CA 19-9

CA 19-9carbohydrate antigen 19-9)は、マウスモノクローナル抗体NS19-9で認識されるシアリルLea抗原(糖鎖抗原)のこと。腫瘍マーカーの一つ[1]。陽性的中率は低く[2]、単独高値だけで判定は行わない[2][3]

解説[編集]

ある糖鎖はがんで特異的に発現することからこれを測定して腫瘍マーカーとするが、1979年にコプロフスキ( Koprowski )らは、ヒト結腸がん細胞株SW1116をマウスに免疫して(マウスモノクローナル抗体)NS19-9を作成し[4]、このNS19-9で認識される細胞膜糖脂質由来の糖鎖は、Lewisaの糖鎖のN端にシアル酸が結合したモノシアロガングリオシド ( Monosialoganglioside) であることも1982年に解明された[5]。このシアリルLeaの糖鎖抗原がCA19-9である。

CA19-9検査は、血清中のシアリルLea抗原 (sialyl Lewis A:sLea) を測定する検査。

臨床応用[編集]

日本では、1980年代前半から利用されはじめ、CA19-9は消化器がん(特に膵・胆のう・胆管がん)で陽性率が高いため、診断補助として有効とされるが、大腸がん、肺がん、乳がんなどでも陽性を示すため、CEA、AFPなどのマーカーと併用される。また、抗がん剤治療の効果、再発のモニターとしても使用される[6]。なお、胆石[7]、原発性胆汁性胆管炎症、肝硬変症、慢性肝炎、糖尿病、婦人科などでも上昇し偽陽性を示すことがある[3][8]が、値がある一定以上に高ければ通常はがんを疑う理由となる。ただし、ルイス陰性者では型糖鎖からルイスA糖鎖が作れないため当該マーカーは使用できない。

試薬キット間で数値の差が生じるため、つまり医療機関が変わると値が異なる場合がある[8]。また、人間ドックにおける陽性的中率は2.5%程度とする報告がある[2]

参考文献[編集]

  • 大倉久直「増刊号これだけは知っておきたい—検査のポイント 第5集 腫瘍マーカー 消化器系」『medicina』、ISSN 1882-1189  (Paid subscription required要購読契約)

脚注[編集]

  1. ^ 木村聡監修. “検査項目解説:腫瘍関連検査”. 三菱化学メディエンス. 2009年11月11日閲覧。
  2. ^ a b c 鈴木朋子、今井瑞香、窪田素子、北嘉昭、土田知宏「人間ドック受診者における腫瘍マーカーCA19-9高値例の検討」第30巻第1号、2015年、doi:10.11320/ningendock.30.22 
  3. ^ a b 外山久太郎, 安達献, 三富弘之, 坂口哲章, 野登誠, 大川博之「良性疾患における血清CA19-9高値例の検討」『北里医学』第15巻第4号、北里大学、1985年8月31日、259-264頁、ISSN 03855449NAID 110004693276  (Paid subscription required要購読契約)
  4. ^ Koprowski, Hilary; Steplewski, Zenon; Mitchell, Kenneth; Herlyn, Meenhard; Herlyn, Dorothee; Fuhrer, Peter (1979). “Colorectal carcinoma antigens detected by hybridoma antibodies”. Somatic cell genetics (Springer) 5 (6): 957-971. doi:10.1007/BF01542654. https://doi.org/10.1007/BF01542654.  (Paid subscription required要購読契約)
  5. ^ J L Magnani; B Nilsson; M Brockhaus; D Zopf; Z Steplewski; H Koprowski; V Ginsburg (1982). “A monoclonal antibody-defined antigen associated with gastrointestinal cancer is a ganglioside containing sialylated lacto-N-fucopentaose II.”. Journal of Biological Chemistry 257 (23): 14365-14369. doi:10.1016/S0021-9258(19)45389-1. ISSN 0021-9258. https://doi.org/10.1016/S0021-9258(19)45389-1. 
  6. ^ 谷口哲也, 澤田隆, 清水哲, 河村良寛, 岸清志「胃癌における術前CEA, CA19-9値と手術予後についての検討」『日本臨床外科医学会雑誌』第58巻第11号、1997年、2499-2504頁、doi:10.3919/ringe1963.58.2499 
  7. ^ 布施好信ほか、胆石症における血清CA19-9の臨床的意義について 日本消化器病学会雑誌 Vol.83 (1986) No.10 P2196-2200
  8. ^ a b CA19-9が異常高値なのに良性疾患?しかも一過性? (PDF) 東京医科大学病院 検査部ニュース 平成12年7月24日

関連項目[編集]

外部リンク[編集]