計画

計画(けいかく、: planあるいはprojectあるいはprogram)とは、何らかの物事を行うために、あらかじめその方法や手順を考え企てること。また、そうして考えた方法や手順[1]。具体的には、将来実現しようとする目標と、そこに到達するための主要な手段や段階とを組み合わせたものである[2]

計画には、上述の目的(目標)や方法・手順に加えて具体的な時期、日付などが含まれていることが一般的である。ものによっては詳細な時刻まで含む。 なお、実行する日時などまで明確化した計画表(予定表)をスケジュールと言う。 (その点で計画は、目的と手順が含まれているが日時が指定されていないような「手順書」や「レシピ」などとは異なっている。)

ある計画が実行途中で頓挫したときに発動される次善の策、代替計画(代替プラン)を「plan B (プラン・ビー)」と言う[3]英語圏では、現場でさかんに用いられる表現である。日本人は、主たる計画がうまくいかなかった場合の代替計画「プランB」をあらかじめ立てておく、ということをないがしろにしがちなところがあり、現実の世の中では最初の計画通りに行かないことがあるにもかかわらず、最初の計画どおりいかなかった場合、日本人は(無計画状態となり)破綻してしまいやすい、という[4][注 1]

企業経営[編集]

企業経営は、計画を練って行われることが一般的である。これを経営計画と言う。

日本の経営関連の書籍や経営コンサルタント(企業診断士)の書籍などでは しばしば、PDCAサイクル」を回すことの重要性が説かれている。計画→実行→評価→改善→計画→実行…と繰り返してゆくことが大切だと説明されているのである。 「サイクルを回す」、とされている理由は、計画というのはあまり硬直的に扱うべきではなく、計画を実行に移しつつも、たとえ実行の途中段階であっても、適宜にその進捗状態や効果などを評価し、改善すべき点を洗い出し、柔軟に計画を修正したり変更し、修正された計画に基づいて新たな方法・手順で実行し、また評価、改善してゆくのがよい、とされているのである。

一般に、企業における計画では、目標、時間、リソースなども含む。 どのような目標のために、いつ(年度、四半期、日付、あるいは時間軸上の一連の指定など)、企業活動の主要なリソース(資源)である「ヒト・モノ・カネ(・時間)」(つまり、人的資源、設備的資源、資金、時間)を 具体的にどのように投入するか、ということも考慮する。

新たに事業を立ち上げたり会社を立ち上げる場合は特に、あらかじめ それ相応の時間をかけて、「事業計画書」というものを作るのが一般的である。

上場企業では、株主総会で株主に対して経営計画を説明する時間を設けたり、株主向け文書においてそれを説明する章を設けることが一般的である。

また世界的に見て、社債を発行する場合(つまり出資してもらう場合、企業から見て借金をする場合)も、出資者に対して何らかの形で事業計画を説明することが一般的である。アメリカでも社債の出資者の募集の文書(米国 証券取引委員会が管轄)には、当該企業の事業計画や財務計画に関する章が含まれる。

行政・政治[編集]

政治家は、選挙の時に選挙権者に対して公約マニフェスト (あるいは個々の政治家は「私は~を実行します」などの文章)等の形で、さまざまな目標を表明する。そして当選すると、その目標や状態を実現すべく、さまざまな計画として練り上げ、具体的な行動に移してゆくことになる。

特に自治体や中央政府の首長となった場合は、何らかの目的・目標を設定し、それを実現するための方法・手順を考え、結果を出すという重い責任を負うことになる。国により、また政治家の資質により、政治家主導で計画が練られて行く場合と官僚主導で計画が練られて行く場合がある。

公式/非公式、公表/非公表

計画は公式/非公式のもの、また公表される場合とされない場合がある。

国家の公式の計画、たとえば国家経済の計画(経済発展のための計画)、公衆衛生のための計画、宇宙計画などは概ね公表されることが一般的である。

各国の軍の長期的な展望は白書などで公表されることも多いが、軍事作戦戦闘に関する具体的な計画は、敵に知られてはならないので、組織外部に対しては秘密にされ、兵士には箝口令が敷かれることが一般的である。

