龍の子太郎

龍の子太郎
ジャンル 児童文学
小説
著者 松谷みよ子
出版社 講談社
発売日 1960年
その他 講談社児童文学新人賞受賞
国際アンデルセン賞優良賞受賞
サンケイ児童出版文化賞受賞[1]
ドラマ
放送局 TBS
放送期間 1963年9月7日 - 1963年10月26日
話数 8話
その他 人形劇で制作
映画
原作 松谷みよ子
監督 浦山桐郎
音楽 真鍋理一郎
製作 東映動画
配給 東映
封切日 1979年3月17日
上映時間 75分
その他 アニメーション映画で制作
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ポータル 文学

龍の子太郎』(たつのこたろう)は、松谷みよ子児童文学である。本作を原作として漫画テレビ番組アニメーション映画が製作されたほか、人形劇ストレートプレイミュージカル、マスクプレイ、舞踊劇などの舞台化もされている。

概要[編集]

本作は、長野県信州上田に伝わる民話小泉小太郎』と安曇野に伝わる民話『泉小太郎』を中心に、秋田の民話など日本各地に伝わる民話を組み合わせ、再話している。

執筆は長野県の地獄谷温泉木谷實の妻の実家が経営する旅館「後楽館」に滞在しながら行われた[2]。創作の過程は松谷の自著『民話の世界』に詳しい[3]

松谷は本作品で第1回講談社児童文学新人賞国際アンデルセン賞優良賞などを受賞した。

あらすじ[編集]

怠け者の太郎は、おばあさんから母がの姿になってしまったと聞かされる。龍となった母を探しに太郎は旅に出る。

漫画[編集]

少女月刊誌『りぼん』の長編読み切り付録シリーズ「りぼんカラーシリーズ」の一環として、「原作・松谷みよ子、絵・藤木輝美」名義で、1964年6月号付録に掲載された[4]

テレビ番組[編集]

TBSの児童向け番組シリーズ『明星杉の子劇場』の第1弾として放送。内容は人形劇となっている。全8話。

製作局のTBSでは1963年9月7日から同年10月26日まで、毎週土曜 13:30 - 14:00 (日本標準時)に放送。明星食品の一社提供。

TBS 土曜13:30枠
前番組 番組名 次番組
龍の子太郎
(1963年9月7日 - 1963年10月26日)
図々しい奴 再放送
※13:30 - 14:30
TBS 明星杉の子劇場
-
龍の子太郎
(1963年9月7日 - 1963年10月26日)
※土曜13:30枠
乞食と若様
(1963年11月4日 - 1963年12月30日)
※月曜18:00枠

アニメーション映画[編集]

龍の子太郎
監督 浦山桐郎
脚本 浦山桐郎、三井隆史
原作 松谷みよ子
ナレーター 黒田絢子
出演者 加藤淳也
冨永みな
吉永小百合
ほか
音楽 真鍋理一郎
主題歌 「龍の子太郎のうた」
製作会社 東映動画
配給 東映
公開 日本の旗 1979年3月17日
上映時間 75分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
配給収入 6.5億円[5]
前作 世界名作童話 おやゆび姫(1978年3月)
次作 世界名作童話 森は生きている(1980年3月)
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1979年3月17日に『東映まんがまつり』にて公開。公開年が「'79国際児童年」であることを記念し、その協賛作品として製作された[6]。製作は東映動画(現・東映アニメーション)が、配給は東映が担当。

監督には、1962年公開の実写映画『キューポラのある街』で知られる浦山桐郎を迎えた。実写映画の監督がアニメーションの監督を務める場合、脚本以外の実作業をアニメスタッフに一任するケースが多いが、浦山は絵コンテ作成や原画チェックなどにも深く関わった[7]。作画監督の小田部羊一の回想では、当初のシナリオ(演出助手が執筆)が不評と知ると自ら数日で書き直して「みんなを唸らせた」が、絵は不得手で「マルチョン」(人物を簡略化した絵)の絵コンテ葛西治が「苦労して清書してい」たという[8]。また、「アニメーション畑」の小田部にとって「新鮮な要求」もしてきたと述べている[8]

龍役の声優には、日活女優であった吉永小百合が起用された。

本作は文部省特選作品となっている[9]

本作公開時の『東映まんがまつり』では、児童客に「匂いの出るシート」を配布していた。これは作品内各シーンにおける匂いを演出するためのもので、表面にはいくつかの番号が振られていた。上映中、シートを擦って匂いを出してほしい場所の番号を適宜字幕で指示し、それに合わせて観客に擦らせることでシーンに合う匂いを体感させていた。

