本項、部分リーマン多様体の接続と曲率では、古典的なガウスの曲面論(英語版)を高次元のリーマン多様体の場合に拡張した成果を述べる。具体的にはリーマン多様体
の部分多様体Mに対し、
といったものを高次元化した成果を述べる。
以下、本項では
をリーマン多様体とし、

をその部分多様体[注 1]とする。また特に断りがない限り、単に「多様体」、「写像」等といった場合はC∞級のものを考える。
をgが定める
上のレヴィ-チヴィタ接続とする。またリーマン計量gをMに制限することで、
がリーマン多様体になるので、gが定めるM上のレヴィ-チヴィタ接続
を考える事ができる。
一方、Mは
の部分多様体なので、
のレヴィ-チヴィタ接続
のMへの制限
も考える事ができる。
実はこの2つは以下の関係を満たす:
定理 ― X、YをM上のベクトル場とするとき、Mの任意の点Pに対し、以下が成立する[1]:

ここで
は、
の元の接ベクトル空間TPMへの射影

である。
上では
の接続のMの接ベクトルバンドルTMへの射影を考えたが、同様に
の接続のMの法ベクトルバンドルへの射影を考える事ができる。 Mの点Pに対し、

を
の元の法ベクトルバンドル
への射影とする。
定義 ― XをM上のベクトル場、ηを法ベクトルバンドル
の切断とするとき、以下のように定義される
の接続をMの法接続(英: normal connectionn)[2]、もしくはVan der Waerden Bortolotti接続[3]という:

さらにYをM上のベクトル場とするとき、
![{\displaystyle R^{\bot }(X,Y)\eta :=\nabla _{X}^{\bot }\nabla _{Y}^{\bot }\eta -\nabla _{Y}^{\bot }\nabla _{X}^{\bot }\eta +\nabla _{[X,Y]}^{\bot }\eta }](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/157a4899fbb7530f342430c7392ad1e83e2845b8)
をMの法曲率(英: normal curvature[2])という。
という。
上述したように、M上のレヴィ-チヴィタ接続
は
のレヴィ-チヴィタ接続
のTMへの射影であるので、両者の差
は
の法ベクトルバンドル
への
の射影となる。 Mの点Pに対し、


をそれぞれ
の元の接ベクトル空間TPMへの射影、
の元の法ベクトルバンドル
への射影とする。
定義 (第二基本形式) ―

をMの
における第二基本形式(英: second fundamental form)[4]、もしくは型テンソル[訳語疑問点](英: shape tensor[5])という。
また
に対し、

と定義し、これも第二基本形式という[6]。
なお、「第二基本形式」という名称はガウスの曲面論から来ており、ガウスの曲面論ではリーマン計量
の事を第一基本形式というのに対応した名称である[6]。
であったので、以下が成立する:
定理 ―
- ガウスの公式[7](英: Gauss formula[8]):

第二基本形式は以下を満たす[4]:
また、
をM上の曲線、
を
上のMに接するベクトル場とするとき、以下が成立する:
定理 ―
- 曲線に沿ったガウスの公式(英: Gauss formula along a curve)

上では
の接続とMの接続の差を第二基本形式として定義したが、同様に
の接続とMの法接続の差を考える事ができる。
定義 ― XをM上のベクトル場、ηを法ベクトルバンドル
の切断とするとき、

を型写像[9](英: shape operator[10])もしくはワインガルテン写像[9](英: Weingarten map[9])という[11]。
X、YをM上のベクトル場、ηを法ベクトルバンドル
の切断とすると、Yとηは直交するので、

である。よって次が成立する:
定理 ―
- ワインガルテンの公式[12](英: Weingarten Equation)[13]

よって特に
はX、ηに関して
-線形である[14]。
前節と同様に記号を定義し、
により定まるMの曲率を
、
により定まる
の曲率を
とする。
さらにX、Y、Z、WをM上のベクトル場とし、η、ζをMの法ベクトルバンドルの切断とする。このとき、次が成立する:
定理 ―
- ガウスの方程式[15](英: Gauss equation[16])

