脇息

脇息(きょうそく)とは、脇に置いてもたれかかるための安楽用具[1]記紀では几(おしまずき)奈良時代には挟軾(きょうしょく)と呼ばれた[2]正倉院に「紫檀木画挟軾[3]」として伝わっているものが古形であり、使用法も身体の前面に置いてもたれかかるものだったが[4]平安時代以降は脇に置いて片肘をつくための天板光月型、上部に綿を敷き布を張ったものも生まれた[4]。材質には木製の他、紫檀や竹製が使われた。また平板には長方形のものの他、湾曲した形もあった。女性用として引き出しが付いた箱形の「寄懸(よりかかり)」もあった。

平板に四本脚を付けたものが典型的な形で、平板に綿を詰めビロードなどを張ったものがある。主に明治時代まで和室において使用された。時代劇などでは主に貴人(将軍大名貴族など)が上座にて使用する光景が見られるが、実際には私室で用いられ、公式の場に置かれることはなかった。現代では料亭や高級旅館などで客用に置かれたり、和室で行われる囲碁将棋の対局の場でかろうじて、その名残を見ることができる[5]

御伽草子に収録されている天稚彦草子では、人間の娘が姿を変えられて脇息になる場面がある。

脚注[編集]

  1. ^ 北原保雄 編『明鏡国語辞典』(第二版)大修館書店、2010年12月。ISBN 978-4-469-02117-2 
  2. ^ 新村出 編『広辞苑』(第六版)岩波書店、2008年1月。ISBN 978-4-00-080121-8 
  3. ^ 紫檀木画挟軾”. 正倉院. 2019年9月23日閲覧。
  4. ^ a b ブリタニカジャパン 編『ブリタニカ国際大百科事典』(小項目版2010)ロゴヴィスタ〈Logo Vista 電子辞典シリーズ〉、2009年。 NCID BB01231655 
  5. ^ 「第53回東急百貨店将棋まつり」開催報告|イベント|日本将棋連盟”. www.shogi.or.jp. 2023年9月15日閲覧。

関連項目[編集]