近石真介

ちかいし しんすけ
近石 真介
プロフィール
本名 近石 安蔵(ちかいし やすぞう)[1]
性別 男性
出身地 日本の旗 日本東京府豊多摩郡(現:東京都杉並区西荻窪[2]
死没地 日本の旗 日本・東京都[3]
生年月日 (1931-01-20) 1931年1月20日
没年月日 (2022-10-05) 2022年10月5日(91歳没)
血液型 A型[4][5]
職業 俳優
声優
ナレーター[6]
事務所 ムーブマン(最終所属)[7]
公式サイト 近石 真介|MOUVEMENT
公称サイズ(時期不明)[9]
身長 / 体重 164[8] cm / 64 kg
声優活動
活動期間 1950年代 - 2020年
ジャンル アニメ
吹き替え
ナレーション
俳優活動
活動期間 1953年 -
ジャンル テレビドラマ
舞台
デビュー作 高橋生行(『歴程』)[10]
声優テンプレート | プロジェクト | カテゴリ

近石 真介(ちかいし しんすけ、1931年昭和6年〉1月20日[1][4][11][10] - 2022年令和4年〉10月5日[3])は、日本声優俳優ラジオパーソナリティナレーター[6]ムーブマンに所属していた[7]

長男は俳優・声優の土方優人

来歴[編集]

東京府豊多摩郡(現:東京都杉並区西荻窪)出身[2]日本大学第二高等学校卒業、早稲田大学第一文学部露文科[7]を2年で除籍。

大学中退後、ロシア語タイプライターを打てたことや高校時代の恩師の計らいで、三井海上火災に就職[2]。職場の演劇部に当時気になっていた別の部署の女性社員が所属しており、「入れば知り合いになれる」と考え、入部する[2]。その後、その女性社員の相手役をした結果、芝居に夢中になり、その芝居が東京都内の職場演劇コンクール出場で優秀賞を獲得[2]。同コンクールの審査員には後に恩師になる八田元夫がおり、その勧めで八田元夫演出研究所の夜間教室に通い始める[2]、研究所が劇団になった時点で脱サラ[2]1953年の『歴程』で初舞台を踏んだ[12]

声優業は、結婚や妻の妊娠で「何とかしなきゃいけない」と考え、安かろうと1本でギャラが入るテレビの仕事だったため、飛びついたことがきっかけ[2]

洋画ではジェームズ・キャグニージェリー・ルイスジャッキー・クーパーなどの吹き替えを担当。アニメでは『サザエさん』の初代フグ田マスオを約8年8か月演じていた。『はじめてのおつかい』ではナレーションを長らく担当していた[13]

ラジオパーソナリティとしては、1971年10月4日開始の『こんちワ近石真介です』で人気を博し、ギャラクシー賞を受賞[12]2020年、高齢を理由に『こんちワ近石真介です』時代から49年続いた『はがきでこんにちは』が同年9月25日放送回で終了するまで活動し、結果的にこれが最後の仕事となった[14][15]

演出劇場を経て[16]、1957年、劇団3の会の創立に参加[16][11]。1958年、劇団演技座入団[10]。1961年、劇団青演の創立に参加[11]。1962年12月から2002年まで劇団東演(旧 - 東京演劇ゼミナール[16])に在籍[12][10]

マネジメントは東京俳優生活協同組合[16][11]→ぱらーた企画[1]ムーブマン[7]

2022年10月5日午前8時、老衰により東京都内の自宅で死去[3][17]。91歳没。

人物[編集]

テレビ草創期から活躍。俳優としては舞台を中心に活動し[12]テレビドラマにも出演。

声種バリトン[18]

趣味・特技は落語釣り乗馬味噌作り[7]。特に落語に関しては、「ギョロ目亭しん助」の名で高座に上がる腕前であった[19]

兄が2人いる[要出典]

エピソード[編集]

吹き替え[編集]

