2020年ミネアポリス反人種差別デモ

2020年ミネアポリス抗議活動
ジョージ・フロイド抗議運動内で発生
時計回りに上から:2020年5月26日の抗議参加者・抗議する参加者・放火されたミネアポリス市警察第3分署・放火された車の上に立つ参加者・破壊されたパトカーの上に立つ参加者。
日時2020年5月26日-
場所アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ミネソタ州ミネアポリス
原因ミネアポリス警察によるジョージ・フロイドの死に対する反応
手段広範囲にわたる暴動・略奪・攻撃・放火・抗議・物的損害
死傷者数
死者15 確定[1][2]
2 未確認[3]
起訴者
  • 合衆国全体:
  • 州及び地方自治体:
    • 91名 重罪の強盗[4]
    • 1名 警察殺害未遂[4]
    • 1名 違法車両操作[8]

2020年ミネアポリス反人種差別デモ(2020ねんミネアポリスはんじんしゅさべつデモ、: George Floyd protests in Minneapolis–Saint Paul)は、2020年5月にアメリカのミネソタ州ミネアポリスで発生した人種差別に抗議するデモ。ジョージ・フロイドの死に起因する。デモのさなかの暴動は全国・世界にまで影響し、一部の過激派が人種差別非難という本来の目的を逸脱した略奪や放火などの犯罪行為を行った。

概要[編集]

2020年5月25日黒人のジョージ・フロイドが、首を白人警官に押さえつけられた後に死亡する事件が発生した。フロイドが「息ができない」と訴え、死亡するまでを収めた動画が拡散し[9]5月26日には現場近くで数百人が「息ができない」と書いた紙を掲げるなどして警察の暴力に抗議した。逮捕に関わった警官4人は解雇され、1人は第2級殺人罪で、残る3人は第2級殺人の幇助・教唆罪で起訴された[10]5月27日ドナルド・トランプ大統領がフロイドの家族に悔やみを述べるツイートを投稿[11]。抗議活動は5月27日からエスカレートし、全米に拡大した[12]5月28日には抗議デモが暴徒化し、参加者の一部がミネアポリスの警察署に放火し、警察署が炎上した[12][13]ミネソタ州知事のティム・ワルツ英語版は非常事態宣言を行い州兵を出動させた[14]。暴動はニューヨークや[15]、カルフォルニアなどで[16]連日発生した。デモは全米の約140の都市に拡大し、暴徒化した参加者による店舗からの略奪、パトカーへの放火などが相次いだ[15][16]

ジョージ・フロイドの弟のテレンス・フロイドは6月1日、 兄が死亡した場所を初めて訪れ、拡声器を握りながら「暴力的な方法ではなく平和的な解決をしよう」と強い口調で訴えた。一番怒りを感じているのは自分だとした上で、破壊行為を続ける人へ「あなたたちがやっていることは何にもなりません。そんなことをしたって、兄は戻ってきません」と語り、政治への参加で社会を変えることを訴えた[17][18]

セントルイス市では6月1日に50軒以上の商店が略奪され、4人の警官が射殺、また77歳の元警察署長(黒人)が射殺された。この人物は引退後も友人の店の見回りをしており、抗議活動に便乗した10代から20代の200人もの略奪者の襲撃を受けたという[19][20]。この夜、他に4人の警察官が射殺され、他にも死傷者が出たほか、数十の企業が略奪の被害を受けたという。監視カメラの映像から元警官を射殺した実行犯が逮捕・起訴されている[21][22]。また、この件をCNNが報じなかったとFox Newsは指摘している[23]

デモの様子[編集]

デモ隊らはしばしば「I can't breathe(息ができない)」という死亡直前のフロイドの言葉を復唱し抗議した。プラカードには「No justice No peace」(正義なくして平和無し)、「Black Lives Matter」(ブラック・ライヴズ・マター)、「Good cops are dead cops」(善良な警察官は死んだ警察官だけ)といった内容が目立った。 トランプ大統領は同暴動から全米に波及した破壊活動についてアンティファの仕業であるとTwitterに投稿した[24]

ジョージア州では2月にジョギング中の黒人男性が射殺される事件英版記事があり、5月になってから現場を撮影した動画がインターネットで拡散し、容疑者の白人父子が逮捕されたばかりであった。このため同州では州都アトランタを中心に大規模なデモが起こり、一部が暴徒化した。5月29日には大手テレビ局CNNの本社が襲撃されてビルのガラスが割られるなどした。ジョージ・フロイドの事件においては警察側の主張に反証を示すなど、黒人を擁護する論調を展開したCNNが被害を受けたことから、デモの無秩序化が指摘されている[25]

