野郎どもと女たち

野郎どもと女たち
Guys and Dolls
監督 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
脚本 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ
ベン・ヘクト[1]
原作 デイモン・ラニアン
The Idyll of Miss Sarah Brown
Blood Pressure
ミュージカル脚本
ジョー・スワーリング英語版
エイブ・バロウズ英語版
フランク・レッサー(作詞)
ガイズ&ドールズ
製作 サミュエル・ゴールドウィン
出演者 マーロン・ブランド
ジーン・シモンズ
フランク・シナトラ
音楽 フランク・レッサー
撮影 ハリー・ストラドリング
編集 ダニエル・マンデル
製作会社 サミュエル・ゴールドウィン・プロダクションズ
配給 MGM
公開 アメリカ合衆国の旗 1955年11月3日
日本の旗 1956年4月7日
上映時間 150分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $5,500,000[2]
興行収入 日本の旗 ¥360,000,000[要出典]
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野郎どもと女たち』(やろうどもとおんなたち、Guys and Dolls)は1955年アメリカ合衆国ミュージカル映画マーロン・ブランドジーン・シモンズフランク・シナトラヴィヴィアン・ブレイン英語版などが出演した。サミュエル・ゴールドウィン・プロダクションズが製作、MGMが配給した。ジョーゼフ・L・マンキーウィッツが監督および脚本を担当した。

デイモン・ラニアンの2つの短編『"The Idyll of Miss Sarah Brown"』(1933年)および『Blood Pressure』を大まかに原作としている、フランク・レッサー作詞作曲、ジョー・スワーリング英語版およびエイブ・バロウズ英語版脚本、ブロードウェイミュージカルガイズ&ドールズ』を映画化した作品である[3]。ブロードウェイ公演の振付を担当したマイケル・キッド英語版が本作の振付も担当した。

ストーリー[編集]

賭博師のネイサン・デトロイトは無認可のクラップゲーム賭場を開きたいのだが、ブラニガン警部をチーフとしたニューヨーク市警の取締りが厳しい。ネイサンのいつもの場所はブラニガン警部の威圧によりネイサンを締め出す。ビルトモア倉庫が場所を貸そうとするが、オーナーはネイサンにとって大金の前金千ドルを要求する。さらにネイサンの14年に亘る婚約者でナイトクラブ歌手のミス・アデレイドは結婚したがる。アデレイドはネイサンに更生してほしいが、ネイサンは違法賭博しかできない。

ネイサンは、いかなる高額な賭けにも挑戦するギャンブラーで旧知のスカイ・マスタースンと会う。前金千ドルを獲得するため、ネイサンが選んだ女性をスカイがキューバハバナで夕食を共にできるかどうか賭ける。ネイサンは賭博に反対する救世軍のシスターであるサラ・ブラウン軍曹を指名する。

スカイは賭博を後悔している振りをしてサラに会いに行く。スカイはハバナで夕食を共にしてくれるなら、木曜夜の集会で行なわれる布教活動に10人以上の罪人を参加させると提案する。マチルダ・カートライト将軍から参加者が少ないためブロードウェイ支部を閉鎖すると脅され、サラはネイサンとのデートに同意する。

ネイサンは賭けに勝つと確信し、ハリー・ザ・ホースが招待したマフィアのビッグ・ジュールを含む多くの賭博師を集める。ブラニガン警部がやってきて、ベニー・サウスストリートはネイサンとアデレイドの結婚祝いをやっていると主張する。ネイサンは驚くが、ベニーに合わせざるを得ない。その後ネイサンは賭けに負けたことを知り、アデレイドと結婚せねばならない。

短期間のキューバでの滞在中、スカイはバカルディを入れたミルクセーキでサラの心をひらかせる。2人は互いに恋に落ち始める。2人が夜明けにブロードウェイに戻ると、スカイの助言で一晩中パレードをしていた救世軍のバンドと出会う。警察のサイレンが聞こえ、ネイサン率いる賭博師たちはクラップゲームをしていた救世軍の裏の部屋から逃げ出す。

警察が到着した時にはもう賭博師たちは逃げ出していたが、ブラニガン警部はサラおよび救世軍のメンバーがいなかったことにスカイが関わっているのではないかと疑う。サラも同様に、救世軍の部屋でクラップゲームが行なわれたことにスカイが関わっていたのではないかと疑い、怒ったサラはスカイの弁明と聞くことなくスカイの元から去る。

スカイはサラの布教活動に罪人を連れていく約束をまだ果たせていない。サラは全てを忘れてしまいたいと思っているが、父親代わりのアーヴァイト・アバーナシーはスカイに警告する。

