備前長船刀剣博物館

備前長船刀剣博物館
Bizen Osafune Japanese sword museum
2011年撮影
地図
備前長船刀剣博物館の位置(岡山県内)
備前長船刀剣博物館
備前長船刀剣博物館 (岡山県)
施設情報
愛称 備前おさふね刀剣の里
専門分野 刀剣
管理運営 瀬戸内市
開館 1983年(昭和58年)9月6日
所在地 701-4271
岡山県瀬戸内市長船町長船966
位置 北緯34度43分18秒 東経134度6分25秒 / 北緯34.72167度 東経134.10694度 / 34.72167; 134.10694座標: 北緯34度43分18秒 東経134度6分25秒 / 北緯34.72167度 東経134.10694度 / 34.72167; 134.10694
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備前長船刀剣博物館(びぜんおさふねとうけんはくぶつかん)は、岡山県瀬戸内市長船町長船にある刀剣を展示している博物館。元々は長船町立博物館として設立されたが、長船町邑久町牛窓町の合併に際して刀剣に特化した博物館を設立すべく、平成16年(2004年)に工房を増設してリニューアルした[1]

2020年現在は、主に備前国にて制作された備前刀を展示している[2]

沿革[編集]

昭和56年(1981年)頃の天王社刀剣の森では、刀剣の展示会を開催する機運が高まっていた[3]。これは備前長船の発祥の地であることや付近に刀匠の菩提寺である西方寺慈眼院の所在、岡山県重要無形文化財技術保持者である刀匠の今泉済の移住が理由として挙げられていた[3]。展示にあたり盗難と湿気を回避するため、常設博物館の建設が求められていた[3]。同年に福岡城跡の丘と共に天王社刀剣の森が岡山県指定郷土記念物になったことでこの動きは勢いを増し[3]、7月には歴史民俗資料館建設推進委員会が設置された[4]。国と県から受けつつ、建設計画を進めた他、建設資金募金委員会を発足させて募金活動を行った[4]。昭和57年(1982年)8月に着工し、敷地2,758平方メートル、鉄筋コンクリート2階建て、延べ面積666平方メートルの施設が造られた[4]。日本全国で初めての刀剣の常設展示が行われる公立博物館として建設された[4]

以下、長船博物館建築資金の大まかな内訳を示す。

建築費 / 資金内訳
項目 費用 項目 費用
本工事 14,138万円 国庫支出金 2,400万円
用地購入 2,482万円 県支出金 1,600万円
備品購入 205万円 起債 3,750万円
監督設計委託 420万円 寄付 6,608万円
合計 17,245万円 合計 17,245万円

昭和58年(1983年)、長船町の町立博物館として設立された[1]。落成式は同年9月6日、オープンは9月10日となった[4]。一階では町内で発掘された須恵器土師器、古今の備前焼を展示した[4]。二階では日本刀の展示が行われた[4]。昭和59年(1984年)2月には博物館の北に鍛刀場が完成し、4月に火入れ式を行った[4]。この頃から鍛刀の一般公開も行われた[4]。昭和63年(1988年)3月に特産物販売所が建築された[4]。平成10年(1998年)には、刀工の今泉竣光の工房の再現展示を行う、備前長船民俗資料館が博物館に隣接して建てられた[5]

2020年3月には国宝太刀である山鳥毛を瀬戸内市が購入し、引き渡された[6]。翌年2月には山鳥毛のバーチャル・リアリティの制作決定が報じられた[7]。5月には文化庁観光庁による文化施設を拠点とする観光振興の計画の15件のうち一つとして認可された[8]。費用のうち最大3分の2は日本国からの支援が受けられ、残りは山鳥毛里帰りプロジェクトの際に集められた費用によって賄われる[8]。瀬戸内市市長武久顕也は山鳥毛の購入をゴールではなく、今後瀬戸内市だけではなく日本全国を視野に入れた、日本刀の情報発信の拠点にしたいとの考えを述べている[9]。2022年4月2日、タッチパネルと疑似的に手に持てる専用ゴーグルでの山鳥毛の立体映像の鑑賞が可能となった[10]

収蔵作品と展示[編集]

常時、刀剣約40口を展示するほか[11]、刀装具や作刀・研磨工程、刀装具や備前長船の歴史などの資料を展示している[2]。収蔵品は備前刀を中心に400口ほどとなっている[2]。年5回程度テーマごとの展示が開催される[2]。ルポライターの昼間たかしは2013年の著書で、近年は変わった展示が開催されているとして、2011年に開催されたアクションゲーム『戦国BASARA』のキャラクターと関連する武具の展示や、2012年に行われた『新世紀エヴァンゲリオン』のロンギヌスの槍の制作と展示について触れている[12]

