幸手市内循環バス

幸手市内循環バス(さってしないじゅんかんバス)は、埼玉県幸手市が運行するコミュニティバス。運行は中田商会に委託している[1][2][3][4]

本項では、1996年から2016年まで運行されていた「幸手市内循環バス」[5][6][7][8]についても併せて記述する。なお本項では便宜上、1996年に運行開始した市内循環バスを「初代」、2022年1月4日に運行開始した市内循環バスを「2代」と表記する。

歴史[編集]

運行開始から廃止まで[編集]

1996年平成8年)1月より運行開始[8]交通弱者の救済と、公共施設へのアクセス確保を目的として、幸手市が主体となり運行されていた[7]。運行は東埼玉観光バス[9]に委託していた[8][10][11]。土日祝日も毎日運行、年末年始(12月29日 - 1月3日)のみ運休であった[8]

1996年の運行開始当初は運賃無料であったが[12][13]、「幸手市財政健全化計画」により利用者負担の必要性が唱えられ[7]、さらに市監査委員からも有料化を含めたコミュニティバス運行内容の再検討を求められた[7]。市民を対象とした「公共交通に関するアンケート」でも有料化に賛同する意見が多かったことから[7]2011年(平成23年)3月1日より運賃有料とし乗合バス化に踏み切った[7][12][13]

幸手市内循環バスは、市内4路線で運行され年間3万人前後の利用があったものの[12][13]、自宅からバス停留所まで遠い市民にとっては使いにくいなどの問題もあった[12][13]。利用者の高齢化を受け、市民協働課では「バス停まで歩くのも大変だという人が増え、自宅前から乗車できる形とした」として[14]2016年(平成28年)3月31日をもって市内循環バスを廃止[8][12][13]2015年(平成27年)10月から運行開始[8]された予約制デマンドバス幸手市デマンド交通 さっちゃん号[15]に一本化された[8][12][13]

利用状況[編集]

市内循環バス復活へ[編集]

デマンドバス「さっちゃん号」は定員10名のワンボックスカー(トヨタ・ハイエースコミューター[15])2台を使用し[12][13]、利用者の自宅と幸手市内339箇所の停留所(幸手市では「目的地」と呼ぶ)を結ぶ乗合タクシー方式で運行していた[15]。「目的地」は幸手駅および朝日自動車バス停留所で、乗車には事前登録とデマンド交通予約センターへの電話予約が必要となる[15]。しかしデマンドバスの利用登録者は4,000人を超え[14]、乗客の約6割が通院利用のため時間が集中し予約が取れないことも多く、市民からは利用しづらいという苦情が寄せられていた[12][13]

2019年の幸手市長選挙では、デマンドバスの見直しを公約に掲げた木村純夫が当選[12][13]2020年3月に実施した市民アンケートでは、市の公共交通として循環バス復活を望む声が7割を超え、デマンドバス支持は約1割に留まった[12][13]。これを受け、幸手市では2021年2月、市内循環バスの運行を2022年1月に再開する方針を決め、2021年度予算案に事業費2,116万円を計上した[12][13]。2022年度以降は年間約4,000万円の予算を見込んでいる[17]

予定どおり2022年1月4日より、2代目となる「幸手市内循環バス」が運行開始され[1]、市内に本社を置く中田商会(中田観光バス)が運行を受託した[2][4]。廃止前は4コースを2台のマイクロバスで運行していたが、小型ノンステップバスを1台増やして「中央コース」を新設した[1][2][3][14]。中央コースは一日8便、その他のコースは一日4便を運行する[17]。同日、幸手市役所駐車場にて出発式が開催され、木村純夫市長らが出席してテープカットを行った[17]

市内循環バス(2代)では、鉄道路線や市内の一般路線バス、隣接自治体のコミュニティバスとの接続に配慮して利便性を高めた[17]。幸手市内では朝日自動車が一般路線バス4系統を運行しており、市内循環バス5コース全てに一般路線4系統との乗継停留所を設定した[14]。また、埼玉県杉戸町の「杉戸町内巡回バス」と茨城県五霞町の「ごかりん号」への乗換停留所も設けた[14]。市民協働課では「近隣町のバスとの連携を図って利便性を高めた。多くの市民に利用してほしい」と述べている[14]

埼玉県内でも廃止されたコミュニティバスは多数あるが、埼玉県企画財政部交通政策課では、これが実現すれば県内初となる廃止コミュニティバスの復活事例となるとしている[12][13]。ただし実際には埼玉県新座市のコミュニティバス「新座市シャトルバス」の廃止後に、市民の要望により「にいバス」として運行が復活した事例がある。ただし新座市の場合は運行受託事業者が変更されただけでなく、廃止前とは運行ルートが全く異なる。

年表[編集]

幸手市内循環バス(2代)[編集]

運行受託事業者[編集]