一年記念行事[編集]

2021年5月にフロイドの死から1年となることを記念して、いくつかのイベントが行われた。フロイドの遺族によって設立されたNPO法人、ジョージフロイド記念財団は2021年5月23日にミネアポリスとニューヨークヒューストンで行進と集会を企画し、アメリカ国内であれば場所を問わない連邦警察改革支持を訴える2日間のヴァーチャル積極行動を呼びかけた[26][27][28][29]

2021年5月23日、フロイドの遺族と公民権運動家らはミネアポリスのダウンタウンに建つ、1ヶ月前に終結したばかりのショービン裁判とそれに伴う予想された混乱を受けて設置されたままのフェンスに囲まれた、ヘネピン郡政府センタービルの外で集会を開いた[30]。ジョージ・フロイドの姉妹であるブリジット・フロイド、黒人運動指導者のアル・シャープトン英語版、フロイドの遺族の専属弁護士であるベンジャミン・クランプなどが、数百人の観衆を前にスピーチを行った。公民権運動家たちは、フロイドの死が米国内の警察政策を変えるきっかけとなったことで、連邦警察改革法案の可決や、ジョージ・フロイドの死以外の警官による殺人事件においても検証が行われることを期待すると語った。また、イベントには同郡で地方検事を勤めた経験もある上院議員エイミー・クロブシャーや同じく上院議員ティナ・スミス英語版ミネソタ州知事ティム・ワルツ英語版と同州副知事のペギー・フラナガン英語版、ミネアポリス市長のジェイコブ・フレイ、セントポール市長のメルヴィン・カーターが出席した。集会ののち、参加者たちはミネアポリスのダウンタウンを行進した[31]

ミネソタ州知事のティム・ワルツは州全体に対して5月25日午後1時から、ショービンがフロイドの首を圧迫したのと同じ時間の長さである9分29秒英語版の黙祷を宣言した。ウォルツは次のように述べた[32]

ジョージ・フロイド殺害は、世界的な運動が起こし、黒人社会、先住民社会、有色人種社会が何世紀にもわたって抱えてきた体系的な人種差別について、多くのミネソタ州民や世界中の人々に悟らせました。

地図[編集]

2020年5月27日から同月29日にかけて、ミネアポリス・セントポール都市圏内の、市民的混乱が発生した主要な場所を示した地図を以下に記す:

