2024年1月のイランによるパキスタンへのミサイル攻撃
2024年1月のイランによるパキスタンへのミサイル攻撃 (英語:2024 Iranian missile strikes in Pakistan ) は、2024年1月16日にイランはパキスタンのバローチスターン州内で一連のミサイルと無人機による攻撃を実施し、イランのバローチ過激派組織ジャイシュ・アル・アドルを標的にしたと主張した事件。
この事件は、イランがイラクとシリア内で同様の一連の空爆と無人機攻撃を行った翌日に発生し、 3日のケルマーン爆撃に対抗してイスラエル諜報機関モサドの地域本部とテロ組織のいくつかの拠点を標的にしたと主張した。イスラム国が責任を負った1月。パキスタン政府は、イランが子供２人を殺害したとし、パキスタン領空の「いわれなき侵害」である と述べ、この攻撃を非難した。
| 2024年1月のイランによるパキスタンへのミサイル攻撃 | |
|---|---|
  コ・エ・サブズ  コ・エ・サブズ | |
| 場所 |  パキスタン、バローチスターン州パンジグル地区、Koh-e-Sabz |
| 日付 | 2024年1月16日 |
| 攻撃手段 | ミサイルとドローンによる攻撃 |
| 武器 | ミサイル、無人機 |
| 死亡者 | 2人 |
| 負傷者 | 4人 |
| 被害者 | 6人 |
| 物的被害 | 不明 |
| 犯人 | イスラム革命防衛隊 |
| 対処 | パキスタンがマーグ・バー・サルマチャール作戦でイラン側に報復 |
| 謝罪 | なし |
| 補償 | なし |
| 賠償 | なし |
1月18日、パキスタンは、パキスタンとの紛争に従事するバローチ分離主義反乱軍の隠れ家を攻撃したとして、イランのスィースターン州とバルーチェスターン州で報復空爆を実施した。イラン政府は、空爆によって女性３人と子供４人を含む外国人９人が死亡したと発表した[1]。
背景[編集]
スィースターン・バルーチェスターンの反乱[編集]
2004年以来、イラン南東部のスィースターン・バルーチェスターン州は、ジャイシュ・アル・アドルを含むバルーチ分離主義者グループとの紛争に巻き込まれている。イランメディアによると、2023年12月15日にイランの都市ラスクでジャイシュ・アル・アドゥル襲撃事件があり、警察官11人が死亡した[2]。2019年にも同組織による別の攻撃があり、イランの準軍事組織イスラム革命防衛隊（IRGC）の隊員27人が死亡した[3]。
イランによるイラクとシリアへのミサイル攻撃[編集]
この攻撃は、ケルマーン爆撃への報復としてテログループを標的としたとされるイランによるイラクとシリアへのミサイル攻撃の翌日に行われた[4]。また、この攻撃は、パキスタンの暫定首相アンワール・ウル・ハク・カカールとイランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相がスイスのダボスでの世界経済フォーラムの期間中に会談し、イランと両国による共同演習が開催されていた同じ日に起こった[5]。
攻撃[編集]
イラン国営テレビは、イスラム革命防衛隊が高精度ミサイルと無人機による攻撃を行い、パキスタン南西部バローチスターン州にある過激派組織ジャイシュ・アル・アドルの2つの拠点を破壊したと報じた[6]。この攻撃では、イランとパキスタンの国境から約50キロメートル（31マイル）離れたパンジグル地区のコー・エ・サブズ村の家々が標的とされた[7]。パキスタン政府は、この攻撃で子供２人が死亡、他４人が負傷したと発表した。また、同地域では3機から4機のドローンが発射され、モスクや住宅、その他の建物に衝突したとも述べた[8]。
過激派組織ジャイシュ・アル・アドルは、6機のドローンとロケット弾が戦闘員の家族の住居を攻撃し、子供2人が死亡、10代の若者を含む女性3人が負傷したと主張した[9]。
余波[編集]
攻撃の翌日の2024年1月17日にイラン革命防衛隊のホセイン・アリ・ジャワダンファル大佐が、スィースターン・バルーチェスターン州イランシャール郡イランシャールで正体不明の銃撃犯によって暗殺された[10][11]。イランメディアの報道によると、過激派組織ジャイシュ・アル＝アドゥルが襲撃の犯行声明を出した[12]。
パキスタンによるイランへの報復[編集]
2024年1月18日にパキスタンはバローチ過激派を標的にしたとしてイラン国内で軍事攻撃を実施した。サラバン市のサイトが攻撃された。イラン当局は、女性３人と子供４人を含む外国人９人が殺害されたと主張した[13]。パキスタン外務省のプレスリリースでは、この軍事行動をマーグ・バール・サルマチャール作戦と呼んでいる[1][14]。2024年1月19日にパキスタンのアンワール・ウル・ハク・カカール暫定首相は、両国が紛争の激化を緩和することで合意したとする外務省の声明を受けて、イランとの正常な外交関係が回復したと発表した[15]。2024年1月29日にイランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相は、攻撃後の緊張緩和の一環としてパキスタンを訪問した[16]。
反応[編集]
脚注[編集]
出典[編集]
- ^ a b Farmer, Ben (2024年1月18日). “Pakistan calls for talks with ‘brotherly’ Iran after deadly cross-border strike” (英語). The Telegraph. ISSN 0307-1235 2024年3月29日閲覧。
- ^ “11 killed in Baluch militant attack on Iranian police station: state media”. www.rudaw.net. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan recalls its ambassador to Iran over airstrikes by Tehran that killed 2 people” (英語). AP News (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ News, A. B. C.. “US condemns Iran for missile strikes in Iraq and Syria” (英語). ABC News. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Iran admits carrying out deadly strike on Pakistan territory” (英語). (2024年1月16日) 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan recalls its ambassador to Iran over airstrikes by Tehran that killed 2 people” (英語). AP News (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ Shahid, Saleem (2024年1月17日). “Iran ‘attacks militant bases in Panjgur’” (英語). DAWN.COM. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan recalls its ambassador to Iran over airstrikes by Tehran that killed 2 people” (英語). AP News (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan recalls its ambassador to Iran over airstrikes by Tehran that killed 2 people” (英語). AP News (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ Regan, Jonny Hallam, Helen (2024年1月17日). “Pakistan condemns deadly Iranian missile strike on its territory as tensions spike across region” (英語). CNN. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “IRGC colonel martyred in assassination move in SE Iran” (英語). Mehr News Agency (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ “جیش الظلم مسئولیت ترور شهید جاودانفر را برعهده گرفت” (ペルシア語). ایسنا (2024年1月17日). 2024年3月29日閲覧。
- ^ Siddiqui, Usaid. “Pakistan-Iran attacks updates: 9 killed near Iran’s southeast border” (英語). Al Jazeera. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Operation Marg Bar Sarmachar” (英語). mofa.gov.pk. 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan-Iran diplomatic ties restored after missile and drone strikes” (英語). (2024年1月19日) 2024年3月29日閲覧。
- ^ “Pakistan and Iran agree to work together to improve security after tit-for-tat airstrikes” (英語). AP News (2024年1月29日). 2024年3月29日閲覧。