運行内容[編集]

運賃・乗車券類[編集]

運賃および乗車券類の設定は以下のとおり[4]

路線[編集]

  • 初代の頃は、 東A・Bコース、西A・Bコースの4コースで運行していたが、2代では「中央コース」が新設された。
  • 起終点の「幸手市役所」と「ウェルス幸手アスカル幸手前)」は、他コースへの乗換ポイントとして設定されており、乗継を考慮したダイヤが組まれている[4]
  • 東コース・西コースはそれぞれ、乗車したままA・Bコースを乗継でき、その場合は追加運賃はかからない(例:東Bコース1便→東Aコース2便)[4]

以下、停留所は複数コースを経由するもの、主要施設を経由するもののみ記載。コースと停留所の詳細については、公式サイト「時刻表」「路線図」を参照。

中央コース[編集]

所要時間は約55分[4]

東Aコース[編集]

  • ウェルス幸手(アスカル幸手前) → 東公民館 → ウェルス幸手(アスカル幸手前) → 児童館・武道館前 → JA幸手支店前(幸手郵便局入口) → 商工会前 → 幸手市役所
所要時間は約60分[4]

東Bコース[編集]

  • 幸手市役所 → 東4丁目(いいじまクリニック前) → 権現堂 → 東公民館 → ウェルス幸手(アスカル幸手前)
所要時間は約45分[4]

西Aコース[編集]

  • 幸手市役所 → 東4丁目(いいじまクリニック前) → 権現堂 → 幸手駅西口 → 商工会前 → 幸手市役所
所要時間は約60分[4]

西Bコース[編集]

  • 幸手市役所 → 幸手北モール → 幸手桜高校入口 → 幸手駅西口 → ジョイフル本田 → 幸手団地中央 → 商工会前 → 幸手市役所
所要時間は約52分[4]

沿線の施設[編集]

車両[編集]

小型ノンステップバスおよびワンボックスカーが使用される[2]。いずれも車椅子での乗車が可能。

  • 日野・ポンチョ(ショートボディ):中央コースで使用。32人乗り、1台[17]。ピンク地に白文字で「幸手市内循環バス」と表記[20]
  • トヨタ・ハイエース:東A・Bコース、西A・Bコースで使用。12人乗り、2台[17]。白地に紺文字で「幸手市内循環バス」と表記[20]。電動ステップと車椅子用リフト付き。

また運行経費を補うため、車両(車体および車内)と専用バス停に掲出する広告を募集している[21]

幸手市内循環バス(初代)[編集]

運行受託事業者[編集]

  • 株式会社東埼玉観光バス[8][10][11]
    • 本社:〒340-0121 埼玉県幸手市上吉羽1064-1[22]
  • 坂東交通株式会社
    • 本社:〒340-0145 埼玉県幸手市大字平須賀3154-9[23][24]

運行内容[編集]

運賃・乗車券類[編集]

路線[編集]

幸手市役所(幸手市東4丁目6-8)を起終点として東武日光線幸手駅を経由する片回り循環路線が、東西各2コースの合計4コース運行されていた[8][16]

各コースとも一日4便、停留所数は40箇所程度、一周の所要時間は60分程度と、比較的長距離・長時間の循環運転を行っていた[8]。以下は廃止時点での路線。停留所は主なもののみ記載。

東Aコース[編集]

  • 市役所 → 老人福祉センター → ひばりケ丘桜泉園 → 西関宿 → 九郎右衛門 → 吉田橋 → 平野 → 吉岡集会所入口 → 保健福祉総合センター → 中央公民館・図書館入口 → 幸手駅前 → 勤労福祉会館前 → 市役所
    • 停留所40箇所(約25.5㎞)、一日4便、所要時間60分[8]
    • コースの一部が、隣接する茨城県猿島郡五霞町県境付近で通過するが、同町内に停留所は存在しない[16]

東Bコース[編集]

  • 市役所 → 幸手駅前 → 幸手団地2街区13号棟前 → 東埼玉総合病院 → 浮合 → 平野 → 一ツ谷 → 九郎右衛門 → 吉田橋 → 老人福祉センター → 保健福祉総合センター → 市役所
    • 停留所41箇所(約27.5㎞)、一日4便、所要時間65分[8]

西Aコース[編集]

  • 市役所 → 内国府間交差点 → 幸手駅前 → 長倉小学校入口 → コミュニティセンター入口 → 川崎公会堂 → 幸手団地中央 → 東埼玉総合病院 → 中央公民館・図書館入口 → 保健福祉総合センター → 老人福祉センター → 市役所
    • 停留所42箇所(約23.4 ㎞)一日4便、所要時間63分[8]

西Bコース[編集]

