高原熊野神社

高原熊野神社
所在地 和歌山県田辺市中辺路町高原1120
位置 北緯33度47分39.49秒 東経135度31分45.26秒 / 北緯33.7943028度 東経135.5292389度 / 33.7943028; 135.5292389座標: 北緯33度47分39.49秒 東経135度31分45.26秒 / 北緯33.7943028度 東経135.5292389度 / 33.7943028; 135.5292389
主祭神 速玉大神
社格村社
創建応永9年(1402年
本殿の様式 春日造檜皮葺
別名 高原王子
例祭 10月10日
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高原熊野神社(たかはらくまのじんじゃ)は和歌山県田辺市中辺路町高原にある神社。正式名称は「熊野神社」。高原王子とも呼ばれ、社格旧村社。高原集落の熊野古道中辺路に面した場所に鎮座し、本殿は和歌山県指定有形文化財(建造物、昭和36年〈1961年〉4月18日指定)である[1]。境内地の景観は名勝南方曼荼羅の風景地」(2015年平成27年〉10月7日指定)の一部[2]

祭神[編集]

神体である懸仏の裏面に、若王子を熊野から勧請したとのがある。また、大山祇神素盞男神地主神稲荷神金刀比羅神を配祀している。

歴史[編集]

社伝によれば、応永9年(1402年)に熊野本宮大社から勧請したのに創まるというが[3]、上述懸仏の裏面の銘は「応永十年癸未卯月廿七日」と創建を翌10年とするので、いずれにせよ応永年間(1394年 - 1428年)の創祀と推定される。当社は、文明5年(1474年)の『王子記』には「高原王子」と記されるが[4]、平安時代から鎌倉時代にかけての記録に当社の存在は確認されず、九十九王子のうちには通常数えられない[5]。『紀伊続風土記』は、当時「熊野権現社」と呼ばれて村の産土神であったこと、周囲116の境内に本殿拝殿があったことを伝えている[6]

鎮座地の高原(たかはら)は富田川左岸の尾根上に位置する集落で、史料上では平安時代の『中右記天仁2年(1109年)10月23日条に初出し、『吉記承安4年(1174年)9月30日には雨をさけて昼食をとったとあるが[7]、宿所とはされず、『いほぬし』や『中右記』では高原をすぎた山中の水飲仮屋を宿所としていることから見て、集落の形成は南北朝時代と見られる[8]。また、「熊野道之間愚記」(『明月記』所収)建仁元年(1201年)には、高原での情景を詠んだ歌が記録されている[7]

足利義満側室の北野殿一行の『熊野詣日記』応永34年(1427年)には往復とも当地に宿をとったとあるように[7]室町時代以降、近世までに熊野への参詣道が潮見峠越えに移行してからも高原は街道筋から離れることがなかった[9]明治元年(1868年)に「熊野神社」を正式社名とし、同6年4月に村社列格、40年(1907年)4月には神饌幣帛料供進社に指定された。なお、当神社とともに高原から富田川河畔に下ったところにある芝集落も街道宿として知られ、大正時代までは旅籠駕籠屋もあったが[10]、富田川沿いに自動車動が通じるとさびれた[11]。今日では集落の手により熊野古道を探訪する人のための休憩所が設けられている[12]

社殿[編集]

春日造檜皮葺の本殿は天文元年(1532年)の造替にかかるもので、中辺路沿いでは最古の建築物と見られ[13]、後世に修復がなされているが、軸部と内陣の宮殿(厨子)は室町時代前期の様式をとどめている[6]。和歌山県指定有形文化財(建造物、昭和36年〈1961年〉4月18日指定)[1]

境内社[編集]

  • 大山神社

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  1. ^ a b 県指定文化財・有形文化財・建造物”. 和歌山県教育委員会. 2021年2月24日閲覧。
  2. ^ 田辺市の指定文化財 -記念物-”. 田辺市教育委員会. 2021年2月21日閲覧。
  3. ^ 和歌山県神社庁 [1995]。なお『紀伊続風土記』がこの社伝を伝える。
  4. ^ 長谷川[2007: 128]
  5. ^ 熊野路編さん委員会[1973: 86]
  6. ^ a b 平凡社[1997: 260]
  7. ^ a b c 「角川日本地名大辞典」編纂委員会[1985: 639]
  8. ^ 小山[2000: 147]
  9. ^ 小山[2000: 163]
  10. ^ 宇江[2004: 138-139]
  11. ^ 「角川日本地名大辞典」編纂委員会[1985: 640]
  12. ^ 宇江[2004: 138-139]、高原熊野神社と霧の里”. なかへち観光協会. 2009年5月16日閲覧。
  13. ^ 宇江[2004: 147]、熊野路編さん委員会[1973: 86]

参考文献[編集]

  • 宇江敏勝、2004、『世界遺産熊野古道』、新宿書房 ISBN 4880083216
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会編、1985、『和歌山県』、角川書店(角川日本地名大辞典30) ISBN 404001300X
  • 熊野路編さん委員会、1973、『古道と王子社 - 熊野中辺路』、熊野中辺路刊行会(くまの文庫4)
  • 小山 靖憲、2000、『熊野古道』、岩波書店(岩波新書) ISBN 4004306655
  • 長谷川 靖高、2007、『熊野王子巡拝ガイドブック』、新風書房 ISBN 9784882696292
  • 平凡社編、1997、『大和・紀伊寺院神社大事典』、平凡社 ISBN 458213402-5
  • 和歌山県神社庁教化委員会・神社誌編集委員会編、1995、『和歌山県神社誌』、和歌山県神社庁

関連項目[編集]

外部リンク[編集]