人工衛星局

人工衛星局(じんこうえいせいきょく)は、無線局の種別の一つである。

定義[編集]

総務省令電波法施行規則第4条第1項第20号に「法第6条第1項第4号に規定する人工衛星局」と定義している。 「法」は電波法のことであり、第6条第1項第4号で「移動する無線局のうち、人工衛星の無線局」と定義している。 関連する種別の定義として、第4条第1項に

がある。

引用の促音の表記は原文ママ

概要[編集]

文字通り、人工衛星に搭載した無線局である。定義にもある通り、衛星一般放送用であれば人工衛星局として免許されるが衛星基幹放送用は衛星基幹放送局または衛星基幹放送試験局として免許される。

無線従事者の操作範囲を規定する政令電波法施行令第3条においては、同条第6号により陸上の無線局と意義付けられる。

免許[編集]

外国籍の者に免許は原則として与えられないことは電波法第5条第1項に定められているが、第2項に例外が列挙され

  • 第8号 電気通信業務を行うことを目的として開設する無線局が

あり、外国人や外国の会社・団体でも人工衛星局を開設できる。

人工衛星局を運用する際には他国の衛星通信に影響を与えないように国際調整を図るのが必須となるので、それをふまえた上で国内での免許手続きが行なわれる。

種別コードEKT。免許の有効期間は5年。但し、当初に限り有効期限は5年以内の一定の11月30日となる。

用途

局数の推移に見るとおり宇宙開発用および電気通信業務用(衛星一般放送用が含まれる。)が多数を占める。

無線局免許状の備付け

電波法施行規則第38条第1項により無線局免許状は無線局に備え付けるものとされるが、第38条の3第1項に基づく告示[1]により、人工衛星に搭載されるものは「無線従事者の常駐する場所のうち主なもの」に備え付ければよい。

旧技術基準の機器の免許[編集]

無線設備規則スプリアス発射等の強度の許容値に関する技術基準改正 [2] により、旧技術基準に基づく無線設備が免許されるのは「平成29年11月30日」まで [3]、 使用は「平成34年11月30日」まで [4] とされた。 但し、宇宙局の無線設備は設置し続ける限り再免許可能[5]であり、人工衛星局も設置し続ける限り再免許可能である、

対象となるのは、

  • 「平成17年11月30日」[6]までに製造された機器
  • 経過措置として、旧技術基準により「平成19年11月30日」までに製造された機器[7]

である。

新規免許は「平成29年12月1日」以降はできないが、使用期限はコロナ禍により[8]「当分の間」延期[9]された。 但し、人工衛星局は設置し続ける限り再免許可能であることは変わらない。

詳細は無線局#旧技術基準の機器の使用を参照。

運用[編集]

無線局運用規則第9章 宇宙無線通信の業務の無線局の運用による。

人工衛星局を運用する際には他の衛星通信に影響を与えないようにしなければならない。 電波法第36条の2及び電波法施行規則第32条の5により、人工衛星局の無線設備は、遠隔操作により電波の発射を直ちに停止することのできるものでなければならない。 また、対地静止衛星の人工衛星局は、設置場所を遠隔操作により変更することができるものでなければならないと規定される。

操作[編集]

人工衛星局は概要にある通り、陸上の無線局であるので陸上系の無線従事者による管理(常駐するという意味ではない。)を要する。 これは人工衛星局を制御する地球局の管理に適用される。 なお、衛星基幹放送をする無線局は、定義にある通り人工衛星局ではなく衛星基幹放送局または衛星基幹放送試験局の種別で免許され、これらを制御する地球局は「放送事業用」として免許される。

人工衛星局を制御する地球局に必要な無線従事者の能力については次のようになる。

検査[編集]

  • 落成検査は、一部を除き登録検査等事業者等による点検が可能で、この結果に基づき一部省略される。
  • 定期検査は、電波法施行規則別表第5号第26号により周期は1年。一部を除き登録検査等事業者等による検査が可能で、この結果に基づき省略される。但し、衛星一般放送用で可能なのは検査ではなく点検で、この結果に基づき一部省略される。
  • 変更検査は、落成検査と同様である。