- コダッチの方程式(英: Codazzi's equation[17])

- リッチの方程式(英: Ricci equation[2])
![{\displaystyle g(R^{\bot }(X,Y)\eta ,\zeta )=g({\bar {R}}(X,Y)\eta ,\zeta )-g([S_{\eta },S_{\zeta }]X,Y)}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/fe96fb0a96d76112b298490e0a7a03d044682339)
ここで
は

を
の切断とみたときの共変微分であり、
![{\displaystyle [S_{\eta },S_{\zeta }]X:=S_{\eta }(S_{\zeta }(X))-S_{\zeta }(S_{\eta }(X))}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/6194eadd519e589113c3d780f9fb1cd1c8fa1d24)
である。
ガウスの方程式はMの曲率が全空間
の曲率と第二基本形式から決まる事を意味している。同様にリッチの方程式はMの法曲率がワインガルテン写像から決まる事を意味している。
またガウスの方程式からMの断面曲率
と
の断面曲率
に関して以下の系が従う:
系 ― TPMの正規直交している2本のベクトルv、wに関し、以下が成立する[18]:

詳細は[19]を参照。
![[icon]](//upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/1/1c/Wiki_letter_w_cropped.svg/20px-Wiki_letter_w_cropped.svg.png) | この節の 加筆が望まれています。 (2023年10月) |
これまで同様
をリーマン多様体、
をその部分多様体とし、PをMの点とし、X、YをTPMの元とし、ηを法ベクトル空間NPMの元とする。
定義 (第三基本形式) ―

を第三基本形式という[20]。 ここでmはMの次元であり、
はTPMの正規直交基底である。
第三基本形式
は二次形式
のトレースであるので、
は基底の取り方に依存せずwell-definedである。
第三基本形式は以下のようにも表現可能である:
証明




が定曲率空間の場合、第三基本形式は以下を満たす:
定理 ―
が曲率cの定曲率空間であれば、以下が成立する[20]:

ここで
はMのリッチテンソルであり、HはMの平均曲率ベクトルである。
特にMの余次元が1であれば、前述したワインガルテン写像による第三基本形式の表記を適用することで、以下が成立する事がわかる:
本節では、埋め込み
が余次元1の場合、すなわち
の場合、Mに対し主曲率、ガウス曲率、平均曲率という3つの曲率概念を定義する。
これらの概念を定義するためにまずその動機を述べる。今
は余次元1なので、長さ1の法ベクトルηを(±1倍を除いて)一つだけ選ぶ事ができる。
点Pにおける接ベクトルvに関し、曲線
をPを通りvに接する(弧長パラメータsでパラメトライズされた)Mの測地線とすると、
がMの測地線であった事から、
は必ずMに直交するので、Mの余次元が1な事から、
はηと平行になる。 よって
は測地線の曲率の大きさに符号をつけたものである。
主曲率とは(符号付きの)測地線の曲率の大きさ
の極値になっている値の事である。
主曲率は具体的には下記のように求める事ができる。
なので、 曲線に沿ったガウスの公式と第二基本形式の定義より、



よって主曲率、すなわち
の極値は二次形式
を回転行列により対角化した際の対角成分
の事である。
ガウス曲率は主曲率
の積、平均曲率は主曲率
の平均値である。
厳密な定義は以下の通りである:
定義 (主曲率) ―
が余次元1で
を点
における(±1倍を除いて)唯一の長さ1の法ベクトルとし、対称二次形式

を回転行列で対角化した際の固有値を
とし、
を対応する長さ1の固有ベクトルとする。このとき、 各eiの事を点PにおけるMの主方向(英: principal direction)といい[21]、
を主方向eiに関する主曲率(英: principal curvature)[21]という。
定義 (ガウス曲率、平均曲率(英語版)) ― 記号を上の定義と同様に取る。このとき、主曲率の第i基本対称式
を二項係数
で割った

