全米作家協会

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全米作家協会
英語: The Authors Guild
Authors Guild Logo 2017.png
略称 AG
設立年 1912年(107年前) (1912
種類 業界団体
地位 非営利団体 (501(c)(6)適用)[1]
目的
  • 著作権の保護
  • 言論の自由擁護
  • 著作家の経済的地位向上
本部 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国ニューヨーク
メンバー 9,000超[1]
関連組織
  • The Authors Guild Foundation (全米作家協会財団)
  • The Authors League Fund (全米作家連盟基金)
  • The Authors Registry (全米著作物管理機構)
ウェブサイト authorsguild.org
過去名 The Authors League of America (全米作家連盟)

全米作家協会 (ぜんべいさっかきょうかい、英語: The Authors Guild略称: AG) は、著作権の保護、言論の自由の擁護、および出版業界との公正な契約取引を通じた著作家の経済的地位向上を目的とするアメリカ合衆国の業界団体である。「アメリカ作家協会」[2]、「米国作家協会」[3]、「米作家協会」[4]と呼ばれることもある[註 1]

著作家を対象とする業界団体は複数あるが、中でもAGは米国内で最古かつ最大の組織である[5]。1912年に全米作家連盟 (The Authors League of America、略称: ALA) として設立され、1921年には権利保護の対象者を絞った形で現在のAGへと改名した[5]ノーベル文学賞ピューリッツァー賞全米図書賞などの受賞者がAGの歴代理事および評議会メンバーに名を連ね[6]、協会員は9,000名超である[1]

AGはロビー活動にも積極的で、検閲の排除や税制問題、著作権保護などに関してアメリカ連邦政府あるいは州政府レベルに働きかけを行っている。また著作権侵害を巡ってIT大手Googleなどを相手取り、集団訴訟を申し立てて世論を二分したことでも知られている[7]

団体概要[編集]

沿革[編集]

1912年、アメリカのニューヨーク市にて全米作家連盟 (The Authors League of America、略称: ALA) として設立され、初代会長は後のイギリス首相で著作家のウィンストン・チャーチルが務めた[5]。なお、ALA設立の3年前にあたる1909年には、アメリカ連邦議会によって著作権法が改正され、著作権の保護期間が延長された社会的背景がある[註 2]

ALA設立当初は文学 (フィクションおよびノンフィクション) 作家だけでなく、劇作家作詞作曲家なども加入の対象としていた[5]。1919年に全米劇作家協会英語版 (The Dramatists Guild of America、略称: DGA) が設立されて分離独立[8]したのを受け、1921年に全米作家連盟 (ALA) は全米作家協会 (AG) に改名した。以降、映画・テレビ・ラジオの脚本家、劇作家、作詞家、作曲家を対象とした活動はDGAが中心となって担っている[8]。一方AGは、小説家、歴史家、ジャーナリスト、詩人、イラストレーターなど、主に出版業界を通じて作品を発表する著作家を権利保護と人材育成の対象としている[9]

会員資格とサービス[編集]

AGの協会員は上述の著作家の他に、著作物を出版社に売り込む著作権エージェント、著作家の著作権や印税を管理代行する財団・弁護士・会計士なども含まれる。協会員は、出版社との契約に関する法的アドバイス、保険サービス、ライセンス料や印税などに関するサポートをAGから受けることができる[5]。また協会員のうち、主に学生や若手著作家の会員を対象として、月次の小説コンテストや、出版社への売り込み方法の講習イベントなども随時開催されている[10]。協会員の国籍や居住地は不問だが、著作家がプロフェッショナル会員として加入登録するには、米国内での出版経験を有するか米国内の著作権エージェントを介している必要がある[9]

組織運営[編集]

AGは501(c)(6) の非営利団体として認定された法人 The Authors Guild, Inc. によって運営されている[1]調査報道およびファクトチェック大手ProPublicaによると、AGの501(c)(6) 認定による連邦所得税免除は、1996年3月より適用されている。2016年度のAGの収入は2,512,043米ドルであり、うち61.7%は協会員からの会費収入が占める[11]

