Cold Cuts

"Cold Cuts"とは、ポール・マッカートニーの未発表音源を集めた未発表アルバム及び、同じ内容を収録した海賊盤。何度も発売の計画が立てられたが、その度に中止となり、現在は計画そのものが凍結したも同然となっている。

制作の経緯[編集]

初めてこのアルバムの発想が出たのは1973年。『レッド・ローズ・スピードウェイ』セッションで未発表曲が氾濫したため、ポールが未発表音源を整理したいと思い立ったことが始まりとされる。

実際にアルバムの発売が計画されるのは1978年になってからである。ウイングスの活動に一区切りがついたポールは、ウイングスの2枚組のベストアルバムを制作する事を決めた。その際に、1枚目をベスト盤『Hot Hits』に、2枚目を未発表音源集『Cold Cuts』にすることをレコード会社に提案する[1]が、拒否され、1枚組での発売を要求された。なお、この時に代わりに制作されたのがベスト盤『ウイングス・グレイテスト・ヒッツ』である。

その後もアルバムの制作を続け、1980年4月に発売されたシングル「カミング・アップ」のB面に、いわばこのアルバムの「予告編」のような形で未発表曲「ランチ・ボックス~オッド・ソックス」が収録されたが、今度はジョン・レノンの暗殺によって計画がうやむやになってしまった。

しばらくたった1986年には、このアルバムのためのリミックス作業が行われた。ベストアルバム『オール・ザ・ベスト』の発売に合わせて発表するという計画もあったが、既に市場にはこのアルバムの海賊盤が出回っており、ポールはこのアルバムを制作する意欲を失ってしまった。

これ以来、このアルバムに関する動きは無く、収録予定であった曲はシングルB面やアルバムのボーナストラックなどに分散されて発表されていった。しかし、まだ未発表の音源も数多く、このアルバムの海賊盤は、フリークの間では「必需品」と呼ばれる程の需要と知名度を持っている。

2010年代以降は「ポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクション」がスタートし、『Cold Cuts』に収録予定だった音源も、一部取りこぼしはあるものの続々と正式リリースされている。

収録予定だった曲[編集]

1970年「ラム」セッション[編集]

  • ア・ラヴ・フォー・ユー - A Love For You

2003年にリミックスされ、映画「The In-Laws」の主題歌として発表。また、そのバージョンが2011年にポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクションの「ラム」に収録された。

  • ヘイ・ディドル - Hey, Diddle

2001年のベスト盤「夢の翼〜ヒッツ&ヒストリー〜」にデモバージョンが収録。また、ポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクションの未発表音源として、2011年発売の「ラム」及び2014年発売の「ヴィーナス・アンド・マース」にリミックスバージョン(それぞれ別のバージョン)が収録された。

1972年「レッド・ローズ・スピードウェイ」セッション[編集]

全曲が2018年発売のポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクション「レッド・ローズ・スピードウェイ」に収録。

  • ママズ・リトル・ガール - Mama's Little Girl

1990年にシングル「プット・イット・ゼア」のB面に収録。また、日本限定でリリースされた「フラワーズ・イン・ザ・ダート〜スペシャル・パッケージ」及び「ワイルド・ライフ」のリマスター版にも収録。

  • ベスト・フレンド - Best Friend

ライヴ・バージョン。

  • ナイト・アウト - Night Out
  • トラジェディ - Tragedy

トーマス・ウェインのカヴァー。

1973年のセッション[編集]

  • アイ・ウッド・オンリー・スマイル - I Would Only Smile

デニー・レインが作曲、ボーカルを執る曲。2018年発売の「レッド・ローズ・スピードウェイ」に収録。彼の1980年のソロ・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」に収録。

  • ワイド・プレイリー - Wide Prairie
  • オリエンタル・ナイトフィッシュ - Oriental Nightfish

二曲ともリンダ・マッカートニーがボーカルを執る曲。彼女の1998年のソロ・アルバム「ワイド・プレイリー 」に収録。

1974年のセッション[編集]

  • センド・ミー・ザ・ハート - Send Me The Heart

ポールとデニー・レインの共作、デニー・レインがボーカルを執る曲。彼の1980年のソロ・アルバム「ジャパニーズ・ティアーズ」に収録。

1975年「ヴィーナス・アンド・マース」セッション[編集]

  • マイ・カーニヴァル - My Carnival

1986年にシングル「スパイズ・ライク・アス」のB面に収録。また、「ヴィーナス・アンド・マース」のリマスター版にも収録。

  • ランチ・ボックス~オッド・ソックス - Lunch Box/Odd Sox

1980年にシングル「カミング・アップ」のB面に収録。また、「ヴィーナス・アンド・マース」のリマスター版にも収録。

  • プラウド・マム - Proud Mum
  • プラウド・マム(リプライズ) - Proud Mum (Reprise)

