ルパート・マードック

ルパート・マードック

Rupert Murdoch
2012年
生誕 Keith Rupert Murdoch
(1931-03-11) 1931年3月11日(93歳)
オーストラリアの旗 オーストラリア ビクトリア州メルボルン
市民権 オーストラリアの旗 オーストラリア(1931–1985)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国(1985–現在)
純資産 77億ドル [2]
取締役会 ニューズ・コープ
フォックス・コーポレーション
配偶者
アン・レスリー・スミス
(m. 2023)
子供 プルーデンス英語版エリザベス英語版ラックラン英語版ジェームズ英語版、グレース、クロエ
キース・マードック英語版
エリザベス・マードック英語版
親戚 マードック家
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キース・ルパート・マードックKeith Rupert Murdoch1931年3月11日 - )は、アメリカ実業家

メディア・コングロマリットニューズ・コーポレーションを立ち上げ、世界的なメディア王として知られる。ニューズ・コープフォックス・コーポレーションの株主、共同会長という立場でテレビ新聞映画雑誌音楽産業インターネットなどを中心とした世界に散らばるメディア企業を率いている。長年オーストラリアを拠点としていたが、1985年アメリカ合衆国フォックス放送を創設した際に連邦通信規則との関係でアメリカに帰化した。

2023年9月、11月を以ってFOX社とニューズ社の会長から退き、ニューズ社の名誉会長に就任すると発表された[1]

生い立ち[編集]

オーストラリアビクトリア州メルボルンに、1931年に生まれる。ジャーナリストであった父のキース・マードック (Sir Keith Murdochはオーストラリアの名門社会の一員で、第一次世界大戦での報道で活躍し、当時のオーストラリア首相ビリー・ヒューズの個人的なアドバイザーでもあった。またメルボルンの新聞「ザ・ヘラルド」などを所有し、オーストラリア一政治的影響力の強い新聞社社長・メディア経営者となった。キースは1928年にエリザベス・ジョイ・グリーン(後のエリザベス・マードック (Elisabeth Murdochと結婚し、息子ルパートと三人の姉妹をもうけた。キースはルパートの少年時代の不出来さに不満を持っており、息子が自分のあとを継ぐことを絶望視していた。ルパートはキースに反抗的であった。母エリザベスは103歳まで生き、生涯ルパートに強い影響力を持った。

ルパートはメルボルン郊外のジーロングにある名門校ジーロング・グラマー・スクール (Geelong Grammar Schoolで学び、オックスフォード大学ウースター・カレッジ (Worcester Collegeへ進学し、学生新聞「チャーウェル(Cherwell)」で広告を販売していた。

キャリア[編集]

メディア界へ[編集]

1952年、父キースの急死(享年67歳)によりルパートは学業半ばでオーストラリアに戻り、父の跡を継いでメディアグループのオーナーになろうとしたが、相続税を払った後にはザ・ヘラルドなどの主要な事業は残っておらず、アデレードの新聞「ザ・ニューズ (The News」などがかろうじてルパートの手元に残った。ザ・ニューズの社長となったルパートは、アデレード近くで起きた少女殺人事件で逮捕されたアボリジニマックス・スチュワート (Max Stuartの冤罪と死刑反対を主張し大キャンペーンを行った。この結果スチュワートは冤罪が認められ釈放され、ルパートは大いに名を上げたが、このキャンペーンの実際の功労者は編集長のローハン・リヴェットであった。

ニューズ・コーポレーションの設立[編集]

ルパート・マードック(2009年1月12日

マードックはザ・ニューズ紙をもとに持株会社ニューズ・リミテッドを創立し、オーストラリア各地の新聞を買収して1970年代にはオーストラリア有数のメディア・グループへと成長させた。1964年にはオーストラリア初の全国紙「ジ・オーストラリアン」を発行し、政治的影響力も高めている。また1969年にはロンドンザ・サン買収。毎号カラーのヌード写真を掲載するなど一部の顰蹙を買いつつも労働者階級の人気を得ることに成功。1970年代には同じく英国のメディア王であったロバート・マクスウェルと激しく争いながら英米各地の新聞を次々買収し、1979年ニューズ・コーポレーションを設立した。

1980年代にはイギリスの名門紙タイムズ、アメリカの映画会社20世紀フォックスの買収、アメリカでのテレビ・ネットワークフォックス放送の設立など事業を拡大し、その経済力・政治的影響力は世界規模に拡大している。1987年にはかつて父が所有し本拠としていたヘラルド・アンド・ウィークリー・タイムズ社 (The Herald and Weekly Times Ltdの買収についに成功し、父のメディア王国を取り戻した。

2005年には当時世界最大のSNSMySpaceを買収。2007年ウォールストリート・ジャーナルの発行元であるダウ・ジョーンズを傘下に収める。

2011年7月、「ニュース・オブ・ザ・ワールド」の盗聴事件に絡み(同紙はこれが原因で廃刊)、ニューズコーポレーションCEOとしてイギリス下院の調査委員会に召喚された。

2012年7月22日、子会社のニューズ・インターナショナル社は、マードックが傘下の英有力紙の経営陣から退いたことを明らかにした。

2013年6月28日、ニューズ・コーポレーションがエンターテインメント分野を主に担う21世紀フォックスと出版分野を主に担う新しいニューズ・コープに分社化された。両社の最高経営責任者(21世紀フォックスでは会長も兼務)を引き続き務める。

2019年3月20日ウォルト・ディズニー・カンパニー21世紀フォックスの大部分を買収した[2]。しかし、ディズニーは既に放送ネットワークであるABCを所持しているため寡占が懸念され、フォックス放送とその関連事業は新会社が運営する事となった。そのため同日フォックス・コーポレーションが営業を開始し、マードックはその会長を務めている。

