正義の四人

正義の四人
The Four Just Men
著者 エドガー・ウォーレス
発行日 1905年
ジャンル 推理小説
イギリスの旗 イギリス
言語 英語
形態 著作物
次作 正義の会議
ウィキポータル 文学
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正義の四人[1](せいぎのよにん、The Four Just Men )は、1905年に発表されたエドガー・ウォーレスの長編推理小説。 「正義の四人」の初登場作品であるとともに、ウォーレスの処女作。司法や法律が罰しない悪人を私的に罰するために、殺人すらも行う4人組を主人公にした犯罪小説(悪漢小説)である。

あらすじ[編集]

法では裁けぬ悪人たちに私刑(時には処刑)を下す謎の集団「正義の四人」から、イギリスの外務大臣あてに犯行予告が送られた。「政治犯を本国へと引き渡す法案の取り下げをしなければ、命をもらう」というもの。 英国警察は刑事と警官を総動員して、四人の逮捕と大臣の護衛に当たる。大臣の公邸がある英国議会の周辺を中心に、正義の四人と捜査官の攻防が繰り広げられる。

主な登場人物[編集]

  • レオン・ゴンザレス - 「正義の四人」の中心人物で、作戦立案や人員スカウトを担当するリーダー兼参謀。スペイン系の名前だが、金髪碧眼で髭がない。数か国語に堪能。アジトに一人残り声明文を作成したり、外出から戻った他メンバーの報告を聞くことが多い。
  • ジョージ・マンフレッド - 「正義の四人」の現場での行動を一手に引き受ける。大柄で口髭をはやし、眼鏡をかけている。刑事に成りすまして警察内に進入したり、変装しての人質の奪還、マスコミ関係者への脅迫から一般人との商談まで何でもこなす。
  • レイモン・ポワカール - 「正義の四人」における活動資金を提供するスポンサー。化学者でもあり、劇薬や爆破物の製造を得意とする。華奢で中性的な風貌、白ずくめの服とエナメル長靴といった派手な格好を好む。捜査官からは「女かもしれない」と言われてしまう。
  • ミゲル・テリー - 新たにメンバーになった4人目。またの名をサイモンとして指名手配のお尋ね者になっている。特技を持っているが、作中ではラストまで具体的内容は伏せられる。がっしりとした体格で顎や体に傷がある。途中で弱気になり、「正義の四人」を裏切り自首しようとする。
  • クラリス - 元「正義の四人」の構成員。テリーの前任の4人目。格闘・銃撃・運送(馬車から戦闘機まで操縦)が得意だった。 本作では回想のみだが、のちの第一短編集「正義の人々」で前日談が語られる作品がある。
  • フィリップ・ラモン卿 - 英国の外務大臣。本作での4人の標的。法案の提出を断念しなければ殺害すると脅迫される。
  • ファルマス警視 - 「正義の四人」事件の捜査責任者。
  • ビル・マークス - ロンドンのスリ。ポワカールから作戦の書いてある手帳を盗む。仕事(スリ)の際は相手の顔を見ない。
  • ハワード巡査長 - ロンドンの所轄刑事。マークスを取り調べる。
  • フランシス・カトリング卿 - 高名な法医学者。
  • パークス - 外務大臣の屋敷の執事。
  • ハミルトン - 外務大臣の秘書。
  • ミラー - ロンドンの電気工事屋。

内容[編集]

  • ウォーレスの「キングコング」と並ぶ代表作で、最初に出版された作品である。「正義の四人」シリーズは4人目のメンバーを変えながら、4長編2短編集と長期にわたって続く人気キャラクターとなった。
  • 後期作品では4人目を置かず「正義の三人」となる[2]

提示される謎[編集]

  • 密室と殺害方法(外傷のない死体)

特記事項[編集]

  • 本作は読者から密室の謎解きを募集して、正解には500ポンドが賞金として提示された[3]
  • 本作品に序文を書いたレッド・ヘリングという編集者の筆名には、「読者の注意を真犯人からそらすため、わざと提示される偽の手がかり」という意味がある[4]

脚注[編集]

  1. ^ 長崎出版「海外ミステリGemコレクション7」(2007年)では『正義の四人/ロンドン大包囲網』と副題がつく。
  2. ^ 第1短編集『正義の人々』ではリーダー格のゴンザレス単独の事件や彼以外の3人、テリーの前任クラリス健在期の4人など、主人公を変えた作品が収録されている。
  3. ^ J. R. Cox ‘Edgar Wallace’, in British mystery writers, 1860–1919, ed. B. Benstock and T. F. Staley, (1988)
  4. ^ Wikipedia「燻製ニシンの虚偽」の項目を参照。