飯岡幸子

飯岡 幸子(いいおか ゆきこ、1976年[1] - )は日本の映画カメラマン・写真家。撮影監督として関わった濱口竜介の映画『偶然と想像』などで知られる。

来歴[編集]

飯岡は福岡県宗像市生まれで[2]、高校時代から映画への関心を深め、上京後に映画美学校で映像製作を学ぶ[3]。このときドキュメンタリー作家の佐藤真らの薫陶を受けている。ドキュメンタリー作品ワークショップで製作した『オイディプス王/ク・ナウカ』(2000年)が最初の監督作品となり[4]、次いで当時教壇に立っていた是枝裕和をアドバイザーとして、修了作品『ヒノサト』(2002年)を監督・撮影[5]

映画美学校を修了後、東京藝術大学大学院映画専攻へ進み、撮影・照明コースを専修。在学中に製作された『愚か者は誰だ』などの作品にカメラマンとして参加。以後、比較的若い監督の作品に加わり撮影を手がけるようになる。濱口竜介ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞して世界的な名声を博するきっかけとなった[6]偶然と想像』の撮影では、第42回マナキ・ブラザーズ国際撮影監督映画祭コンペティション部門に選出されている[7]。また杉田協士は、飯岡の『ヒノサト』に感銘を受けたとして、2024年までに製作した自身の長篇4作品すべてを飯岡の撮影で製作している。

作風としては、劇映画であっても現場の空気感を重視したドキュメンタリー的な画面づくりに特徴があるとされ[8]、「フレーム外の広がりをつねに感じさせる」などと評される[9]。飯岡自身は、撮影前にどのような絵作りを行うか仔細に検討するよりも、「あくまで現場という空間の中で、カメラを置く位置を考えて」ゆく、「(撮影現場の)場所の広さや光の向き、人の位置などの条件や物語の流れを考えていけば、然るべき場所というのが必ずある」「すでにあるその場所を探し出すのが撮影の仕事だという感覚」と自身の撮影スタイルを振りかえっている[3]

写真家としての活動に、2017年に初の展示形式で作品を発表した「永い風景」展などがある[10]

主な作品[編集]

監督作品[編集]

製作年 題名 分数 備考
2000 オイディプス王/ク・ナウカ 28分 映画美学校での課題製作[4]
2002 ヒノサト 42分 映画美学校での修了製作[5]

撮影作品[編集]

製作年 題名 分数 監督 備考
2002 ふくしゅう 40分 金子裕昌 撮影参加。映画美学校での課題制作。
2006 新訳:今昔物語 88分 渡辺裕子ほか 東京藝術大学大学院での課題製作。オムニバス作品。
2010 愚か者は誰だ 28分 渡辺裕子 東京藝術大学大学院での課題製作。
2011 Rocks Off 92分 安井豊作
2011 ひとつの歌 100分 杉田協士
2011 くじけないで手紙を書いた 34分 杉田協士
2013 うたうひと 120分 濱口竜介・酒井耕 撮影参加。
2014 遠くの水 23分 杉田協士
2017 ひかりの歌 143分 杉田協士
2019 シスターフッド 87分 西原孝至
2021 偶然と想像 121分 濱口竜介
2021 春原さんのうた 120分 杉田協士
2021 三度目の、正直 112分 野原位
2022 すべての夜を思いだす 116分 清原惟
2022 背中 106分 越川道夫
2023 夢の涯てまで 24分 草野なつか オムニバス作品『広島を上演する』の一篇。
2023 彼方のうた 84分 杉田協士
2024 明るいニュース 30分 城真也

インスタレーション撮影など[編集]

  • 青柳菜摘『彼女の権利——フランケンシュタインによるトルコ人,あるいは現代のプロメテウス』(ICC、2019年)[11]

出典[編集]

  1. ^ 飯岡幸子”. KINENOTE. キネマ旬報社. 2024年4月20日閲覧。
  2. ^ 飯岡幸子『ヒノサト』(映画美学校、2002)
  3. ^ a b 飯岡幸子 著、中里若葉 編、(インタビュアー:井戸沼紀美)「エンドロールはきらめいて-えいがをつくるひと-Profession #3 撮影 飯岡幸子」『Hanako Web』、マガジンハウス、2023年7月18日https://hanako.tokyo/culture/385590/2024年4月18日閲覧 
  4. ^ a b オイディプス王/ク・ナウカ”. 映画美学校. 2024年4月18日閲覧。
  5. ^ a b ヒノサト”. 映画美学校. 2024年4月18日閲覧。
  6. ^ Dargis, Manohla (2021年11月24日). “‘Drive My Car’ Review: A Director Takes Your Heart for a Spin” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2021/11/24/movies/drive-my-car-review.html 2024年4月20日閲覧。 
  7. ^ 濱口竜介監督 第71回ベルリン国際映画祭 銀熊賞(審査員グランプリ)受賞、第22回東京フィルメックスオープニング作品観客賞受賞”. 映画『偶然と想像』公式サイト. 2024年4月18日閲覧。
  8. ^ Dargis, Manohla (2021年10月14日). “‘Wheel of Fortune and Fantasy’ Review: What We Talk About” (英語). The New York Times (The New York Times Company). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2021/10/14/movies/wheel-of-fortune-and-fantasy.html 2024年4月19日閲覧。 
  9. ^ 『nobody MUG』第9号、2024年3月。 
  10. ^ 飯岡幸子展「永い風景」”. コ本や honkbooks (2020年7月2日). 2024年4月18日閲覧。
  11. ^ ICC | 《彼女の権利——フランケンシュタインによるトルコ人,あるいは現代のプロメテウス》 - 青柳菜摘 (2019)”. NTT インターコミュニケーション・センター [ICC]. 2024年4月20日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]