ワスレナグモ

ワスレナグモ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
亜門 : 鋏角亜門 Chelicerata
: クモ綱 Arachnida
: クモ目 Araneae
: ジグモ科 Atypidae
: ワスレナグモ属 Calommata
: ワスレナグモ C. signata
学名
Calommata signata
Karsch, 1879

ワスレナグモ(学名:Calommata signata)は、クモ目ワスレナグモ科(あるいはジグモ科)に属するクモの一種である。名前の由来は、一度見つかりながら、その後数十年にわたり見つからず、もう忘れることのないようにということで、「勿忘蜘蛛」と命名されたという。

特徴[編集]

体長は雄で6 - 8mm、雌で15 - 18mm。雌雄では別種かと思われるほどに姿が異なる。

雌は全体にジグモに似るが、顎や歩脚が太く、全体にずんぐりして見える。また、第一脚のみが特に華奢になっている。体色は褐色で、斑紋等はない。

全体に柔らかな毛が生えている。顎は巨大で、背面に盛り上がる。真ん中よりやや後ろが最も太くなっている。頭胸部は中央がもっとも幅広く、前方中央に隆起があってその上に2眼、両側の下に3個ずつの眼が配置する。腹部は楕円形で丸く膨らむ。

これに対して、雄は小さいだけでなく、体色は暗い褐色で、顎は貧弱で歩脚は細長く、胴体も小さいため、趣を全く異にする。触肢の先端は大きく膨らんでよく目立つ。

生態等[編集]

畑や草地、庭に生息する。平らな地面に10 - 30cmほどの縦穴を掘り、通りかかった虫を捕らえてひきずりこむ。トタテグモ類と異なり、穴には扉がついておらず、そのままの面か、周囲の地面よりやや突き出す形で丸い穴が開いているだけである。これはジグモの巣が地表で切り取られたような形であるが、そのほかに、口から周囲の地表に放射状に糸が張られる。これは触糸(受信糸とも)と呼ばれ、これに昆虫が触れるとクモがそれを関知するとされる。

クモは夜間には入り口付近におり、近づいた昆虫に飛びかかるようにして捕獲して食べる。なお、雨天の時には入り口を糸の層で封じる。

ちなみに、ジグモは平らな地面に穴を掘ることができないが、本種は可能である。たとえば飼育する際、容器に土を入れてその表面を平らに均すと、ジグモは穴を掘れないが、本種はその状態から穴が掘れる。

分布[編集]

中国・韓国・日本に分布する[1]。日本では本州・四国・九州に分布する[2]

同属は東南アジアに6種あるが、日本には本種のみを産する。

種の保全状態評価[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ 佐藤隆士・和田年史・中島ちづる・鶴崎展巨「新たに確認された鳥取県東部のワスレナグモの生息地」『山陰自然史研究』第3巻、2007年、6 - 10頁。 
  2. ^ 新海栄一『ネイチャーガイド 日本のクモ』文一総合出版、2006年11月30日。ISBN 4-8299-0174-8 p.25
  • 小野展嗣編著、『日本産クモ類』(2009)、東海大学出版会
  • 八木沼健夫、『原色日本クモ類図鑑』(1986)、保育社