AGの姉妹組織として、The Authors Guild Foundation (全米作家協会財団)、The Authors League Fund (全米作家連盟基金)、およびThe Authors Registry (全米著作物管理機構) の3組織が挙げられる。「財団」は20世紀後半に設立され、寄付金を広く募って運用・管理してAGの活動を支えている[12]。「基金」は1917年に創設され、収入減や疾病による生活困窮に備えた互助的な保険サービスを著作家に提供している[12]。また「管理機構」は、著作権者に代わって米国外からの印税収入を徴収・分配する国際決済サービスを提供している。管理機構はAGの他、全米ジャーナリスト・作家協会英語版 (The American Society of Journalists and Authors、略称: ASJA)、先述のDGA、および全米著作権エージェント協会 (The Association of Authors' Representatives、略称: AAR) の4組織によって1995年に共同設立された[12]

なお、AG本体が協会費を会員から徴収するのに対し、協会員外からの寄付は姉妹組織の「財団」が募る理由は、501(c) の認定タイプと税免除の違いによる。501(c) のうち、501(c)(6) は業界団体向けの非営利団体認定であり、寄付を受け取るAG側は連邦所得税が免除されるものの、501(c)(6) 組織に対して寄付をする個人・法人側には、その寄付金が税控除されないことからメリットが低いという特徴がある。一方、財団 (foundation) や慈善団体 (charitable organization)、宗教団体などは501(c)(3) に分類され、寄付者側も税控除の対象となる。そのため、501(c)(6) の業界団体は、別途501(c)(3) の財団を設立して寄付を募る商慣習がある[註 3]

著名人[編集]

AGの現行体制[6]:

AGの歴代会長 (順不同)[5]:

立法・司法案件[編集]

米国における著作権保護期間の例 (横軸: 著作権保護発生年、縦軸: 著作権保護年数、色分け: 法改正による延長期間)。著作が作成された時点で著者が35歳であり、70歳で死去すると仮定した場合。

AGは著作権者の利益を守る立場から、議会へのロビー活動を展開している。その活動例として、著作権の保護期間の延長、著作権保護の無方式主義 (著作者が著作物を登録せずとも自動で権利保護される) を規定したベルヌ条約の批准、執筆活動に関連する経費の税控除[15]などが挙げられる。

またAGは、関係業界団体や著作者個人と連携する形で訴訟も起こしている。とりわけ2000年代に入り、紙媒体での出版が縮小する一方、著作物のデジタル化が普及し始めたことが背景にある[註 4]。著作権法では、第三者による著作物の無断使用・複製・頒布は著作財産権の侵害とみなされる。しかし無断で使用しても一定の基準を満たしていれば、フェアユース (fair use、公正使用) として権利侵害には当たらないことから、フェアユースの範疇を巡って争われたのが「対Google訴訟」である。

さらに「フリーランサー訴訟」では、フェアユースに加えて職務著作 (別称: 法人著作、英: Work for hire) の概念も問われた。これは著作者個人が法人に雇用されており、その職務の一環で著作物を創作した場合は、著作権は雇用主に帰属するという考え方である。AGが原告団を務めたフリーランサー訴訟は、フリーランスの著作者による著作物が、雇用主ではない新聞社や雑誌などに寄稿され、その著作物が無断で二次利用されたとされるケースである。

フリーランサー訴訟[編集]

新聞The New York Timesや雑誌Timeなどに寄稿された記事が、LexisNexisやUniversity Microfilms (現ProQuest英語版) などの記事検索オンラインデータベースに無断転載されたとする集団訴訟「In re: Literary Works in Electronic Databases Copyright Litigation」である。原告団はAGを中心に、全米ジャーナリスト・作家協会 (ASJA)、全米作家労働組合英語版 (NWU)、およびフリーランスの著作家21名で構成され、2000年に提訴した[17]。これに対し出版各社は、元記事を改変した上でデータベースにデジタルアーカイブしただけであり、著作権侵害に当たらないと主張した。著名な著作家の間でも意見は分かれ、ピューリッツァー賞受賞者のデヴィッド・マカロー英語版ドリス・カーンズ・グッドウィンなどは出版社側の主張を支持した[17]

合衆国最高裁判所は2001年、デジタル化後も著作権は著者に帰属するとし、原告勝訴と賠償の判決を言い渡した[18]。その後、賠償の受給者対象を拡大する形で裁判は続いたものの、最終的に2014年6月、両当事者は総額1800万ドルで和解したと発表した[19]

対Google訴訟[編集]

著作権者に無断・無償で著作物をデジタルスキャンしてオンライン上に公開するGoogleブックスの行為は著作権侵害だとして、AGおよび著作家3名は2005年、集団訴訟を連邦地方裁判所に申し立てた[20]。その翌月には、全米出版社協会英語版 (The Association of American Publishers、略称: AAP) も同件で単独訴訟を起こした[21]

