ユーマ語族

ユーマ語族
ユーマ=コチミ語族
話される地域カリフォルニア州アリゾナ州ソノラ州バハ・カリフォルニア州
言語系統ホカ大語族?
  • ユーマ語族
下位言語
  • クミアイ語、ココパ語、パイ語、パイパイ語、モハベ語、マリコパ語、ケチャン語
  • キリワ語
  • コチミ語
Glottologcoch1271[1]
ユーマ語族の分布

ユーマ語族(ユーマごぞく、Yuman languages)は、メキシコバハ・カリフォルニア半島ソノラ州、およびアメリカ合衆国カリフォルニア州アリゾナ州に分布する諸言語からなる語族。大部分の言語は危機に瀕した言語になっている。

コチミ語を別な語族として分ける説があり、コチミ語を含むことを明確に示すためにコチミ=ユーマ語族とも呼ばれる[2]

構成言語[編集]

メキシコの話者2万未満の言語の分布。西端からクミアイ(南ディエゲーニョ)語、コチミ(メキシコ・ディエゲーニョ)語、パイパイ語、キリワ語、ココパ語

ユーマ語族は8ないし10ほど(数えかたによる)の言語に分けられる[3]。「人々」を意味するpaiで終わる名前が多い。ゴダードによるとコチミ=ユーマ語族は以下のように分類される[4]

  • コチミ=ユーマ
    • ユーマ
      • パイ
        • パイパイ
        • 高地(ハヴァスパイ、ワラパイ、ヤヴァパイ)
      • コロラド川
        • モハベ
        • ケチャン
        • マリコパ(Halchidhoma, Kavelchadom, Maricopa)
      • デルタ=カリフォルニア
        • ディエゲーニョ
          • イーパイ(北部ディエゲーニョ)
          • クミアイ(南部ディエゲーニョ)
          • ティーパイ(メキシコ・ディエゲーニョ)
        • ココパ
      • キリワ
    • コチミ

高地ユーマ語[編集]

高地ユーマ語(パイ語)はアリゾナ州西部の高原で話される言語。民族的にはハヴァスパイ、ワラパイ、ヤヴァパイなどに区分されているが、この区分は方言の差とは必ずしも一致しない[5]

パイパイ語[編集]

パイパイ語英語版はバハ・カリフォルニア州北部で話される言語(クミアイ語地域の南)。言語的に高地ユーマ語と近いが、地理的には遠く離れている。

モハベ語[編集]

モハベ語英語版はコロラド川沿岸(アリゾナ州、カリフォルニア州)で話される言語[6]

マリコパ語[編集]

マリコパ語英語版の話者は本来モハベ族の南・ケチャン族の北のコロラド川沿岸に住んでいたが、後に他の部族に逐われて東のヒラ川沿岸に移住した。現在はアリゾナ州フェニックス近郊のインディアン居留地に住む[7]

ケチャン語[編集]

ケチャン語英語版ユーマ語とも)はコロラド川とヒラ川の合流地点一帯(アリゾナ州、カリフォルニア州)で話される言語[8]。「ケチャン」とは(神聖な山から地上に)降りてきた人々を意味するという[9]

ココパ語[編集]

ココパ語英語版はコロラド川下流のデルタ地帯(アリゾナ州、ソノラ州、バハ・カリフォルニア州)で話される言語。

ディエゲーニョ語[編集]

ディエゲーニョ語は、イーパイ=ティーパイ語とも呼び、カリフォルニア州サンディエゴ郡インペリアル郡およびバハ・カリフォルニア州北西部に分布する。北から南に三種類に下位区分される[10]

  • イーパイ語、北部ディエゲーニョ語
  • ティーパイ語(アメリカ)、クミアイ語、南部ディエゲーニョ語
  • ティーパイ語(メキシコ)、ティーパイ語、メキシコ・ディエゲーニョ語

キリワ語[編集]

キリワ語英語版はバハ・カリフォルニア半島北部で話される言語。コチミ語を別にするとユーマ語族の言語としては最南端に分布し、他の言語と大きく異なる[3]

なお、戸部実之による『キリワ語小辞典』が泰流社より1994年に出版されているが、この著者はこの言語の専門家ではなく、専門家による信頼できる文献はいまだ出版されていない。

コチミ語[編集]

コチミ語英語版はバハ・カリフォルニア半島中央部でかつて話されていた言語。現在は死語になっており、充分なデータがない[5]

他のユーマ語族の言語とは大きく異なっており、独立した別の語族とされることもある[11]

なお、上記のメキシコ・ディエゲーニョ語もコチミ語と呼ばれることがあるが、ここでいうコチミ語とは別の言語である。

他の言語との関係[編集]

ユーマ語族は仮説的なホカ大語族に所属する可能性がある。

脚注[編集]

  1. ^ Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds (2016). “Cochimi-Yuman”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History. http://glottolog.org/resource/languoid/id/coch1271 
  2. ^ Goddard (1996) p.323
  3. ^ a b Goddard (1996) p.86
  4. ^ Goddard (1996) p.6
  5. ^ a b Kendall (1983) p.5
  6. ^ Mojave, Survey of California and Other Indian Languages, http://linguistics.berkeley.edu/~survey/languages/mojave.php 
  7. ^ Maricopa, Survey of California and Other Indian Languages, http://linguistics.berkeley.edu/~survey/languages/maricopa.php 
  8. ^ Quechan, Survey of California and Other Indian Languages, http://linguistics.berkeley.edu/~survey/languages/quechan.php 
  9. ^ Quechan Indian Fact Sheet, http://www.bigorrin.org/quechan_kids.htm 
  10. ^ Langdon (1970) p.7
  11. ^ Mithun (1999) p.303

参考文献[編集]

  • Goddard, Ives, ed (1996). Handbook of North American Indians: Languages. 17. Smithonian Institution. pp. 290-323. ISBN 0160487749 
  • Kendall, Martha B (1983). “Yuman Languages”. In Alfonso Ortiz. Handbook of North American Indians: Southwest. 10. Smithonian Institution. pp. 4-12 
  • Langdon, Margaret. A Grammar of Diegueño: The Mesa Grande Dialect. Ph.D dissertation, Department of Linguistics, UC Berkeley. http://escholarship.org/uc/item/08t8n3db 
  • Mithun, Marianne (1999). The Languages of Native North America. Cambridge University Press. ISBN 0521232287