多間にて特別運行。営業運転としてはこの列車が最後となった^[14]。
  • 3月24日 - 招待客向けに熊本→八代間で運転し、この列車を最後に運行を終了^[14]。

• 
  SL人吉号（2003年5月10日、宇土駅）
• 
  SL人吉号用客車（リニューアル前）
• 
  客車の車内（リニューアル前）
• 
  客車の車内（リニューアル後）
• 
  SL文庫（リニューアル後）
• 
  ショーケース（リニューアル後）
• 
  展望ラウンジ（リニューアル後）

運行概況[編集]

熊本 - 人吉間を運行していた2009年から2020年までは、概ね3月から11月までの金・土・日曜日・祝日および夏休み期間中に、1日1往復運行されていた。午前中に熊本駅を出発して昼間に人吉駅に到着し、午後に人吉駅を出発して夕方に熊本駅に到着するダイヤとなっていた。全車座席指定席で、指定席料金は840円（小児半額）^{[注釈 9]}であった。

2021年（令和3年）5月1日より、「肥薩線沿線応援企画第2弾」と題し、鹿児島本線熊本 - 鳥栖間にて、58654とDE10形ディーゼル機関車による「SL人吉」が、土・日曜日・祝日および夏休み期間を基本として1日1往復運行されていた。

乗車には乗車券のほか座席指定券が必要である。座席指定券の値段が、従来の840円から1,680円（小児半額）に改定された。

SL＋客車3両＋DLの合計5両編成。鳥栖駅に転車台がないため、上り熊本発鳥栖行き列車はSLが牽引し、下り鳥栖発熊本行き列車はDLが牽引していた^[11]。なお、同編成が鹿児島本線の熊本以北を運行するのは、2020年（令和2年）11月1日から12月27日にかけて、熊本発博多行きで運行された臨時列車「SL鬼滅の刃」以来、約5か月ぶりのことであった^[8][9][10]。

2024年3月23日のラストランでは博多駅まで運行され上り熊本発博多行き列車はDLが牽引し、下り博多発熊本行き列車はSLが牽引した^[14]。翌24日に招待客向けとして熊本発八代行き列車を運転し、SLが牽引した^[14]。

停車駅[編集]

• 廃止時点の停車駅（2021年5月1日から）^{[注釈 10]}
  • 熊本駅 - 玉名駅 - 大牟田駅 - 久留米駅 - 鳥栖駅

• 熊本 - 人吉間運行時代の停車駅（2009年から2020年まで）
  • 熊本駅 - 新八代駅 - 八代駅 - 坂本駅 - 白石駅 - 一勝地駅 - 渡駅 - 人吉駅

※ 2005年まで運行されていた「SL人吉号」「ディーゼル人吉号」は上記の駅のほか川尻駅、宇土駅、松橋駅、有佐駅、瀬戸石駅にも停車していた。

使用車両[編集]

SL・客車とも熊本鉄道事業部熊本車両センターに所属する。

牽引機関車[編集]

58654を使用する。

客車[編集]

50系客車700番台3両を使用する。編成内容は以下のとおり。熊本方が1号車^{[注釈 11]}。

• 1号車 - オハフ50 701
• 2号車 - オハ50 701
• 3号車 - オハフ50 702

1号車の熊本方と3号車の鳥栖方^{[注釈 11]}に展望ラウンジを、2号車にはビュッフェを備える。

「SL人吉」での運用にあたり、水戸岡鋭治のデザインによるリニューアル工事が実施されている。車体は地色が黒色一色となり、各種のロゴが入れられているほか、両端の先頭車の前面下部に窓が新設され、展望ラウンジの視界が拡大されている。車内は客室中央部にショーケースが設置され、床がフローリングとなり、座席の表地が張り替えられ、一部の座席は表地が本革となった。

58654が検査入場中に、客車をDE10形牽引による団体列車等に宛てられることがある。これまでは、回送を含めて通常では走行しない、鹿児島本線の陣原 - 門司間の貨物線や、筑豊本線などを走行したことがある。

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

関連項目[編集]

• 肥薩線
• あそBOY
• 蒸気機関車牽引列車
• 動態保存中の蒸気機関車
• 日本の蒸気機関車史

外部リンク[編集]

• SL人吉 | JR KYUSHU D&S TRAINS D&S列車の旅
• ありがとう！SL人吉｜JR KYUSHU D&S TRAINS D&S列車の旅
• 郷愁の蒸気機関車「SL人吉」 - トレたび（交通新聞社）
• SL人吉-ハチロク（8620機関車・58654号）の煉瓦庫

表 話 編 歴 九州旅客鉄道の列車
九州新幹線	つばめ - さくら - みずほ
西九州新幹線	かもめ
鹿児島本線・三角線	きらめき - A列車で行こう / 鹿児島本線優等列車沿革
長崎本線・佐世保線・大村線	リレーかもめ - かささぎ - みどり - みどり（リレーかもめ） - ハウステンボス - ハウステンボス（リレーかもめ） - ふたつ星4047 - シーサイドライナー / 長崎本線優等列車沿革
日豊本線・日南線・宮崎空港線	きりしま - ソニック - にちりん - にちりんシーガイア - ひゅうが - 海幸山幸 / 日豊本線優等列車沿革
筑豊本線・篠栗線（福北ゆたか線）	かいおう
久大本線	ゆふ - ゆふいんの森
豊肥本線	九州横断特急 - あそ - あそぼーい! - かわせみ やませみ
肥薩線	肥薩線優等列車沿革
指宿枕崎線	指宿のたまて箱 - なのはな
その他	ななつ星 in 九州 - 或る列車 - 36ぷらす3
関連項目	D&S列車 - 東海道本線優等列車沿革 - 山陽本線優等列車沿革
関連人物・企業	水戸岡鋭治 - 向谷実

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