ジェリー・ルイスについては「本当に好きだったなあ」と述べている[2]。芝居のリズムが早いため、予め大体の台詞を覚えてから収録に臨んでいたといい[20]、収録後は疲れる一方で「ジェリー・ルイスのあのリズムを俺は盗めたぞ」という何ともいい快感があったという[2]

ジェームズ・キャグニーに関しては、自分の世界を常に強烈に打ち出すところが魅力的だと語っていた[2]

モンティ・パイソン』では開始当初にジョン・クリーズの吹き替えを担当していたが、すぐに納谷悟朗に交替。近石は、のちに納谷が演じることになる『ルパン三世』の銭形警部パイロット版で演じたこともある。

フグ田マスオ[編集]

『サザエさん』では、フグ田マスオ役を近石が当時38歳の1969年10月5日の初回から近石が47歳当時の1978年6月4日放送分まで演じていた。

近石はマスオについて「とても好きだった」と語り、演じ始めたころは、実生活でも父親で息子もタラちゃんと同じくらいの年齢だったため、本人によれば「役やってんだか何だか分からない、もうそのまんま」で演じたという[20]。降板も「(本当は)やりたかった」としつつ、収録の「生きた会話にするため全員が集まって行い、抜き録りはしない[21]」という方針から舞台公演やラジオとの両立が困難となったことによる、悩んでの降板であった[20][注釈 1]

初代波平役の永井一郎とは同い年で、生年月日が近く20代のころからの付き合いであったため、「戦友みたいなもんです」と語るなど、親交があった[注釈 2]。そのため、降板時には「なんで辞めるんだ?」と怒られたという[23]。また、近石からマスオ役を引き継いだ増岡弘とも親交があり、増岡が主催する手づくり味噌の会「みそひともんちゃく」にも参加していた。また近石と増岡がツーショットで撮られた写真が残されている[24]

また、『サザエさん』自体については「どんなに世の中が変わっても、日本の家族はこういう事柄をこんな会話をしながらこんなふうに処理する。五十年前のサザエさん一家も、今の家族も基本的には同じだと思う」と述べ、「原作に忠実にその精神を受け継いで、今のままずっと続いてほしい。日本の家族の姿を伝えてほしいですね」と語っている[21]

はじめてのおつかい[編集]

はじめてのおつかい』のナレーションは、前身番組である情報番組『追跡』の1コーナー(1988年4月から1994年3月まで放送)時代から一貫して担当[25]2021年から花江夏樹[26]林家たい平[27]に交代したが、以降も亡くなるまで冒頭のタイトルコールは続投していたほか、番組内の企画(「あれから○○年…」シリーズ)で過去の出演回が取り上げられた際は近石のナレーションが引き続き使用されているため、没後の2024年時点でも全放送回に出演している[13][28]

近石はオファーを受けた当初、「ナレーターはあまりしたことがないし活動の幅が広がる」と意気込んだが、初収録の際にプロデューサーから「あなたはナレーターとして起用したのではない」と言われたため大いに困惑したという。これには「子供はもちろん、その親、カメラマンなどスタッフら、時には視聴者側の心情に寄り添い台本は書かれている。つまり、ナレーターではなく一人何役も演じるように各登場人物・スタッフの一員として話してほしい」という真意があり、この思いを受けた近石はその姿勢で収録に臨んでいた[20][25]

2013年12月8日には、3日をかけて収録を行うなど苦労も明かしつつ「好きな番組だ」と述べていた。

近石は番組の良さについて「子供の活き活きとした顔が見られるところ。子供にバレないようにスタッフがどれだけ神経をつかっているか。子供の顔のアップにしても、いろんな表情があってね。それを捉えるスタッフは大変ですよ」と語っており、「涙腺がどんどん緩くなってる。のめり込んじゃう。20何年やってるけど、常に古くて新しいという感覚があります」と、思わず涙ぐみながら台本を読むこともあったという[20]