ネイサンは下水道でクラップゲームを続ける。所持金全て失ったビッグ・ジュールは上着を脱ぎ、ネイサンに対戦を挑むがイカサマでネイサンを負かす。スカイがやってきてビッグ・ジュールを殴り、ピストルを奪う。サラの拒否的な態度に傷つき落胆したスカイは、ハバナにサラを連れていけなかったと嘘をつき、賭けに負けたとしてネイサンに千ドルを支払う。ネイサンはビッグ・ジュールに再度賭けを挑むが、ハリー・ザ・ホースはビッグ・ジュールはイカサマ無しで勝つことはできないと語る。スカイはこれを聞き、ある賭けを思いつく。もしスカイが負けたらそれぞれに千ドルを払い、勝てば全員が布教活動に出席する。

スカイは賭けに勝ち、布教活動に人が集まらず閉会しようとした時、大勢の賭博師がやってきて満席となる。賭博師たちは罪を悔いることなく渋々罪を告白する。しかしナイスリー・ナイスリー・ジョンソンは前夜見た夢について語り、布教活動の主旨に沿った形となり皆満足する。

ネイサンはサラに、スカイがキューバ行きの賭けに負けたと語り、スカイが本当は勝っていたことを知るサラはスカイの元に急ぐ。タイムズスクエアの中心でスカイとサラ、ネイサンとアデレイドの合同結婚式が行なわれる。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹替[4](初回放送1972年12月24日『劇映画』)

1950年、ブロードウェイ公演でロバート・アルダ英語版がスカイ・マスタースン役オリジナル・キャストであった。当初映画版ではジーン・ケリーが有力候補となった。しかしMGMはケリーを本作の製作に貸し出さず、ゴールドウィンが当時興行収入世界一の利益率を誇っていたブランドを起用したかったことからブランドに決定した。皮肉にも本作はケリーの所属するMGMが配給することとなった。シナトラはスカイ役を熱望しており、ブランドとの関係も緊張感が漂った。ハリウッドの批評家のジェイムス・ベーコンによると、シナトラは監督のマンキーウィッツに「マーロンのリハーサルが終わったら行く」と伝えたこともあった[6]。『波止場』(1954年)のテリー・マロイ役にシナトラも候補に挙がっていたが、ブランドに決定していた[7]

ベティ・グレイブルがアデレイド役を演じることができず[8]、ゴールドウィンは舞台版オリジナル・キャストのヴィヴィアン・ブレイン英語版を配役した[9]マリリン・モンローはアデレイド役への希望を電話で伝えたが、ブレインを配役したい監督のマンキーウィッツには影響しなかった[10]マンキーウィッツ監督は彼女と再び仕事をすることを嫌がり、彼女からの電話を無視したという説もある[8]。舞台版オリジナル・キャストではブレインの他にスタッビー・ケイB・S・プリイ英語版ジョニー・シルヴァー英語版が映画版でも再演した[8][11]

ゴールドウィンはグレース・ケリーをサラ役に配役したかった。しかしケリーは他の契約のために出演できず、ゴールドウィンはデボラ・カーにも打診したが出演できなかった。『デジレ』(1954年)でブランドと共演していたシモンズが3番目の候補となった。ゴールドウィンはシモンズの甘い声、強い演技を気に入り、舞台版より良いコンビになると確信した。未編集の映像を観た監督のマンキーウィッツは「グレース・ケリーにしなくて良かった」「シモンズは才能がありながら過小評価されている。才能についてはずば抜けているのになぜ大スターになっていないのか」と語った[12]

使用楽曲[編集]

ゴールドウィンとマンキーウィッツのリクエストにより、フランク・レッサーは「"Pet Me Poppa"」、「"(Your Eyes Are the Eyes of) A Woman in Love"」、そしてシナトラのための「"Adelaide"」の計3曲を映画のために新たに作曲した[8]。舞台版で使用された「 "A Bushel and a Peck"」、「"I've Never Been in Love Before"」、「"My Time of Day"」、「"Marry the Man Today,"」、「"More I Cannot Wish You"」の5曲は映画版では使用されていない。ただし「 "A Bushel and a Peck"」、「"I've Never Been in Love Before"」、「"My Time of Day"」の3曲はインストゥルメンタルのBGMで一部使用されている。批評家のピーター・フィリシアは「映画版しか観たことがない人はブロードウェイ版の名曲を聞き逃している」と記し、映画版で「"Pet Me Poppa"」に置き換えられた「"A Bushel and a Peck"」を例に挙げた[13]。ゴールドウィンは「"A Bushel and a Peck"」が好きでなく、映画版に新曲を所望した[14]。また「"I've Never Been in Love Before"」は「"A Woman in Love"」に置き換えられた[13]。映画版でシナトラの歌唱用に「"Adelaide"」が追加された[11]。また原作のミュージカルでは、ネイサンは『Guys and Dolls』を歌わないが、映画版ではフランク・シナトラの歌唱パートを増やすためにネイサンも歌うことになった[8]

シモンズやブランドの楽曲はプロの歌手の吹替なしで俳優本人により歌われている[15][16][17]

作品の評価[編集]

映画批評家によるレビュー[編集]

Rotten Tomatoesによれば、32件の評論のうち高評価は91%にあたる29件で、平均点は10点満点中7.69点となっている[18]

受賞歴[編集]