東映作品のオープニングに登場する「荒磯に波」の映像は、本作をもって3代目バージョンに変更された。

なお、大塚康生の回想によると、東映動画が『太陽の王子 ホルスの大冒険』を制作する際に、最初に企画として検討された(1965年)のが『龍の子太郎』だったが「久しぶりの長編アニメーションにふさわしいスケールが不十分と思えたこと」を理由に差し替えとなった[10]。本作はそれ以来14年越しでのアニメ映画化となる。作画監督の依頼を受けた小田部羊一は、演出(監督)として『ホルス』の高畑勲を希望条件としてあげたが、東映動画側は「高畑は絶対に認められない」と返答したという[11]

登場人物[編集]

太郎
- 加藤淳也
あや
声 - 冨永みーな
赤鬼
声 - 熊倉一雄
黒鬼
声 - 北村和夫
にわとり長者
声 - 黒田絢子(ナレーター兼務)
太郎のお婆さん
声 - 矢吹寿子
山姥
声 - 樹木希林
白蛇
声 - 左奈田恒夫
天狗
声 - 酔銘亭桐庵(浦山桐郎)
声 - 吉永小百合(特別出演)

スタッフ[編集]

  • 脚本 - 浦山桐郎、三井隆史
  • 監督 - 浦山桐郎
  • アニメーション演出 - 葛西治
  • 企画 - 有賀健 山口康男
  • キャラクターデザイン・作画監督 - 小田部羊一奥山玲子(小田部の妻)
  • 美術監督 - 土田勇
  • 原画 - 阿部隆、角田紘一、金山通弘、木野達児、小川明弘、広田全、的場茂夫、才田俊次、荒木伸吾、高野登、石黒育
  • 動画 - 薄田嘉信、小林敏明、坂野隆雄、金山圭子、服部照夫、石山毬緒、山田みよ、長沼寿美子、八島善孝、円山智、草間真之介、山崎久、小松良江、岩井美登理、松村啓子、加藤良子、上野茂々子、三原武憲、石黒益美、上梨一也、島田和義、村上由美、中島裕子、池田淳子、大塚多恵子、三好史子、大塚伸治、佐藤弘美、森本知
  • ゼログラフ - 村松錦三郎 戸塚友子
  • トレース - 奥西紀美代 黒沢和子、 坂野園江、五十嵐令子 
  • 彩色 - 阿部慶子、後藤美津子、山内正子、古屋純子
  • 特殊効果 - 岡田良明、平尾千秋
  • 仕上検査 - 小椋正豊、衣笠一雄
  • 仕上進行 藤本芳弘
  • 背景 - 海老沢一男、田中資幸、松本健治
  • 美術進行 - 阿久津文雄
  • 演出助手 - 遠藤勇二
  • 記録 - 伊達悦子
  • 製作進行 - 和久田俊文
  • 撮影 - 山田順弘、高梨洋一
  • 編集 - 千蔵豊
  • 録音 - 波多野勲
  • 音響効果 - 伊藤道広
  • 録音スタジオ - タバック
  • 現像 - 東映化学
  • タイトル文字 - 星野忠雄
  • 音楽 - 真鍋理一郎
  • 予告編ナレーター - 矢田耕司
  • 制作 - 東映動画

主題歌[編集]

「龍の子太郎のうた」
作詞 - 若林一郎、浦山桐郎 / 作曲・編曲 - 真鍋理一郎 / 歌 - 加藤淳也

同時上映[編集]

テレビ放送[編集]

1981年1月3日(土曜) 19:30 - 20:54 (日本標準時)には、テレビ朝日その系列局で『新春こどもアニメ劇場』として放送された[12]。このテレビ放送ではオープニングテーマが1コーラスに縮小され、クレジット表示もスクロール方式、クレジットロゴもメインタイトルと同じ星野忠雄による自筆体からゴシック体に変更されていた。これに伴い星野忠雄のクレジットも、「タイトル文字」から「メインタイトル」に変更された。

なお、テレビ朝日は当日の13:00 - 15:00にも、同じく『東映まんがまつり』上映作品である『太陽の王子 ホルスの大冒険』を放送していた。

ビデオソフト[編集]

配給元の東映から、本作を収録したVHSビデオソフト、レーザーディスクビデオソフト、DVDビデオソフト(2010年2月21日)が発売された。ビデオ製作はいずれも東映ビデオが担当。

なお、同じく東映から発売されたDVDシリーズ『復刻!東映まんがまつり』のラインナップに本作は入っておらず、今のところ同シリーズでのDVD発売予定もない。

舞台劇[編集]

