全日本学生落語選手権・策伝大賞

全日本学生落語選手権・策伝大賞(ぜんにほんがくせいらくごせんしゅけん・さくでんたいしょう)とは、岐阜県岐阜市で行われている落語の全国大会である。策伝大賞の「策伝」は落語の祖・安楽庵策伝から。

岐阜市は安楽庵策伝の出身地であり、「岐阜市笑いと感動のまちづくり事業」の一環として「野球に甲子園があるように、落語に全国大会があっても良いじゃないか」という桂三枝(現・六代桂文枝)の提案により2004年から開催されている。

決勝大会では、全国の落語研究会に所属する学生によって頂点の「策伝大賞」を獲得するための落語が約1,500人の聴衆を前に披露される。予選会・決勝大会ともに観覧は無料。ただし決勝大会の観覧は事前申込みによる抽選制。予選会は開催時間中の好きな時間に行って好きな会場(部屋)で見ればよい。当日は会場の長良川国際会議場内を着物姿の出場者が多く行き交い、決勝進出者の大学名入りのが会場ロビーに飾られることで独特な雰囲気となる。

大学の落語研究会出身のプロの落語家である桂文枝関西大学)と立川志の輔明治大学)が毎年決勝審査員として参加している[1]。策伝大賞の翌日には同じ会場で二人の落語会が行われ、大会参加者は申込により鑑賞可能である。

決勝大会はNHK岐阜放送局で毎年収録・放送されており、中部北陸ネット・全国ネットで放送されることもある。

第20回大会ではyoutubeで決勝大会の音声が配信され[2]、第21回大会では配信ソフトにより予選と決勝の全出場者の高座映像と、策伝大賞に出場経験のある落語家による応援中継が同時配信された[2]

チラシやポスターのメイングラフィック・策伝上人のキャラクターデザインは、僧侶でもあるイラストレーターの中川学が携わっている。

出場資格・規定[編集]

  • アマチュア[4]であること。
  • 策伝大賞を受賞した者は、受賞年度以降も学生として出場資格がある場合、再エントリーは可能だが決勝への再進出はできない(つまり、連覇はあり得ない)。特別賞などの場合は、翌年以降の決勝進出は可能。
  • 事前ビデオ審査・予選と本選では原則同一の演目を演じる[5]。ただし、予選と本選では上演時間が異なる(予選は6分以内、決勝は8分程度)[6]
  • 極端に時間をオーバーした場合は減点対象となる。
  • 差別的・わいせつな表現、特定の個人・団体の誹謗・中傷にあたる内容は不可。
  • 落語の上演に関しては、着物の着用が義務付けられている。

大会形式[編集]

1日目の予選と2日目の決勝で行われる。開催日は原則2月の土曜日(予選)・日曜日(決勝)に設定されていたが、第21回大会は初めて設定が金曜日(予選)・土曜日(決勝)に変更となった。円滑な予選会運営のため、第11回から事前ビデオ審査が行われている。

  • 予選:出場者を4会場[7]に分け、各会場で2名[8]の決勝進出者を審査員(プロ・アマチュアの落語家、地元落語会関連の有識者ほか)にて決定する。審査基準・詳細は非公開[9]新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、第18回は1月に非公開の映像審査のみで[10]、第19回・第20回は一般観客を入場させない形で行われた。
  • 予選終了後審査が行われ、その日のうちに審査結果が発表、決勝進出者が決定する。決勝進出者発表は公開の場で行われるが、第18回~第20回は密集予防のため、決勝進出者の携帯電話に事務局から直接電話がかかってくる形に変更されていた。
  • 決勝:予選を通過した8名[11]によって観衆の前にて落語を披露し、審査員によって策伝大賞など受賞者を決定する。策伝大賞については該当者なしの場合もあるとされる。

結果[編集]


