有声声門摩擦音

有声声門摩擦音
ɦ
IPA 番号 147
IPA 表記 [ɦ]
IPA 画像
Unicode U+0266
文字参照 ɦ
JIS X 0213 1-11-2
X-SAMPA h\
Kirshenbaum h<?>
音声サンプル

有声声門摩擦音(ゆうせい・せいもん・まさつおん :voiced glottal fricative)とは子音の類型の一つで、息漏れ声またはささやき声の短いものである。国際音声字母[ɦ]と記述される。

「有声」といわれるが通常の有声音とは異なり、声帯の接近は少なく、声門に隙間を残して不完全な振動をする。ピーター・ラディフォギッドによれば、このような声門の状態はつぶやき声を発音する時のそれに等しい。[1]

特徴[編集]

気流の起こし手
肺臓からの呼気
発声
声帯の不完全な振動を伴う息漏れ声またはささやき声
調音
調音位置
声帯と声帯の間による声門音
調音方法
口腔内の気流
調音器官の接近度
隙間による摩擦音(ただし、声帯の働きは発声であり、隙間を狭めると声を作る役割を果たす。発声に対してはむしろ声門の開いた状態であり、口腔内の摩擦音とは異なる。)
口蓋帆の位置
口蓋帆を持ち上げて鼻腔への通路を塞いだ口音

言語例[編集]

多くは無声声門摩擦音 /h/ の異音として現れる。

出典・脚注[編集]

  1. ^ 亀井孝; 河野六郎; 千野栄一; 西田龍雄, ed. (1988), “有声のh”, 言語学大辞典 第6巻 術語編, 6, 三省堂, p. 1366, ISBN 4385152152 
子音
肺臓気流
両唇 唇歯 歯茎 後部歯茎 そり舌 硬口蓋 軟口蓋 口蓋垂 咽頭 声門
破裂 p b () () () () t d ʈ ɖ c ɟ k ɡ q ɢ ( ʡˤ) ʔ
() m (ɱ̊) ɱ (n̪̊) () () n ɳ ɲ ŋ ɴ
ふるえ (ʙ̥) ʙ () r ʀ
はじき (ⱱ̟) ɾ ɽ (*) (*)
摩擦 ɸ β f v θ ð s z ʃ ʒ ʂ ʐ ç ʝ x ɣ χ ʁ ħ ʕ h ɦ
側面摩擦 ɬ ɮ
接近 (β̞) (ʋ̥) ʋ (ɹ̥) ɹ ɻ j ɰ
側面接近 () l ɭ ʎ ʟ
非肺臓気流
吸着 ʘ ǀ ǃ ǂ ǁ (ʞ)
入破 ɓ ɗ () ʄ ɠ ʛ
放出 (t̪ʼ) ʈʼ c’ ()
その他
同時調音 ʍ w ɥ ɕ ʑ ɧ
(k͡p) (ɡ͡b) (ŋ͡m)
喉頭蓋音 ʜ ʢ ʡ
舌唇音 () () () (θ̼) (ð̼)
その他側面音 ɺ (*) (ɫ)
破擦音 p͡ɸ b͡β p̪͡f b̪͡v t͡θ d͡ð t͡s d͡z t͡ʃ d͡ʒ ʈ͡ʂ ɖ͡ʐ t͡ɕ d͡ʑ c͡ç ɟ͡ʝ k͡x ɡ͡ɣ q͡χ ɢ͡ʁ t͡ɬ d͡ɮ ʔ͡h
記号が二つ並んでいるものは、左が無声音、右が有声音。網掛けは調音が不可能と考えられる部分。
丸括弧内はIPA子音表(2005年改訂版)に記載されていないもの。
国際音声記号 - 子音