を点Pにおける第i平均曲率(英: i-th mean curvature)という[22]。特に、

を点PにおけるMのガウス曲率(英: Gausian curvature)[23]もしくはガウス・クロネッカー曲率(英: Gauss Kronecker curvature)[21]といい、

を点PにおけるMの平均曲率(英: mean curvature)という[21]。
なお、ガウス曲率の事を全曲率(英: total curvature)という事もあるが[24]、「全曲率」という言葉は測地線曲率の曲線全体に対する積分値を指す場合もあるので注意が必要である[24]。
上記の定義についていくつか補足を述べる。第一に、単位法ベクトルηの向きを反転させると、主曲率の符号が反転してしまう。このためMや
が向き付け可能なときは、TM×ηの向きが
の向きと一致するという規約を授けてηの向きを固定する事が多い。
第二に、
は対称二次形式であるので、次が成立する:
定理 ― (固有値
が相異なれば)主方向
は互いに直交する。
第三にワインガルテンの公式から

であるので、明らかに次が成立する:
定理 ― 主曲率および主方向はそれぞれワインガルテン写像の固有値・固有ベクトルに一致する。
よって固有多項式の一般論から、特に次が成立する:
ここで
は
が
に誘導する写像を
である。
第四に、平均曲率に関しては、
が余次元1でなくとも、
を法ベクトル空間
に値を取る二次形式とみなしたときのトレース(の1/n)として定義できる:
平均曲率ベクトル場は極小曲面の特徴付けとして有用であり、閉多様体
が極小曲面になる必要十分条件はM上の平均曲率ベクトル場が恒等的に0である事である事が知られている[26]。
本節では、向き付可能なリーマン多様体Mをユークリッド空間に余次元1で埋め込んでいる場合、すなわち
、dimM=mの場合に対し、「ガウス写像」を定義する事で、ワインガルテン写像やガウス曲率に幾何学的な意味付けを与える。
これまで同様ηをMの単位法ベクトル場とすると、各点P∈Mに対し、ベクトルηPは長さ1のベクトルなので、ηPを原点中心の単位球Smの元とみなす事ができる。このようにみなす事で定義できる写像

をガウス写像(英: Gauss map[27]、英: Gauss spherical mapping[21])という。
MのPにおける接ベクトル空間の元TPMを
のPにおける接平面と自然に同一視すると、任意のv∈TPMに対し、

である事から、
においてTPMはTG(P)Smと平行な超平面であるので、自然にTPMとTG(P)Smを同一視する。このとき次が成立する:
定理 ―
を向き付け可能かつ余次元1のリーマン多様体とし、GをMが定めるガウス写像とする。
このとき、ガウス写像が接ベクトル空間に誘導する写像

は、

を満たす[21]。ここで
はワインガルテン写像である。
さらにガウス写像はガウス曲率と以下の関係を満たす:
定理 (ガウス写像によるガウス曲率の意味付け) ― 記号を上述の定理と同様に取る。 さらにM、Smの体積要素をそれぞれ
、
とするとき、ガウス写像が誘導する写像

は、

を満たす。ここでKPは点PにおけるMのガウス曲率である[27]。
断面曲率と第二基本形式の関係と主曲率の定義から、特に以下の系が成立する:
系 (断面曲率と主曲率の関係) ― 埋め込み
が余次元1の埋め込みで、
が点
における主方向で
を対応する主曲率とする。このときi≠jを満たす任意のi, j ∈{1,...,m}に対し、以下が成立する[28]:

ここで
、
はそれぞれM、Mの断面曲率である。
よってとくに
が曲率cの定曲率空間(英語版)、すなわち
上の任意の点Pにおける任意の方向の断面曲率がcである空間の場合には、

が成立する。
実は上式の右辺はMに内在的な量である:
定理 (Theorema Egregiumの一般化) ―
を曲率cの定曲率空間とし、
をその余次元1の部分多様体とし、さらにPをMの点とする。さらに線形写像
を

により定義する。
このとき、ρの固有値の集合は

に一致する[29]。ここでmはMの次元であり、
は点Pにおける主曲率である。
また
に対応する主方向を
とすると、
に対応する固有ベクトルは
である。
証明
をそれぞれ
に対応する主方向とすると、