(参加者数)
策伝大賞 審査員特別賞 奨励賞・優秀賞・岐阜市長賞など
第1回(2004年2月21~22日)
(29大学76名)
愚歌等落生
(山城伸伍(琉球大学))
珍々亭伸二ュ
(柴田史郎(筑波大学))
銀杏亭駒綱[12]
(本田隆裕(大阪大学))
第2回(2005年2月26~27日)
(28大学92名)
爪田家風凛
(村田卓優[13][14][15]関西大学))
大阪亭打借
辻大介(大阪大学)
珍々亭伸二ュ[16]
(柴田史郎(筑波大学))
第3回(2006年2月18~19日)
(36大学114名)
井の線亭ビリ馬
(国枝明弘(東京大学))
筑波亭酔兎
(矢作明子(筑波大学))
第4回(2007年2月24~25日)
(29大学123名)
浪漫亭不良雲
(島井謙太郎(関西大学))
いだけ家大志
(成田芳(北海道大学))
第5回(2008年3月1~2日)
(37大学148名)
香車亭梅春
(羽鳥広平(筑波大学))
中央亭可愛
(須藤みなみ(中央大学))
第6回(2009年2月21~22日)
(37大学163名)
浪漫亭刃矢手
(清水啓記(関西大学))
駿河炎誌
(小田中裕士(明治大学))
第7回(2010年2月27~28日)
(44大学・大学院193名)
銀杏亭魚折[17][18]
(青山知弘(大阪大学))
桜ん坊恋歌
(雨甲斐加奈子(慶應義塾大学
我楽亭ハリト[19]
(ムズラックル ハリト(大阪大学大学院))
第8回(2011年2月26~27日)
(50大学・大学院228名)
三流亭今壱
(高木陽輔(岐阜大学))
浪漫亭芭圧
(沖守翔(関西大学))
決勝進出者6名[12]
第9回(2012年2月27~28日)
(51大学・大学院250名)
道楽亭海人
(中島慶一郎(京都大学))
おもち家ぶりき
(滝口彩香(青山学院大学))
銀杏亭駒潮[20]
(長原耕太郎(大阪大学))
第10回(2013年2月23~24日)
(55大学・大学院280名)
花の家なごみ
(今井智子(関西大学))
頭下位亭黒麿 [21][22][23]
(栗林宜徳(東海大学
回転寿し好き助[24]
(入江晃弘(青山学院大学))
第11回(2014年2月22~23日)
(51大学・大学院320名)
鵜飼家みるく
(田中久留美(岐阜大学))
車家化狐。
(清水賢二郎(岡山大学))
浪漫亭鞍弓[24]
(山田大詞(関西大学))
第12回(2015年2月21~22日)
(52大学・大学院288名)
銀杏亭福豆
(寿山安紀(大阪大学))
可愛家書ん坊
(鳥居杏平(南山大学))
外楼一拝[24]
竹内一希日本大学))
第13回(2016年2月27~28日)
(45大学・大学院256名)
四笑亭笑ん太
(松山直樹(関西学院大学))
可愛家ばれる
(宮本日奈美(神戸大学))
外楼一拝[24]
(竹内一希(日本大学))
古閑亭菊之門[25]
(田中爽太(筑波大学大学院))
第14回(2017年2月25~26日)
(45大学・大学院311名)
藤乃家海瑠来[26]
(小幡七海(京都女子大学))
可愛家ばれる
(宮本日奈美(神戸大学))
永福亭灰松[24][27][28]
(日野公純(東京大学大学院))
鵜飼家つきみ[29]
(林美希(岐阜大学大学院))
第15回(2018年2月17~18日)
(51大学・大学院244名)
糖蜜庵ちまき
(牧野玖美(日本大学))
風流亭甘鶏母
(大森菜々子(岡山大学))
大阪亭都灯[24]
(杉山武郎(大阪大学))
第16回(2019年2月16~17日)
(51大学・大学院228名)
立命亭写楽斎
(高橋壱歩(立命館大学))
星葉亭二名
(土屋早紀子(多摩美術大学))
麗久舎よみ[24]
(堀江冬芽(筑波大学))
第17回(2020年2月22~23日)
(51大学・大学院220名)[30]
ぷりん亭芽りん
(荒木めりん(神戸女学院大学))
二松亭桜二郎
(藤田想(二松学舎大学))
大阪亭都灯[24]
(杉山武郎(大阪大学))
第18回(2021年2月21日)

(29大学・大学院79名)

金香亭三色

(谷口友晴(二松学舎大学))