2008年時点ではGoogleがAGおよびAAPに対して総額1億2500万米ドルを支払う和解案に原告・被告ともに合意していた[22]。しかし和解内容にはGoogleブックスと著作権者間の将来的なレベニューシェアも含まれていたことから、電子書籍市場におけるGoogleの独占化が懸念され、これが反トラスト法 (米国の独占禁止法) に抵触するリスクを判事および世論から指摘された[23][24][25]。また、著作権者からの積極的な拒否がなければGoogleブックスに転載される合意条件では、Google側への過度の免責になるとの懸念もあった[26][27]。和解の発効には裁判所の承認が必要とされるため、2009年と2011年の二度にわたって和解の修正案を当事者が再提出することとなった[23][28][29][30]

ところが一転、フェアユースを理由にGoogleブックスは合法であると連邦地方裁判所が裁定し、2013年には二審の連邦巡回控訴裁判所も一審を支持した[31]。原告団側は最高裁に上告請求するも却下されたため、二審の判決で2016年4月に最終確定した[32]

対ハーティトラスト訴訟[編集]

Googleブックスのスピンオフ・プロジェクトでもあり、世界各国の大学図書館が参画する電子図書館ハーティトラストに対しても、AGは著作権侵害で2011年9月に提訴している。米国著作権法上では、図書館などの非営利目的の場合にフェアユースが適用されると規定されていることから、2012年10月にAGの訴えは退けられた[33]

注釈[編集]

  1. ^ 厳密にはauthorの日本語訳は「著作家」が最も近い。The Authors Guildでは主に出版業界を通じて作品を発表する者を対象とし、小説家だけでなくジャーナリストやノンフィクションライターなども加入としているためである。authorの日本語訳として「作家」を充ててしまうと、広義には工芸作家などの美術作品の創作者まで包含し、また狭義の作家は特に小説家を想起させることから、いずれにしても「作家」の訳は団体の設立趣旨と乖離する恐れがある。
  2. ^ 1909年の著作権法改正以前は、著作の出版日を起点に28年間が著作権保護期間として認められ、更新した場合は追加で14年間の延長が認められていた。1909年の改正では、追加延長期間が14年間から28年間に拡大した。よって、保護期間は最大で計42年間から計56年間となった。
  3. ^ 同様の組織構成をとる例として、ワシントン日本商工会 (JCAW) が挙げられる。活動はJCAW, Inc. 主体で行い、寄付は501(c)(3) 認定のJCAW Foundation, Inc. が募っている[13][14]
  4. ^ 米国における日刊紙の紙媒体発刊数 (平日分) を例に取ると、1990年には63,228,000部だったが、2000年には55,773,000部、2014年には40,420,000部、2017年 (推計値) には30,948,419部まで低下している。その一方、新聞社の全広告収入に占めるデジタル広告収入比率は、2011年には17%だったのが2017年には31%まで増進している[16]

出典[編集]