は
の基底である。
i>jを満たす任意のi,j=1,...,mおよびk>ℓを満たす任意のk,ℓ=1,...,mに対し、ガウスの方程式から、


...(1)
ηをMの単位法線とすると、主方向の定義から、

であるので、Mの余次元が1な事から、

である。
定曲率空間の場合は以下が成立する事が知られている:
定理 (定曲率空間における曲率の形) ―
をリーマン多様体とし、
とする。このときMが曲率cの定曲率空間である必要十分条件は、Mの任意の点PとTPMの任意のベクトルX、Y、Z、Wに対し、

が成立する事である[30]。
よってi>j、k>ℓを満たすi, j, k, ℓに対し、



が成立する。
以上から、i>j、k>ℓを満たすi, j, k, ℓに対し、
- (1)の右辺

が成立する。
が
の基底であった事から、上記の事実は
は
を固有値とするρの固有ベクトルである事がわかる。
であったので、上記の定理は、有名なTheorema Egregiumの一般化になっている:
定理 (Theorema Egregium) ―
の二次元部分多様体
に対し、点Pにおけるガウス曲率は点Pにおける断面曲率と一致する[28]。
Theorema Egregiumの一般化から以下の系が従う:
系 (偶数次平均曲率の内在性、偶数次元のガウス曲率の内在性) ― 記号を前述の定理と同様に取るとき、
におけるMの第r平均曲率はrが偶数ならMに内在的な量である[注 2]。
よってとくに
におけるMのガウス曲率KはMの次元mが偶数ならMに内在的な量である[29][注 2]。
一方、奇数次元のガウス曲率はMに内在的な量ではない。実際ガウス曲率の定義
はMの単位法線ηというMに外在的な量に依存しており、ηの向きを変えれば
の符号は全て反転してしまい、次元mが奇数である事から
の符号も反転してしまう。
しかし次元mが奇数の場合であっても、符号を除いてガウス曲率は内在的な量となる事を前述のTheorema Egregiumの一般化から示すことができる:
系 (符号を除いたガウス曲率の内在性) ― 記号を前述の定理と同様に取る。Mの次元mが奇数であっても、
におけるMのガウス曲率Kは符号を除いて内在的な量である[29][注 3][注 2]
以上の事から、mが偶数の場合には
におけるMのガウス曲率をリーマン曲率で具体的に書きあらわす事ができる。次節では
がユークリッド空間である場合に対し、この具体的な表記を求める。
前節では
が偶数次元でしかも余次元が1のとき、ガウス曲率がMの内在的な量である事を示した。
本節の目的は
の場合に、ガウス曲率をMに内在的な量で具体的に書きあらわす事にある。そのために導入するのがオイラー形式である。オイラー形式は偶数次元のリーマン多様体M上で曲率テンソルを用いて定義される。そしてMが余次元1で
に埋め込まれているときは、オイラー形式はガウス曲率の定数倍に一致する。
本節の内容は後でガウス・ボンネの定理を記述するときに重要となる。「オイラー形式」という名称も、ガウス・ボンネの定理からこの値がオイラー標数と関係づけられる事に由来する。
オイラー形式を定義するため、「パッフィアン」を定義する。これは後述するように行列式の平方根に相当する。
上記の定理において、
の存在一意性は
が1次元ベクトル空間な事から明らかに従う。Vと同じ向きの正規直交基底の取り方によらないことも、
の定義がαの成分表示によらず、しかも
がそのような基底の取り方によらない事から明らかに従う。
歪対称行列
に対し、紛れがなければ
のパッフィアン
の事を
とも表記する。 定義から明らかに次が成立する。
定理 ― 任意の正則行列Bに対し、

