武田知弘

武田 知弘(たけだ ともひろ、1967年 - )は、日本の文筆家[1]フリーライター[1]

主な著書に、『ナチスの発明』『ヒトラーの経済政策』『大日本帝国の真実』『大日本帝国の経済戦略』などがある[2]

経歴[編集]

1967年福岡県出身[3]西南学院大学経済学部中退[3]。1991年にノンキャリア職員として大蔵省に入省[4][5]。1998年から執筆活動を開始[3]

1999年に大蔵省退官後、出版社勤務などを経て、フリーライターとなる[3][1]

専門家からの指摘[編集]

6人もしくは7人の子を生んだ母親に授与された二級母親名誉十字章銀章[6][7]

2006年に出版された著書『ナチスの発明』の記述には複数の間違いがあることが専門家から指摘されている[8][9]

  • 武田は同書のなかで、「税金の源泉徴収を始めたのもナチス・ドイツである」と述べ、「人類への功績」「偉大な発明や発見」として正当に評価されるべきだと主張した[9]。しかし、「源泉徴収」は、イギリスでは1803年に、アメリカでは1862年に導入されており、ドイツではワイマール時代初期に、エルツベルガー財務相税制改革により1920年に導入されていた[8][9][10][11]。武田の「源泉徴収はナチスの発明」論は、源泉徴収をめぐる議論を間違った方向に導き、戸矢学『カリスマのつくり方』(2008年)、斎藤貴男『ちゃんとわかる消費税』(2014年)、舛添要一『ヒトラーの正体』(2019年)[12]大村大次郎『脱税の世界史』(2021年、執筆協力・武田知弘[13])などの著書により、ナチス起源説が定着した[9]
  • ナチスの政策について「世界を変えるような発明、発見をいくつも行っている」「世界に先駆けて八時間労働制を実施し、有給休暇を義務付けた」と書いているが、間違いである[8][9]。「八時間労働制」は1919年国際労働機関(ILO)により国際的基準として確立され[14]、ドイツではワイマール時代には定着していた[8][15]。「有給休暇」は、ナチ政権下で付与を義務付けた法令は出されなかった[8]。「発明、発見」については、ナチスの政策にオリジナルな部分はほぼなかった[8]
  • ナチスの家族政策について「世界で初めて少子化問題を克服した」「女性に様々な配慮をしていたナチス・ドイツは子育て大国だったのだ」と称賛しているが、1940年時点の一家族あたりの子どもの数は1.8人であり、子どもを増やすことには繋がらなかった[8]。また、出産奨励策はナチスにとって有用・優秀と認められた者のみが対象であり、女性が仕事を辞めることを給付の前提とし、子どもを産まない者には罰金が科されたり、障害者には強制断種や強制的な安楽死殺害)が行われていた[8][16]

著書[編集]

  • ナチスの発明』彩図社、2006[8][9][17]
  • 『教科書には載っていない!ワケありな国境』彩図社、2008 のちちくま文庫[18]
  • 『教科書には載っていない! 戦前の日本』彩図社、2009 「戦前の生活 大日本帝国の"リアルな生活誌"」ちくま文庫
  • ヒトラーの経済政策』祥伝社新書、2009 
  • 『ヒトラーとケインズ いかに大恐慌を克服するか』祥伝社新書、2010
  • 『教科書には載っていない ワケありな紛争』彩図社、2010
  • 織田信長のマネー革命 経済戦争としての戦国時代』ソフトバンク新書、2011[19]
  • 『教科書には載っていない 大日本帝国の真実』彩図社、2011[3]
  • ビートルズのビジネス戦略』祥伝社新書、2011[20]
  • 『ワケありな日本経済 消費税が活力を奪う本当の理由 官庁データから読み解く』ビジネス社、2011
  • 生活保護の謎』祥伝社新書、2012[21][22]
  • 『税金は金持ちから取れ 富裕税を導入すれば、消費税はいらない』金曜日、2012
  • 『史上最大の経済改革"明治維新"』イースト・プレス、2013
  • 『昭和30年代の「意外」な真実 "日本が熱かったころ"に隠されたウソとホント』だいわ文庫 2013
  • 『じつは身の回りにあふれている日本の「すごい」発明』だいわ文庫、2013
  • 『大日本帝国の国家戦略 日本はなぜ短期間でアジア最強になったのか?』彩図社、2013 
  • 『「桶狭間」は経済戦争だった 戦国史の謎は「経済」で解ける』青春新書INTELLIGENCE 2014
  • 『オリンピックの「意外」な真実 夏冬五輪の"熱いドラマ"と"仰天の舞台裏"』だいわ文庫 2014
  • 『「新富裕層」が日本を滅ぼす 金持ちが普通に納税すれば、消費税はいらない!』森永卓郎監修 中公新書ラクレ 2014[23]
  • 『教科書には載っていない 太平洋戦争の大誤解』彩図社 2015
  • 『教科書には載っていない 大日本帝国の発明』彩図社 2015
  • 『大日本帝国の経済戦略』祥伝社新書 2015
  • 『悲運の日本史 志半ばで斃れた者たち』笠倉出版社 2015
  • 『なぜヒトラーはノーベル平和賞候補になったのか』ビジネス社 2015
  • 『楽して人生がうまくいく○○の法則100』宝島社 2015
  • 『教科書には載っていない! 戦前の日本』彩図社 2016
  • 『世界一自由で差別のない国・日本』KKベストセラーズ 2016[1]
  • 『ヒトラーとトランプ』2017
  • 『マネー戦争としての第二次世界大戦』2017
  • 『大日本帝国をつくった男 初代内閣総理大臣・伊藤博文の功罪』2018
  • 『経済で謎を解く 関ヶ原の戦い』2018
  • 『本当はスゴイ!血液型』ビジネス社 2018[24]
  • 『世界を変えたユダヤ商法』2019
  • 『経済改革としての明治維新』2019
  • 福沢諭吉が見た150年前の世界~『西洋旅案内』初の現代語訳~』2021
  • 『教科書には載っていない 太平洋戦争の大誤解』2021
  • 吉田松陰に学ぶ最強のリーダーシップ論【超訳】留魂録』2022

