賢島橋と賢島大橋

賢島橋
賢島から見た賢島橋
基本情報
日本の旗 日本
所在地 三重県志摩市阿児町神明
交差物件 英虞湾
建設 1962年(昭和37年)
座標 北緯34度18分36.5秒 東経136度49分29.5秒 / 北緯34.310139度 東経136.824861度 / 34.310139; 136.824861
構造諸元
形式 桁橋
全長 約20m
関連項目
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賢島大橋
賢島大橋と志摩観光ホテル ザ クラシック
基本情報
日本の旗 日本
所在地 三重県志摩市阿児町神明
交差物件 英虞湾
北緯34度18分40.7秒 東経136度49分1.4秒 / 北緯34.311306度 東経136.817056度 / 34.311306; 136.817056
建設 1970年(昭和45年)6月
構造諸元
形式 アーチ橋
全長 153m
9.3m
高さ 17.855m
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賢島橋と賢島大橋の位置関係図

賢島橋(かしこじまばし)と賢島大橋(かしこじまおおはし)は、どちらも三重県志摩市にあるで、本州賢島を結ぶ[1]

陸路で賢島へ入るには、近鉄志摩線を利用するか、この2本の橋を渡る必要がある[2]

賢島橋は1929年(昭和4年)に初めて架橋され[3]無人島だった賢島の開発を進めるきっかけを与えた[4]

賢島大橋は1970年(昭和45年)6月に近畿日本鉄道(近鉄)が自社の開発した別荘地と賢島を結ぶために建設し、賢島の観光と住民生活を支える橋となった[5]

両橋とも2016年(平成28年)の第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)において、賢島への入り口となる橋として交通規制の対象となっていた[6]

賢島橋[編集]

賢島橋は賢島の東側に架橋された橋である[6]国道167号の道路橋と近鉄志摩線の鉄道橋が平行に架けられている[4]。橋長は20mであり、干潮時は橋の下を徒歩で渡ることもできる[2]。橋長が短いため、鉄道で越えると橋を渡ったことに気付かない人もいる[7]

最初の賢島橋は、大正時代に木組みの仮橋として建設され[4]1929年(昭和4年)に本設の橋が架けられた[3]。この時鉄道橋と人道橋が同時に架けられた[8]。架橋地点は本州と賢島が最も近接したところが選ばれた[8]。架橋以前の賢島は無人島であり、架橋は賢島開発の大事な一歩であった[4]。賢島は徒歩(=かち)で越えることのできる島という意味の「かちごえ島」が語源とされ、架橋時点でも干潮時には徒歩で渡れるほど水深が浅かった[4]。現行の賢島橋は1962年(昭和37年)に架橋されたもので、1970年(昭和45年)の賢島大橋開通まで賢島へ渡る唯一の橋であった[4]

賢島大橋[編集]

賢島大橋は賢島の西側に架橋された[9]三重県道17号浜島阿児線上の橋である[10]。第42回先進国首脳会議(伊勢志摩サミット)の会場となっていた志摩観光ホテルの近くを通っている[6][10]1970年(昭和45年)6月に竣工した橋長153m、橋幅9.3m[5]、海面からの高さ17.855m[11]の鋼3径間上路式アーチ橋である[12]。橋には歩道も整備されている[9]

元は近鉄が、自社の開発した賢島対岸の別荘地と賢島を連絡するために建設した橋であるが、賢島と本州を結ぶ2本目の橋として国道167号のバイパスとしての機能も果たすようになっている[5]。また橋の開通した1970年(昭和45年)は近鉄創業60周年の年であり、橋の周辺に賢島スポーツランド志摩マリンランドを同年に開業した[5]1980年代から三重県の管理に移行した[12]2015年(平成27年)から2016年(平成28年)3月にかけて伊勢志摩サミットに合わせて当初計画から1年前倒しで補修工事が行われた[12]。また橋の周囲に放置された廃船の撤去作業を2016年(平成28年)1月25日から実施した[13]

夕日[編集]

賢島大橋は日本の夕陽百選に選定されており[11]、橋の上から見る夕日[14]や対岸の埋め立て地から見る橋と夕日が美しいとされる[11]。対岸では1月下旬から2月上旬と11月に夕日を撮影する人が多く集まる[15]。橋の上からは真珠養殖筏が浮かぶリアス式海岸英虞湾が見られる[9]

2007年(平成19年)に朝日新聞社が自社の会員サイト「アスパラクラブ」で実施したアンケート調査では、賢島大橋の夕日が日本全国で7位に入った[16]2016年(平成28年)5月10日に使用を開始した阿児賢島郵便局の風景印には、賢島大橋に沈む夕日が、アコヤガイを模した輪郭の中に描かれている[17]

橋の近くに駐車場はない[14]

伊勢志摩サミットにおける橋の封鎖・規制[編集]