  • 市役所 → 権現堂集落農業センター → ひばりケ丘桜泉園 → 老人福祉センター → 保健福祉総合センター → 消防署前 → 幸手駅前 → 川崎公会堂 → 下千塚 → 船渡橋 → 市役所
    • 停留所40箇所(約23.3㎞)、一日4便、所要時間64分[8]

車両[編集]

トヨタ・コースター/日野・リエッセIIのカタログカラー
(幸手市内循環バスの車両ではない)

3代目車両[編集]

廃止時点では、同柄のバス2台で上記の4コースを運行していた[14]

  • 日野・リエッセII[6][7][8]
    • マイクロバス。トヨタ・コースターOEM車種。
    • ロングボディ[6]。白と青のツートンカラー(カタログカラー)[7][8]
    • 車椅子用リフト装備(車椅子2台乗車可能)[8]。定員24名(22名+車椅子2名)[6]
    • 車体前面に市章と「幸手市」、側面に市章と「幸手市 市内循環バス」の文字入り[7]。行先表示は差し込み式。
    • 専用車両を2台保有[6]。車両は東埼玉観光バスが所有。

2代目車両[編集]

色柄の異なるバス2台で、上記の4コースを運行していた[12]

初代車両[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 市内循環バス 幸手市、2022年3月12日閲覧。
  2. ^ a b c d e f 市内循環バス 時刻表 幸手市、2022年3月12日閲覧。
  3. ^ a b c 市内循環バス 路線図 幸手市、2022年3月12日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 幸手市内循環バス 中田商会、2022年3月12日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 幸手市市内循環バス運行要綱 平成23年2月16日告示第15号 (平成23年3月1日施行)”. 幸手市. 2021年2月12日閲覧。
  6. ^ a b c d e f g h i j k 幸手市市内循環バスの概要”. 幸手市. 2021年2月12日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 市内循環バスの利用”. 幸手市. 2013年5月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月12日閲覧。
  8. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 市内循環バスの利用(3月31日運行終了) | 幸手市役所ニュースリリース”. 自治体・官公庁プレスリリースサイト マチパブ. プレスリリースポータルサイト JPubb (2016年1月4日). 2021年2月12日閲覧。
  9. ^ 株式会社 東埼玉観光バス”. 2021年2月12日閲覧。
  10. ^ a b c d e f g h i j k 鷲宮発着、路線バスだけの旅!”. へいとうはじめオフィス ミニトラベル未来営業所 公式ブログ (2009年11月5日). 2021年2月12日閲覧。
  11. ^ a b c d e f 八代小学校の商店街見学実習~♪”. 【幸】を【手】にする街・幸手市商工会 公式ブログ (2009年12月24日). 2021年2月13日閲覧。
  12. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z 朝日新聞社 (2021年2月21日). “廃止された市内循環バス、異例の復活 予約制バスは不評(朝日新聞デジタル)”. Yahoo!ニュース. 2021年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月21日閲覧。
  13. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r 廃止された市内循環バス、異例の復活 予約制バスは不評:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 朝日新聞社 (2021年2月21日). 2021年2月21日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g 幸手市循環バス復活 来月4日から 読売新聞、2021年12月21日、2022年3月12日閲覧。
  15. ^ a b c d 幸手市デマンド交通(2021年4月13日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  16. ^ a b c d e 幸手市内循環バス路線図 市内循環バスのルート及び停留所名”. 幸手市. 2021年2月12日閲覧。
  17. ^ a b c d e f 市民から強い要望で循環バスに 埼玉・幸手市が運行 市役所拠点に5コース、鉄道や民間バスとの接続に配慮 埼玉新聞、2022年1月5日、2022年3月12日閲覧。
  18. ^ a b c d e f g 朝日新聞社 (2021年2月21日). “かつて埼玉県幸手市内を走っていた循環バスの車両=2005年撮影、同市提供 (朝日新聞デジタル)”. Yahoo!ニュース. 2021年2月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月21日閲覧。
  19. ^ 市内循環バス1月運行スタート アットホームニュースSATTE、2021年12月15日、2022年3月12日閲覧。
  20. ^ a b 雪の日のお出かけ 市役所→コミセン 循環バス利用 幸手市議会議員 松田まさよ公式ブログ、2022年2月11日、2022年3月12日閲覧。
  21. ^ 市内循環バス 広告掲示募集のお知らせ 幸手市、2022年3月12日閲覧。
  22. ^ 会社概要”. 株式会社 東埼玉観光バス. 2021年2月12日閲覧。
  23. ^ 坂東交通株式会社 (埼玉県幸手市)の企業情報”. カイシャリサーチ. 株式会社カルモ. 2021年2月12日閲覧。
  24. ^ 坂東交通株式会社(埼玉県幸手市)の企業詳細”. 全国法人リスト. 2021年2月12日閲覧。
  25. ^ 幸手市とは?”. 幸手市. 2021年2月12日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

2代
初代