受賞歴[編集]

出演[編集]

太字はメインキャラクター。

吹き替え[編集]

俳優[編集]

ジャッキー・クーパー
ジェリー・ルイス
ジェームズ・キャグニー
ロディ・マクドウォール

洋画[編集]

海外ドラマ[編集]

海外アニメ[編集]

人形劇[編集]

テレビアニメ[編集]

1960年代
1970年代
2000年代

劇場アニメ[編集]

OVA[編集]

人形劇[編集]

ラジオ[編集]

ナレーション[編集]

テレビドラマ[編集]

バラエティ[編集]

CM[編集]

舞台[編集]

  • 歴程(1953年、演出研究所) - 高橋生行[38]
  • 日本の夜と霧(1961年、劇団新演) - 中山[39]
  • 結末の無い話(1964年、劇団東演) - イワン・アレクセーヴィッチ・シトーポル[40]
  • 飯場(1964年、劇団東演) - たかちゃん[40]

その他[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 当時、俳協のマネージャーだった松田咲實がキャストの交代をディレクターにお願いしたと証言している[22]
  2. ^ 学年は近石の方が1歳上。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 『声優事典 第二版』キネマ旬報社、1996年、186頁。ISBN 4-87376-160-3 
  2. ^ a b c d e f g h i j k 吹替の帝王 -日本語吹替版専門映画サイト-(Wayback Machineによるアーカイブ)”. 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント. 2021年1月23日閲覧。
  3. ^ a b c “声優・近石真介さん死去、91歳 老衰 アニメ「サザエさん」初代フグ田マスオ役など”. 日刊スポーツNEWS. (2022年10月9日). https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202210090000838.html 2023年11月5日閲覧。 
  4. ^ a b 『声優名鑑 アニメーションから洋画まで…』近代映画社、1985年、102頁。 
  5. ^ 小川びい『こだわり声優事典'97』徳間書店〈ロマンアルバム〉、1997年3月10日、88頁。ISBN 4-19-720012-9 
  6. ^ a b “六輔長屋”の跡継ぎは、あの!?はぶ三太郎さん!ゲストは近石真介さん!”. TBSラジオ (2016年7月4日). 2020年1月5日閲覧。
  7. ^ a b c d e 近石 真介|MOUVEMENT”. 2020年1月5日閲覧。
  8. ^ 近石 真介|日本タレント名鑑”. 2020年1月5日閲覧。
  9. ^ 近石真介”. ムーブマン. 2009年2月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年10月27日閲覧。
  10. ^ a b c d 新劇便覧 1965, p. 287, 新劇俳優名鑑
  11. ^ a b c d 「た-ち」『タレント名鑑』《NO2》芸能春秋社、1964年、63頁。 
  12. ^ a b c d e 新国立劇場演劇公演『マッチ売りの少女』出演者変更について”. 新国立劇場. 2013年6月18日閲覧。
  13. ^ a b ムーブマン(公式) [@mouvementmg] (2022年7月15日). "#近石真介 をナレーションで使って頂いています。". X(旧Twitter)より2022年10月2日閲覧
  14. ^ りすのすけ🌰【CBCラジオ「つボイノリオの聞けば聞くほど」公式キャラ】 [@cbc1053kikeba] (2020年9月25日). "ちかいしさん、さみしいけど、ありがとうございました!". X(旧Twitter)より2022年10月2日閲覧
  15. ^ “マスオさん、「はじめてのおつかい」ナレ 近石真介さん91歳で死去【報告全文】”. デイリースポーツ. (2022年10月9日). https://www.daily.co.jp/gossip/2022/10/09/0015709411.shtml 2022年10月10日閲覧。 
  16. ^ a b c d 『声優の世界-アニメーションから外国映画まで』朝日ソノラマファンタスティックコレクション別冊〉、1979年10月30日、91頁。 
