事八日

鮮斎永濯 (1884) 『温古年中行事』。2月8日の「事納」に目籠を掲げている。

事八日コト八日(ことようか)は、日本の年中行事。八日節供[1]八日待(まち)[1]八日ぞう[1]事始め/事納め[1]お事始め/お事納め[2]八日吹き八日行節供始め/節供納めお薬師様恵比寿講などとも呼ばれるが、民俗学上は「事八日」と総称される[1]

概要[編集]

例外もあるが原則として、2月8日12月8日の年2回またはいずれかに行われる、2月8日と12月8日のどちらかを「事始め」、他方を「事納め」と呼ぶことがある。「事」を年間の祭事あるいは農作業と解釈し、2月を事始め・12月を事納めとするのが主流だが、関東の一部では「事」を新年の祝い事(正月行事)と解釈し、12月が事始め・2月が事納めとなる[3][4]

行事の内容は地域差が大きい。戦後徐々に行われなくなりつつある。

日付[編集]

地域によっては、2月8日12月8日の片方のみ行う。中部地方以東では両日行うが、北陸地方から西日本では、12月が主。特に近畿中国地方では、旧暦3月ごろの春事(はるごと)に吸収され、12月のみ行うことが多い[3][1]

本来は日付は旧暦で、青森県青森市浪岡平川市平賀地域山形県朝日町宮宿河北町谷地村山市稲下福島県須賀川市などでは旧暦で行われる(ただし1970年代ごろの情報であり現状は不明)[5]

2月と12月以外に行われる地域もある。埼玉県蕨市戸田市では、2月8日と11月8日に行われる[5]。埼玉県さいたま市浦和区東京都大島町 伊豆大島)では、2月8日・4月8日・12月8日の年3回行われる[5]。そのほか、埼玉県草加市では1月8日・2月8日・3月8日4月8日・12月8日、三郷市では2月8日・4月8日7月8日10月8日・12月8日に行われることがある(必ずしもこれらの全ての日に行うということではない)[5]

福島県矢祭町では、各月の8日または10日に行われる[5]。福島県塙町では、8日に目籠(後述)を掲げ10日にしまうなど、8日と10日に分けて行われる[5]

行事[編集]

妖怪や悪神(地域によって異なり、一つ目小僧箕借り婆疫病神ダイマナコ など)が家を訪れ、害をなすという。それを防ぐため、目籠ハリセンボンの巣・ヨモギ山椒唐辛子ニンニク柊に刺した鰯の頭などを、戸口や軒下に掲げ魔除けとする。

あるいは、恵比寿薬師如来大黒田の神山の神などが訪れるといい、赤飯団子などを家に供えて歓迎する。

栃木県南部と茨城県南西部の一帯ではを束ねた「笹神様」を庭に掲げる風習がみられ「北関東のササガミ習俗」として国の文化財に選択されている[4]

針供養、すなわち、縫い針供養される。関西では12月8日、関東では2月8日が多い[6]

農作業をしてはならない、山に入ってはいけないなどの物忌がある。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f 小川直之「事八日」『日本大百科全書』小学館 
  2. ^ 広辞苑』事八日
  3. ^ a b 田中宣一「事八日」『日本民俗事典』1972年。 
  4. ^ a b とちぎの慣習・ことば集 栃木県、2021年1月20日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 曹圭憲『「コト八日」の祭祀論的研究 : 神去来思想による稲作一元論・祖霊一元論を超えて』早稲田大学〈博士(人間科学) 甲第2473号〉、2007年。 NAID 500000435230https://id.ndl.go.jp/bib/000009364502 
  6. ^ 国民百科事典』平凡社 6巻 pp.198–199

関連項目[編集]