人形劇やマスクプレイを除く。

1965年公演
公演 - 劇団たんぽぽ / 脚色 - 志水伸
1967年公演
公演 - 関西芸術座 / 脚色 - 新屋英子 / 太郎 - 綿岡好枝
1972年公演 (1)
公演 - 樹の会 / 脚色 - 松谷みよ子、高瀬精一郎 / 太郎 - 花柳伊兵衛
1972年公演 (2)
公演 - 平多正於舞踊公演 / 脚色 - 有賀二郎 / 太郎 - 千野美子
1976年公演
公演 - 劇団はぐるま / 脚色 - 藤本昭 / 太郎 - 岩成知子
1990年公演
公演 - こどもの城青山劇場 / 脚色 - 遠藤啄郎 / 太郎 - 二代目中村梅雀[13]
1996年公演
公演 - 教育演劇研究協会(劇団たんぽぽ)[14] / 脚色 - 竹井岳史[14] / 演出 - 熊井宏之[14]
2007年公演
公演 - 劇団前進座[15] / 脚色 - 山本響子 / 太郎 - 水上琴野[15]
2011年公演
公演 - 劇団はぐるま[16] / 脚色 - 藤本昭[16] / 演出 - なみ[16]

備考[編集]

  • 後楽館では松谷が宿泊した部屋を「龍の子太郎の部屋」として保存している[2]
  • まんが日本昔ばなし』(毎日放送)のオープニングに、龍の子太郎をモチーフにした映像が採用されている。一方で、同シリーズでは「龍の淵」「小太郎と母龍」「二ツ池の龍」「男滝の龍」などの龍にまつわる作品がいくつか放送されているが、本作そのものを放送した回はない[17]
  • アニメ『桃太郎伝説』では、太郎をモデルとした「龍神太郎」という人物がメインキャラとして登場する。

脚注[編集]

  1. ^ 森井弘子. “龍の子太郎/財団法人 大阪国際児童文学振興財団”. 一般財団法人 大阪国際児童文学振興財団. 2018年8月2日閲覧。
  2. ^ a b 囲碁 新布石発祥の地”. 地獄谷温泉後楽館. 2023年6月2日閲覧。
  3. ^ 松谷みよ子『民話の世界』PHP研究所、2005年、ISBN 978-456963818-8
  4. ^ 『「子どもの昭和史 少女マンガの世界Ⅱ」』平凡社、1991年10月17日、38頁。 
  5. ^ 「1979年邦画四社<封切配収ベスト作品>」『キネマ旬報』1980年(昭和55年)2月下旬号、キネマ旬報社、1980年、124頁。 
  6. ^ ストーリー - 龍の子太郎 - 作品ラインナップ - 東映アニメーション”. 東映アニメーション. 2017年12月1日閲覧。
  7. ^ 叶精二『日本のアニメーションを築いた人々』若草書房、2004年、pp.112 - 113
  8. ^ a b 叶精二『日本のアニメーションを築いた人々』若草書房、2004年、pp.76 - 77
  9. ^ 『アニメチラシ大カタログ 邦画版』勁文社、2000年、28頁。 
  10. ^ 大塚康生『作画汗まみれ 改訂最新版』文藝春秋文春文庫》、2013年、pp.161 - 163。「久しぶりの長編」とあるのは、『ガリバーの宇宙旅行』(1965年公開)のあと、長編の制作が控えられていたことによる。
  11. ^ 叶精二『日本のアニメーションを築いた人々』若草書房、pp.111 - 112
  12. ^ 読売新聞読売新聞社、1981年1月3日付のラジオ・テレビ欄。 
  13. ^ 中村梅雀 プロフィール”. 中村梅雀公式サイト. 2017年12月1日閲覧。
  14. ^ a b c 児童演劇の全国縦断公演 | 事業一覧 | 日本財団 図書館”. 日本財団. 2017年12月1日閲覧。
  15. ^ a b 水上琴野 (2007年12月22日). “劇団前進座 龍の子太郎班プログ 千穐楽、ばんざーい!!”. 2017年12月1日閲覧。
  16. ^ a b c 龍の子太郎”. 劇団はぐるま. 2017年12月1日閲覧。
  17. ^ 参考:まんが日本昔ばなし〜データベース〜

外部リンク[編集]

  • 太田浩子「伝承と子どもを結ぶもの : 松谷みよ子『龍の子太郎』をめぐって」『東京女子大学附属比較文化研究所紀要』第47号、東京女子大学、1986年、p95-104、CRID 1050282812634320896ISSN 05638186NAID 110007187638 
  • 龍の子太郎 - 作品ラインナップ - 東映アニメーション
  • 龍の子太郎 - allcinema
  • 龍の子太郎 - KINENOTE
  • Taro the Dragon Boy (1979) - Kiriro Urayama - オールムービー(英語)
  • Tatsu no ko Tarô (1979) - IMDb(英語)