沿革[編集]

1961年(昭和36年)- 宇宙局が電波法施行規則に「地球の大気圏の主要部分の外にあるか又はその外に出ようとする物体で地球の表面上の地点の間の飛行を目的としないものの上にある無線局であつて、地球宇宙間の無線通信業務を行なうもの」と定義[10]

  • 人工衛星局に相当する無線局も宇宙局であった。

1965年(昭和40年)- 宇宙局の定義が「地球の大気圏の主要部分の外にある(その主要部分の外に出ることを目的とし、又はその主要部分の外から入つたものを含む。)に開設する無線局」と改正[11]

1973年(昭和48年)- 「宇宙無線通信」が「宇宙局若しくは受動衛星(地球衛星であつて、当該衛星による電波の反射を利用して通信を行なうために使用するものをいう。)その他宇宙にある物体に送り、又は宇宙局若しくはこれらの物体から受ける無線通信」と定義[12]

1980年(昭和55年)- 電波法施行規則に定義、併せて放送衛星局が「一般公衆によつて直接受信されるための無線電話、テレビジヨン又はフアクシミリによる無線通信業務を行う人工衛星局(衛星送試験局を除く。)」 と、放送試験衛星局が「放送及びその受信の進歩発達に必要な試験、研究又は調査のため、一般公衆によつて直接受信されるための無線電話、テレビジヨン又はフアクシミリによる無線通信業務を試験的に行う人工衛星局」 と定義[13]

1993年(平成5年)- 電波利用料制度化、料額の変遷は下表参照

2011年(平成23年)- 放送衛星局、放送試験衛星局が衛星基幹放送局、衛星基幹放送試験局と改称、これらの定義も変更[14]

引用の送り仮名、促音、拗音の表記は原文ママ

局数の推移
年度 平成13年度末 平成14年度末 平成15年度末 平成16年度末 平成17年度末 平成18年度末
総数 60 56 62 62 55 56
宇宙開発用 23 24 26 28 25 26
電気通信業務用 30 27 28 29 24 20
年度 平成19年度末 平成20年度末 平成21年度末 平成22年度末 平成23年度末 平成24年度末
総数 52 49 47 45 45 45
宇宙開発用 25 25 24 24 24 24
電気通信業務用 19 16 15 15 15 15
年度 平成25年度末 平成26年度末 平成27年度末 平成28年度末 平成29年度末 平成30年度末
総数 44 44 40 46 43 46
宇宙開発用 22 22 21 25 26 23
電気通信業務用 16 14 15 16 13 12
年度 令和元年度末 令和2年度末 令和3年度末 令和4年度末    
総数 49 47 53 55    
宇宙開発用 26 26 26 29  
電気通信業務用 12 12 12 12  
各年度の用途・局種別無線局数[15]による。
電波利用料額

