ポーランドボール

ポーランドを表したポーランドボール。実際のポーランドの国旗(下の画像)とは上下が逆であるが、ポーランドボールにおいてはこのように描かれる事が多い。

ポーランドボールドイツ語: Polandball)は、国家を題材としたインターネット・ミームまたはそのキャラクターポーランドは代表的な題材であるがその他の地域団体などの「ボール」も現存、歴史上を問わずに描かれる。それぞれの「カントリーボール」は国旗の模様をした球体のキャラクターとして描かれ、簡単に言うと国旗を擬球化したキャラクターである。そのを体現した個性を持つ。画像掲示板やwebサイトでは、それぞれの国にまつわるクリシェ、国際関係、歴史上の出来事を表現するイラストレーション漫画に用いられる。カントリーボールは可愛らしい見た目に反し、皮肉や風刺に用いられることが主である。そして、ポーランドボールを描きSNSや掲示板にその作品を投稿する者をポーランドボーラー (Polandballer)やPBer(ピーバー)と呼称することがある。ドイツ画像掲示板、『krautchan.net』の国際板で、2009年の下半期頃に発生したと見られる。PBと略されることもある。

歴史[編集]

世界各国を表したカントリーボール

ポーランドボールを発案し、最初に描いたのは『krautchan.net』のイギリス人投稿者「Falco」であり、2009年9月頃であったと見られている[1]。ポーランドボールが広く知られるようになったのは、国際的なお絵かきチャットサイトdrawball.comにおいて、ドイツ人投稿者とポーランド人投稿者との間で用いられた事による。その後大手画像掲示板4chanなど世界各地の画像掲示板にも広がり、様々な国を模したボールが描かれるようになった[2][3]。2010年4月10日のポーランド空軍Tu-154墜落事故の直後には、カントリーボールを用いたポーランドの歴史に関する投稿が多く行われ、さらに広がりを見せるようになった[4][5]。なお、4chanの利用者によって、ポーランドをあらわすボールの上に巨大な鉤十字が書かれるということもあった[2]2016年4月1日には、エイプリルフールの企画として、国や地域以外のボールに限定した「ノンカントリーボール」が行われた。現在ではYouTubeでも日本人の投稿者が多数存在し、2019年頃から2023年春頃までは横動画での投稿が主流であったが、2023年夏頃から縦動画であるYouTube Shortsでの投稿も急激に増加した。

名称[編集]

ポーランドボール (Polandball)は、国を表したボールの他、それを使った作品等の総称に使われる。ポーランドが登場しない作品でも「ポーランドボールの作品」と呼ばれるのはそのためである。カントリーボール (Countryball)は、ボールそのものの名称であり、複数のボールが集まっている際に「ポーランドボール達」とは言わず、「カントリーボール達」と呼ばれる。尚、redditのポーランドボール板では、カントリーボールはあくまで国家という扱いであり、作品内でカントリーボールを呼ぶときに「ボール」の語を使うのが禁止されているため、作品内では「国家達 (clays)」や「みんな」といった表現が使われる。

ただし、これらは確定的なものではなく、reddit以外では作品のことを「カントリーボール」と言ったり、作品内で「日本ボール」「アメリカボール」のように「ボール」をつけて呼ぶこともある。

表現[編集]

多くの場合、「ポーランドボール」は国旗を描いた球体と、白目のみの目で描かれる。原則的に瞳孔・眉・口・手足などはなく、目の形や口調がボールの感情を表現する中心的手段となっている[1]。特徴的な表現としてドイツボールが怒りや殺意を表現するときに目を小さなドット(アンシュルスアイ)にする表現や、ブラジルボールが「HUEHUEHUE!」[6]と笑うなどがある。

また、いくつかの国はそれに加えて小物を持っていたり、別の表現で描かれる事もある。アメリカボールは常にサングラスをかけ、イギリスボールはシルクハットモノクルをかけたデザインが標準化している。日本を始めとする東アジア諸国のボールは糸目や細目で描かれることがある。日本ボールは世界的に知名度の高いアニメ文化・「カワイイ」文化を生んだことから、時折猫耳や尻尾のアクセサリーをつけていることもある。さらにエロマンガエロアニメの影響でしばしば変態扱いされている。ポーランドボーラーの間で「変態」は“HENTAI“という単語として認識されている。さらにセルビアスロバキアオーストリア=ハンガリー帝国などは国章を眼帯にしていることが多い。人によっては、ソ連や神聖ローマ帝国などの紋章も眼帯にしたりする。ポーランドのカントリーボールとほとんどデザインが同じになってしまうインドネシアボールは、ノンラーやペチを被ってポーランドと区別しており、ほぼ同じ配色であるモナコボールもサングラスを掛けていたり王冠を時々かぶっていたりしている。ただし、指定された色を使わなければならないので微妙な違いであるが判別は可能。古くから存在している国の昔の姿を表現する際は、刀剣や弓といった武器を持たせる事で、現代と差別化することもある。

戦争等を表現する場合は、ドイツはハーケンクロイツあるいは鉄十字・日本は旭日旗を用いられることが大半であり、この二国は普段の状態から何かしらの嫌がらせや煽りを受けて「怒った時」にこれらに変化する表現も多い。