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 世界一自由で差別のない国・日本 著者:武田 知弘”. KKベストセラーズ. 2024年2月11日閲覧。
  2. ^ 第二次世界大戦はイデオロギー戦争ではなく、経済問題に端を発していた! 『マネー戦争としての第二次世界大戦なぜヒトラーはノーベル平和賞候補になったのか』”. ドリームニュース (2015年8月17日). 2024年2月11日閲覧。
  3. ^ a b c d e 【武田知弘氏インタビュー】大日本帝国の経済成長の裏には何があったのか?『教科書には載っていない大日本帝国の真実』著者 武田知弘氏インタビュー”. ビジネス+IT (2012年2月22日). 2024年2月11日閲覧。
  4. ^ 【宇都宮健児の風速計】 税金は金持ちから取れ”. 週刊金曜日 (2012年9月18日). 2024年2月11日閲覧。
  5. ^ ワケありな日本経済―消費税が活力を奪う本当の理由”. 紀伊國屋書店. 2024年2月11日閲覧。
  6. ^ 南利明「民族共同体と法(12) : NATIONALSOZIALISMUSあるいは「法」なき支配体制」『静岡大学法経研究』41(2)、静岡大学、1992年8月、41-84頁、NAID 110007651929 
  7. ^ 桑原ヒサ子「『ナチ女性展望』NS Frauen Warteとその表紙にみるジェンダー(延原時行教授・北嶋藤郷教授・Allan Blonde教授退任記念号)」『敬和学園大学研究紀要』第17巻、敬和学園大学、2008年2月、199-216頁、NAID 110007007479 
  8. ^ a b c d e f g h i 小野寺拓也、田野大輔『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』岩波書店、2023年7月7日。ISBN 978-4002710808 
  9. ^ a b c d e f 「源泉徴収はナチスの発明」というウソ 謬説はなぜ広まったのか?”. 現代ビジネス(田野大輔「『ナチスの発明』の起源――源泉徴収をめぐる俗説と『一九四〇年体制』論」『歴史評論』2024年5月号) (2023年2月10日). 2024年2月11日閲覧。
  10. ^ 矢内 一好. “国際連盟によるモデル租税条約の発展”. 国税庁. 2023年6月18日閲覧。
  11. ^ 高橋 典子. “所得税制史におけるナチス期ドイツ所得税法”. 国立情報学研究所. 2022年12月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月18日閲覧。
  12. ^ 独裁者ヒトラーってどんなヒトだ??…舛添要一著「ヒトラーの正体」”. スポーツ報知 (2019年8月31日). 2024年2月11日閲覧。
  13. ^ 大村大次郎『脱税の世界史』 「執筆協力・武田知弘」とあるが、武田『ヒトラーの経済政策』とほぼ一字一句同じ説明だった。左が大村、右が武田。”. Daisuke Tano @tanosensei - X (2023年12月30日). 2024年2月11日閲覧。
  14. ^ MAYDAYの歴史 116年前に始まる8時間労働制”. 労働時間短縮研究所 (2002年3月20日). 2024年2月4日閲覧。
  15. ^ Anordnung über die Regelung der Arbeitszeit gewerblicher Arbeiter.”. documentArchiv.de (1918年11月23日). 2024年2月4日閲覧。
  16. ^ 桑原ヒサ子「ナチ女性の社会活動における戦略としての母性--ナチ・イデオロギーと女性の地位向上のはざまで」『人文社会科学研究所年報』第(9)巻、敬和学園大学、2011年、37-70頁、NAID 40018855556 
  17. ^ 武田知弘『ナチスの発明』彩図社、2006年12月22日。ISBN 978-4883925681 
  18. ^ 書評 国境に秘められた深遠なドラマ”. SAFETY JAPAN (2008年6月27日). 2024年2月11日閲覧。
  19. ^ 【武田知弘氏インタビュー】戦国時代は経済戦争の時代でもあった――織田信長の野望と手腕を読み解く”. ビジネス+IT (2011年8月5日). 2024年2月11日閲覧。
  20. ^ 新書の小径(週刊朝日) 谷本束 ビートルズのビジネス戦略 著 武田知弘”. BOOK.asahi.com (2011年8月26日). 2024年2月11日閲覧。
  21. ^ 生活保護の謎 武田知弘著”. 東洋経済オンライン (2012年8月30日). 2024年2月11日閲覧。
  22. ^ 生活保護はなぜ、国民年金より月7万円以上も高いのか”. PRESIDENT Online - プレジデント (2012年10月22日). 2024年2月11日閲覧。
  23. ^ 「新富裕層」が日本を滅ぼす (中公新書ラクレ 485)”. ブクログ. 2024年2月11日閲覧。
  24. ^ 本当はスゴイ!血液型”. ビジネス社. 2024年2月11日閲覧。 “ここまで異常値が出ているのに、 まだ偶然として黙殺を続ける 精神医学会や心理学会は 既得権益を守るために 必死に抵抗しているだけである”

外部リンク[編集]