  1. ^ a b c d GENERAL COUNSEL JOB, THE AUTHORS GUILD INC.” [全米作家協会 評議会事務局求人情報] (英語). 全米著作権協会英語版 (2016年5月5日). 2019年1月30日閲覧。
  2. ^ Coldeway, Devin (2016年4月20日). “アメリカ最高裁、Googleブックスの書籍スキャンを「公正使用」と認定 アメリカ作家協会は激怒”. ハフィントンポスト. TechCrunch. 2019年1月30日閲覧。
  3. ^ 瀧口範子 (2009年10月16日). “われわれはなぜグーグル書籍検索和解案に反対するのか?~MS・ヤフー・アマゾン連合の影の立役者に聞く”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2019年1月30日閲覧。
  4. ^ グーグルの書籍電子化、著作権侵害に当たらず 米連邦裁”. CNN (2013年11月15日). 2019年1月30日閲覧。
  5. ^ a b c d e f Who we are” [団体紹介] (英語). The Authors Guild. 2019年1月30日閲覧。
  6. ^ a b Board of Directors - The Representatives of The Authors Guild” [理事・評議会メンバー紹介] (英語). The Authors Guild. 2019年1月30日閲覧。
  7. ^ Some Success Stories” [活動の成功事例] (英語). The Authors Guild. 2019年2月1日閲覧。
  8. ^ a b Mission and History” [協会のミッションと沿革] (英語). The Dramatists Guild of America. 2019年1月30日閲覧。
  9. ^ a b Join The Authors Guild” [参加方法] (英語). The Authors Guild. 2019年1月30日閲覧。
  10. ^ News & Events” [ニュースとイベント] (英語). The Authors Guild. 2019年1月30日閲覧。
  11. ^ Nonprofit Explorer - Research Tax-Exempt Organizations” [税免除の非営利組織調査] (英語). ProPublica. 2019年1月30日閲覧。
  12. ^ a b c Sister Organization” [姉妹組織] (英語). The Authors Guild. 2019年1月30日閲覧。
  13. ^ About Us”. ワシントン日本商工会. 2019年2月1日閲覧。
  14. ^ 501(c)3”. ワシントン日本商工会ファウンデーション. 2019年2月1日閲覧。
  15. ^ Tax Bill is lifting curbs on Julia Child's Oregano” [税法改正で料理本著者ジュリア・チャイルズはオレガノを使えなくなる] (英語). The New York Times (1988年11月6日). 2019年1月31日閲覧。
  16. ^ Newspapers Fact Sheet” [新聞業界実態データ] (英語). Pew Research Center (2018年6月13日). 2019年2月1日閲覧。
  17. ^ a b Barringer, Felicity (2001年3月19日). “Big Media v. Freelancers: The Justices at the Digital Divide” [大手メディア対フリーランサー: デジタルデバイドにおける正義とは] (英語). The New York Times. 2019年2月1日閲覧。
  18. ^ Greenhouse, Linda (2001年6月25日). “Court Sides with Freelancers in Electronic Rights Case” [デジタル著作権を巡り原告フリーランサーに勝訴の判決] (英語). The New York Times. 2019年2月3日閲覧。
  19. ^ Final Judgment (PDF)” [最終結果] (英語). Copyright Class Action Settlement Website (2014年6月10日). 2014年8月17日閲覧。
  20. ^ FAQs”. Google Book Settlement. 2012年1月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月12日閲覧。
  21. ^ Authors Guild v. Google” [全米作家協会対Google] (英語). The Authors Guild. 2019年2月5日閲覧。
  22. ^ Authors, Publishers, and Google Reach Landmark Settlement - Copyright Accord Would Make Millions More Books Available Online” [AG、AAPおよびGoogleが歴史的な合意 - 著作権の和解により今後数百万冊以上の書籍がオンラインで閲覧可能になりうる] (英語). Google Press Center (2008年10月28日). 2008年11月22日閲覧。
  23. ^ a b Pohl, R.D. (2009年11月17日). “Google Books Settlement gets a makeover”. The Buffalo News. 2010年3月26日閲覧。
  24. ^ Mission”. openbookalliance.org. Open Book Alliance (2009年12月26日). 2018年9月24日閲覧。
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  26. ^ S.D.N.Y. (2011年3月22日). “Authors Guild et al. v. Google, Inc., no. 05-8136”. 2011年3月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年2月6日閲覧。
  27. ^ Grimmelmann, James (2011年3月22日). “Inside Judge Chin's Opinion”. The Labortorium. 2019年2月6日閲覧。
  28. ^ Associated Press (2011年3月23日). “NYC judge rejects Google books settlement”. Forbes.com. 2011年3月24日閲覧。
  29. ^ Page, Benedicte (2011年3月23日). “New York judge rules against Google books settlement”. The Guardian. 2019年2月6日閲覧。
  30. ^ Grimmelmann, James (2011年7月19日). “GBS Status Conference: Opt-in Settlement in the Works?”. The Labortorium. 2019年2月6日閲覧。
  31. ^ Stempel, Jonathan (2013年11月14日). “Google defeats authors in U.S. book-scanning lawsuit” [書籍スキャン訴訟でGoogle支持判決] (英語). Reuters. 2013年12月20日閲覧。
  32. ^ Order list - Certiprari denied (No. 15-849) (PDF)”. The United States Court of Appeals for the Second Circuit (2016年4月18日). 2019年2月6日閲覧。
  33. ^ Albanese, Andrew (2012年10月11日). “Google Scanning Is Fair Use Says Judge”. Publishers Weekly. 2019年3月10日閲覧。

関連項目[編集]

類似または関連する業界団体:

関連法と行政:

著作権を巡る類似または関連する訴訟・運動:

外部リンク[編集]



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