風塵抄

風塵抄』(ふうじんしよう)は、司馬遼太郎による随筆集。産経新聞で、1986年(昭和61年)5月から1996年(平成8年)2月まで、おおむね毎月第一月曜日・朝刊1面に掲載された。

概要[編集]

連載に先立ち、司馬は「身体髪膚に即したこと」だけをテーマとする方針を立てていた。しかしながら、執筆内容は次第に歴史観や文化・言語論、時事や事件等、政治経済の話題にも及ぶ様になる。特に1990年1991年湾岸戦争に、1995年阪神・淡路大震災オウム真理教に多く触れている。なお1994年北朝鮮に関し3度執筆しているが、いずれも北朝鮮主席だった金日成死去の前に掲載された。

No.81〜85「在りようを言えば」(1)〜(5)は、産経新聞創刊60周年記念として1993年1月4日・5日・6日・8日・9日に連載された特別編。No.86〜87「台湾で考えたこと」(1)〜(2)は「街道をゆく 台湾紀行」の取材で、台湾滞在中の司馬自身が申し出て1993年1月13日・14日に連載された番外編に当たる。

最終話となったNo.126「日本に明日をつくるために」は、司馬の急死と同日となった1996年2月12日付で掲載。住専破綻(地価高騰によるバブル経済処理問題)を取り上げ、改めて日本の行く末への警鐘を鳴らしている。

一巻目巻末に、昭和天皇崩御に触れた特別寄稿「空(くう)に徹した偉大さ」を、二巻目巻末に、連載開始時の担当者だった福島靖夫が、連載時の交流回想「司馬さんの手紙」を寄稿した。福島の没後に刊行した「往復手紙」で克明なやり取りが窺える。

目次[編集]

右記は触れている時事問題
  1. 都市色彩の中の赤
  2. 言語の魅力
  3. 正直
  4. 高貴なコドモ
  5. 四十の関所
  6. 自己について
  7. ことばづかい
  8. 顔を振る話
  9. 男の化粧
  10. 受験の世
  11. やっちゃん
  12. スクリーン
  13. “独学”のすすめ
  14. おばあさん
  15. 風邪ひき論
  16. 電車と夢想
  17. 握手の文化
  18. 熱いフライパン - 地価急騰
  19. 歯と文明
  20. 呼び方の行儀
  21. 職業ドライバー
  22. 歩き方
  23. イースト菌と儀式
  24. おサルの学校
  25. 殿と様と奥様
  26. 名前を考える
  27. 窓をあけて
  28. 表現法と胡瓜
  29. 心に素朴を
  30. よき象徴を
  31. “聴く”と“話す”
  32. 都会と田舎
  33. 自助と独立
  34. 威張る話
  35. 若葉と新学期
  36. “宇和島へゆきたい”
  37. “公”と“私” - 天安門事件
  38. たかが身長のために - 流行語「三高
  39. 日本というものの把握を
  40. 靴を脱ぐ話
  41. 金太郎の自由
  42. 国土
  43. 差別
  44. 日本的感性
  45. 海岸砂丘
  46. カセット人間
  47. 花祭
  48. 大丈夫でしょうか - 地価急騰
  49. 好き
  50. お天気屋
  51. 変る
  52. 病院
  53. 忠恕のみ
  54. スマート - 湾岸戦争
  55. 物怪(もののけ)
  56. 新について
  57. 石油 - 湾岸戦争
  58. 平和 - 湾岸戦争
  59. 胸の中 - 兵庫県立農業高等学校答案改竄事件
  60. 大きな荷物
  61. ピサロ - 相次ぐ日本企業による名画落札
  62. 悲しみ
  63. 常人の国
  64. 大領土 - ゴルバチョフによるソ連共産党解体
  65. 兵庫船 - ペレストロイカ
  66. 日本国首相 - 宮沢喜一内閣成立
  67. 真珠湾(1)
  68. 真珠湾(2)
  69. 議論(ディベイト)
  70. 鼻水 - 花粉症
  71. 写真家の証言 - 日米貿易摩擦
  72. 窓を閉めた顔
  73. 電池 - 政治改革
  74. 悪魔
  75. 地雷 - カンボジア
  76. 壷中の天
  77. オランダ
  78. バナナ
  79. 涙 - クリントン政権誕生
  80. 在りようを言えば(1) ジッチョク
  81. 在りようを言えば(2) 物指し - 日本の対アジア協調外交
  82. 在りようを言えば(3) 実と虚
  83. 在りようを言えば(4) 十円で買える文明 - 政界腐敗
  84. 在りようを言えば(5) 山椒魚 - カンボジア国連平和維持活動(PKO)派遣
  85. 台湾で考えたこと(1) 公と私
  86. 台湾で考えたこと(2) 権力
  87. 一貫さん
  88. 独創
  89. 蟠桃賞
  90. 古アジア - 金丸信衆議院議員逮捕
  91. 私語の論 - 荒れる成人式
  92. つつしみ - 皇太子徳仁親王雅子妃の婚姻
  93. “国民”はつらいよ - 第40回衆議院議員総選挙
  94. させて頂きます
  95. 一芸の話 - 細川護熙連立政権誕生
  96. 飼いならし
  97. 島の物語 - 北方領土
  98. 文化
  99. 正直さ - バブル経済崩壊
  100. 泥と飛行艇 - 細川護熙連立政権
  101. 湯の中
  102. 誇り - 北朝鮮
  103. 古人の心
  104. 永久凍土 - 北朝鮮
  105. 文化の再構築
  106. 古代・中世 - 北朝鮮
  107. 黄金のような単純
  108. 世界の主題
  109. 日本語の最近
  110. 二人の市長
  111. 戦前の日本人
  112. 市民の尊厳 - 阪神・淡路大震災
  113. 渡辺銀行
  114. 持衰(じさい) - 阪神・淡路大震災
  115. 自集団中心主義(エスノセントリズム) - オウム真理教
  116. 自我の確立 - オウム真理教
  117. “オウム”の器具ども - オウム真理教
  118. 恥の文化
  119. 自由という日本語
  120. なま解脱 - オウム真理教
  121. マクラ西瓜
  122. 人間の風韻
  123. 若さと老いと
  124. 日本に明日をつくるために - 住専破綻

書籍[編集]

関連文献
  • 『もうひとつの「風塵抄」 司馬遼太郎・福島靖夫 往復手紙』(中央公論新社、2000年/中公文庫、2004年)
  • 『「追悼の司馬遼太郎」 司馬遼太郎さんと私』(夕刊フジ編、産経新聞社、1997年)- 手紙の抜粋を収録