毒薬と老嬢
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『毒薬と老嬢』(どくやくとろうじょう)は、ジョセフ・ケッセルリングが1939年に発表した戯曲。
概要
[編集]『毒薬と老嬢』は、リンゼイ・アンド・クラウス製作、ブレテーヌ・ウィンダスト演出で、 1941年1月10日にブロードウェイのフルトン劇場で開幕した。1943年9月25日にはハドソン劇場に移り、1944年6月17日に閉幕するまで1,444回の公演を行った[1]。マルセル・ヴァーネル演出、ウェスト・エンド・シアターのストランド劇場(現ノヴェロ劇場)でも同様にロングラン公演となった[2]。1942年12月23日に開幕し、1946年3月2日に閉幕するまで、合計1,337回の公演を行った[3]。
日本での初演は、1951年、東京・三越劇場にて、宝塚歌劇団退団後の轟夕起子らにより上演された [4] 。1987年からは、黒田絵美子の翻訳で劇団NLTが今に続く多くの公演を行っている [5]。2022年には、松竹の製作で関西弁バージョンが上演された[6]。
「毒薬と老嬢」の原題は、「Arsenic and Old Lace」(ヒ素と古いレース)。砒素は毒薬で、古いレースは、主人公である老姉妹の古風な衣装を縁取るレースのこと。ニューヨークのブルックリンにあるヴィクトリア朝風の瀟洒な屋敷の部屋を天涯孤独の老人達に下宿として開放し、いわば人助けとして砒素入り酒を振舞ってあの世へ送る上品な老姉妹をめぐるブラックコメディ [7] 。
あらすじ
[編集]モーティマー・ブリュースターは、ニューヨーク、ブルックリンに住む演劇評論家。狂気じみた殺人鬼の家族や地元警察と対峙しながら、牧師の娘であるエレイン・ハーパーとの結婚の約束を果たすべきかどうか悩む。
彼の家族には、独身の叔母アビーとマーサ・ブリュースターがいる。2人は、自家製の毒入り酒で、老い先短い不幸な老人たちを安らかに眠らせることを秘かな楽しみにしている。次兄のテディは、自分がルーズベルト大統領だと信じ、ブリュースター家の地下室でパナマ運河を掘っている。実際には、それは叔母たちの犠牲者の墓になっているが、テディは彼らが黄熱病で亡くなったと思っている。そんな中、殺人鬼である長兄ジョナサンが、アルコール依存症の共犯者である医師アインシュタインよる整形手術を受け、身元を隠すためにブリュースター家に帰ってくる。
モーティマーは家族から狂気を一掃する方法を見つけようと苦心し、ジョナサンの件は警察に任せ、最終的にテディと叔母たちを養護施設に送ることにする。
登場人物
[編集]
- エビイ(アビー):老姉妹の姉。
- マーサ:同・妹。
- モーティマー:老姉妹の3人いる甥のうちの末っ子。新聞記者。
- テディ:老姉妹の甥。次男。老姉妹と同居している。自らをルーズベルト大統領だと思い込んでいる。
- ジョナサン:老姉妹の甥。長男。殺人罪で指名手配されている。顔の整形手術により「フランケンシュタインの怪物」そっくりになってしまった。
- アインシュタイン:ジョナサンと共に行動し指名手配されている外科医。ジョナサンの顔の整形手術は彼によるもの。
- エレーン:モーティマーの恋人。
- ハーパー:エレーンの父親。老姉妹の家の隣に建つ教会の牧師。
- ギブス:老姉妹宅の部屋を借りに来る老人。
- ブロフィー:警察官。
- クライン:ブロフィーの同僚。
- オハラ:ブロフィー達の同僚。趣味で本を執筆をしている。
- ルーニー:刑事部長。
- ウィザースプーン:養護施設の所長。
日本語訳書
[編集]- 『英和対訳モーション・ピクチュア・ライブラリーNo.17』 訳:折戸礼司 (ケーリー・グラント主演映画シナリオの翻訳 出版社:世界文庫 刊行年:1948年 表紙絵:野口久光)
- 『毒薬と老嬢』 訳:黒田絵美子(出版社:新水社 刊行年:1987年 ISBN 491-5-16-5124)
日本における主な上演
[編集]- 三越現代劇第二回公演 1951年7月11日 - 29日、三越劇場、翻訳・演出:菅原卓、出演:轟夕起子、南義江[8][9]
- 劇団雲公演 東京・三百人劇場、1974年12月4日 - 15日、翻訳:沼澤洽治、脚色:荒川哲生、沼澤洽治、演出:荒川哲生、出演:南美江、新村礼子[10]
- 劇団NLT公演[11]
- 1987年5月8日-24日、博品館劇場、演出:デボラ・ディスノー、出演:北林谷栄、賀原夏子
- 1989年10月20日–11月5日、博品館劇場、演出:大江夏生、出演:賀原夏子、中村メイコ[12]
- 1991年1月5日–13日、博品館劇場、演出:大江夏生、出演:賀原夏子・淀かおる