いずれも未発表。TVシリーズ「Mother's Pride」の主題歌として書かれたが、結局使われなかった。

未発表。1971年に発表した楽曲「トゥモロウ」のリメイク版。

1977年「ロンドン・タウン」セッション[編集]

  • ウォータースポート - Waterspout

未音源化。1987年にベスト盤「オール・ザ・ベスト」に収録する計画があった。2017年のOne on Oneツアーにて、プレショーのDJプレイリストの中に選曲された。

  • ディド・ウィー・ミート・サムホエア・ビフォア - Did We Meet Somewhere Before?

未音源化。発表はされているが、映画「Rock'n'roll High School」の中でジャズにアレンジされたバージョンが使用されているのみである(ポール含めウィングスは演奏に未参加)。サウンドトラックにも未収録。

1978年「バック・トゥ・ジ・エッグ」セッション[編集]

  • セイム・タイム・ネクスト・イヤー - Same Time Next Year

1990年にシングル「プット・イット・ゼア」のB面に収録。また、日本限定でリリースされた「フラワーズ・イン・ザ・ダート〜スペシャル・パッケージ」にも収録。

  • ケージ - Cage

未発表。「バック・トゥ・ジ・エッグ」の二曲目に収録される予定だったが、アルバムの最後に「ベイビーズ・リクエスト」が収録される関係で押し出された。

1980年頃のセッション[編集]

  • ロバーズ・ボール - Robbers' Ball

未発表。

1986年のセッション[編集]

もともとは「マッカートニーII」セッションの没曲。ここでストリングスがオーバーダビングされて大幅にリメイクされた。2011年に発売されたポール・マッカートニー・アーカイブ・コレクションの「マッカートニーII」に収録。

曲目[編集]

このアルバムの収録曲は年代によって異なっている。以下に、バージョン別に予定されていた曲目を記述する[2]

1978年のバージョン[編集]

  1. ママズ・リトル・ガール
  2. アイ・ウッド・オンリー・スマイル
  3. トラジェディ
  4. ナイト・アウト
  5. オリエンタル・ナイト・フィッシュ
  6. ランチ・ボックス~オッド・ソックス
  7. マイ・カーニヴァル
  8. センド・ミー・ザ・ハート
  9. ヘイ・ディドル
  10. ワイド・プレイリー
  11. トゥモロウ(インストゥルメンタル)
  12. プラウド・マム
  13. プラウド・マム(リプライズ)
  14. セイム・タイム・ネクスト・イヤー
  15. ディド・ウィー・ミート・サムホエア・ビフォア

以下3曲はベーシックトラックからのボーナストラック
 16. ア・ラヴ・フォー・ユー
 17. ヘイディドル

  • インストゥメンタル・バージョン

 18. ベスト・フレンド

1980年のバージョン[編集]

  1. ア・ラヴ・フォー・ユー
  2. ママズ・リトル・ガール
  3. ナイト・アウト
  4. ヘイ・ディドル
  5. ベスト・フレンド
  6. トラジェディ
  7. ウォータースポート
  8. セイム・タイム・ネクスト・イヤー
  9. ケージ
  10. マイ・カーニヴァル
  11. ディド・ウィー・ミート・サムホエア・ビフォア
  12. ロバーズ・ボール

以下2曲はベーシックトラックからのボーナストラック
 13.ナイト・アウト
 14.ランチ・ボックス~オッド・ソックス

  • シングル「カミング・アップ」に収録されていたバージョンではカットされていたカウントが復活している。

1980年代中期のバージョン[編集]

  1. ア・ラヴ・フォー・ユー
  2. マイ・カーニヴァル
  3. ウォータースポート
  4. ママズ・リトル・ガール
  5. ナイト・アウト
  6. ロバーズ・ボール
  7. ケージ
  8. ディド・ウィー・ミート・サムホエア・ビフォア
  9. ヘイ・ディドル
  10. トラジェディ
  11. ベスト・フレンド
  12. セイム・タイム・ネクスト・イヤー

以下2曲はベーシックトラックからのボーナストラック
 13.ウォータースポート

  • インストゥメンタル・バージョン

 14.ケージ

  • ホームデモのバージョン

脚注[編集]

  1. ^ この時初めて『Cold Cuts』という呼称が生まれる。
  2. ^ なお、曲目リストはCold Cutsの全てのバージョンを網羅した海賊盤「Complete 'Cold Cuts' Collection」の曲目を参考にした。

出典[編集]

Paul McCartney Recording Sessions (1969~2013)