が成立する。よって特に任意の直交行列Bに対し、

が成立する[31]。
パッフィアンは具体的には以下のように書ける。
パッフィアンは行列式の平方根である:
定理 ― m=2k次の歪対称行列
に対し、以下が成立する[31]:
.
なお本節で我々は偶数次の歪対称行列に対して行列式の平方根がパッフィアンと一致する事を見たが、奇数次の歪対称行列の場合は行列式は常に0になる事が知られている。よって奇数次の場合には「行列式の平方根」も0になる。
次に我々はパッフィアンを使ってオイラー形式を定義する。
上記の定義に関して3つ補足する。第一に、オイラー形式を定義する際、パッフィアンを
で割るのは、このようにすると後述するガウス・ボンネの定理で不要な定数が消えて定理の記述が簡単になるからである。
第二に、「
」という記号の意味についてである。「
」はパッフィアンPf(A)の具体的表記において、行列AをΩに置き換え、さらに積をウェッジ積に置き換えることで定義される。すなわち、

なお、添字の上下がPf(A)の具体的表記とは異なっているが、正規直交基底を考えているのでこれは問題にならない。
第三に、Ωijは2-形式であるので、上述のウェッジ積はΩijの入れ替えに関して可換である。よって前節で通常の実数係数の行列に対して成立した定理の多くが
に対しても成立する。
特に、
は正規直交基底の向きを保つ取り方に対して不変であり、したがってオイラー形式はMと同じ向きの正規直交基底の取り方によらずwell-definedである。
したがって、オイラー形式はMの全域で定義可能である。
(正規直交とは限らない)基底
とその双対基底を
を使って曲率テンソルを

と成分表示すると、オイラー形式を下記のように成分表示できる:
定理 (オイラー形式の成分表示) ― (正規直交とは限らない)基底
に対し、以下が成立する[36]

ここでdVはMの体積要素であり、上式はアインシュタインの縮約記法を用いている。
なお、上式は
および
が
の置換になっている項以外は0になる。
本節では、偶数次元リーマン多様体Mが余次元1でユークリッド空間に埋め込まれているときは、ガウス曲率とオイラー形式は定数倍を除いて一致する事を見る:
証明
をそれぞれ主曲率κ1、...、κmに対応する主方向とし、
をその双対基底とすると、断面曲率と主曲率の関係から、

がi≠jを満たすi、jに対して成立する。よってk=m/2とすると、パッフィアンの具体的表記から、

となり定理が証明された。
なお、なぜパッフィアンという「行列式の平方根」がここで登場するか、という問いに対する答えるには、チャーン・ヴェイユ理論を必要とするため、本項では触れない。
本節ではガウス・ボンネの定理を紹介する。この定理は、偶数次元のリーマン多様体において、オイラー標数をオイラー形式の全空間における積分で記述できるという趣旨の定理である。
元々はMが2次元の場合に対して示されたものであり、一般の偶数次元に対する定理は区別のためチャーン・ガウス・ボンネの定理とも呼ばれる。
定理 (ガウス・ボンネの定理) ― Mを偶数次元の向き付け可能かつ縁無しのコンパクトなリーマン多様体とする。このとき、

が成立する。ここで
はMのオイラー形式であり、
はMのオイラー標数である。
を余次元1で向き付け可能なリーマン多様体とする。すでに述べたように、M、Smの体積要素をそれぞれ
、
とすると、両者の間には

という関係がある。ここでKはMのガウス曲率である。
Mがコンパクトで縁がなければ、ド・ラームコホモロジーの一般論から、ガウス写像
の写像度
は

に等しい[38]。ここで
は球面Smのm次元体積である。
この事実を利用すると、偶数次元のMに対し以下の定理が結論付けられる:
はすでに示したので、
のみを示す。
Mが連結ではない場合は連結成分毎に定理を証明すれば良いので、一般性を失わずMは連結であると仮定する。このとき、m+1次元多様体
で
となるものが存在する事が下記の定理により保証される:
そこでNに対してホップによる以下の定理を用いる:
定理[41] (ホップの指数定理(Hopf's Index Theorem[42])) ―
のコンパクトなm+1次元部分多様体
上のベクトル場Xで、非退化な孤立零点しか持たず、さらにXがNの境界