諜報機関で練られた具体的な計画も外部に対しては秘密にされ、しかも、しばしば上層部だけが把握し、各メンバーには計画の全貌は知らされない、などということも行われる。

脆弱なプロジェクトは組織の時間と資金を浪費するだけに終わる(Σプロジェクトなどは国家規模での失敗例である)[5][6]

資本主義/社会主義 と計画

国家経済に関して、(かつて社会主義国家の数が多かった時代)「資本主義では市場原理にまかせる傾向があるのに対して、社会主義では計画経済を行う」、と(単純化されて)説明されることも多かった。ただ、実際にはさまざまな程度があり、資本主義と言えども政府主導で計画的に経済を誘導している場合(面)もある。日本の場合、中央省庁(の官僚)と民間企業(官と民)が協力して数年程度~10年程度の計画を立て、多数の企業がそれに沿って活動してゆく、というようなことも行われることもあるので、日本というのは資本主義と社会主義を折衷したような性質を持っていると(アメリカの学者などから)指摘されることもある。

かつて存在したソ連政府は五カ年計画を立てた。

都市計画[編集]

イギリス、シティ・オブ・ロンドン地区の土地を12の会社が分割して保有する計画の図面(1836年。オリジナルは1622年まで遡る)

カテゴリ:都市計画にあるとおり、都市計画とは、都市の将来のあるべき姿を描くことであり、またその実現のためにさまざまな規制・誘導等を行うことである。したがって都市計画は、土地利用規制、用途地域の指定、都市開発宅地開発などにおける建築施設群の空間構成も含む。また交通計画防災対策なども含むといわれているが、広辞苑では「都市生活に必要な交通区画住宅衛生保安経済行政などに関し、住民の福利を増進し公共の安寧を維持するための計画」大辞林では 「都市における交通の便利と住宅の整理と住民の幸福とを目的として改良を施す計画」とされており、都市部で何かしら企てをおこなうことについて全て都市計画の範疇に含まれる。

日笠端は1977年に自著「都市計画」で「わが国では都市計画というと、街路公園上下水道などの都市施設建設事業と考えられてきた。しかし、都市計画は単なる建設技術工学であってはならない」と喝破しており、単なる施設の建設計画や配置計画ではないことは明白である。

物的計画[編集]

但し日笠は上記同書で都市計画を「都市というスケールの地域を対象とし、将来の目標に従って、経済的社会的活動を安全に、快適に、能率的に遂行せしめるために、おのおの要求される空間を平面的、立体的に調整して、土地の利用と施設の配置と規模を想定し、これらを独自の論理によって組成し、その実現をはかる技術である。」とし、これは都市計画において物的計画と呼ばれる。

交通と計画[編集]

航空[編集]

航空機飛行を行なう場合に航空を管理する官署などに通報・提出する飛行に関する計画を飛行計画という。

鉄道[編集]

敷設計画
運行計画

鉄道の列車の運行に関する計画を鉄道運行計画と言う。 旅客が利用可能な列車の運行計画に関しては時刻表という形で公表される。

登山と計画[編集]

登山は一般に、計画をしっかり立ててから行う。登山計画の作成は、登山者の生命(生き死に)に大きく関わり、実際に肉体を動かして登る行為と同等、もしくはそれ以上に重要な行為であり、登山というのは、実は「計画を立てる段階からすでに始まっている」などと表現されることがある。