映画祭・賞[19] 部門 候補 結果
第28回アカデミー賞 ミュージカル映画音楽賞 ジェイ・ブラックトン
シリル・J・モックリッジ
ノミネート
美術監督賞 (カラー作品) オリバー・スミス(美術)
ジョセフ・C・ライト(美術)
ハワード・ブリストル(装置)
撮影賞 (カラー作品) ハリー・ストラドリング
衣裳デザイン賞 (カラー作品) アイリーン・シャラフ
第13回ゴールデングローブ賞 作品賞 (ミュージカル・コメディ部門) 受賞
主演女優賞 (ミュージカル・コメディ部門) ジーン・シモンズ
第10回英国アカデミー賞 総合作品賞 ノミネート
最優秀外国女優賞 ジーン・シモンズ
第8回全米脚本家組合相 全米ミュージカル脚本賞 ジョーゼフ・L・マンキーウィッツ ノミネート

アメリカン・フィルム・インスティチュートは2004年、楽曲「"Luck Be a Lady"」をアメリカ映画主題歌ベスト100の第42位に、2006年、本作をミュージカル映画ベストの第23位にランクインした。

リメイク[編集]

2013年初頭、20世紀フォックスはミュージカルの映画化権を取得し、リメイクを計画していた[20]。2019年3月、トライスター ピクチャーズはリメイク権を獲得し、1年後、ビル・コンドンが監督として雇われた[21][22]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Guys and Dolls (1955) - Full Cast & Crew” (英語). IMDb. 2012年6月15日閲覧。
  2. ^ Guys and Dolls (1955)” (英語). IMDb. 2012年6月15日閲覧。
  3. ^ Damon Runyon”. Authors. The eBooks-Library. 2008年7月20日閲覧。
  4. ^ 劇映画 「野郎どもと女たち」”. NHKクロニクル. 2021年12月15日閲覧。
  5. ^ Kurtti, Jeff (1996). The Great Hollywood Musical Trivia Book. New York: Applause Books. p. 41. ISBN 1-55783-222-6. https://archive.org/details/greatmoviemusica00kurt/page/41 
  6. ^ Pictures Will Talk, Kenneth L. Geist, p. 258
  7. ^ On the Waterfront (1954) – Trivia
  8. ^ a b c d e Guys and Dolls (1955) - Trivia” (英語). TCM.com. 2012年6月15日閲覧。
  9. ^ Goldwyn, A. Scott Berg, p. 472
  10. ^ Pictures Will Talk, Geist, p. 256
  11. ^ a b Adams, Marjory (1955年11月11日). “Goldwyn's "Guys and Dolls" at Astor Great Entertainment”. The Boston Globe. https://www.newspapers.com/image/433651221 2020年11月28日閲覧。 
  12. ^ Pictures Will Talk, Geist, p. 258
  13. ^ a b What You Miss In Musical Movies”. Masterworks Broadway. Sony Music Entertainment (2014年4月8日). 2020年11月28日閲覧。
  14. ^ Wister, Emery (1955年6月16日). “He Built Own Time Square”. The Charlotte News (Charlotte, North Carolina). https://www.newspapers.com/image/618373584 2020年11月28日閲覧。 
  15. ^ “Guys and Dolls film to be remade”. The Daily Telegraph (Chilton, Martin). (2013年4月25日). https://www.telegraph.co.uk/culture/film/film-news/10017164/Guys-and-Dolls-film-to-be-remade.html 2014年2月19日閲覧。 
  16. ^ Bacon, James (1955年5月29日). “Goldwyn Sets Precedents in 'Guys, Dolls'”. Reading Eagle (Associated Press). 2014年2月19日閲覧。
  17. ^ “Jean Simmons: Actress who dazzled opposite the likes of Marlon Brando, Kirk Douglas and Laurence Olivier”. The Independent. (2010年1月26日). https://www.independent.co.uk/news/obituaries/jean-simmons-actress-who-dazzled-opposite-the-likes-of-marlon-brando-kirk-douglas-and-laurence-olivier-1878829.html 2014年2月19日閲覧。 
  18. ^ Guys and Dolls (1955)” (英語). Rotten Tomatoes. 2020年10月20日閲覧。
  19. ^ Guys and Dolls”. The New York Times (2012年). 2012年10月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年12月22日閲覧。
  20. ^ Fleming, Mike Jr. "Fox Seals ‘Guys And Dolls’ Rights; Wants Channing Tatum, Joseph Gordon-Levitt To Fill Frank Sinatra And Marlon Brando Shoes." Deadline Hollywood (April 24, 2013).
  21. ^ 'Guys and Dolls' Getting Remade at TriStar (EXCLUSIVE)”. Variety (2019年3月26日). 2019年3月26日閲覧。
  22. ^ Kroll, Justin (2021年7月7日). “'Guys And Dolls' Adaptation At TriStar Taps Bill Condon To Direct”. Deadline Hollywood. 2021年7月8日閲覧。

外部リンク[編集]