動画[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Ryan Faircloth; Liz Navratil; Liz Sawyer; Matt McKinney (2020年5月28日). “Looting and flames erupt in Minneapolis amid growing protests over George Floyd's death”. Star Tribune. https://www.startribune.com/minneapolis-mayor-frey-calls-for-peace-as-looting-flames-erupt-around-police-station/570816112/ 2020年5月29日閲覧。 
  2. ^ Woman Found Dead Inside Car In North Minneapolis Amid 2nd Night Of Looting, Fires”. CBS Minnesota. CBS Minnesota. 2020年5月30日閲覧。
  3. ^ #LIVE: Minneapolis Responds To Police Murder of George Floyd (Livestream) (English). Unicorn Riot. 28 May 2020. See statement at 3:41:21.
  4. ^ a b c d Sepic, Matt (2020年12月10日). “Twin Cities man sentenced for arson from riots”. Minnesota Public Radio. 2020年12月17日閲覧。
  5. ^ Mannix, Andy; Walsh, Paul (2021年2月18日). “Rochester couple suspected in torching of St. Paul school, stores during civil unrest are caught in Mexico”. https://www.startribune.com/rochester-couple-suspected-in-torching-of-st-paul-school-stores-during-civil-unrest-are-caught-in-m/600024675/ 2021年2月18日閲覧。 
  6. ^ U.S. Attorney's Office, District of Minnesota (2021年4月7日). “Illinois Man Pleads Guilty To Arson Of Minneapolis Cell Phone Store”. United States Department of Justice. 2021年5月25日閲覧。
  7. ^ Mannix, Andy (2020年12月20日). “Court records, FBI contradict Trump's claims of organized 'antifa-led' riots in Minneapolis after George Floyd's death”. Star Tribune. 2020年12月21日閲覧。
  8. ^ Olson, Rochelle (2020年10月22日). “Truck driver who drove through George Floyd protesters on I-35W bridge is charged”. Star Tribune. 2020年10月25日閲覧。
  9. ^ 米ミネソタで警官4人解雇 黒人男性死亡、抗議も(写真=AP)”. 日本経済新聞 電子版. 2020年5月29日閲覧。
  10. ^ 黒人男性の暴行死事件、元警官4人全員を訴追 米ミネソタ州”. CNN (2020年6月4日). 2023年3月12日閲覧。
  11. ^ 米ミネアポリスで暴動 警官の暴行で黒人死亡、抗議…(写真=AP)”. 日本経済新聞 電子版. 2020年5月29日閲覧。
  12. ^ a b 時系列で見る、警官による黒人ジョージ・フロイドさん暴行死と各地で高まる抗議の声”. Business Insider Japan (2020年6月1日). 2023年3月12日閲覧。
  13. ^ 黒人死亡事件への抗議デモが激化、警察署に放火も 米ミネソタ州”. CNN. 2020年6月2日閲覧。
  14. ^ 黒人死亡で警察への抗議過激化、州兵出動 米ミネソタ州”. 産経ニュース (2020年5月29日). 2023年3月12日閲覧。
  15. ^ a b 全米デモ、収束の兆し見えず 黒人男性死亡から1週間”. 時事通信. 2020年6月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年6月2日閲覧。
  16. ^ a b アメリカ各地で抗議6日目、暴力も続く 警官による黒人男性死亡で”. BBC. 2020年6月2日閲覧。
  17. ^ 「左に平和を右に正義を!」フロイドさんの弟が、兄が亡くなった場所から平和的な解決を訴える”. ハフポスト (2020年6月2日). 2020年6月3日閲覧。
  18. ^ 暴動激化「兄は望んでいない」 死亡黒人男性の弟が呼び掛け”. 産経ニュース (2020年6月2日). 2023年3月12日閲覧。
  19. ^ American, Rebecca Rivas Of The St Louis. “Mayor sets curfew for City of St. Louis, black officers mourn passing of retired police chief David Dorn” (英語). St. Louis American(2020年6月2日). 2020年6月4日閲覧。
  20. ^ Gilbert, David (2020年6月3日). “Retired Police Captain David Dorn Was Shot During Protests in St Louis. His Death Was Streamed Live on Facebook.” (英語). Vice. 2020年6月4日閲覧。
  21. ^ Edmonds, Lauren (2020年6月8日). “Man is charged in the death of retired St. Louis police captain”. Mail Online. 2023年3月11日閲覧。
  22. ^ Edmonds, Lauren (2020年6月16日). “Second man charged in murder of retired police captain David Dorn”. Mail Online. 2023年3月11日閲覧。
  23. ^ Flood, Brian (2020年6月3日). “CNN did not mention on-air David Dorn, retired St. Louis police captain killed by looters” (英語). Fox News. 2020年6月4日閲覧。
  24. ^ Officials blame differing groups of 'outsiders' for violence” (英語). Star Tribune (2020年5月30日). 2020年5月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月30日閲覧。
  25. ^ 黒人死亡事件への抗議広がる デモ隊がCNN本社を襲撃」(朝日新聞デジタル、2020年5月30日)
  26. ^ WTVD (2021年5月20日). “Remembrance plans released for 1-year anniversary of George Floyd's death” (英語). ABC11 Raleigh-Durham. 2021年5月20日閲覧。
  27. ^ Haavik, Emily (2021年5月20日). “'God always gives me the strength': George Floyd's sister reflects on one year since his murder” (英語). KARE-11. 2021年5月20日閲覧。
  28. ^ Bragg, Ndea Yancey (2021年5月20日). “'We will celebrate my brother's life': George Floyd's family to hold rallies, marches for one-year anniversary of his death” (英語). USA Today. https://www.usatoday.com/story/news/nation/2021/05/20/george-floyd-anniversary-events-planned-minneapolis-houston-nyc/5181874001/ 2021年5月24日閲覧。 
  29. ^ "Convicting Chauvin is not enough": Leaders urge reform at rally marking 1 year since George Floyd's death”. CBS News. 2021年5月24日閲覧。
  30. ^ Barricades, fencing start to come down outside buildings in downtown Minneapolis” (英語). KSTP-TV. 2021年5月24日閲覧。
  31. ^ Bierschbach, Briana (2021年5月23日). “Families, civil rights leaders reflect on one year since George Floyd's killing”. Star Tribune. https://www.startribune.com/families-civil-rights-leaders-reflect-on-one-year-since-george-floyd-s-killing/600060500/ 2021年5月24日閲覧。 
  32. ^ Jacobsen, Jeremiah (2020年5月24日). “Statewide moment of silence planned Tuesday on anniversary of George Floyd's death”. KARE-11. https://www.kare11.com/article/news/local/george-floyd/moment-of-silence-on-anniversary-of-george-floyds-death/89-68fcf42d-4f1e-4571-8d18-eec5a28a8b90 2020年5月24日閲覧。 

関連項目[編集]