収蔵品は『西国かたな旅』によると、地元と縁が深い刀が多いとされている[13]

利用情報[編集]

  • 営業時間 - 9:00~17:00(入館は16:30)[2]
  • 休館日 - 月曜日(祝日は開館)、祝日の翌日[11]、12月28日~1月4日、展示替え時の臨時休館[2]
  • 付帯施設
    • 備前長船刀剣工房、備前長船鍛刀場 - 刀工たちの制作の場[14]。刀匠、研師、彫金師、鞘師、塗師、柄巻師たちが集う[14]
    • ふれあい物産館 - 日本刀の購入などが可能[14]

入館料[編集]

企画内容によって、料金が異なる場合がある[11]

  • 個人一般 : 500円[11]
  • 団体(20名以上)一般 : 400円[15]
  • 高大生 : 250円[15]
  • 中学生以下 : 無料[15]

交通アクセス[編集]

周辺[編集]

  • 西方寺慈眼院 - 南側に位置する菩提寺[17]
  • 造剣之古跡碑 - 徒歩5分の距離にある石碑[2]

催事[編集]

  • 公開古式鍛錬 - 毎月第2日曜日、それぞれ11時、14時開始[14]
  • ペーパーナイフ制作講座[18]
  • 小刀制作講座[2]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b せとうち美術館紀行 第15回 備前長船刀剣博物館』本州四国連絡高速道路、2019年6月27日、1頁。 オリジナルの2021年10月31日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20211031082334/https://www.jb-honshi.co.jp/museum/kikou/15/2021年10月31日閲覧 
  2. ^ a b c d e f g h i 角山 2020, p. 33.
  3. ^ a b c d 長船町史編纂委員会 2001, p. 969.
  4. ^ a b c d e f g h i j 長船町史編纂委員会 2001, p. 970.
  5. ^ 長船町史編纂委員会 2001, pp. 970–971.
  6. ^ 「瀬戸内市13億円補正案 コロナ対策、『山鳥毛』展示注力」『読売新聞』朝刊、読売新聞社、2020年5月31日、25面。
  7. ^ 瀬戸内市が山鳥毛VR制作へ」『NHK NEWS WEB』岡山、2021年2月19日。2021年2月19日のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月19日閲覧。
  8. ^ a b 刀剣博物館の観光計画を国が認定 瀬戸内、山鳥毛の魅力発信など」『山陽新聞』2021年5月25日。2021年5月31日のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月31日閲覧。
  9. ^ 笹岡 2020、61頁。
  10. ^ 山鳥毛を立体的に楽しんで 瀬戸内の博物館、VRなど2種類」『山陽新聞digital』、山陽新聞社、2022年3月29日。 オリジナルの2022年4月2日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20220402230040/https://www.sanyonews.jp/article/12453392022年4月2日閲覧 
  11. ^ a b c d 昭文社編集部(千歳丸紀子) 編伝統文化が息づく町 備前の歴史をたどる『岡山・倉敷 蒜山高原』、まっぷるマガジン まっぷる、昭文社、93頁、2019年12月15日。 
  12. ^ 昼間たかし『これでいいのか岡山県』 24巻、マイクロマガジン社〈地域批評シリーズ〉、2013年1月30日、28頁。ISBN 9784896377484https://www.google.co.jp/books/edition/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E7%89%B9%E5%88%A5%E5%9C%B0%E5%9F%9F_%E7%89%B9%E5%88%A5%E7%B7%A8%E9%9B%8642_%E3%81%93/v--XDQAAQBAJ?hl=ja&gbpv=1 
  13. ^ a b c d 笹岡 2020、29頁。
  14. ^ a b c d 角山 2020, p. 32.
  15. ^ a b c インターネットミュージアム。
  16. ^ 備前長船刀剣博物館」『るるぶ&more』2022年1月15日のオリジナルよりアーカイブ。2022年1月15日閲覧。
  17. ^ 岡山リビング新聞社編『おかやま歴史館散歩: イラストマップで訪ねる古代から現代』岡山リビング新聞社 : 吉備人出版、2006年2月、50頁。ISBN 4860691237NCID BA7667081X
  18. ^ 角山 2020, pp. 32–33.

参考文献[編集]

  • 長船町史編纂委員会 編『長船町史 通史編』長船町、2001年3月30日。 NCID BN14398771 
  • 角山祥道「名刀の旅③備前」『サライ(通巻660号、2020年5月号)』第32巻、第5号、小学館、2020年4月10日。 
  • 笹岡政宏 編『西国かたな旅:刀剣聖地巡礼ガイド』(初)ホビージャパン、2020年11月27日。ISBN 978-47986-2356-6 

外部リンク[編集]