- 1998年4月4日-8日、博品館劇場、演出:井上思 出演:岡田茉莉子、木村有里
- 2002年3月5日、かめありリリオホール、演出:グレッグ・デール、出演:淡島千景、淡路恵子
- 2004年5月21日-30日、博品館劇場、演出:グレッグ・デール、出演:淡島千景、淡路恵子
- 2018年2月28日-3月4日、博品館劇場、演出:賀原夏子/グレッグ・デール 出演:木村有里、阿知波悟美
- 2021年7月19日、亀戸文化センター カメリアホール、演出:賀原夏子、グレッグ・デール 出演:木村有里、阿知波悟美
- 松竹主催公演[13] 2022年3月16日 - 20日:新橋演舞場、3月26日 - 27日:名古屋御園座、4月2日:久留米シティプラザ ザ・グランドホール、4月9日 - 10日:札幌道新ホール、4月16日 - 24日:大阪松竹座、演出:錦織一清、脚色:せきどみきのぶ、音楽:岸田敏志、出演:久本雅美、藤原紀香
- アンクル・シナモン(錦織一清)主催公演[14][15] 2025年3月27日 – 4月4日:三越劇場、演出:錦織一清 脚本:浩寛、音楽:岸田敏志、出演:久本雅美、大湖せしる
脚注
[編集]- ^ 1692 - インターネット・ブロードウェイ・データベース
- ^ “Production of Arsenic and Old Lace | Theatricalia”. theatricalia.com. 2025年6月1日閲覧。
- ^ 'Chit Chat', The Stage, 1946-02-14, p.4.
- ^ “エッセイ 私が選んだ100本 012.『毒薬と老嬢』作:ケッセルリング”. 演劇批評. 演劇評論家 中村義裕 (2017年6月26日). 2025年6月1日閲覧。
- ^ “公演情報”. 劇団NLT. 劇団NLT. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “久本雅美、藤原紀香の初タッグ 関西弁ブラック・コメディ「毒薬と老嬢」”. 産経新聞 (産業経済新聞社). (2022年4月7日) 2025年6月1日閲覧。
- ^ “演劇 この吾を魅了したもの 第2回(演出家 荒川哲生/北國文筆)”. 鏡花劇場. 鏡花劇場 (1998年). 2025年6月1日閲覧。
- ^ “毒薬と老嬢 上演情報”. JATDT舞台美術作品データベース. 一般社団法人 日本舞台美術家協会. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “[ https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/195928 「毒薬と老嬢」 舞台装置図]”. 文化遺産オンライン. 文化庁. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “[ https://onceuponatimedarts.com/482/ 『毒薬と老嬢』 雲No.43]”. 現代演劇協会デジタルアーカイヴ. 財団法人現代演劇協会. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “公演情報”. 劇団NLT. 劇団NLT. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “[ https://www.bunka.go.jp/seisaku/geijutsubunka/jutenshien/geijutsusai/jusho_ichiran.html 平成元年演劇部門 博品館劇場・劇団NLT「毒薬と老嬢」の成果]”. 文化庁芸術祭賞受賞一覧. 文化庁. 2025年6月1日閲覧。
- ^ “[ http://enbu.co.jp/kangekiyoho/dokuyaku2022/ 観劇予報『毒薬と老嬢』久本雅美、藤原紀香 取材会レポート!]”. 演劇キック. (株)えんぶ (2022年2月22日). 2025年6月1日閲覧。
- ^ “舞台「毒薬と老嬢」が開幕! 演出の錦織一清は久本雅美、大湖せしるの老嬢姉妹に「大湖さんの宝塚のエレガントさと久本さんとのコントラストがダイナミック」”. サンスポ (産経新聞社). (2025年3月28日) 2025年6月1日閲覧。
- ^ “久本雅美、大湖せしるらが登壇、舞台『毒薬と老嬢』取材会が開催 コメントが到着”. SPICE. 株式会社イープラス (2025年2月5日). 2025年6月1日閲覧。