2023年9月21日、同年11月にフォックス・コーポレーション並びにニューズ・コーポレーションの会長職を退任し、ニューズ・コープの名誉会長に就くことを発表した。後任は自身の長男であるラクラン・マードックが就任した[3]

政治的立場[編集]

1970年代半ばまでは、マードックのグループ各紙は左派であるオーストラリア労働党イギリス労働党支持だったが、その後は右派であるオーストラリア自由党イギリス保守党支持に回っている。マードックは「リベラルどもを潰そう」とも発言している。一般的に傘下の21世紀フォックスなどが親米・親イスラエルなどの姿勢をとり、これまでロナルド・レーガンマーガレット・サッチャージョージ・ウォーカー・ブッシュデービッド・キャメロンといった新保守主義新自由主義の政治家を支持してきており、マードック本人も保守主義者であるとされる。しかし、保守主義者ながら反王制であることでも有名で、特にイギリス王室に対する報道は激烈である。このように、日和見とも言える態度がしばしば批判の対象となっている。

マードック本人は、自身の政治的立場を「リバタリアニズムの信奉者」だと述べている[4]

私生活[編集]

彼はこれまでに4回結婚している。

1956年にパトリシア・ブッカーと結婚し一女(プルーデンス・マードック)をもうけたが1967年に離婚した。この結婚に関しては彼は多くを述べていない。

同年、社員でエストニア移民出身の若い女性、アンナ・トーヴと結婚し、エリザベス(1968年生まれ)、ラクラン(1971年生まれ)、ジェームズ(1972年生まれ)の二男一女をもうけている。アンナ夫人とは1999年に離婚し17億ドルにのぼる慰謝料を支払った。

その半月後、当時70歳のマードックは当時30歳のウェンディ・デン(鄧文迪、1969年に中国徐州に生まれ広州で育ち、米国に留学したあと、香港のスターTVの副社長を務めていた)と結婚している。ウェンディとの間にはグレース(2001年生まれ)とクロエ(2003年生まれ)の二女が生まれている。2013年6月、ウェンディとの離婚をニューヨーク州高等裁判所に提出した[5]

2015年10月25日ローリング・ストーンズボーカルミック・ジャガーの元妻で元モデルのジェリー・ホール (Jerry Hallとの交際が報じられ、2016年1月12日、同日発行のタイムズで婚約を発表、3月5日にロンドンで結婚した。婚約の6年後、2022年に離婚した。[6]

エリザベス、ラクラン、ジェームズの三人はそれぞれニューズ・コーポレーション内の重役となり父の後継者の座を争ったが、次男ジェームズを除く二人はすでにグループを離れ独自のビジネスを進めており、ジェームズが後継者とみなされている。エリザベスは一度離婚し、イギリスの中堅規模の広告会社「フロイド・コミュニケーションズ」の創設者でジークムント・フロイトの曾孫にあたるマシュー・フロイト (Matthew Freud(1963年生まれ)と結婚している。

メディア上での描写[編集]

  • 自身が所有するFOXネットワークの人気番組で、様々な米英の有名人が本人役でゲスト出演する『ザ・シンプソンズ』においては「わしが世界征服を企む悪のメディア王、ルパート・マードックである」[7]というセリフを喋った事もあり、ユーモアには一定の理解を示す人物である(シンプソンズのスタッフをはじめ、FOXネットワーク等の関係者には民主党支持のリベラル派で反マードックを表明する者も少なくないにもかかわらず)[8]
  • 映画『007トゥモロー・ネバー・ダイ』に登場する、英中間に戦争を起こさせ、それらを独占報道することで莫大な利益を得ると共に、戦後の中国での放映権を獲得しようと画策するメディア王のエリオット・カーヴァーは、ルパート・マードックのライバルだったロバート・マクスウェルがモデルとされているが、ルパートを皮肉った部分も持ち合わせている[9]
  • FOXテレビのロジャー・エイルズのセクシャルハラスメントを描いた『スキャンダル』では、ルパート・マードック役をマルコム・マクダウェルが演じた。冒頭シーンでは、メディア・コングロマリットとしてニューズ・コーポレーション社のビル全体の紹介がなされる。また、息子のラックラン・マードックジェームズ・マードックなども演じられ無能の兄弟と揶揄されている。

ウォルト・ディズニー・カンパニーとの関係[編集]

脚注[編集]

  1. ^ “「メディア王」FOX社ルパート・マードック会長が退任 後任は長男のラクラン氏”. FNNプライムオンライン. (2023年9月22日). https://www.fnn.jp/articles/CX/590034#goog_rewarded 2023年9月23日閲覧。 
  2. ^ ディズニーが21世紀フォックスの買収を完了(TechCrunch 2019年3月21日)
  3. ^ バーンド・デバスマン・ジュニア、ケイティー・ラザル (2023年9月22日). “「メディア王」マードック氏が米FOXの会長退任へ 後任は長男”. BBCNEWS JAPAN. 2023年9月22日閲覧。
  4. ^ https://www.sourcewatch.org/index.php?title=Rupert_Murdoch#Murdoch.27s_politics
  5. ^ メディア王ルパート・マードック、三度目の離婚へ 慰謝料に注目!?
  6. ^ Jerry Hall files for divorce from Rupert Murdoch in US court” (英語). the Guardian (2022年7月2日). 2022年8月16日閲覧。
  7. ^ [1] 原語ではRupert Murdoch, the billionaire tyrant.
  8. ^ https://thinkprogress.org/2007/10/01/the-simpsons-sucks-up-to-rupert-murdoch/
  9. ^ 町山智浩『アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない』文藝春秋、2008年 p194

外部リンク[編集]