登山計画の立て方には様々あるが、いずれにせよ、山選び(どの山に登るか)、期日選び(いつ登るか)、リーダー決定(誰がリーダー役を務めるか)、などの要素は含まれる。

登山の詳しい解説書では、あまり硬直した計画、シナリオが単線で一筋しかないような計画ではなく、歩いている途中で疲れて遅れたり、予想外の出来事で停滞せざるを得ないことなどは誰でもしばしば起きることなので、事前に各区間の所要時間を綿密に調べておいて、山のある場所に到着した時に実際には何時何分になっていたら(あるいは、予定よりどれくらい遅れていたら)その時点でどうするのか(来た道を戻り下山するのか、最寄りの山小屋へ避難するか、進みつづけるのか 等々)という、分かれ(条件分岐)する形で、いくつもの代替計画を樹木状の線を含む図などで(あるいは多層的に含むような形で)作成したほうがよい、と解説されており、実際、多くの大学の登山部やワンダーフォーゲル部などではそうした方式で登山計画を作る訓練を受ける。

実際に入山したら、登山計画書という書類を、登山道入り口脇などの箱に入れる。これによって、もしも遭難した時や連絡がとれなくなった時は、地元の救助隊がそれを確認し、登山者の居場所を見つけてくれる可能性、そして命が助かる可能性が増える。

計画の立案方法[編集]

詳細はプランニングを参照


トップダウン・プランニングとボトムアップ・プランニングがある。

プランニングに関しては、心理学ゲーム理論コミュニケーション情報理論などで扱われることがある。


「長期計画」→「中期計画」→「短期計画」の順に、前のものを考慮しつつ、計画を立ててゆく方法がある。

また組織では「戦略」を踏まえつつ計画を立てる、ということも一般的である。

プロジェクト(大規模計画)[編集]

計画のなかでも特に大規模なもの(およびその実行)は「プロジェクト」と呼ばれている。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 。 英語圏では、あらかじめ、「プランB」も破綻した場合のための「プランC」といったように多数の代替策を用意しておいて、次から次へと次善の策を出せる者もいる。なお、日本人でも、世界的に活躍している商社員(商社マン)などは、そうした考え方に慣れていて、実行している者、あるいはそれを実行すべし、としている会社は世界的な商社では多い。あらかじめさまざまな事態が発生した場合の策を練るように、上長が部下の指導・トレーニングをする。さまざまな成功や頓挫と言った状況を考慮しておいて、どのパターンになった場合でも、あらかじめ考えておいた策どおりに即座に対応策を打つ。彼らはしばしば「それは織り込み済みの状況だ」と(落ち着いた顔で)言う。つまり、起きていることは、事前にさまざまに予想していたパターン群のいずれかに入っていて、一応「想定内」のことであり、策も立ててあり、対応できるとあらかじめ知っているから、あとはものごとを実行してゆけばよい、という意味の発言である。

出典[編集]

  1. ^ 広辞苑第六版「計画」
  2. ^ ブリタニカ国際百科事典「計画」
  3. ^ デジタル大辞泉「プラン・ビー」
  4. ^ NHK『英雄たちの選択』「水害と闘った男たち~治水三傑・現代に生かす叡智」での経済学者飯田泰之の指摘。現実の世の中ではゼロリスクは不可能で、この世では「絶対」(=確実)ということはどんな分野であれ、あり得ず、日本人には悪しき「ゼロリスク信仰」(何が何でもゼロリスクでなければ、という強迫的な思い込み)があり、「完璧なプランA」ばかりを目指しがちで、そういうメンタリティだから、日本では誰かがあらかじめプランBも検討するだけで、周囲の日本人が「(プランBを練るということは)その計画(A)は完璧じゃないのか!」とすぐにヒステリックにつっこみがちで、それが、安全のためにプランBも当然練っておく、という合理的な行為を妨害する風土となり、(現実世界では最初の計画どおりに行かないことは多いので)結果として日本では「いざ」という時に無策な状態となり、悲惨な事態を生みやすい、という飯田泰之による指摘。
  5. ^ Stephen R Martin (2009年6月9日). “What Should Be Included in a Project Plan”. The Project Management Hut. www.pmhut.com. 2011年6月16日閲覧。
  6. ^ J. Scott Armstrong (1986). “The Value of Formal Planning for Strategic Decisions: A Reply”. Strategic Management Journal 7: 183–185. http://www.forecastingprinciples.com/paperpdf/Value%20of%20Formal%20Planning.pdf. 

計画の例[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]