村上ラヂオ

村上ラヂオ
著者 村上春樹
イラスト 大橋歩
発行日 2001年6月8日
発行元 マガジンハウス
ジャンル エッセイ
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 並製本
ページ数 213
コード ISBN 978-4838713141
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村上ラヂオ』(むらかみラヂオ)は、村上春樹文、大橋歩画のエッセイ集。

概要[編集]

2001年6月8日マガジンハウスより刊行された。『anan』(2000年3月17日号 - 2001年3月3日号)に1年間連載されたコラムを加筆修正してまとめた「村上ラヂオ」シリーズの1作目。「遠くの知らない街で」(2000年11月17日号)と「連載って大変なんです」(2001年1月26日号)の2本は単行本未収録。銅版画の挿絵は大橋歩[注 1]。装丁は葛西薫。単行本化にあたり挿絵を倍にして発行。2003年7月1日、新潮文庫として文庫化された[2]

タイトルの「村上ラヂオ」は、1996年6月4日に開設された「村上朝日堂ホームページ」が初出。1997年1月24日、「村上の近況」というコーナーが「村上ラヂオ」という名前に新しく変わり[注 2]、同ウェブサイトの「村上ラヂオ」はそれから1999年11月19日の第45回まで続いた。

翻訳[編集]

翻訳言語 翻訳者 発行日 発行元
ロシア語 エレナ・バイビコフ[注 3] 2010年 Eksmo, Домино
中国語 (繁体字) 頼明珠 2012年11月12日 時報文化
中国語 (簡体字) 林少華 2012年3月 上海訳文出版社
韓国語 クォン・ナムヒ 2013年5月20日 文学思想社

上記翻訳版はいずれも大橋歩の絵が用いられている。

内容[編集]

  • 1970年頃、ウーマンリブ運動をしていた人たちが、女性の解放を主張してブラジャーを焼いた。ドクトル・ジバゴが運命の暗い回廊をたどらなくてはならなかったように、ブラジャーは思いもかけぬ悲運にみまわれることになった。
  • スヴィアトスラフ・リヒテルがイタリアでライブ録音した、ドビュッシーの『版画』のレコードを高校生のときよく聴いていた。何度も何度も何度も繰り返し聴いて、隅々まで記憶した。
  • ドーナッツの穴はいつ誰が発明したかご存じですか? 知らないでしょう。僕は知っています[注 4]
  • 災難は、まるで小田原厚木道路の覆面パトカーのように、どこかでこっそりとあなたを待ち受けている[注 5][注 6][注 7]
  • 恋をするのに最良の年頃は16歳から21歳くらいではないだろうか。
  • かなりの確信を持って思うんだけど、世の中で何がいちばんひとを深く損なうかというと、それは見当違いな褒め方をされることだ。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 村上は1984年に上梓した初エッセイ集『村上朝日堂』で、次のような書き方で大橋に言及している。「べつになんということなく保存していた大橋歩時代の『平凡パンチ』三十冊とか、創刊当時の『アンアン』五十冊『映画批評』三年ぶんなんていうのがけっこう今役に立っている」[1]
  2. ^ 1997年1月に更新された「村上ラヂオ 1」で村上はこう述べている。「今月から『村上の近況』は『村上ラヂオ』という新しい名前に変わりました。頭の中でラヂオを想像してみてください。クローネンバーグの映画みたいな感じでくねっとラヂオになった村上の姿を想像してみてください。怖いですね」[3]
  3. ^ エレナ・バイビコフはペンネームの「アファナーシイ・クニン」(Афанасий Кунин)名義で本書を訳している。
  4. ^ エッセイ「ドーナッツ」[4]は、2014年2月刊行の『アンソロジー おやつ』(パルコ)と2014年10月8日刊行の『なんたってドーナツ――美味しくて不思議な41の話』(ちくま文庫、早川茉莉編)に再録された。
  5. ^ この比喩はスガシカオについて論じた文章の中でも用いられている。「そんなわけで、僕は車のハンドルを握って、東名高速道路の見慣れた風景を眺めるともなく眺めながら、あるいは小田原―厚木道路のどこかに潜んでいるはずの覆面パトカーに怠りなく注意を払いながら、車内のスピーカーから流れるスガシカオの音楽の歌詞に、ついつい耳を澄ましてしまうことになる」[5]
  6. ^ 熊本県の旅行記の中では次のように語られている。「くまモンのいない熊本県を思い浮かべるのは、マグロとわさびを切らせた鮨屋を思い浮かべるよりむずかしいかもしれない。覆面パトカーのいない小田原厚木道路を思い浮かべるよりむずかしいかもしれない」[6]
  7. ^ 2015年に開設された期間限定サイト「村上さんのところ」でも、自身が小田原厚木道路で速度違反により捕まったことが語られている。「僕もついこのあいだまたやられました。(中略) おかげでゴールド免許の夢は、更新一年前にして泡と消えました。ああ、まったくもう」[7]

出典[編集]

  1. ^ 『村上朝日堂』新潮文庫、133頁。
  2. ^ 村上春樹 大橋歩『村上ラヂオ』|新潮社
  3. ^ CD-ROM版村上朝日堂 夢のサーフシティー朝日新聞社、1998年7月、村上ラヂオ1。
  4. ^ 本書、新潮文庫、100頁。
  5. ^ 意味がなければスイングはない文春文庫、250頁。
  6. ^ ラオスにいったい何があるというんですか?文藝春秋、2015年11月、240-241頁。
  7. ^ 仕事熱心な「小田厚」の覆面パトカー (2015年3月16日) - 村上さんのところ/村上春樹 期間限定公式サイト

関連項目[編集]