古今雛

古今雛 日比谷家伝来

古今雛(こきんびな)とは、江戸後期に江戸で完成された雛人形。男雛は束帯、女雛は五衣唐衣裳(いわゆる十二単)と上級公家の正装を模すが必ずしも有職故実に則さず、華麗に仕立てている。女雛が単の袖を長く出し、垂髪に宝冠を被るのが特徴である。

「火事と喧嘩は江戸の華」というように、江戸の町は度重なる大火に襲われた。また関東大震災東京大空襲によって壊滅的な打撃を被り、こうした中で江戸製のお雛さまは、その多くが失われた。雛人形を紹介する本を通覧しても、江戸で作られた人形は少しだけしか掲載されておらず、今となってはその存在自体が貴重なものとなっており、人形一式が伝えられているものはさらに珍しい。

一式そろっているものとして、日比谷家伝来の古今雛がある。

日比谷家伝来の雛人形[編集]

日比谷家伝来の雛人形「古今雛(江戸製雛人形)」は東京国立博物館にて、2018年2月27日より3月18日まで展示された[1][2]。これは、日比谷健次郎が安政7年(1860)に、長女「しん」の初節句のためにあつらえたものである。奇しくも,井伊大老が江戸城での節句のために登城中に,桜田門外で襲撃された、その節句である。当時、商品として売られていた雛人形には、大きさに制限(高さ 8寸)があったが、それよりかなり大きな特注品である。作者は不明ではあるが、当時、流通していた雛人形とは別の風格を有する。

江戸製であること、一人の作者による大型の人形一式が伝えられていること、箱書きに「安政七年 春三月」とあり、制作年代がわかること、誰のために誂えられたものかわかることから、美術的評価とともに、歴史学や文化史の上からも貴重な史料と評価することができる[3]

出典[編集]