2016年(平成28年)5月26日27日に賢島で開催された伊勢志摩サミットのため、賢島大橋を5月21日から5月28日まで[注 1]完全に封鎖し、賢島橋では橋の手前に外務省が保安検査場を設置して賢島への入島を厳しく制限した[6]。封鎖前から2本の橋の前では日本全国から派遣された警察官による検問が実施され、ゴールデンウィーク明けの5月9日からは検問がより強化された[19]。サミット前日には付近の道路を警察車両が頻繁に往来し、北海道警兵庫県警の警察官が数百m間隔で配置される状況であった[20]

伊勢志摩サミットの開催が決定した当初は、賢島橋と賢島大橋しか陸路で島へ渡る手段がないことから、外部からの侵入を規制しやすいと目され[2]警察庁の事前評価でも高い評価を得ており、三重県知事鈴木英敬も開催地選考の勝因の1つに挙げていた[21]。しかし警備体制を構築する上で賢島橋も賢島大橋も橋長が短くほぼ陸続きであることなどが問題視され、「警備しやすい」という開催地選考時のキャッチフレーズは次第に使われなくなった[21]

賢島橋の規制[編集]

賢島橋付近に存在した保安検査場(2016年5月5日=運用開始前)

賢島橋は、外務省発行の識別証(IDカード)を保有する島民、島内への通勤者や出入り業者[注 2]のみが通行可能とされた[6]。賢島大橋と同様に、5月21日午前6時に可動式の柵が閉じられた[22]。橋の手前約450mの地点に保安検査場が設けられ、通過には厳重な検査が行われた[23]

自家用自動車で入島する場合は保安検査場で警備員により車内やトランクの入念な確認が行われ[6]、IDカードと車両証の提示が求められた[22][注 3]。保安検査を通過した後は、島内の目的地までオートバイに誘導されながら走行する必要があった[25]

近鉄志摩線および三重交通路線バスの運休[注 4]に伴う代行バス利用者は保安検査場で一旦バスを降りて金属探知機による検査と手荷物検査を受けた[6]。検査終了後は、一般の人は待機している別のバスに乗り換えて賢島駅へ、サミット関係者はワゴン車で志摩マリンランドへ向かった[25]

陸上交通は運休し、賢島港に発着するあご湾定期船志摩地中海村に発着港を変更した[18]ため、保安検査場を通らなければ賢島へ入れないようになっていた[25][27]。係員の不慣れから運用初日に保安検査が30分待ちの行列になることや[25]、伊勢志摩サミット当日の5月26日午前3時頃には右翼団体の車10台が詰めかける[28]などトラブルもあった。5月28日に保安検査場は運用を終了し、関係者が備品を搬出した[29]

賢島大橋の封鎖[編集]

賢島大橋の検問所(2016年5月1日)

賢島大橋はサミット会場である志摩観光ホテルに近く[6]4月6日までに本州側に検問所が設置され、通行車両の監視を行った[30]。5月21日午前6時に機動隊員らによって可動式の柵が閉じられ[6]要人専用の通路となった[31]。封鎖以降、警察官は通行不可であることを知らずに橋の前に来た車両に対し、賢島橋を利用するよう誘導した[32]。サミット当日は約20人態勢で橋の警備に当たった[33]。警察官だけでなく、警視庁大阪府警警察犬も投入して厳戒態勢を執った[34]。5月28日午前7時に「規制解除」の号令に合わせて警視庁の機動隊が柵を開放し、入島規制が解除された[29]

脚注[編集]

