刺青 (小説)

刺青
訳題 The Tattooer
作者 谷崎潤一郎
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 第二次『新思潮1910年7月・第3号
刊本情報
出版元 籾山書店
出版年月日 1911年12月
装幀 橋口五葉
id NCID BN12463169
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刺青』(しせい)は、谷崎潤一郎短編小説。谷崎本人が処女作だとしている短編で[1]皮膚に対するフェティシズムと、それに溺れる男の性的倒錯など、その後の谷崎作品に共通するモチーフが見られる初期の作品である[2]1910年(明治43年)11月、同人誌の第二次『新思潮』第3号に掲載された[2]。単行本は、翌1911年(明治44年)12月に籾山書店より刊行された[3]

あらすじ[編集]

「世の中が今のように激しく軋みあわない時分」、多くの人々が刺青をしてその意匠を比べ合っていた中に、清吉という、元浮世絵職人の彫り師がいた。清吉は美女の体に己の魂を彫り込みたいという宿願を持っていたが、満足する女を見つけられずに過ごしていた。そんな中、駕籠から女の美しい白い足がこぼれているのを見て、清吉はこれぞ自分の求めていた女だと確信した。

清吉は、「この絵にはお前の心が映って居る」と言いながら、処刑される男を眺めるが描かれた画幅を見せ、さらに男たちの屍骸に魅せられる若い女を描いた「肥料」と題する画幅も見せた。怯える娘を麻酔で眠らせた清吉は、彼女の肌に巨大な女郎蜘蛛の刺青を彫っていった。

麻酔から覚めた娘は魔性の女に変身し、鋭い眼を輝かせ、「お前さんは真っ先に私の肥料になったんだねえ」と清吉に言った。そして帰る前に清吉に促されて、もろ肌ぬいだその燦爛たる背中を朝日に輝かせた。

映画[編集]

刺青 (1966)[編集]

刺青
監督 増村保造
脚本 新藤兼人
原作 谷崎潤一郎「刺青」「お艶殺し
出演者 若尾文子
長谷川明男
音楽 鏑木創
撮影 宮川一夫
編集 菅沼完二
製作会社 大映
配給 大映
公開 1966年1月15日
上映時間 86分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1966年1月15日公開。大映製作。カラー、86分。読みは「いれずみ」[4]。「刺青」の他に、同じ谷崎の短編小説「お艶殺し」も基にしている。公開時の惹句は、「妖しい官能の異常な世界にひきいれる谷崎文学の完全映画化!」である[5][6]キネマ旬報ベストテンでは圏外の第29位となった[7][8]

刺青 IREZUMI (1984)[編集]

刺青 IREZUMI
監督 曽根中生
脚本 那須真知子
原作 谷崎潤一郎
出演者 伊藤咲子
沢田和美
撮影 森勝
編集 山田真司
製作会社 にっかつ
配給 にっかつ
公開 1984年12月22日
上映時間 77分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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1984年公開。にっかつ製作で、日活ロマンポルノの一作。現代劇に翻案されている。キネマ旬報ベストテンでは圏外の第61位となった[9][10]

刺青 SI-SEI (2005)[編集]

刺青 SI-SEI
監督 佐藤寿保
脚本 夢野史郎
原作 谷崎潤一郎
製作 松下順一
出演者 吉井怜
弓削智久
音楽 中川孝
撮影 斉藤幸一
編集 斉藤和彦
製作会社 アートポート
配給 アートポート
公開 2006年2月25日
上映時間 72分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2005年製作、2006年公開。アートポート製作。現代劇に翻案されている。

刺青 堕ちた女郎蜘蛛 (2007)[編集]

刺青 堕ちた女郎蜘蛛
監督 瀬々敬久
脚本 井土紀州
原作 谷崎潤一郎
製作 松下順一
出演者 川島令美
和田聰宏
音楽 中川孝
撮影 芦澤明子
編集 滝沢雄作
製作会社 アートポート
配給 アートポート
公開 2007年1月13日
上映時間 96分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2007年公開。アートポート製作。現代劇に翻案されている。

刺青 背負う女 (2009)[編集]

刺青 背負う女
監督 堀江慶
脚本 山村一間
堀江慶
原作 谷崎潤一郎
製作 松下順一
製作総指揮 吉田実
藤岡修
出演者 井上美琴
波岡一喜
音楽 遠藤浩二
主題歌 玉城ちはる「シンカイノハモン」
撮影 松石洪介
編集 滝沢雄作
制作会社 本田エンターテインメント
円谷エンターテインメント(制作協力)
製作会社 アートポート
ハピネット
配給 アートポート
公開 2009年6月6日
上映時間 76分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2009年6月6日公開。現代劇に翻案されている。

刺青 匂ひ月のごとく (2009)[編集]

刺青 匂ひ月のごとく
監督 三島有紀子
脚本 国井桂
原作 谷崎潤一郎
製作 松下順一
製作総指揮 吉田実
藤岡修
出演者 井村空美
さとう珠緒
音楽 遠藤浩二
撮影 会田正裕
編集 宮崎清春
制作会社 本田エンターテインメント
円谷エンターテインメント(制作協力)
製作会社 アートポート
ハピネット
配給 アートポート
公開 2009年6月27日
上映時間 89分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2009年6月27日公開。

テレビドラマ「刺青・魔性の秘密」(1988)[編集]

谷崎の2つの短編、本作『刺青』と『秘密』とを原作とする。

テレビ東京月曜・女のサスペンス』にて「文豪シリーズ」の一編として、1988年10月17日に放映された。54分枠単発。

サウンドトラック[編集]

  • 妻は告白する/刺青 オリジナル・サウンドトラック(2021年11月24日/CINEMA-KAN/規格番号CINK-121)

66年版のサウンドトラック。「妻は告白する」とのカップリング。本編未使用の音源も収録されている。

脚注[編集]

  1. ^ 河盛好蔵「解説」(刺青・文庫 1994, pp. 269–273)
  2. ^ a b 「谷崎潤一郎作品案内」(夢ムック 2015, pp. 245–261)
  3. ^ 「主要著作目録」(アルバム谷崎 1985, p. 111)
  4. ^ [1]
  5. ^ 「あ行――刺青」(なつかし 1989
  6. ^ 「若尾文子――刺青」(なつかし2 1990, p. 156)
  7. ^ 「昭和41年」(80回史 2007, pp. 156–161)
  8. ^ 「1966年」(85回史 2012, pp. 230–238)
  9. ^ 「昭和60年」(80回史 2007, pp. 304–311)
  10. ^ 「1985年」(85回史 2012, pp. 432–440)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]