境家一八四

(三井悠馬(慶応義塾大学))

立命亭鯛團[24]

(芝田純平(立命館大学))

第19回(2022年2月19日~20日)
(31大学・大学院129名)
浪漫亭 凡

(福田真己(関西大学))

立命亭鯛團

(芝田純平(立命館大学))

六松亭箱庭[24]

(西木彩乃(九州大学))

第20回(2023年2月18日~19日)

(48大学・大学院182名)[31]

境家ちがう

(坂本誓(国際基督教大学))

境家一八四[32]

(三井 悠馬(慶応義塾大学)

田町家樽聖如[24]

(早瀬太亮(法政大学))

第21回(2023年2月16日~17日)

(54大学・大学院236名)[33]

田町家樽聖如

(早瀬太亮(法政大学))

道楽亭ぱある

(疋田真珠子(京都大学))

頑張亭たい杜[24]

(遠藤匡(東北学院大学))

大会出場後プロとなった者[編集]

決勝進出者で、のちに落語家に正式に入門した者。太字は策伝大賞受賞者。

回数 当時の芸名 大学 入門年 現在の芸名 師匠 備考
1 2004 愚歌等落生 琉球大学 2004 北山亭メンソーレ 立川志の輔 2010年立川流脱退、現在フリー。
3 2006 井の線亭ビリ馬 東京大学 2007 春風亭昇吉 春風亭昇太
5 2008 中央亭可愛 中央大学 2010 林家つる子 林家正蔵(9代目)
5 2008 でっ亭悠 藤女子大学 2016 林家きよ彦 林家彦いち
6 2009 駿河炎誌 明治大学 2011 立川がじら 立川志らく
6 2009 和朗亭飯雀 関西学院大学 2010 桂華紋 桂文華
6 2009 YO!二浪 日本大学 2012 入船辰乃助 入船亭扇辰
8 2011 三流亭今壱 岐阜大学 2012 桂鷹治 桂文治(11代目)
8 2011 浪漫亭芭圧 関西大学 2012 桂小留 桂小枝
8 2011 黄金院梶川くん 法政大学 2012 春風亭かけ橋 柳家三三 2018年春風亭柳橋に再入門。
8 2011 藤花亭梅殊 藤女子大学 2016 林家きよ彦 林家彦いち 5回出場時と芸名が異なる。
9 2012 味覚亭強次 駒澤大学 2014 柳家あお馬 柳家小せん(5代目)
11 2014 雛菊亭ちづる 桜美林大学 2018 鈴々舎美馬 鈴々舎馬風(10代目)
12 2015
13 2016 四笑亭笑ん太 関西学院大学 2018 桂源太 桂雀太
14 2017 橘亭カレーぱん 東京経済大学 2018 桂小文吾 立川談幸 2020年桂文吾(6代目)門下に移籍。
14 2017 永福亭灰松 東京大学大学院 2019 古今亭菊正 古今亭菊太楼
15 2018 酒乱苦雑派 法政大学 2018 柳亭春楽 柳亭楽輔 2024年2月廃業。
17 2020 ぷりん亭芽りん 神戸女学院大学 2021 桂文りん 桂文枝(6代目)


18 2021 金香亭三色 二松学舎大学 2022 柳家小じか 柳家小せん(5代目)


※会場は長良川国際会議場。決勝は、そのメインホールの「さらさ~ら」。

運営[編集]

主催
共催
  • 安楽庵策伝顕彰会
  • トリニティぎふ(長良川国際会議場指定管理者)
後援[34]
事務局

岐阜市笑いと感動のまちづくり実行委員会事務局(岐阜市商工観光部観光コンベンション課内)