注釈
  1. ^ 入島規制の方針・時期が初めて公表されたのは3月28日に志摩市で開かれた住民説明会であった[18]
  2. ^ 事前申請した330人に対し、志摩市役所で5月14日から5月16日までIDカードが配布された[10]
  3. ^ 車両1台の通過にかかる保安検査は約5分であった[24]
  4. ^ 近鉄志摩線は鵜方駅から賢島駅の間で全面運休となった[26]。ただし電車の折り返しのため、鵜方駅ですべての乗客を降ろした後、電車は賢島駅まで回送された[26]。三重交通は賢島へ乗り入れる系統を運休した[6]
出典
  1. ^ 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編(1983):315ページ
  2. ^ a b c 添田隆典「テロ対策 県警懸命 集客施設の監視強化」中日新聞2015年11月26日付朝刊、社会面35ページ
  3. ^ a b 菅田 編(1995):57ページ
  4. ^ a b c d e f 「賢島今昔 ◇6◇ 賢島橋 発展の歴史 礎築く」中日新聞2016年5月15日付朝刊、伊勢志摩版
  5. ^ a b c d 近畿日本鉄道株式会社(2010):317ページ
  6. ^ a b c d e f g h i j 「賢島封鎖始まる 28日まで 出入り住民らのみ」中日新聞2016年5月22日付朝刊、社会面
  7. ^ 「真珠の島、輝く黄昏 三重・志摩の賢島」朝日新聞2006年6月16日付朝刊、36ページ
  8. ^ a b 伊勢文化舎 編(2015):2ページ
  9. ^ a b c 国立公園へ出かけよう! 志摩 おすすめコース 賢島一周コース”. 環境省. 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  10. ^ a b c IDカード交付始まる 賢島規制”. 中部発. 読売新聞 (2016年5月15日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  11. ^ a b c 志摩・賢島大橋に沈む夕日見頃に―「日本の夕陽百選」に選ばれた夕日スポット”. 伊勢志摩経済新聞 (2012年11月13日). 2016年8月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月3日閲覧。
  12. ^ a b c 「三重県志摩建設 賢島大橋塗り替え最盛期に 防錆・経済性でエポガード」橋梁新聞2016年1月1日付、31ページ
  13. ^ サミット控え、志摩・賢島周辺の放置廃船を撤去”. 特集. 読売新聞 (2016年1月26日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  14. ^ a b 賢島大橋”. 伊勢志摩観光ナビ. 伊勢志摩観光コンベンション機構. 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  15. ^ 伊勢志摩サミット100日前 賢島のサクラ、「待てずに咲いちゃいました」”. 伊勢志摩経済新聞 (2016年2月16日). 2016年2月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  16. ^ "日本一の夕日に見とれる 「絶景」探して波の上"朝日新聞2007年8月28日付夕刊be5ページ
  17. ^ 風景印/阿児賢島郵便局”. 日本郵便. 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  18. ^ a b 「賢島の規制開始5月21日で調整」中日新聞2016年3月29日付朝刊、10版1ページ
  19. ^ "GW客足 つかの間の安堵 警備本格化 店「これから耐える」"中日新聞2016年5月10日付朝刊、社会面
  20. ^ 「警戒体制 最高レベル 空港、伊勢神宮 ピリピリ」中日新聞2016年5月25日付夕刊、1ページ
  21. ^ a b 添田隆典「楽観論一転 高い重圧 2015 みえ回顧 ⑦サミット警備」中日新聞2015年12月31日付朝刊、三重版10ページ
  22. ^ a b サミット会場・賢島、立ち入り禁止…橋を封鎖”. 特集. 読売新聞 (2016年5月21日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  23. ^ 堀川勝元・井上昇「陸路なら断続規制か 首脳車列 空港から高速 進み方次第で長時間も」朝日新聞2016年5月11日付朝刊、三重版25ページ
  24. ^ 賢島「封鎖」、厳戒突入=出入り規制、海域占用―三重”. 時事ドットコムニュース. 時事通信社 (2016年5月21日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  25. ^ a b c d 「伊勢志摩サミット」賢島への出入り規制 島民は厳重な手荷物検査受ける”. 伊勢志摩経済新聞 (2016年5月21日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  26. ^ a b 「静寂の賢島 高まる緊張 消えた観光客 目立つ警察官」中日新聞2016年5月22日付朝刊、社会面
  27. ^ 「賢島周囲にフェンス 不審者対策 隙間なく あす開催まで50日」中日新聞2016年4月5日付朝刊、1ページ
  28. ^ 「伊勢志摩サミット」賢島入り口に右翼団体の車、一時騒然となる”. 伊勢志摩経済新聞 (2016年5月26日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  29. ^ a b 「賢島 日常の姿に 店舗や観光客 電車も元通り」中日新聞2016年5月29日付朝刊、三重版23ページ
  30. ^ 「あと50日 物々しさ 応援警官ら警備本格化」2016年4月6日付夕刊、社会面10ページ
  31. ^ 「伊勢志摩サミット」開催へ 安倍首相が伊勢神宮参拝”. 伊勢志摩経済新聞 (2016年5月25日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  32. ^ 賢島の封鎖開始 検査場設置、出入りに識別証提示”. 伊勢新聞 (2016年5月22日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  33. ^ 周辺警戒続く…サミット閉幕、安堵の声も”. 産経WEST. 産経新聞 (2016年5月27日). 2016年8月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月4日閲覧。
  34. ^ "「犬のお巡りさん賢島入り」朝日新聞2016年5月20日付朝刊、三重版25ページ"

参考文献[編集]

  • 伊勢文化舎 編『ぱるく伊勢志摩 第4号』2016年伊勢志摩国立公園指定70周年記念紙、伊勢文化舎、2015年12月17日、16p. 全国書誌番号:22696595
  • 「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 24三重県』角川書店、1983年6月8日、1643p. 全国書誌番号:83035644
  • 近畿日本鉄道株式会社 『近畿日本鉄道 100年のあゆみ』 近畿日本鉄道、2010年12月、895p. 全国書誌番号:21906373
  • 菅田正昭 編『日本の島事典』財団法人日本離島センター監修、三交社、1995年6月25日、495p.、ISBN 4-87919-554-5

関連項目[編集]

外部リンク[編集]