ロレンチーニ器官

サメの頭部

ロレンチーニ器官(ロレンチーニきかん、:Ampullae of Lorenzini)とは、微弱な電流を感知する電気受容感覚英語版の1種である。ロレンチーニ瓶(ロレンチーニびん)とも称される[1]

概説[編集]

サメの頭部には小さな穴が点々と開いており、その奥にはゼリー状の物質が詰まった筒状の構造が存在する。これがロレンチーニ器官である。ゼリー状の物質はケラタン硫酸と考えられており、プロトン伝達体である[2]。これにより、100万分の1ボルトという極小の電位差を感知できる。例えば、これで筋肉が発する微弱な電流を感知するなど、食物を探す方法の1つとして利用する。このように敏感な感覚器なので、例えば乾電池などを海中に投入した場合には速やかに放電が起こるが、あまりにも近くで放電されるとサメは驚いて逃げてしまう場合がある。

この器官は1700年代後期にイタリアのステファノ・ロレンチーニ英語版によって発見され、彼の名前にちなんで命名された。当時から何らかの感覚器官であろうと言われていたが、その機能が具体的に判明したのは1960年代になってからだった。

POD[編集]

グレーム・チャーター博士 (Dr. Graeme Charter) とノーマン・スターキー (Norman Starkey) はロレンチーニ器官の機能に着目し、潜水士用にPODProtective Oceanic Deviceの略。一般には、シャークシールド英語版と呼ばれる。)を開発した。PODは電磁波を発生させた空間を形成することにより、ホホジロザメを近寄らせないようにできる。これまで使われてきたサメ避け網(一般には、シャークネット英語版と呼ばれる)は、サメを傷つけたり殺したりしてしまう可能性があった。

出典[編集]

  1. ^ "ロレンチーニ器官". 日本大百科全書、デジタル大辞泉. コトバンクより2022年6月25日閲覧
  2. ^ Proton conductivity in ampullae of Lorenzini jelly”. Science Advances (2016年5月13日). 2017年8月19日閲覧。