ままかり

ママカリの例(東京都赤羽

ままかり(飯借的[1])は、ニシン科サッパ属の小型魚であるサッパの酢漬け[2][3][4]岡山県を中心とする瀬戸内海地方にみられる郷土料理である[3]。なお、「ままかり」は魚のサッパの異名でもある[2][注 1]

調理[編集]

サッパは鱗と内臓を取り除いてからをふり、新ショウガトウガラシコンブなどとともに酢に漬ける[5][3][4]。本来はサッパに塩をふり、酢で一晩おいてから翌朝に(かめ)に入れ替え、砂糖を加えた酢を上からかけて一晩程度漬けていた[5]。小さめのサッパは頭付き、大きめのサッパは頭を外して調理されることが多い[5]

なお、岡山県のサッパを用いた料理(広義のままかり料理)には、酢漬けのほかに焼き漬け、ぬか漬け、鮓、丸ずし(姿鮓)、塩漬け、焼き物、南蛮漬けなどがある[5]

歴史[編集]

確認できる最古の文献は『岩藤林弥茶』で、文化14年(1817年)11月20日正午の引肴に「ままかり酢付け」と記されている[1]

名称[編集]

一般的には、隣家から飯(まま)を借りて食べるほど美味しいという意味と伝えられている[1][4]。成島柳北『航微日記』(明治2年)では、魚を獲る漁人が隣船からから飯を借りて食べるほど美味しいことに由来するとしている[1]

参考文献[編集]

  • 岡嶋隆司「魚名「ままかり」の由来について-語源に関する一私論-」『岡山びと』創刊号、岡山市デジタルミュージアム、2006年、40-43頁
  • 岡嶋隆司「古記録にみる「ままかり」料理」『岡山びと』第3号、岡山市デジタルミュージアム、2008年、41-45頁

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 小学館『日本国語大辞典 第二版(12)』では、「1.さっぱ(拶双魚)の異名」、「2.拶双魚の酢漬け」としており、語義が独立している[2]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 岡嶋 隆司. “岡山県の郷土料理” (pdf). 公益財団法人岡山県学校給食会. 2021年12月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年4月10日閲覧。
  2. ^ a b c 日本国語大辞典 第二版(12)』小学館、2001年、504頁。 
  3. ^ a b c 消費者の部屋 瀬戸内海地方の水産品「ままかり」の魚の正式な名称は何というのですか。”. 農林水産省. 2021年12月8日閲覧。
  4. ^ a b c "ままかり". 小学館 日本大百科全書. コトバンクより2022年4月10日閲覧
  5. ^ a b c d 日本の食生活全集岡山編集委員会『聞き書 岡山の食事 日本の食生活全集 (33)』農山漁村文化協会、1985年、75頁。