  17. ^ “俳優・近石真介さん死去 初代マスオさん はじめてのおつかい出演”. 毎日新聞. (2022年10月9日). https://mainichi.jp/articles/20221009/k00/00m/040/119000c 2022年10月9日閲覧。 
  18. ^ 『TVアニメ大全科part2』秋田書店、1979年、220頁。 
  19. ^ 第19回 「東京楽笑寄席」 2018.06.30”. ムーブマン. 2022年10月10日閲覧。
  20. ^ a b c d e 爆笑問題の日曜サンデー』2013年12月8日のゲスト出演回。
  21. ^ a b ほのぼの変わらず50年 フジのアニメ「サザエさん」”. 東京新聞. 2019年12月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月2日閲覧。
  22. ^ 松田咲實「第1章 声優の歴史」『声優白書』オークラ出版、2000年3月1日、25頁。ISBN 4-87278-564-9 
  23. ^ “【お悔やみ全文】初代マスオ役で戦友だった近石真介 永井一郎さんは「声優としてこだわる男でした」”. 芸能ニュースラウンジ. (2014年2月3日). オリジナルの2014年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140209090829/http://newslounge.net/archives/114252 2022年10月10日閲覧。 
  24. ^ @KUMAGORO_KUN2 (2022年10月9日). "近石さん…亡くなられたのですか…". X(旧Twitter)より2022年10月10日閲覧
  25. ^ a b “長寿番組『はじめてのおつかい』が感情移入しやすい理由”. ORICON NEWS. (2013年1月14日). https://www.oricon.co.jp/news/2020579/full/ 2022年10月10日閲覧。 
  26. ^ “花江夏樹「はじめてのおつかい」にナレーションで初参戦!成長した子供達の姿に涙?”. 日テレTOPICS (日本テレビ). (2021年1月8日). https://www.ntv.co.jp/topics/articles/195fr7t92pb0vvst0e.html 2022年10月10日閲覧。 
  27. ^ 林家たい平 (2022年7月15日). “はじめてのおつかい”. 林家たい平オフィシャルブログ「そら色チューブ」. アメーバブログ. 2022年10月10日閲覧。
  28. ^ ムーブマン(公式) [@mouvementmg] (2024年1月3日). "#近石真介 様の #ナレーション が放映されます🗣". X(旧Twitter)より2024年1月3日閲覧
  29. ^ a b c したコメ人 - 第2回したまちコメディ映画祭in台東”. したまちコメディ映画祭in台東. 2013年6月18日閲覧。
  30. ^ 第七回声優アワード受賞者”. 声優アワード. 2020年11月6日閲覧。
  31. ^ 猿の惑星・征服”. WOWOW (2016年6月24日). 2016年7月25日閲覧。
  32. ^ 最後の猿の惑星”. WOWOW (2016年6月24日). 2016年7月25日閲覧。
  33. ^ パトロールホッパ宇宙っ子ジュン”. 東映アニメーション. 2016年6月11日閲覧。
  34. ^ リボンの騎士(パイロット)”. 手塚治虫公式サイト. 2016年5月21日閲覧。
  35. ^ 老人Z HDマスター版 DVD”. ソニーミュージック. 2016年8月21日閲覧。
  36. ^ バケモノの子 The Boy and The Beast”. メディア芸術データベース. 2016年8月17日閲覧。
  37. ^ "六輔長屋"の跡継ぎは、あの!? はぶ三太郎さん! ゲストは近石真介さん!”. TBSラジオ (2016年7月4日). 2017年5月22日閲覧。
  38. ^ 倉林誠一郎, ed (1966). “昭和二十八年(1953)”. 新劇年代記 戦後編. 白水社. p. 354 
  39. ^ 『芸能』8月号、芸能発行所、1961年、81頁。 
  40. ^ a b 新劇便覧 1965, pp. 431–432, 東演

参考文献[編集]

  • 「テアトロ」編集部, ed (1965). 新劇便覧. テアトロ 

外部リンク[編集]