  • 住所:〒500-8720 岐阜県岐阜市神田町1-11


外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 第1回のみ、決勝審査員として三遊亭圓歌(3代目)(当時落語協会会長)が参加。立川志の輔は審査員としては第2回からの参加。
  2. ^ a b 決勝大会の審査員コメント・アトラクションなどは配信されていない。
  3. ^ a b 第20回より、専門学校在学者が参加資格に加わった。
  4. ^ どういう状態がアマチュアであるかという明確な定義はされていない。落語以外の芸能活動で事務所に所属している学生は参加可能。
  5. ^ 第12回までは予選と本選で異なる演目を口演することが可能だった。
  6. ^ 第1回は予選10分、本選20分。第2回は予選8分、本選15分。徐々に持ち時間が短くなってゆき、第7回から予選6分、本選8分程度となっている。
  7. ^ 第4回までは3会場、第19回は2会場。
  8. ^ 第19回は各会場4名。
  9. ^ 第14回までは、審査基準として「落語の基礎を理解した上での上演の完成度を審査」という一文が、大会概要欄に記載されていた。
  10. ^ “学生落語日本一めざせ 策伝大賞、映像で予選”. 朝日新聞 (岐阜). (2021年1月18日). https://www.asahi.com/articles/ASP1K6WJQP1KOHGB001.html 
  11. ^ 第2回~第4回は6名、第5回・第6回は7名、第18回は11名。
  12. ^ a b 奨励賞
  13. ^ 現:ファンプレックス(株) 執行役員グリー(株)ミニ四駆部部長。
  14. ^ 高崎商科大学 (2018年7月17日). “グリー株式会社協力、高崎商科大学で特別授業 「ゲーム会社事業開発部長の『面白がり方』」を実施”. @press. 2020年1月10日閲覧。 “村田氏は、学生時代には落語サークルに所属。参加した学生落語選手権で日本一に。”
  15. ^ Takasugu Murata”. twitter. 2020年1月10日閲覧。 “学生時代落語日本一。爪田家風凛。”
  16. ^ 優秀賞
  17. ^ 2013年「第5回社会人落語日本一決定戦」(大阪府池田市主催)優勝。彼の新作落語は、この大会を通して知り合った林家つる子もレパートリーとして演じている。
  18. ^ アマチュア落語日本一に「阪大落研」出身の男性 創作落語「スライダー課長」で栄冠”. 産経WEST. 産経新聞社 (2013年10月20日). 2019年9月21日閲覧。
  19. ^ 岐阜市制120周年記念賞
  20. ^ 岐阜市長賞・ミナモ賞
  21. ^ 大学8年生で、受賞者としては最年長。
  22. ^ 現:劇団「地蔵中毒」栗原三葉虫
  23. ^ TheatriX!; 写真:塚田史香 (2020年1月4日). “開催迫る《劇団「地蔵中毒」寄席》にて落語を披露する6名のメンバーを新着フォトと共に紹介”. SPICE. イープラス. 2020年1月10日閲覧。 “出身落研・高座名:東海大学落語研究部・頭下位亭黒麿(とうかいていこくまろ)”
  24. ^ a b c d e f g h i j k l 岐阜市長賞
  25. ^ 実行委員会会長賞
  26. ^ 現:落語教育家・ 一般社団法人Lauqhter(ラクター)代表理事 楽亭じゅげむ
  27. ^ 芸人紹介・古今亭菊一”. 落語協会公式サイト. 落語協会. 2019年8月25日閲覧。 “2017(平成29)年10月 古今亭菊太楼に入門”
  28. ^ 日野公純『哲学から落語へ』(pdf)東大駒場友の会、2018年3月15日、3-4頁https://tomonokai.c.u-tokyo.ac.jp/pdf/newsletter/30.pdf 
  29. ^ 信長公450特別賞
  30. ^ この年の司会は春風亭昇吉(第3回優勝)、アトラクションとしてまんじゅう大帝国(竹内一希が12回に岐阜市長賞)と、プロとなった過去の入賞者が出演した。
  31. ^ この年の司会は桂鷹治(第8回大賞)・小幡七海(第14回大賞)が務め、アトラクションでは過去の大賞受賞者による大喜利が開催された。出演したのは(司会)第8回・(回答者)第2回・第6回・第13回・第14回・第15回・第16回の大賞受賞者。
  32. ^ この第20回のみ、「審査員特別賞」ではなく「第20回記念特別賞」とされた。
  33. ^ 学生落語日本一に田町家樽聖如さん(法政大) 岐阜市で「策伝大賞」決勝”. 2024年2月18日閲覧。
  34. ^ (参考)18回以降の開催概要から後援・協賛(wikipedia記載無し)の記載がなくなっている。