箇条書き

箇条書き(かじょうがき。公用文や法令では「箇条書」)は、文字による表現方法のひとつ。いくつかの項目をひとつひとつ分けて書き並べる。項目は単語であったりであったりする。枠線を使わないの一種。

箇条書きの例(五箇条の御誓文

項目の前に「・」(てん)など記号を書いたり数字ローマ字などで番号をふったりする場合もある。日本では全項目の前に「一」や「一、」を書く場合もある。

文章中で用いることも、単独で用いることもある。

概要[編集]

いくつかの項目を読みやすく(見やすく)するために箇条書きを用いる。文中にいくつもの項目を並べていくと、他の文字や記号に埋もれてしまい、項目の確認がしづらくなるからである。そこで項目ひとつひとつに1行をあてて並べる。それが箇条書きである。(項目が長めの文の場合には、用紙の1行の文字数などの制約で改行することになって、「項目ひとつひとつに1行をあてて」が破られる。詳しくは#使用上の注意を参照。)

記号などを利用する箇条書きもある。たとえば「・」や「」「□」などの記号を項目の前に書くことで、箇条書きの部分を際立たせる事ができる。また、記号ではなく数字やローマ字などを利用すると、項目の個数がはっきりしたり項目を指摘しやすくなったりする。

箇条書きをさらに際立たせるために、他の行よりも行頭を後退させるインデントを行なったり、箇条書きの前後に行を空けたりする場合が多い。加えて、文章と異なる文字の大きさにする場合もある。

句読点名詞(名詞句)を並べただけのものである場合は一般的に付けないことが多いが、各項目が文章の体をなしている場合は付ける。

歴史[編集]

箇条書きを最初に使ったのは、歴史に残る限りではガイウス・ユリウス・カエサルとされる。カエサルは、7年間のガリア地方への遠征の様子を「ガリア戦記」に書く際に、箇条書きを多用している。例えば「この城を攻める目的は三つあり、一つは……」のような表記をして、簡潔な表現を追求した[注釈 1]

英国の宰相ウィンストン・チャーチルも、箇条書きを多用したことで知られる。例えば、1940年に報告書の長さと多さに辟易としたチャーチルは、各部局に箇条書きを使うことを指示したメモを送った。そのメモの内容も、5か条の箇条書きにして簡潔さと分かりやすさを実践した。また、1941年にチャーチルは松岡洋右(当時の日本政府の外務大臣)に戦争を回避するための書簡を送り、内容を(外交文書としては異例の)箇条書きにして問題点を明確にし、各項目にYes/Noの答えを迫った(しかし、松岡が返信したのは具体性のない総論だけだった)。

使用例[編集]

項目だけ[編集]

項目を羅列した一つの文「元素周期表の18族(希ガス)は、ヘリウム (He) ・ネオン (Ne) ・アルゴン (Ar) ・クリプトン (Kr) ・キセノン (Xe) ・ラドン (Rn) である。」を箇条書きに直すと次のようになる。

元素周期表の18族(希ガス)は、次のとおりである。[注釈 2]
ヘリウム (He)
ネオン (Ne)
アルゴン (Ar)
クリプトン (Kr)
キセノン (Xe)
ラドン (Rn)

行頭記号つき[編集]

項目の先頭に記号などを付けた例を示す。

ビュレット[編集]

  • 平安時代
  • 鎌倉時代
  • 江戸時代

記号[編集]

★ 集合時刻 …… 午前9時30分
★ 集合場所 …… 駅前広場の噴水前
★ 注意事項 …… 白い薔薇の花を胸に差してくること

数字[編集]

  1. 空気抵抗の低減
  2. ダウンフォースの増加
  3. 車体重量の軽減

アルファベット[編集]

ここでは、アルファベットを囲う括弧も付けた例を示す。

(a) 関係代名詞の非制限用法
(b) 現在完了進行形
(c) It ... that ... による強調構文

片仮名[編集]

ア. 現在の日本で問題視されている少子化を食い止める方策
イ. 少子化がこのまま続いていったときに想定される社会状況
ウ. 人口減少時の歳入の減少と歳出の減少との相殺

箇条書きの階層[編集]

箇条書きの行頭記号による階層の付け方は、公用文作成の要領に例が挙げられている。ただし、公用文以外のほとんどの文書は、その例に準じていない。公用文でも、準じていないものもある。

その他[編集]

字数や紙面の制約によって、一つの文中に箇条書きのような書き方をすることがある。

コンピューターは▼演算装置▼記憶装置▼入力装置▼出力装置の4つで構成されている。
ビスケットの主な材料は、(1)小麦粉、(2)牛乳、(3)ショートニング、(4)バター、(5)砂糖である。

使用上の注意[編集]

項目が多くなりすぎると項目同士の関係がぼやけてきて、読みやすさ(見やすさ)が損なわれる。項目がある程度の個数になったら、項目を分類して箇条書きをいくつかに分けるか、枠線を使って表にするかでまとまりが良くなる。また、項目を文にした場合に文がある程度の長さになったら、それぞれの項目を段落として文章にするのが良い。ただし、項目数にしても項目長にしても明確な限界値があるわけではない。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 代表的な簡潔な表現として、ゼラの戦いでの勝利を報告した「来た、見た、勝った」がある。
  2. ^ 述語「次のとおりである」を箇条列の最後に書かず、例のように先頭の文の最後に続けて書き、文を完結させるほうが読みやすい(とくに途中でページ替えがある場合に顕著になる)。

関連項目[編集]