ヘレネ (衛星)

ヘレネ
Helene
カッシーニが土星を背景にして撮影したヘレネ (2010年3月3日)
カッシーニ土星を背景にして撮影したヘレネ (2010年3月3日)
仮符号・別名 仮符号 S/1980 S 6
別名 Saturn XII
   Dione B
分類 土星の衛星
発見
発見日 1980年3月1日[1]
発見者 P・ラキューズ、
J・レカシュー
軌道要素と性質
軌道長半径 (a) 377,444 km[2]
離心率 (e) 0.0000[2]
公転周期 (P) 2.736915 日[2]
軌道傾斜角 (i) 0.213°
(土星赤道に対する)[2]
近日点引数 (ω) 33.134°[2]
昇交点黄経 (Ω) 163.112°[2]
平均近点角 (M) 43.186°[2]
土星の衛星
物理的性質
三軸径 43.4 × 38.2 × 26 km[3]
平均半径 17.6 ± 0.4 km[3]
質量 1.1×1017 kg[4]
平均密度 0.5 g/cm3[4]
自転周期 2.736915 日(同期回転)
アルベド(反射能) 1.67 ± 0.20[5]
(幾何アルベド)
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ヘレネ[6]またはヘレーネ[7](Saturn XII Helene)は、土星の第12衛星である。ディオネとほぼ同じ軌道を公転しており、ディオネのラグランジュ点に存在するトロヤ衛星の一つである。

発見と命名[編集]

1980年3月1日に、ピエール・ラキューズとジャン・レカシューによって、ピク・デュ・ミディ天文台での観測で発見された。この発見は同年3月6日に国際天文学連合のサーキュラーで公表され、S/1980 S 6 という仮符号が与えられた[8]。この時の観測には 1.05 メートル反射望遠鏡が用いられている。その後、アメリカ海軍天文台でもこの天体の観測が行われている[9]

発見当初はディオネと驚くほど軌道周期が似ている衛星として認識されており[10]、そのため Dione B とも呼ばれていた[10]。その後1983年9月30日に Saturn XII という確定番号が与えられたが、この時は衛星への命名は行われず、引き続き Dione B という呼称が使われた[11]。ヘレネという名称が与えられたのは1988年6月8日になってからである[12]。名称は、ギリシア神話に登場する美女ヘレネにちなみ命名された。

トロヤ衛星[編集]

ヘレネはディオネと同一軌道上にあり、ディオネの前方にあるラグランジュ点 (L4) に存在している。このような衛星はトロヤ衛星と呼ばれる。ポリデウケスも同じくディオネのラグランジュ点に存在しており、こちらはディオネの後方のラグランジュ点 (L5) に位置している。この状態は軌道力学の観点から言うと、ディオネとヘレネが 1:1 の平均運動共鳴を起こしていることを意味している[13]

同じ力学的関係にある土星の衛星として、テティスとそのラグランジュ点に存在するテレストカリプソがある。

観測[編集]

ヘレネが初めて観測されたのは1980年で、これは地上からの観測であった。その後1981年8月にボイジャー2号により不鮮明ながら画像の撮影に成功していたが、カッシーニ2010年3月3日、ヘレネに1万9千kmまで接近して鮮明な画像を撮影した。これまでにカッシーニが撮影した画像から、ヘレネは滑らかな部分と細かいクレーターに覆われた部分とに二分されていることが判明している(外部リンク参照)。

出典[編集]

  1. ^ NASA (2017年12月8日). “In Depth | Helene – Solar System Exploration: NASA Science”. アメリカ航空宇宙局. 2018年12月1日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g Jet Propulsion Laboratory (2013年8月23日). “Planetary Satellite Mean Orbital Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月14日閲覧。
  3. ^ a b Thomas, P. C. (2010-07). “Sizes, shapes, and derived properties of the saturnian satellites after the Cassini nominal mission”. Icarus 208 (1): 395–401. Bibcode2010Icar..208..395T. doi:10.1016/j.icarus.2010.01.025. http://www.ciclops.org/media/sp/2011/6794_16344_0.pdf. 
  4. ^ a b Jet Propulsion Laboratory (2015年2月19日). “Planetary Satellite Physical Parameters”. Jet Propulsion Laboratory Solar System Dynamics. ジェット推進研究所. 2018年12月14日閲覧。
  5. ^ Verbiscer, A.; French, R.; Showalter, M.; Helfenstein, P. (2007-02-09). “Enceladus: Cosmic Graffiti Artist Caught in the Act”. Science 315 (5813): 815. Bibcode2007Sci...315..815V. doi:10.1126/science.1134681. PMID 17289992. http://www.sciencemag.org/content/315/5813/815.abstract. 
  6. ^ 『オックスフォード天文学辞典』(初版第1刷)朝倉書店、378頁。ISBN 4-254-15017-2 
  7. ^ 太陽系内の衛星表”. 国立科学博物館. 2019年3月9日閲覧。
  8. ^ Brian G. Marsden (1980年3月6日). “IAUC 3457: SATURN”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月14日閲覧。
  9. ^ Brian G. Marsden (1980年7月31日). “IAUC 3496: Sats OF SATURN; AM Her”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月14日閲覧。
  10. ^ a b Lecacheux, J.; Laques, P.; Vapillon, L.; Auge, A.; Despiau, R. (1980). “A new satellite of Saturn: Dione B”. Icarus 43 (1): 111–115. doi:10.1016/0019-1035(80)90093-7. ISSN 00191035. 
  11. ^ Brian G. Marsden (1983年9月30日). “IAUC 3872: GX 1+4; Sats OF JUPITER AND SATURN”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月14日閲覧。
  12. ^ Brian G. Marsden (1988年6月8日). “IAUC 4609: ASM 2000+25; Sats OF SATURN AND URANUS; 3C 279, PKS 1510-089 AND OJ 287”. Central Bureau for Astronomical Telegrams. 国際天文学連合. 2018年12月14日閲覧。
  13. ^ 暦Wiki/共鳴 - 国立天文台暦計算室”. 暦計算室. 国立天文台. 2018年12月14日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]