電波法別表第6第3項の「人工衛星の無線局」が適用される。

年月 料額 備考
1993年(平成5年)
4月[16]
29,600円  
1997年(平成9年)
10月[17]
2006年(平成18年)
4月[18]
3GHz以下 幅3MHz以下 2,451,400円 周波数と周波数幅により細分
幅3MHz超 89,467,500円
3GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 186,800円
幅3MHz超200MHz以下 11,887,500円
幅200MHz超500MHz以下 61,429,600円
幅500MHz超 177,601,800円
6GHz超 186,800円
2008年(平成20年)
10月[19]
3GHz以下 幅3MHz以下 2,789,300円
幅3MHz超 124,359,300円
3GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 110,200円
幅3MHz超200MHz以下 26,899,000円
幅200MHz超500MHz以下 81,188,300円
幅500MHz超 182,366,500円
6GHz超 110,200円
2011年(平成23年)
10月[20]
3GHz以下 幅3MHz以下 2,911,300円
幅3MHz超 130,167,700円
3GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 132,200円
幅3MHz超200MHz以下 32,278,800円
幅200MHz超500MHz以下 97,425,900円
幅500MHz超 218,839,800円
6GHz超 132,200円
2014年(平成26年)
10月[21]
3GHz以下 幅3MHz以下 3,493,500円
幅3MHz超 156,201,200円
3GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 158,600円
幅3MHz超200MHz以下 38,734,500円
幅200MHz超500MHz以下 116,911,00円
幅500MHz超 262,607,700円
6GHz超 158,600円
2017年(平成29年)
10月[22]
3GHz以下 幅3MHz以下 4,192,200円
幅3MHz超 187,441,400円
3GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 190,300円
幅3MHz超200MHz以下 46,481,400円
幅200MHz超500MHz以下 140,293,200円
幅500MHz超 315,129,200円
6GHz超 190,300円
2019年(令和元年)
10月[23]
470MHz以下  6,288,300円 衛星コンステレーションを追加
470MHz超
3.6GHz以下
幅3MHz以下 衛星コンステレーション 628,800円
衛星コンステレーション以外 6,288,300円
幅3MHz超 249,554,500円
3.6GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 285,400円
幅3MHz超200MHz以下 35,287,200円
幅200MHz超500MHz以下 187,439,800円
幅500MHz超 267,768,200円
6GHz超 285,400円
2022年(令和4年)
10月[24]
470MHz以下 5,700円
470MHz超
3.6GHz以下
幅3MHz以下 衛星コンステレーション 754,500円
衛星コンステレーション以外 7,545,900円
幅3MHz超 299,465,400円
3.6GHz超
6GHz以下
幅3MHz以下 342,400円
幅3MHz超200MHz以下 42,344,600円
幅200MHz超500MHz以下 222,927,700円
幅500MHz超 321,321,800円
6GHz超 5,700円
注 料額は減免措置を考慮していない。

脚注[編集]

  1. ^ 昭和35年郵政省告示第1017号 電波法施行規則第38条の2及び第38条の3の規定による時計、業務書類等の備付けを省略できる無線局及び省略できるものの範囲並びにその備付け場所の特例又は共用できる場合第2項の表第4項 宇宙物体に開設する無線局(総務省電波利用ホームページ - 総務省電波関係法令集)
  2. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正
  3. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項および平成19年総務省令第99号による同附則同条同項改正
  4. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第1項
  5. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第3項
  6. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正の施行日の前日
  7. ^ 平成17年総務省令第119号による無線設備規則改正附則第3条第2項
  8. ^ 無線設備規則の一部を改正する省令の一部改正等に係る意見募集 -新スプリアス規格への移行期限の延長-(総務省報道資料 令和3年3月26日)(2021年4月1日アーカイブ) - 国立国会図書館Web Archiving Project
  9. ^ 令和3年総務省令第75号による無線設備規則改正
  10. ^ 昭和36年郵政省令第12号による電波法施行規則改正
  11. ^ 昭和40年郵政省令第28号による電波法施行規則改正
  12. ^ 昭和47年郵政省令第41号による電波法施行規則改正
  13. ^ 昭和55年郵政省令第12号による電波法施行規則改正
  14. ^ 平成23年総務省令第64号による電波法施行規則改正
  15. ^ 用途別無線局数 総務省情報通信統計データベース - 分野別データ
  16. ^ 平成4年法律第74号による電波法改正の施行
  17. ^ 平成9年法律第47号による電波法改正
  18. ^ 平成17年法律第107号による電波法改正の施行
  19. ^ 平成20年法律第50号による電波法改正
  20. ^ 平成23年法律第60号による電波法改正
  21. ^ 平成26年法律第26号による電波法改正
  22. ^ 平成29年法律第27号による電波法改正
  23. ^ 令和元年法律第6号による電波法改正
  24. ^ 令和4年法律第63号による電波法改正

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

総務省電波利用ホームページ