ポーランドの国旗の配色は上が白、下が赤であるが、カントリーボール内では上が赤、下が白となっている。上下逆となっているのは初期にポーランドのキャラを描いた際に上下の配色を間違えたのが発端であり、以来この上下逆の配色が主流となっている。

redditの英語版ポーランドボール板においては、英語を公用語としていない国のボールは文法を崩した英語("I of ..."など)を話すことが原則である[7]。逆に他言語でも、英語に外来語として入っている言葉や、少し教養のある英語話者なら知っている言葉(特にフランス語スペイン語)や「ちくしょう」に相当する語(ポーランド語の"kurwa!"やドイツ語の"Scheiße!"など)は時に原語で表記される。世界のポーランドボーラーの間では語尾に「〜いんぐ」や「〜おぶ」,「~なんね」と付けることがある。(例外として日本は"デス"や韓国は"ニダ"などとつける場合もある)また,後述のredditポーランドボール板ではネイティブ語すぎるのはアメリカであっても禁止されていたり、ネット用語が多い、オブやイングをつけすぎない、州などは方言にする、文をおかしくしすぎないなどのルールがある。

またシンガポールは三角形(Tringaporeと呼ばれる)、ネパールオハイオ州はそれぞれの国の国旗の輪郭を口に見立てたもの、イスラエルミシガン州が四次元の超立方体ドイツ帝国長方形(Reich(ライヒ=帝国)とrectangle(レクタングル=長方形)をかけてReichtangle(ライヒタングル)と呼ばれる)、カザフスタン直方体である、オムスクバードは生物の形をしているなどという、例外的なボール以外の表現も存在する[8]。 また、時にシーランド公国バチカン市国などはゼロ次元や素粒子のように扱われる。これは国土の大きさが関連している。

古代の国家や未開部族など国旗による表現ができない国家や集団についてはビリヤードボールで代替する場合もある。東アジア人は1番(黄色)、エイリアンは6番(緑)、アメリカ先住民は7番(赤)アフリカ先住民は8番(黒)といったように、ボールの割り当てには一定の慣習が存在する。また、明確な国旗の無い中華王朝などはアジア系の1番ビリヤードボール(黄色)をベースとして、中身の1という数字を王朝名であるの文字に置き換えて表現することもある。

都道府県や州などの地方行政区画のボールを表す場合、都道府県旗や州旗などを使って描くことが多い。

カントリーボールの例

投稿のルール[編集]

Redditポーランドボール板ではポーランドボール漫画の投稿について、いくつかのルールが規定されている[9]

以下の事柄は禁止されている。

  • ボールに手足・黒目・鼻・口,耳,シワ、ひげを追加する。
  • 例外の国家(カザフスタンなど)以外を四角形などで表現する。逆に例外の国家を円形で表現することも禁止。
  • 直線や円を描くツール(コンパスなど)を使う。
  • 色の間に黒い線を追加する。
  • ポーランドの配色をそのままにする - 前述の通り、投稿者が上下の配色を間違えたことから。
  • ポーランドが宇宙に行く - 「ポーランドには金がなさすぎて宇宙にもいけない」という古いジョークから。なお実際には、防空軍ミロスワフ・ヘルマシェフスキ准将が1978年に宇宙に行っている。
  • エストニアを北欧に含める。
  • ラトビアアイルランドベラルーシジャガイモを食べる - ラトビアは、同じバルト三国のなかでもリトアニアエストニアよりも経済が立ち後れている。アイルランドはかつてのジャガイモ飢饉の記憶から。ベラルーシは独裁体制のもとで経済が低迷している。
  • ボリビアが海へ行く - ボリビアがペルーチリと戦った太平洋戦争に敗れ、海に通じる領土を失って内陸国となった。
  • 非英語圏のボールが完璧な英語を話す - これは、実際に非英語圏の投稿者が英語のスペルを間違えたことから。

他、書き方や表現には多くのルールがある。それらを満たさない投稿は管理人によって削除される。

脚注[編集]

  1. ^ a b Polandball | Know Your Meme
  2. ^ a b Orliński, Wojciech (16. Januar 2010). “Wyniosłe lol zaborców, czyli Polandball” (Polish). Gazeta Wyborcza. オリジナルの2010年1月17日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100117212924/http://wyborcza.pl/1,86116,7462232,Wyniosle_lol_zaborcow__czyli_Polandball.html 13. Mai 2013閲覧。 
  3. ^ Zapałowski, Radosław (15. Februar 2010). “Znowu lecą z nami w... kulki” (Polish). Interia (Cooltura). オリジナルの2013年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/6GcFM7m6D?url=http://www.elondyn.co.uk/newsy,wpis,7731 22. März 2012閲覧。 
  4. ^ Kapiszewski, Kuba (13/2010). “Fenomem - Polska nie umieć w kosmos” (Polish). Przegląd. オリジナルの2013年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://webcitation.org/6GcFc03X7?url=http://www.przeglad-tygodnik.pl/pl/artykul/fenomem 13. Mai 2013閲覧。 
  5. ^ Cegielski, Tomek (12. April 2011). “MEMY. Legendy Internetu” (Polish). Hiro.pl. http://hiro.pl/magazyn/magazyn_zjawiska/memy.html 13. Mai 2013閲覧。 
  6. ^ ブラジルにおいてオンライン上の笑いを表現するスラング。日本語における「www」に相当する - 55555, or, How to Laugh Online in Other Languages - The Atlantic(2012年12月12日付)
  7. ^ Engrishフラングレを参照。カントリーボールでは非英語話者のボールはこれらを話す
  8. ^ Int” (Russian). Lurkmore.to (26. Dezember 2011). 27. März 2012閲覧。
  9. ^ Official Polandball Tutorial

関連項目[編集]

外部リンク[編集]